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第12章 -廃都フォレストトーレ奪還作戦-
†第12章† -41話-[≪ランク8ダンジョン≫フォレストトーレ王城②]
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あれから危機は何度かあったもののなんとかここまで上がって来れた。
現在は8階を攻略中。というか、目の前には最上階へ続く階段。
「長くね?」
「長いわね…」
ヒューゴとフェリシアが愚痴る様に呟く言葉は、
俺たち全員の心の言葉だ。
天まで続くのでは思える階段の上の方に微かな青白い光が見えるので、
きっとあそこにダンジョンのボス、または隷霊のマグニが居ると予想できた。
「ダンジョンにしてはまぁ短い方だったが、
敵の厄介さが段違いで良い経験になったな」
「その言葉が言えるだけ、やはり修羅場の数が違うのでしょうね…」
「前哨戦に瘴気モンスター多数と戦っていなかったらこのダンジョン攻略も付いていけなかっただろう事が容易に想像できてしまうのが情けない所だわ」
クライヴさんはお歳の割にこの場で一番元気そうだ。
マクラインやミリエステの言うように、
渡ってきた修羅場の数から気持ちの持ち様など精神面でも鍛えられているのかな?
瘴気モンスターとの戦闘は厄介であり、
都度都度の対処で徐々に俺たちの精神力がガリガリと音を立てて明確に削れていた。
疲弊している。
その自覚がこの後に控える大立ち回りを不安にさせた。
〔失礼します、クレイグです。
外での状況進捗のご連絡ですので返事は結構です。
アスペラルダのアルカンシェ姫殿下の護衛を務める者がキュクレウス=ヌイの核を発見したそうです。
今後破壊方法の検討後に行動を移される予定でございます。以上、失礼いたしました〕
水無月さんは順調らしい。
外の情報はギルドを通してすべて受け取っているものの、
城中の自分たちも大変だが外は外で大変だという事が分かっているうえで水無月さんは順調なのだ。
というかクレイグさんも何故ちゃんと報告してくれないのか…。
水無月さんだけではなく、アルカンシェ姫やメイドさんも一緒に動いただろうに…。
『発破を掛ける意図かもしれませんよ。
メリオは精霊使いを意識していますからね』
「そんなに分かりやすいかな?」
『自覚は無いかもしれませんが、
普段から接している者からはバレバレでしょうね(笑)』
「水無月さんや姫様にも?」
『さあ? あまり評価を気にする方とは思いませんけれど、
実際の所は聞いてみないと…』
歳もあまり離れていない相手に意識をしているって…。
なんだか凄く恥ずかしくなってきた…。
『不安は紛れたようですね。
あの御仁が意図した結果かはわかりませんが、先ほどの心持ちよりはマシでしょう』
「紛れ過ぎも良くないし、今はここまでにしておこう。
皆、そろそろ階段を上りはじめよう」
剣との語らいはほどほどに切り上げて仲間たちに一言呼びかけて足を1段目に掛ける。
クライヴさんに続いて仲間たちも一応フォーメーションを守りつつ俺の後を追ってきた。
階段の両脇には城内の明かりとしても利用されているランプが並んでいて、
仲間の顔色も足元もしっかりと確認できた。
クライヴさんは自信もあって落ち着いている様に見えるけれど、
全身から憤りが漏れ出ている様にも感じる。
彼が隷霊のマグニとの戦いに参戦した理由を考えればそれも分からなくもない。
ヒューゴは普段荒い言葉遣いだけど出会った頃は本当に普通の青年だった。
この1年で自信も付いて時には噛みつく様になってしまったが、
逆に魔神族相手にどこまで食いつけるか……。
ミリエステとフェリシア。
同じ魔法使いだけど正反対と言える性格をしている二人だが、
なんだかんだぶつかっては仲直りしているコンビだけに互いのフォローは完璧だと思っている。
