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第12章 -廃都フォレストトーレ奪還作戦-
†第12章† -24話-[瘴気の魔石]
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「というわけで改めてご訪問する運びとなりました」
「なるほど。それはこちらとしても無視出来ませんね」
日中に続けての訪問に最初は戸惑っていたファグス将軍も、
私が訪れた理由を聞くと理解の色を示してくださりました。
「こちらも城下町の開放と共に、
火の国方面に残されたオベリスクの処理に入っています。
その状況で敵が突如沸くというのは流石に死人が多く出かねません。
土精パラディウム様に了承頂けるのであればすぐにでも動きたいのですが・・・」
『かまいません。
どこまで協力出来るかわかりませんが調査すべきなら動きましょう』
「ありがとうございます」
アーグエングリンの天幕にはノームの位階を持つ土精が残るとのことで、
防御面では居ないよりマシだとパラディウム様は言われていました。
なかなか下の位階には厳しい方ですね。
「今回は私もご一緒してもよろしいでしょうか?」
いざ出発しようとしたところで立ち上がり声を上げたのは、
アーグエングリンの司令官の立場であるファグス将軍でした。
「調査をして対処も考えるので、
問題が本当にあれば解決までの時間はわかりませんよ?
司令官が動いてよろしいのですか?」
「うちは瘴気の浄化が遅くて現状からの動きはほぼありません。
数時間程度なら同行しても大丈夫です」
「わかりました。
一応将軍とはいえ兵士は付けてくださいね」
「ご忠告痛み入ります」
他国の姫が同行者数名を伴っているのに、
他国の大将が1人だとちょっと色々ありますからね・・・。
別に敵対する訳ではありませんが、念のためにね。
城下町の入り口までぞろぞろと移動して来ました。
特にパラディウム様の反応に変化はありませんね。
「とりあえず、近くの既に捲れている場所で調査してみましょうか。
ゼノウ達は周囲の様子を見てきてください」
「了解」
「パラディウム様、縦穴はどの程度まで掘れますか?」
『必要であればどこまでも掘り続けることは出来ます。
私が穴に入った状態であればですが・・・』
う~ん、どうしましょうか。
土に混ざり物があると判断出来るのはおそらく土精である彼だけ。
そして穴も魔法で掘れるのも彼だけとなると、危険の一極化。
あまり選択したくないですね。
『我が身ならば気にしないでください。
この度の参戦はアスペラルダの皆様への感謝であり、
今回はノームを救ってくださった謝礼とでも思ってくださればいいかと』
「助かります。
ですが、何か分かった時点で報告をお願いします。
継続するなどの判断は私たちにさせてください」
『わかりました。
では、さっそく掘っていきます。《ディグ》』
穴を掘る為の魔法なんてあるんですね。
土精なので全部制御力で土を掘り出してしまうと思っていました。
『ちょっと、アルシェ』
「どうしました?」
少し離れたところに出来ていた水たまりに集まっていた水精2人。
アクアちゃんは何故か駆け回っていて、
スィーネさんから呼ばれて穴から離れる。
『ちょっと水が臭いわ』
「臭い?」
『瘴気が混ざっちゃってるって事。
濃度はすんごく薄いけど、たぶん地面全体も同じような感じよ』
でもパラディウム様は何も仰らなかったけど・・・。
戦闘開始時の濃度に比べると薄いから気にしなかった?
『土に染みこんだ瘴気が雨で湿った水に移った。
薄くても瘴気は瘴気だから無視は出来ないでしょうけれど、
パラディウムは薄い表層じゃなくてもっと深くが大事だと思っているんじゃない?』
「・・・ちょっと待ってください」
もしかして、私全然お兄さんの考えを理解出来てなかった?
どこまで瘴気が浸食しているかじゃなくて、
どこの深さに瘴気が溜まっているかが調査の目的だった?
