特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重

文字の大きさ
上 下
240 / 412
閑話休題 -次に向けての準備期間-

閑話休題 -44話-[ドーモ。ドワーフ=サン。①]

しおりを挟む
「そろそろ行くわ」
「気を付けて行ってくださいね」

 アーグエングリン王都への進行度が目途の立つ村まで進んだことで、
 ひとまず土精王ティターンの協力もあって土の国の竜の元へ向かう事とした。
 昨日はぐっすり眠ったし、
 もし戦闘があったとしても元気モリモリで対応も出来る。

 連れて行くメンバーは。
 無精アニマ、土精ノイティミル、火精フラムキエ、光精ベルトロープ、聖獣タルテューフォ、青竜ブルー・ドラゴンフリューアネイシア。
 なんじゃこのメンバーは!意味わからん豪華さ何なん!?

「地属性の竜を相手にするってことで関係する奴を中心に編成したけど、大丈夫か?」
『タルテューフォの世話をボクだけに任せないでくれるならいいと思うです』
「にーにぃ達の言う事はちゃんと聞くんだよ?」

 暴走さえしなければそれでえぇ。
 スキル[猪突猛進]とは。
【効果】戦闘種族としての血が目覚め敵しか見えなくなる。
 STR・VIT・AGIがUP(大)、INT・MEN・DEXがDOWN(大)。
 戦闘中に低確率で自動発動する。

 簡単に言えば狂戦士バーサーカー状態になるわけだが……。
 細かな事を気にしなくなるので集団戦闘になると仲間も攻撃に巻き込みかねないのだ。
 ノイとシンクロ出来るようになればその辺りは多少マシになるのか今から不安だが、
 素のステータスが聖獣と言われるだけあって高いしなんとか運用していきたいところ。

『僕は敵意が無いって示すために小さくなっておくよ』
「最近元の大きさに戻っている所を見ないんだが?
 魔石は本当に出来てるんだろうな?」
『そこは任せてよ。
 最近小さいのはクーデルカの影の中に避難しているからだし~。
 大きいままだと入れないんだから仕方ないでしょ?』

 俺がフォレストトーレから離れてからというもの、
 ブルー・ドラゴンフリューネフロスト・ドラゴンエルレイニアは竜の誇りを忘れたかの様に[影別荘シャドーモーテル]に引き籠って眠り続けていた。
 フリューネには俺用の竜の魔石をさらにバージョンアップしてもらうという仕事があったが、
 エルレイニアは出会ったときの真面目さはどこへ消えたのか惰眠を貪る魔力貯蔵庫と化していた。

 今回の最終目的は、
 地竜の協力を得て土属性の魔石を精製してもらうことと、
 近くに住むらしいドワーフ達の力を借りてブルー・ドラゴンフリューネが精製したう〇こ…。
 もとい。竜の魔石を籠手ガントレット脚甲グリーブに加工してもらう事の2つ。

「助けが必要ならすぐに行きますから、
 隊長たちだけで無理はしないでくださいよ!
 悲しむのは子供たちと姫様なんだから!」
「マリエルに言われるまでも無いって…。
 報告を受けた段階では何も起こってないらしいけど、
 今から一旦顔を出すしその時に状況に変化はないか聞いておくよ」
「絶対ですよ!」

 マリエルにここまで注意される無茶を俺はしただろうか?
 記憶にないけど念押しされたし気を付けておこう。
 よしよし。

「頭撫でるなぁ!」

 年頃の娘は難しいな。
 ここの戦闘も順調にいけば1カ月程度で状況は落ち着くらしいし、
 この休暇の間に出来ることを進めて全員動けるようになったらアーグエングリンから進んでみるかな。

「アルシェ、じゃあ。行ってきます」
「はい。行ってらっしゃい、お兄さん」


 * * * * *
 フォレストトーレでアルシェ達と分かれてゲートで移動した先は真っ暗な洞窟。
 最深部まで進めば土精王ティターン様が鎮座ましましているわけだが。暗い。

