上 下
235 / 408
閑話休題 -次に向けての準備期間-

閑話休題 -39話-[アーグエングリン王都への道中]

しおりを挟む
侍女調査隊のメンバーを紹介されてさらに数日が経った。
土の国は他の国に比べて広大な土地を持っているけど、
資源の面を見るとそこまで豊富ではないらしい。

湖で魚は取れても稚魚の放流や養殖をしないと全滅は必然。
野菜も渇きがちの土地に合う種類が少なくて多くは輸入に頼る始末。
面している海も魔物が強く流れも速いとダメ押しを食らっていて、
鉱山を量産し稼いだお金が食費に消費される悪循環をどうにかしようと毎年足掻いているとの事。

「水源があるなら河を作ったり出来ないのかな?」
『日照りの時間が長く気温も高め、雨も少ないと来る土地ですよ。
すぐに干上がって使い物にならないんですよ。
せいぜいが湖の水源を守る事しか手立てがないのでしょう』

森が無いわけでは無い。
アーグエングリンの王都へ進む道中、
木陰で休憩する間の雑談相手は胡坐の中央に鎮座する無精王アニマ。

「町や村にも畑はあったしちゃんと広い範囲で作ってたのに野菜が大きくなかったなぁ…。
堆肥とか作ってないのかもしれない」
『教えないんですか?』
「作り方を知らないわけじゃないけど、
大雑把に覚えているから正しいやり方かわかんないんだよ。
もし間違って野菜が腐ったりでもしたら大打撃だろうし」
『それはそうでしょうけど……』

基本はうん〇を放置して堆肥にすると思う。
ゲームでも簡単にう〇こから堆肥が作られていたし。
ただ、畑に骨を撒くとか、窒素が大事とか、土には酸性とアルカリ性があるとか、
そういう情報も頭に残っているから下手に口出しも出来ない。
そもそもアーグエングリンの国民から見れば俺はただの冒険者だし、
よそ者が勝手に口出すってあまりよろしい結果に繋がるとは思えん。

DASH村ちゃんと観てればよかった…。

「その辺りはタラスク将軍を窓口になんとか伝えて実験をしてもらうのがベストだろう」
『いつになるやら、ですね』

あ、思い出したけど窒素に関してなら雷を畑に落とせば良かったな。
確かお米が美味しい土地は雷が多いらしいし、
聞いた話じゃ、漢字や言葉の成り立ちもは稲の妻と書いて「稲妻」。
雨に田んぼと書いて「雷」と意味を考えればそれだけ畑には大事なんだとか。
雷くらいなら遠くから誰が犯人か分からない様に落とせたな……。

「次に畑に出会ったらやっとこ」
『やり過ぎると目立ちますから気を付けるのですよ』
「フォレストトーレで暴れすぎたしもう顔を隠す必要はないんだろうけど、
目立つのはまた別問題だしな。気を付けるよ」

破滅の調査上どういう危険があるかも不明だったから顔を隠す[精霊纏エレメンタライズ]を使用していたけど、
調査に動ける精霊使いが増えて来たし魔神族相手にあれだけのドンパチをやらかせば、
流石に顔を隠す必要も無くなる。
苛刻かこくのシュティーナに至っては絶対理解したうえで楽しむために、
イクダニム呼びを未だに続けている始末だしな。

「そろそろ移動を再開しよう。ほい、飴ちゃん」
『あーん』
「ベル!フラム!お前たちもこれ食べたら出発するぞ!」
『『はーい!』』

少し離れた先にある開けた場所で遊んでいた末っ子共にも立ち上がりながら声を掛ける。
遊びとはいえ、フラムが撃ったヴァーンレイドをベルが反射を付与した互いの掌で打ち返してラリーを続ける訓練でもあったわけだけど、
かなりの時間遊び続けられるようになっているな。