「そういえば行くように言われて詳しい話を聞かずに来ちゃっていましたね」
『アルシェって馬鹿ね。
お兄ちゃんもきっとそこまで深く考えてないわよ。
それにアルシェをサポートする為に私たちが着いてきてるんだし、
別に落ち込むことでも無いわ』
「はい、反省はほどほどにします。
ありがとうございます、スィーネさん」
そうですよね。
お兄さんも気になるだけで調査をしておいてくれって軽く言ってくるものね。
何がどうなっていないか調べてくれとは言わないから、
現地で何か進展があれば程度なのかもしれない。
『アルカンシェ様』
私が反省している間にさっと掘って調べがついたらしいパラディウム様が戻ってきていた。
仕事が早いですね。
「いかがでしたか?」
『魔石がありました』
そう言って手にする魔石を私の前に差し出してくる。
見た目は欠片と呼ぶには大き過ぎるし、
色も紫色と私の知る属性とは異なる。
「正解を言いたくないです」
『理解しているなら大丈夫かと・・・』
口にしたくない。
視線を側で同じモノを見ているファグス将軍に向けて圧力を掛ける。
貴方も理解していますよね?言ってください。
「瘴気の魔石・・・ですか?」
『ですね。私も初めて見ました』
『気持ち悪いわね~』
「これひとつではありませんよね?」
『表層とは比べものにならない濃度に汚染された層が50m程下にありました。
これはまだ浅い層から出て来ましたが、
おそらくまだまだ存在しているものだと思います』
もぉ・・・お兄さ~ん・・・。
ナイス判断でしたけど、また厄介な案件が持ち上がりましたよぉ。
とりあえず、私たちだけではわからないことはいつも通りカティナさんに頼りましょうか。
「パラディウム様。
申し訳ありませんが、もう幾つか回収をお願いします。
その辺に集めて放っておいてください」
『わかりました』
私が指を差した先は周囲に何もない空き地。
モンスター化する事を懸念して発見がしやすい場所を選んだ。
パラディウム様は私の指示に素直に従ってくださり、
魔石を放ると穴の奥へと戻っていきました。
「アルカンシェ姫、どうされるのですか?」
「専門家に調査を依頼します。
我々は魔石を数個確保したら別の場所の調査に動きましょう」
「わかりました。お任せします」
ファグス将軍から委任を頂き、すぐに揺蕩う唄を起動させる。
「《コール》カティナさん」
〔ハイハーイ!〕
まだコールも鳴っていないのに、すごい早い。
〔どうしたデスカ!?まだ紅い夜の事後調査中デスカラァ!〕
「城下町の50mほど下層から瘴気の魔石らしい石が出て来ました」
〔何デストォ!?え~、あ~、う~~~~ん・・・。
アルシェの優先度はどう思っているデスカ?〕
「紅い夜は一旦現地での対処法はわかりましたから、
現状進行している可能性が高い瘴気の魔石を調べていただきたいです」
〔わかったデスヨォ!
すぐに調べるデスケドォ、ゴミ箱行きはやめておいた方が良さそうデスカラァ〕
「ですね」
気体の瘴気が物質に染みこんでモンスター化するなら、
固体となった瘴気も同じ力を持つ可能性を捨てられない。
だったら、戦闘員の多いこっちに来て調べた方が幾分安全でしょう。
「アーグエングリン陣営方面から城下町に入ってすぐの空き地に置いておきます」
〔了解デスヨォ!アルシェ達はやってる事の続きをしてて良いデスカラァ!〕
「わかりました、よろしくお願いします」
話している間にも幾つかの魔石が掘り出されており、
目の前に転がる光景が視界に入ってくる。
カティナさんとの会話に集中していたから気が付きませんでしたが・・・。
「アクアちゃん、マリエル、ニルちゃん。こちらへ」
『ど~したの~?』
『ニルをお呼びですわねー!!』
「どうしましたか?」
「見覚えがありませんか?」
私の視線を追って3人も同じ光景を視界に捕らえる。
一番初めにパラディウム様が見せた魔石は小さなコップ程度の大きさだった。
ですが、魔石は大なり小なり疎らな様で、
空き地に幾つも転がる魔石たちを見ると・・・。
とある記憶が掘り起こされる。
「似てますね」
『ね~』
『ですわねー』
私の意図を察した3人の同意も得た。
やっぱりそういうこと?