『《ライトボール》』
「ありがとう、ベル」

 ノイはオプション[聖壁の欠片モノリス]を召喚してその上に座って空中を移動し、
 ベルはノイのご相伴に預かり[聖壁の欠片モノリス]の1枚に同じく座っている。
 フラムは剣の姿で俺の腰に差さっていて、
 フリューネはいつも通り俺の肩に乗っかって猫みたいだ。
 タルは不安そうに俺の服を掴んでキョロキョロしているのがなんか面白い。

 聖獣とはいえまだ子供だしな。
 撫で易い位置にある頭を撫でてやればキョロキョロもしなくなった。

「タルにとってはどっちが上とか下とかは無いと思うけど、
 今から会う方は精霊の王様だから態度には気を付けろよ」
「よくわからないんだよ。
 どういう風にすればいいのだ?」
「群れのリーダーは偉いだろ? タルで言うならとと様になるけど、
 他の動物がとと様を馬鹿にしたり偉そうな態度で接したらどう思う?」
「殺ス」

 野生動物は短絡的やな。
 聖獣とは言え所詮は畜生か。

「そういう気持ちになるなら、
 タルが精霊の王様に失礼な態度を取ったら精霊も嫌な気持ちになるから気を付けろって言ってんの。
 わかるか?」
「なんとなく……他の群れの王だからそれなりの扱いをしろって事なのだ?」
「まぁそういうこと。
 思ったままを口にしたりすると文化の違いで失礼だったりするから勉強中のうちは俺より先に喋るなよ」
「わかったんだよ」

 聖獣の里の文化しか知らないタルテューフォは人の世界の文化を勉強中だ。
 魔力付与ギフトでINTが上がったとはいえ、
 人と獣を同じ定規で測っていい物かわからんしまだまだ様子見。

「関係なさそうな顔してるけど、一応お前もだぞ」
『わかってるよ。僕が何か自主的に問題を起こしたことがある?』

 それが無いんだよな。
 惰眠を貪ってばかりで動かないという欠点だけでそもそも戦闘に参加する契約でも無い。
 クーやメリーからも掃除の邪魔になるという報告だけで問題は起こしていない。
 まぁ一応ね。一応言うだけ言っておけば失言の直前に俺の言葉を思い出して留まってくれるかもって期待だけしておこう。

 知能と戦闘力だけは高いわけだし。

『よく来たな、水無月宗八みなづきそうはち
 本日の訪問理由は例の件でいいのか?』
「ご推察の通りです。
 ようやく時間が取れましたのでお願いをしたのは私からであるのにお待たせしまして申し訳ありませんでした」
『眷族を救ってくれた礼に調べさせただからそのように身を縮める必要はない。
 ノイティミルも息災であるようだな。
 流れは聞いているからすぐに出発できるだろうが、後ろの新顔を紹介してもらえるか?』
「喜んでご紹介いたします」

 軽めのご挨拶を挟み紹介の流れを取って下さった好意に甘え、
 タルとベルとフラムとフリューネの4人を順繰り紹介していく。

「まず聖獣[ヤマノサチ]であるタルテューフォ。
 いずれノイのサブマスターを視野に入れて預かっている仲間です」
「タルテューフォ、だよ。よろしくおねがい、だぞ」
『うむ、よろしく』

 多少言葉がおかしいけど気にしないで進めよう。

「続いて光精のベルトロープと火精のフラムキエ。
 私の契約精霊の中では末っ子になりますのでノイの妹ということにもなります」
『『よろしくお願いします!』』
『ノイの妹分か。姉を存分に頼ると良い』

 自分とこの眷族では無いとはいえ幼い精霊を見て微笑んでくれる王様。
 マジ良い人だよ。光精王とは比べらんねぇ。

「最後に青竜ブルー・ドラゴンのフリューアネイシア。
 私の守護対象になります」
『お初にお目に掛かる土精王。
 水精王の地に住む竜の長をしているフリューアネイシアだ』
『こちらこそ、お初にお目に掛かる。
 土精の長をしているティターンと言う。ノイ共々、土精を保護した際は良しなに頼む』