それにしてもアニマは無意識の様だがしっかりと着実に絆されているな。
以前なら拒否していたであろうお菓子も嬉しそうにひな鳥のように口を開けて放り込まれるのを待つだなんて。
でも、そんな感情をおくびにも出さずにやり過ごすよ。
ハッ!と気付いてツンされるのも父としては悲しいからね。

『『あーん♪』』
「ほい、ほい」

俺も好きだが子供たちも好きだし、
知らぬ間に勝手に減っているからアルシェかマリエルもつまんでいる可能性も……。
まぁ、カランコロンと飴を転がしながらはしゃいでいる子供たちを見るのも癒されるし、
今後の消費量を考えてまた買い足しておくか。
しおりを挟む
感想 69

あなたにおすすめの小説

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

離縁してくださいと言ったら、大騒ぎになったのですが?

ネコ
恋愛
子爵令嬢レイラは北の領主グレアムと政略結婚をするも、彼が愛しているのは幼い頃から世話してきた従姉妹らしい。夫婦生活らしい交流すらなく、仕事と家事を押し付けられるばかり。ある日、従姉妹とグレアムの微妙な関係を目撃し、全てを諦める。

異世界に召喚されたけど、聖女じゃないから用はない? それじゃあ、好き勝手させてもらいます!

明衣令央
ファンタジー
 糸井織絵は、ある日、オブルリヒト王国が行った聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界ルリアルークへと飛ばされてしまう。  一緒に召喚された、若く美しい女が聖女――織絵は召喚の儀に巻き込まれた年増の豚女として不遇な扱いを受けたが、元スマホケースのハリネズミのぬいぐるみであるサーチートと共に、オブルリヒト王女ユリアナに保護され、聖女の力を開花させる。  だが、オブルリヒト王国の王子ジュニアスは、追い出した織絵にも聖女の可能性があるとして、織絵を連れ戻しに来た。  そして、異世界転移状態から正式に異世界転生した織絵は、若く美しい姿へと生まれ変わる。  この物語は、聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界転移後、新たに転生した一人の元おばさんの聖女が、相棒の元スマホケースのハリネズミと楽しく無双していく、恋と冒険の物語。 2022.9.7 話が少し進みましたので、内容紹介を変更しました。その都度変更していきます。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

魔女、子供を拾う。そして育てる。

紫月 由良
ファンタジー
陥落した城で、魔女は子供を拾う。 雑用など色々と役に立つだろうといった思惑を持って。 でも家に連れ帰ると……。 自分が思っている以上に優しく母性溢れる魔女と、今まで碌な扱いをされてこなかった子供たちの物語。 エブリスタに投稿したものを加筆しています。

初めての異世界転生

藤井 サトル
ファンタジー
その日、幸村 大地(ゆきむら だいち)は女神に選ばれた。 女神とのやり取りの末、大地は女神の手によって異世界へと転生する。その身には女神にいくつもの能力を授かって。 まさにファンタジーの世界へ来た大地は聖女を始めにいろんな人に出会い、出会い金を稼いだり、稼いだ金が直ぐに消えたり、路上で寝たり、チート能力を振るったりと、たぶん楽しく世界を謳歌する。 このお話は【転生者】大地と【聖女】リリア。そこに女神成分をひとつまみが合わさった異世界騒動物語である。

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

悪夢はイブに溺れる

熾音
ファンタジー
✿クーデレ中佐×クール女子のやや天然の二人が周りにヤキモキされながら紡ぐ異世界ファンタジー✿ 仕事帰りの終電でうたた寝をしたら、理力と呼ばれる魔法に満ちた謎の世界に異世界転移していた社会人1年生の水原唯舞。 状況が分からないそんな彼女を保護したのは帝国軍に所属するという”アルプトラオム”という特殊師団の軍人達でした。 お茶目で飄々とした大佐、冷酷無慈悲なクールな中佐、明るく苦労性な管理官など、一癖も二癖も三癖もあるメンバーに囲まれ、見知らぬ世界で生活することになった唯舞の運命は……?

処理中です...