特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重

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閑話休題 -次に向けての準備期間-

閑話休題 -60話-[ドラゴドワーフ④]

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「おや、君がソニューザ達の客人とやらだね?」

 瘴気精霊を両手に1匹ずつ収穫して戻ってくれば、
 眠り姫が目を覚ましていてずいぶんと悠々とした男らしい口調で出迎えてくれた。
 横にはアンバードラゴンとソニューザを控えさせ、
 ここの王は自分だと言いたげな存在感を持って戻ったばかりの俺に声をかけて来た。

「目を覚ましたんですね。
 どうも、精霊使いをしている水無月宗八みなづきそうはちです。
 今回はソニューザとトーヴィルの友人としてドラゴドワーフの生存確認に参加させてもらいました」
「確認したらまだ前回の生存確認から半年程度しか経っていないじゃないか。
 なのに、私達の安眠を邪魔するほどの精霊使い殿の都合……、だが。
 話を聞くだけじゃ納得は出来ない」
「惰眠でしょうに……。
 アンバードラゴンラーツァグリアニスの説得用に連れて来た判断材料ならこちらですよ」

 手に持っていたそれぞれの瘴気精霊を眠り姫ことネフィリナとアンバードラゴンラーツァグリアニスに放り投げながら彼女の言葉を考える。
 事前にエルダードワーフから話は聞いていた生存確認とは、
 年に1度食料と酒を持ち込んで宴会をするだけ。
 そして、エルダードワーフが自分たちの村に帰っても宴会は続き、
 数日後に酒が切れればその心地よさに身を任せて眠り続け、次に起きるのは来年の生存確認。

 惰眠以外の何物でもないわ。

『これが瘴気精霊か。
 なるほどこれはおかしな精霊だ。長く生きたが見たことがない』
「島の生き字引の爺様が見たことないなら危険度が測れないじゃないか。
 私にソニューザ達の友人ってだけの男を信じろって言うのかい?」
『信じる必要はない。
 ネフィリア達には魔石加工を頼みたいと言うておったから、
 対価を貰って偶にはまともに才を活かせ』
「ちぇっ!クソ爺!」
『どうとでも言うがいいわ。
 いい加減動かねばソニューザにそっぽを向かれるぞと老婆心ながら忠告しているだけだ』

 あらあらソニューザったら。
 隅に置けないじゃないの。

「あ、いえ、自分は、あのぉ……」

 自分よりデカイ女が好きなんやね。乙女かな?
 普段寝たフリしていたアンバードラゴンラーツァグリアニスが話を主導しているから対応に困っておるわ。
 家族公認で良かったじょないか。

「ん、家族? もしかしてラーツァグリアニスは昔ドワーフに手を出した竜ですか?」
『我だけではないわ!
 当時はエルダードワーフも我らと距離も近く献身的に通う者も居ったのだ。
 その者たちに入れ込んだアンバードラゴン共も一緒になって必死に人化を習得して同意の元で子を成したのだ』
「ネフィリアさんはその子孫という事ですか?」
『如何にも』

 ついでに先の台詞で引っかかる部分にも突っ込んでおこう。

「ラーツァグリアニスは前任のイエロー・ドラゴンだったのですか?」
『如何にも、200年ほど前の話ではあるが。
 今は余生でネフィリア達を見守り、時には背中を押したり遊んだり共に寝たりしておる』
「子供の頃からずっとこの姿勢を崩さないから厄介なんだよ……。
 ともかく、今日はもう遅いから明日陽が昇ってからまた来てくれよ。魔石は先に渡してもらえるかい?」

 これ以上身内の話を漏らしたくないのか、
 ネフィリアは強制的に話し合いを切り上げ、仕事を引き受ける事を前提に魔石を要求してきたが…。

「対価はどうしますか?」
「ん~、今は特に思い付かないねぇ~。
 ソニューザは何か対価に欲しい物ってあるかい?」
「え、俺? 仕事をするのはネフィリアなのだから俺は関係ないだろう?
 今は無いということなら貸しにすれば、って痛!何するんだネフィリア!痛いって!」

 ソニューザが尻に敷かれているのは確かなようで、
 尚且つ恋愛に積極的なのはネフィリアの方らしい。
 これからを考えて自分達の問題と考えるネフィリアとまだ意識が低いソニューザ。
 その2人のイチャイチャを今日友人になったばかりの俺に見せつけるとは…。
 田舎は羞恥心が低くていかんな。他所でやってくれんかな。

『ゴホンッ!ひとまず身内以外への仕事はずいぶん久しい。
 精霊使いもネフィリアの仕事に満足できるか判断出来ぬうちから対価の適正判断も出来ぬだろう。
 今回はサービスとして無理のない貸しにしておけば良かろう』
「爺様がそう言うならそれでいいよ。
 仕事も数日掛かるだろうし対価に関してもいろいろと考えておくよ。
 じゃあ、先に加工希望の魔石を渡してもらおうか」
「どうぞ」

 アンバードラゴンラーツァグリアニスが進行役を買って出てくれた為流れで仕事を請け負ってもらえた。
 無理の無い範囲での要求って何を言われるかわかったもんじゃないけど、
 魔石が今後どのような加工が出来るのかによって俺の中で応えられる要求の許容も増えるだろう。
 腰の特製ベルトから青竜の魔石(俺専用)を外して差し出された彼女の手の上にドンと置く。

「うっわ……。
 何コレ、見たことも無い濃度の魔石だね……」
「これ以上は青竜でも濃度を上げることが出来ないそうなので、
 籠手とか軽装に加工出来れば助かります。もちろん現在の魔石の効果を引き継ぐことは大前提ですが」

 魔石を使った魔力増幅は内部で反復することで増幅に繋がっていた。
 俺の中では一塊だからこそと考えているけれど加工してもその増幅効果が継続出来るなら、
 持ち運びに不便な大きさの魔石から卒業出来るうえに戦闘の動きも軽くなるはずだ。

「あぁ、まぁ加工可能なリストは明日までに用意しておくよ。
 ソニューザは明日どうするんだい?」
宗八そうはちは俺の客の扱いだしな。俺もまた来るよ」
「わかったよ」

 イチャイチャが始まる前にさっさと退散しよう。
 2人と別れて家の外に出るとトーヴィルはすでに周囲の調査を終えて戻っていた。
 どうやら俺たちの話し合いに入る事も出来ず外で待機していたらしい。

「竜が起きていた様だな」
「初めて喋ったからどう対応すべきかずっと迷いながら話していたから疲れたよ…」
「俺はイチャイチャを見せつけられて疲れたよ」

 いつもは彼があのイチャイチャを目の前で見せつけられる役割だったからこそ、
 トーヴィルは俺の意見に激しく同意してくれた。
 村に戻るついでに剣聖けんせいの事もあるし、
 ソニューザ達にはもうひと仕事疲れてもらう事になりそうだ。すまんな。
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