 小さいながら偉そうであり威厳があるフリューネの挨拶にティターン様もそれなりに返礼している。
 それぞれが群れの長だからか微笑み合って挨拶は終わった。

『さっそく彼の地に居る眷族を呼び出そう』
「お願いします」

『《召喚サモン!!》』

 土精王ティターン様の呼び掛けに従い、
 俺と王様の間に1人の土精が出現した。
 すぐに王様に跪いたけれど体の大きさも表面にしても人間から少し離れている様だ。

『改めて役目を果たしてくれて感謝するぞ、ウォルベズ』
『勿体ない言葉です、我が王』
『先に伝えていた通り依頼人の精霊使いとノイティミルが後ろの面々となる。
 これからあちらに着いたらサポートを頼むぞ』
『かしこまりました』

 王への返事を終えて立ち上がったウォルベズだが、
 やはり人の中に紛れるには難のある姿をしている。
 身長は3mを少々超えているし、
 振り返って正面から見据えても全体的に岩という印象が強すぎる。

『俺の名はウォルベズ。我らが眷族を救った件、俺からも感謝を。
 これから向こうでお前たちの目的を達するまで支援させていただく』
「よろしくお願いします、ウォルベズさん」
『さんはいらない。自分で言うのも恥ずかしいが、短い間でも仲間だと思って欲しい』

 感謝の言葉に偽りはないらしい。
 振り返ってうちの面々を見渡しても敵意は何も感じない。
 それに純朴な一面もある様だ。

「わかった、これからよろしく。ウォルベズ。
 さっそく流れを説明しながら魔法を施すから少ししゃがんで背を向けてくれるか?」
『わかった』

 しゃがむだけでズシーンと音がする程に彼は重量があるのは確かだな。
 ゴーレムと言われればそうなのかもしれない見た目だが、
 動きが体の重さを感じさせないほどに自然に見える点でも単純な話ではnないのだろうか?

 どうせだし好奇心に任せて、
 背に鳥居を描きながら質問してみよう。

「ウォルベズの位階を教えてもらえるだろうか」
『俺はラクスアースマンという位階で、まぁ上の下だ。
 見ての通り頑丈な体を持ちつつ岩に擬態も出来るし素早く動いて攻守どちらも役立てる遊撃となる』
「じゃあ魔法戦より接近戦が得意なのか」
『流石、噂に違わぬ精霊使いだ。精霊をよくわかっている』
「いやいや、うちに遊撃でポシェントって水精が居て、
 そいつが接近戦が得意だから当たっただけだし。ほい、終わり」

 大きい背中にデカデカと鳥居を描いて質問も終わった。
 ラクスが上位階なら下位階にアースマンってのが居そうだなぁ。

『他属性とはいえ気が合いそうだ。
 いずれ手を合わせてみたいものだな』
「流石遊撃、血の気が似た者同士だわ。
 では、ティターン様。ウォルベズをあちらに戻してください。
 すぐにゲートを繋げて合流致します」
『うむ。ウォルベズよ、しかと励んで来い』
『はい、身を粉にして支援いたします』

 言葉を交わすとウォルベズの巨体が一瞬で消え去った。
 召喚サモンを切って向こうに戻ったことを確認できたので、
 俺たちもあちらに移動を始めるとしようか。

「短い時間でしたがお邪魔しました。行って参ります」
水無月宗八みなづきそうはちと仲間たち、そしてノイティミル。
 上手く事が運ぶことを遠いこの地より願って居る』

『《解錠アンロック!》』

 開いた先の空間はこの辺りよりも人気の無い荒野。
 さらに砂嵐が激しく吹き荒ぶ土地の様だ。
 氷龍の島も吹雪いていたし、竜の巣ってどこも環境が厳しいのかもしれないと気を引き締めながら俺はゲートを潜り抜けた。
しおりを挟む
感想 72

あなたにおすすめの小説

契約結婚のはずが、気づけば王族すら跪いていました

言諮 アイ
ファンタジー
――名ばかりの妻のはずだった。 貧乏貴族の娘であるリリアは、家の借金を返すため、冷酷と名高い辺境伯アレクシスと契約結婚を結ぶことに。 「ただの形式だけの結婚だ。お互い干渉せず、適当にやってくれ」 それが彼の第一声だった。愛の欠片もない契約。そう、リリアはただの「飾り」のはずだった。 だが、彼女には誰もが知らぬ “ある力” があった。 それは、神代より伝わる失われた魔法【王威の審判】。 それは“本来、王にのみ宿る力”であり、王族すら彼女の前に跪く絶対的な力――。 気づけばリリアは貴族社会を塗り替え、辺境伯すら翻弄し、王すら頭を垂れる存在へ。 「これは……一体どういうことだ?」 「さあ? ただの契約結婚のはずでしたけど?」 いつしか契約は意味を失い、冷酷な辺境伯は彼女を「真の妻」として求め始める。 ――これは、一人の少女が世界を変え、気づけばすべてを手に入れていた物語。