緊張の面持ちのミリエステに比べればフェリシアは余裕がありそうだ。
この正反対のコンビが魔神族を上手く回ってくれると戦闘も楽になるはずだ。
マクラインはいつも通りの表情であり雰囲気も変わらない。
旅を始めた当初から助けてもらい続けてきた俺だからこそ、
彼の存在が大きな助けになると確信している。
盾の守りが彼の役目であり強味ではあるが、
魔神族相手に特殊な効果もない盾がどこまで通用するものなのか……。
そして、エクスカリバーの半身である光精。契約精霊のエクス。
彼女との契約が無ければここまで進むことはおろか、
もっと手前の戦闘で俺たちは埋もれていただろう。
勇者としての役割は彼女と共に進む道だと信じて、
魔神族だろうと魔族だろうと敵として立ち塞がるなら文字通り切り開いていける。
「そろそろボス部屋だ。 そのまま突入するか?」
「俺は問題ないです」
背後を歩くクライヴさんの掛け声に俺は自分でも思った以上に自然な声音で問題ないと回答した。
その声には必要以上の緊張感は含まれておらず、
続く仲間の声にも影響したのか全員良い気の張り方をしている様子だ。
長い階段を上がりきると、
正面には霧の掛かる大扉が待ち構えていた。
ダンジョンには何度も挑戦してきたけれど、
ここは場所が場所だからか謁見の間に続く大扉の装飾が今まで見てきた中でも豪華な作りだ。
最後に振り返って全員の顔を順々に眺める。
全員理解をしているだろうか?
水無月さんはずいぶん前から気にしていた様だけど、
戦場によっては誰かが死ぬ可能性があって、ここはダンジョンの奥だから蘇生魔法が確実に間に合わない。
そして相手は初めての魔神族。
「どうした?」
「いや、なんでもない…。行こうか、みんな」
時を遡れるのであればこの時の俺に掴みかかりたい。
本当に理解をして魔神族と対峙するのか、と。
時はすでに過去となり、
俺は覚悟をしている気になって仲間を伴い霧の扉の向こう側へと足を踏み入れてしまった。
* * * * *
霧の扉を過ぎた先には予想通り謁見の間が広がっていた。
本来は兵士や近衛や側近が左右に並び、
中央の奥まった豪華な椅子には王様が深く座って我々との意見を交わす場だ。
「ごほっごほっ!」
「瘴気が濃くてクラクラしますね……」
今までのダンジョンの比ではない濃度の瘴気がこのフロアには漂っていた。
咳き込む仲間や瞬く間に瘴気のデバフに掛かる仲間を守るために魔法を唱える。
「サンクチュアリ!」
音もなく消えていた瘴気がジュゥジュゥとまるで熱と水が触れ合ったような音を立てて浄化されていく。
それでも奥から高濃度瘴気が際限なく溢れてくる事から、
ダンジョンの守護者か魔神族を討伐すれば止まるのだろう。
遠目でも誰かが王座に座り、
その左に誰かが控えており右には培養槽に似た何かがあるのはわかっていた。
進める足の速度は落ちず、
ようやっと魔神族とのまともな邂逅を俺は果たしたのであった。
「キヒヒッ!待ちくたびれたわ~!
勇者が飛び込んだって聞いていたって言うのになぁ~んでこんなに時間がかかったのかしらぁ~?!?!キヒッ!」
偉そうに足を組んだ黒い女が座っていた。
見た限りでは長身で顔は隈も酷く髪も乱れてとても女性としてみることは出来ない。
それでも男性にしては高めの声と前衛には見えない体躯からすれば、
きっと女性なのだろうと思わざるを得なかった。
そして、喋り始めた途端に発生したこの重圧……、こいつが黒幕だ!
「まぁ…まぁまぁまぁ……勇者が釣れたのは僥倖かしら?
この地での役割はほとんど終わっているわけだし、あとは邪魔をしてくれた奴を潰すだけぇ~。ケヘヘッ!
あれが貴方かはわからないけれどぉ~、ここで潰えてくれればきっといいことなのでしょうね~」
何を言っているのか1ミリも理解できない。
とにかくここで俺たちの全滅が魔神族サイドに取っては都合が良くて、
俺は知らぬうちに魔神族の思惑の邪魔をしていたという事だろうか?
