特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重

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閑話休題 -次に向けての準備期間-

閑話休題 -46話-[ドーモ。ドワーフ=サン。③]

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 土精ウォルベズの案内に従って岩だの穴だのを避けて進んでいくと、
 迂回せざるを得ない大岩の向こう側に煙が上がっているのが見えた。

「ドワーフの里が近いけど、ウォルベズも交流は無いんだよな?」
『竜を探すことを優先したから交流は無い。
 地形を把握してすぐに王に報告したら岩に擬態して待機していた』
「先を見てくるのだー!」

 ドワーフとはいえこの世界の言語は統一されていると聞いたから、
 いくら人里離れた竜の島出身者でも言葉は通じると願いたい。
 まぁブルー・ドラゴンフリューネでも同じ言語だったんだし大丈夫かな。

 しかし、さっそく問題が起こったようだ。

 先を見てくると村へ先行していたタルテューフォがドタドタと勢いよく戻って来た。
 若干殺気が漏れているのか、迫力が[ヤマノサチ]のそれになっているから何かあったのだろう。

「にーにぃ!あいつら何か失礼だったぞっ!
 タルのこと指差して魔物だ魔物だって!殺していいっ!?」
「馬鹿たれ、とりあえず落ち着いて話をしろ。
 あんまり殺気立つな、余計なすれ違いが起こる元だぞ」
「むぅー!!わかったっ!!」

 わかってない迫力の言葉と声量。
 とりあえず落ち着かせる為に頬を挟んでムニムニマッサージで解してやり、
 猫っ可愛がりの様に頭をわしゃわしゃ撫で繰り回してやればボルテージも下がって来た。

「おら、何があったか話してみろ」

 村の方も騒ぎが広がったのか耳を澄ませばザワツキがここまで伝わってくる。
 あっちが攻勢に出てこちらに来る可能性もあるし先に事情を確認しないと。

「タルが村に着いたらすぐに近くに居た女が騒ぎ出して、
 大勢が家から出てきて「獣人?何故この村に……」とか聞こえたから元の姿に戻って見せたら、
 魔物だ!魔物だ!ヤマノサチだぞ!って言い始めて「精霊使いの悪夢が終わっていないのにさらに問題が……」って」
「精霊使い? 俺以外の精霊使いがここに先に辿り着いていたのか?
 いや、でも悪夢とか言われてるから友好的な話じゃないか……」
「あとは「1匹なら殺してしまおう」「やろうやろう!」って流れて行って、
 ずっと酷い言葉をみんなに言われたっ!ねぇ!殺していいっ!?」
「すぐ殺そうとするのはダメだぞ。
 事情を聴いて敵対するかどうか判断する為に俺と一緒に村に行こう。
 ストレス発散なら後で付き合ってやるから今は一旦我慢してくれ」
「うぅ~~~~~!!!!」

 ガシッ!!!ギュ~~~~~ッ!!!
 と悔しさを飲み込もうと頑張ってくれるタルを抱き締めながら頭も撫でる。
 これだけで俺のHPが徐々に減っているのが聖獣[ヤマノサチ]のポテンシャルの恐ろしさよ。

「ウォルベズはドワーフが精霊使いを敵視しているって知っていたか?」
『知っていれば伝えていた。
 その精霊使いについても知らないがいくつか潜伏先に使われそうな洞窟は教えられる』
「状況次第では調べるからあとで教えてくれ」

 あとはうちの娘たちもだな。
 あんまり知らない土地で離れたくはないのだけれどここはウォルベズも居るし頼ろう。

「無精以外の精霊は居ない方が話が円滑に出来そうだから、
 ノイはフラムとベルを頼むな」
『わかったです』
「ウォルベズも悪いけどこいつらを頼むな」
『了解だ』

 子供たち全員の頭を撫でてからウォルベズに護衛を頼む。
 ずっと追っていた俺以外に確認されている精霊使いの足取りがずっと辿れなかったのはこんなところに引き籠っていたからだろうか?
 それにしては問題を起こしてドワーフを警戒させている様だしどういう人物なんだか。

「フリューネは俺と一緒に行こう。
 タルを魔物と言ったならお前も勘違いしてもらえるかもしれない。
 精霊使いとしてではなく魔物使いとして話をしてみる」
宗八そうはちと離されないならペットの役でもやってあげるよ』
「ワイバーンとかに変化は出来ないか?
 出来る出来ないに関わらず喋るのは無しでな」
『似た姿には出来るけど完全じゃないね。
 それに大きさもそれなりに大きくなっちゃうよ?』
「すまんが変化を頼む。今のままじゃ風格があり過ぎだ」

 俺の言葉選びが気に入ったのかフリューネは上機嫌で身体の構造を組み替えていく。
 今までは俺の肩上に手を置き、
 脚を股関節に引っ掛け尻尾を身体に巻き付けてバランスが取れる程度の大きさだった。
 だいたい大きめのグリーンイグアナ位。

 それがファンタジー世界でよく見る、人より大きい程度の翼竜になった。
 背にあった翼が腕と融合し、
 なるほど確かにこれこそがワイバーン。この世界のワイバーンなんだろう。
 翼を畳んで四足歩行で寄って来るその姿は、
 元の世界の映画で観た小型の肉食翼竜に酷似していた。

『どうだい?』
「うん、小物感が増したな。
 これなら自分らの近くに住む地竜の関係者とは思わないだろう」

 流石に俺の背中に張り付くには腕部分の爪がデカく鋭く肩を掴むには適していなかったので、
 俺の後を追って付いてきてもらう事にした。
 翼の構造上、前腕は親指だけで支えているだろうに軽快な走りを楽しむ余裕があるらしい。

「じゃあ行ってくる」
『マスター、気を付けるですよ』
『『いってらっしゃい』』
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