姉から奪うことしかできない妹は、ザマァされました

饕餮
ファンタジー
わたくしは、オフィリア。ジョンパルト伯爵家の長女です。 わたくしには双子の妹がいるのですが、使用人を含めた全員が妹を溺愛するあまり、我儘に育ちました。 しかもわたくしと色違いのものを両親から与えられているにもかかわらず、なぜかわたくしのものを欲しがるのです。 末っ子故に甘やかされ、泣いて喚いて駄々をこね、暴れるという貴族女性としてはあるまじき行為をずっとしてきたからなのか、手に入らないものはないと考えているようです。 そんなあざといどころかあさましい性根を持つ妹ですから、いつの間にか両親も兄も、使用人たちですらも絆されてしまい、たとえ嘘であったとしても妹の言葉を鵜呑みにするようになってしまいました。 それから数年が経ち、学園に入学できる年齢になりました。が、そこで兄と妹は―― n番煎じのよくある妹が姉からものを奪うことしかしない系の話です。 全15話。 ※カクヨムでも公開しています

前世は最強の宝の持ち腐れ!?二度目の人生は創造神が書き換えた神級スキルで気ままに冒険者します!!

yoshikazu
ファンタジー
主人公クレイは幼い頃に両親を盗賊に殺され物心付いた時には孤児院にいた。このライリー孤児院は子供達に客の依頼仕事をさせ手間賃を稼ぐ商売を生業にしていた。しかしクレイは仕事も遅く何をやっても上手く出来なかった。そしてある日の夜、無実の罪で雪が積もる極寒の夜へと放り出されてしまう。そしてクレイは極寒の中一人寂しく路地裏で生涯を閉じた。 だがクレイの中には創造神アルフェリアが創造した神の称号とスキルが眠っていた。しかし創造神アルフェリアの手違いで神のスキルが使いたくても使えなかったのだ。  創造神アルフェリアはクレイの魂を呼び寄せお詫びに神の称号とスキルを書き換える。それは経験したスキルを自分のものに出来るものであった。  そしてクレイは元居た世界に転生しゼノアとして二度目の人生を始める。ここから前世での惨めな人生を振り払うように神級スキルを引っ提げて冒険者として突き進む少年ゼノアの物語が始まる。

転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ

karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。 しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。

初めての異世界転生

藤井 サトル
ファンタジー
その日、幸村 大地(ゆきむら だいち)は女神に選ばれた。 女神とのやり取りの末、大地は女神の手によって異世界へと転生する。その身には女神にいくつもの能力を授かって。 まさにファンタジーの世界へ来た大地は聖女を始めにいろんな人に出会い、出会い金を稼いだり、稼いだ金が直ぐに消えたり、路上で寝たり、チート能力を振るったりと、たぶん楽しく世界を謳歌する。 このお話は【転生者】大地と【聖女】リリア。そこに女神成分をひとつまみが合わさった異世界騒動物語である。

善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です

しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください

シンさん
ファンタジー
サナス伯爵の娘、ニーナは隣国のアルデーテ王国の王太子との婚約が決まる。 国に行ったはいいけど、王都から程遠い別邸に放置され、1度も会いに来る事はない。 溺愛する女性がいるとの噂も! それって最高!好きでもない男の子供をつくらなくていいかもしれないし。 それに私は、最初から別居して楽しく暮らしたかったんだから! そんな別居願望たっぷりの伯爵令嬢と王子の恋愛ストーリー 最後まで書きあがっていますので、随時更新します。 表紙はエブリスタでBeeさんに描いて頂きました!綺麗なイラストが沢山ございます。リンク貼らせていただきました。

処理中です...