それよりも瘴気に混ざって耐えがたい吐き気を催す臭気が先ほどから俺たちの鼻をくすぐる。
「おえっ!」
「メリオ、王座の隣の方から酷い匂いがしてるわ」
「……」
後ろから声を潜めたミリエステの言葉に鼻は反応する。
体の大きさから俺よりも若干若いかもしれない。
それにクライヴさんは逆の培養槽に浮かぶ壮年の男性に注がれている。
「知っている方ですか?」
「……国王だった男だ」
「!?」
水の色はわからないが、
周囲を漂う瘴気の濃さが影響して黒い水に閉じ込められている様にも映った男性が王様?
じゃあ、臭いのする方は弟王子かな?
「キヒヒヒヒ!あれこれ考えてる見たいだけれどぉ~、
そういうのはどぉ~でもいいのよねぇ~。
とっととどっちがダンジョンの守護者か倒して当ててもらおうかしら~!!」
ピシッ!ピシパシパシッ!パキキッ!
対話も少なく情報らしいものは何も引き出せぬまま培養液の詰まる水槽にヒビが広がっていく。
黒い水は魔神族の意思を受け取るかのように激しく動き、
水槽は撓みヒビの隙間から水が漏れ、やがて完全に決壊した。
「退けっ!」
クレイヴさんの声に反応してその場を飛び退けば、
黒い水が触れたサンクチュアリの上を浄化されながらも床を広がる黒い水がその目に映る。
あの水はどうやら気体の瘴気が集まり液化した物体の様だ。
そんなものに沈んでいた王様がまともなわけもない…か。
水から解放された王様の体躯が人間ではない物へと変わっていく。
膨れ上がる肉体からは上級の魔物と同じ気配を感じつつ仲間に声を張り上げた。
「戦闘用意!クレイヴさんは魔神族を!
マクライン、ヒューゴ、ミリエステは王様を!
俺とフェリシアは王子を早急に討伐せよっ!」
「「「「「応っ!!!」」」」」
現在は8階を攻略中。というか、目の前には最上階へ続く階段。
「長くね?」
「長いわね…」
ヒューゴとフェリシアが愚痴る様に呟く言葉は、
俺たち全員の心の言葉だ。
天まで続くのでは思える階段の上の方に微かな青白い光が見えるので、
きっとあそこにダンジョンのボス、または隷霊のマグニが居ると予想できた。
「ダンジョンにしてはまぁ短い方だったが、
敵の厄介さが段違いで良い経験になったな」
「その言葉が言えるだけ、やはり修羅場の数が違うのでしょうね…」
「前哨戦に瘴気モンスター多数と戦っていなかったらこのダンジョン攻略も付いていけなかっただろう事が容易に想像できてしまうのが情けない所だわ」
クライヴさんはお歳の割にこの場で一番元気そうだ。
マクラインやミリエステの言うように、
渡ってきた修羅場の数から気持ちの持ち様など精神面でも鍛えられているのかな?