「何に似ているのですか?」
「禍津核に似ているんです。
正確に言えば、砕いた禍津核に似ているのですが・・・」
それだけではなくて・・・。
「瘴気の気配がしない所も似ているんです」
「禍津核とは確か・・・、
低位階精霊を捕らえてモンスターを産み出すモノでしたね」
「最近は低位階精霊だけでは済んでいませんが、認識は間違っていません」
なんでしょう。変な胸騒ぎがします。
これは本当に見逃すと拙いということでしょうか?
「マリエル、嫌な予感がします」
「奇遇ですね、姫様。私もムカムカしてます。
瘴気の魔石を前にしていると落ち着きません」
妖精族の彼女は半分精霊なので、
私より如実に嫌悪感を感じている事だろう。
「表層が薄くて下層の瘴気が濃いのですか?」
ファグス将軍の言葉に私は肯定を示す。
「そうなんです、おかしいんですよ。
どこから瘴気が発生したかなどに関しては調査を後回しにする予定でしたが、
もう答えに辿り着いていると言っても過言ではありませんね」
「地下・・・ですか。
それも50m以上となると人間だけではどうしようもありません」
「流石の土精でも城下町全体の調査は骨が折れますし。
放っておくのはもっと拙いと思います」
ただ、どうすればいいでしょう。
地面の中の広範囲に浄化を広げるにしても、
一閃は当たった場所しか浄化を出来ないし、
他の魔法でも結局はそんな深くまでを一気に浄化する手立てはないはず・・・。
『水なら地面にも染み込むでしょ?大量の聖水を流し込めば?』
「大量の聖水?」
『どこから~?』
良いアイデアが出ずに悩む私とアクアちゃんは、
何でも無いような事の様に提案してきたスィーネさんの意見に吸い寄せられる。
『どこってアルシェは[アクエリアス]使えるわよね?』
「――っ!その手がありましたねっ!!」
『スィーネ賢い~!!』
『こらアクア、馬鹿にしてんの~?』
『ふぃ~、ひっはああいえ~!』
上級魔法[アクエリアス]。
初代水精王の名を冠する魔法で有り、
魔導書として存在する水氷属性魔法の最上位魔法。
店売りはもちろんしておらず、
ダンジョンの中でもランク7以上の高ランクダンジョンでなければ見つからない。
そんなレア魔法を加護のおかげでアルシェは初めから習得しているのだ。
「アクエリアスの効果は大量の水を流して仲間ごと敵を飲み込み、
仲間は回復させ敵には状態異常を起こさせるというモノでしたね」
「あら、将軍。よくご存じですね」
「娘が魔法使いで冒険者をしておりまして、
知識についてはそこから仕入れております」
娘自慢を交えてますけど、
将軍の立場なら使い手が少なくとも知識としては入れておく必要があるでしょう。
「シンクロすれば仮契約もあるのでスィーネさんの制御力も引っ張って来れますが・・・。
パラディウム様、城下町の地面は染みこみますか?」
『いえ、人が住む為に踏み固めていますからまず染みこむには時間が掛かりすぎます。
多少モンスター化の影響で凸凹しておりますが大した差は出ないでしょう』
私に農業についての知識は皆無なので、
魔石の採掘を終えて戻った土精パラディウムに確認をしてみましたが、
やはりダメっぽいですね。
土を触っているマリエルにも視線を向けましたが・・・。
「畑ではありませんから水はけが最悪ですね。
アクエリアスで聖水を流した所で全部外に流れて終わりですよ」
「土精2人で土を掘り返すって出来ます?」
『流石に・・・』
「ですよねー」
ダメね。
緊急でなんとかした方がいい内容。
だけど、土の中って意外と簡単には行きませんしチームを分けて対処しますか。