瘴気モンスターとの戦闘は厄介であり、
都度都度の対処で徐々に俺たちの精神力がガリガリと音を立てて明確に削れていた。
疲弊している。
その自覚がこの後に控える大立ち回りを不安にさせた。
〔失礼します、クレイグです。
外での状況進捗のご連絡ですので返事は結構です。
アスペラルダのアルカンシェ姫殿下の護衛を務める者がキュクレウス=ヌイの核を発見したそうです。
今後破壊方法の検討後に行動を移される予定でございます。以上、失礼いたしました〕
水無月さんは順調らしい。
外の情報はギルドを通してすべて受け取っているものの、
城中の自分たちも大変だが外は外で大変だという事が分かっているうえで水無月さんは順調なのだ。
というかクレイグさんも何故ちゃんと報告してくれないのか…。
水無月さんだけではなく、アルカンシェ姫やメイドさんも一緒に動いただろうに…。
『発破を掛ける意図かもしれませんよ。
メリオは精霊使いを意識していますからね』
「そんなに分かりやすいかな?」
『自覚は無いかもしれませんが、
普段から接している者からはバレバレでしょうね(笑)』
「水無月さんや姫様にも?」
『さあ? あまり評価を気にする方とは思いませんけれど、
実際の所は聞いてみないと…』
歳もあまり離れていない相手に意識をしているって…。
なんだか凄く恥ずかしくなってきた…。
『不安は紛れたようですね。
あの御仁が意図した結果かはわかりませんが、先ほどの心持ちよりはマシでしょう』
「紛れ過ぎも良くないし、今はここまでにしておこう。
皆、そろそろ階段を上りはじめよう」
剣との語らいはほどほどに切り上げて仲間たちに一言呼びかけて足を1段目に掛ける。
クライヴさんに続いて仲間たちも一応フォーメーションを守りつつ俺の後を追ってきた。
階段の両脇には城内の明かりとしても利用されているランプが並んでいて、
仲間の顔色も足元もしっかりと確認できた。
クライヴさんは自信もあって落ち着いている様に見えるけれど、
全身から憤りが漏れ出ている様にも感じる。
彼が隷霊のマグニとの戦いに参戦した理由を考えればそれも分からなくもない。
ヒューゴは普段荒い言葉遣いだけど出会った頃は本当に普通の青年だった。
この1年で自信も付いて時には噛みつく様になってしまったが、
逆に魔神族相手にどこまで食いつけるか……。
ミリエステとフェリシア。
同じ魔法使いだけど正反対と言える性格をしている二人だが、
なんだかんだぶつかっては仲直りしているコンビだけに互いのフォローは完璧だと思っている。
緊張の面持ちのミリエステに比べればフェリシアは余裕がありそうだ。
この正反対のコンビが魔神族を上手く回ってくれると戦闘も楽になるはずだ。
マクラインはいつも通りの表情であり雰囲気も変わらない。
旅を始めた当初から助けてもらい続けてきた俺だからこそ、
彼の存在が大きな助けになると確信している。
盾の守りが彼の役目であり強味ではあるが、
魔神族相手に特殊な効果もない盾がどこまで通用するものなのか……。
そして、エクスカリバーの半身である光精。契約精霊のエクス。
彼女との契約が無ければここまで進むことはおろか、
もっと手前の戦闘で俺たちは埋もれていただろう。
勇者としての役割は彼女と共に進む道だと信じて、
魔神族だろうと魔族だろうと敵として立ち塞がるなら文字通り切り開いていける。
「そろそろボス部屋だ。 そのまま突入するか?」
「俺は問題ないです」
背後を歩くクライヴさんの掛け声に俺は自分でも思った以上に自然な声音で問題ないと回答した。
その声には必要以上の緊張感は含まれておらず、
続く仲間の声にも影響したのか全員良い気の張り方をしている様子だ。
長い階段を上がりきると、
正面には霧の掛かる大扉が待ち構えていた。
ダンジョンには何度も挑戦してきたけれど、
ここは場所が場所だからか謁見の間に続く大扉の装飾が今まで見てきた中でも豪華な作りだ。
最後に振り返って全員の顔を順々に眺める。
全員理解をしているだろうか?
水無月さんはずいぶん前から気にしていた様だけど、
戦場によっては誰かが死ぬ可能性があって、ここはダンジョンの奥だから蘇生魔法が確実に間に合わない。
そして相手は初めての魔神族。
「どうした?」
「いや、なんでもない…。行こうか、みんな」
時を遡れるのであればこの時の俺に掴みかかりたい。
本当に理解をして魔神族と対峙するのか、と。
時はすでに過去となり、
俺は覚悟をしている気になって仲間を伴い霧の扉の向こう側へと足を踏み入れてしまった。
* * * * *
霧の扉を過ぎた先には予想通り謁見の間が広がっていた。
本来は兵士や近衛や側近が左右に並び、
中央の奥まった豪華な椅子には王様が深く座って我々との意見を交わす場だ。
「ごほっごほっ!」
「瘴気が濃くてクラクラしますね……」
今までのダンジョンの比ではない濃度の瘴気がこのフロアには漂っていた。
咳き込む仲間や瞬く間に瘴気のデバフに掛かる仲間を守るために魔法を唱える。
「サンクチュアリ!」
音もなく消えていた瘴気がジュゥジュゥとまるで熱と水が触れ合ったような音を立てて浄化されていく。
それでも奥から高濃度瘴気が際限なく溢れてくる事から、
ダンジョンの守護者か魔神族を討伐すれば止まるのだろう。
遠目でも誰かが王座に座り、
その左に誰かが控えており右には培養槽に似た何かがあるのはわかっていた。
進める足の速度は落ちず、
ようやっと魔神族とのまともな邂逅を俺は果たしたのであった。
「キヒヒッ!待ちくたびれたわ~!
勇者が飛び込んだって聞いていたって言うのになぁ~んでこんなに時間がかかったのかしらぁ~?!?!キヒッ!」
偉そうに足を組んだ黒い女が座っていた。
見た限りでは長身で顔は隈も酷く髪も乱れてとても女性としてみることは出来ない。
それでも男性にしては高めの声と前衛には見えない体躯からすれば、
きっと女性なのだろうと思わざるを得なかった。
そして、喋り始めた途端に発生したこの重圧……、こいつが黒幕だ!
「まぁ…まぁまぁまぁ……勇者が釣れたのは僥倖かしら?
この地での役割はほとんど終わっているわけだし、あとは邪魔をしてくれた奴を潰すだけぇ~。ケヘヘッ!
あれが貴方かはわからないけれどぉ~、ここで潰えてくれればきっといいことなのでしょうね~」
何を言っているのか1ミリも理解できない。
とにかくここで俺たちの全滅が魔神族サイドに取っては都合が良くて、
俺は知らぬうちに魔神族の思惑の邪魔をしていたという事だろうか?
それよりも瘴気に混ざって耐えがたい吐き気を催す臭気が先ほどから俺たちの鼻をくすぐる。
「おえっ!」
「メリオ、王座の隣の方から酷い匂いがしてるわ」
「……」
後ろから声を潜めたミリエステの言葉に鼻は反応する。
体の大きさから俺よりも若干若いかもしれない。
それにクライヴさんは逆の培養槽に浮かぶ壮年の男性に注がれている。
「知っている方ですか?」
「……国王だった男だ」
「!?」
水の色はわからないが、
周囲を漂う瘴気の濃さが影響して黒い水に閉じ込められている様にも映った男性が王様?
じゃあ、臭いのする方は弟王子かな?
「キヒヒヒヒ!あれこれ考えてる見たいだけれどぉ~、
そういうのはどぉ~でもいいのよねぇ~。
とっととどっちがダンジョンの守護者か倒して当ててもらおうかしら~!!」
ピシッ!ピシパシパシッ!パキキッ!
対話も少なく情報らしいものは何も引き出せぬまま培養液の詰まる水槽にヒビが広がっていく。
黒い水は魔神族の意思を受け取るかのように激しく動き、
水槽は撓みヒビの隙間から水が漏れ、やがて完全に決壊した。
「退けっ!」
クレイヴさんの声に反応してその場を飛び退けば、
黒い水が触れたサンクチュアリの上を浄化されながらも床を広がる黒い水がその目に映る。
あの水はどうやら気体の瘴気が集まり液化した物体の様だ。
そんなものに沈んでいた王様がまともなわけもない…か。
水から解放された王様の体躯が人間ではない物へと変わっていく。
膨れ上がる肉体からは上級の魔物と同じ気配を感じつつ仲間に声を張り上げた。
「戦闘用意!クレイヴさんは魔神族を!
マクライン、ヒューゴ、ミリエステは王様を!
俺とフェリシアは王子を早急に討伐せよっ!」
「「「「「応っ!!!」」」」」
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