まずは対応検討班。
「現実的な話し合いが必要ですね。
教国も混ぜて対処方法を検討しましょう。
ファグス将軍。リリトーナさんも呼んでアインスさんとパーシバルさんの詰める屋敷に移動しましょう」
「わかりました」
次に調査班。
「パラディウム様はゼノウPTと一緒に調査を進めて頂けますか?」
『了解です』
「了解」
後はギルマスや主要人物を集める為にゲートを使って貰わないとですね。
足を影の上に乗せてトントンと足先でノックすれば波紋が広がり声が届くようになる。
「メリー、クーちゃん。
悪いけれど教国へ行って頂戴。ゲートを設置して事情説明と人員の確保をお願い。
マリエル、ニルちゃんはリリトーナさんの元へ行って頂戴。
先にゲートを刻んで貰ってから飛んでね」
「『かしこまりました』」
「了解です」
『かしこまりーですわー!』
影から出て来たメリー達と、
土から手を離して立ち上がったマリエル達の返事を聞き、
足を進め始めながら最後に兄へと報告を入れる。
「《コール》宗八」
ピリリリリリリリ、ピリリリリリリリ、ポロン♪
〔応、どした?〕
「地面の下層から瘴気の魔石と思われる魔石が幾つか出て来ました。
濃度も表層より下層の方が濃い様です」
〔城の地下にでも瘴気を湧かす何かがあるのかねぇ。
で、対処方法は何か案があるの?〕
「いえ、地面の中の浄化は少々厳しいですから、
アインスさんの詰める屋敷に各国のギルマスと要人を集めて検討しようかと」
〔俺も行った方が良い?〕
「出来れば。
何か私たちで気付けないことでもアイデアが湧くかも知れません。
正直、勘に過ぎませんが見逃してはならない気がして・・・」
〔わかった。瘴気の魔石だけみたらそっちに合流するよ〕
「お願いします。
調査現場にはパラディウム様とゼノウPTが居ますし、
カティナさんには既に調査依頼済みです」
〔了解。じゃああとでな〕
通話も切れたので、
スィーネさんとアクアちゃんに目配せをして出発を伝える。
「では、私たちも移動を始めましょう。ファグス将軍」
「はい、護衛に兵士も連れて行きます」
声は冷静ですが将軍は少し面食らっているご様子。
一国の姫が戦場を動き回っているのも見る機会のない光景だろうし、
今も尚多く居た仲間を分散させて人間を1人も連れずに出発するのだ。
水精スィーネとアクアちゃんを連れているとはいえ、
アーグエングリンからしてみれば正気の沙汰じゃないでしょう。
部下の兵士も将軍の指示の元、
王族を守るような位置取りをして歩き始めた。
「驚きました」
「何をでしょう?」
隣に駆け足で並んだファグス将軍。
「ご自身の仲間をここまで減らす事にです。
本来なら姫殿下ご自身が戦場に出て指示を飛ばすのも正直受け入れがたい事態ですが、
冒険者のPTはともかく、あの妖精族とメイドは側近でしょう?
一応他国の将軍や兵士と共に行動するというのに・・・」
「冒険者も側近も必要だから私から離したに過ぎませんよ。
それにアクアちゃんは私とペアで戦って居ますし、
スィーネさんも居ればひとまず死ぬことはありませんから」
ファグス将軍は私をアスペラルダの要人として軽率に動き過ぎだと心配してるらしい。
最後の言葉も今は戦争を行っていないにしても、
国の中にはそれぞれ色んな陣営で思惑も多岐に渡る為、
ご忠告をしてくれた様だ。
「あら、将軍は私が守られるだけの姫様だとお思いで?」
「戦えるにしても、ですよ。
国の為に身を捧げる兵士の1人としては、
他国といえど王族が戦場を少数で他国の兵士に囲まれているという状況は心臓に悪いです」
「あははは、大丈夫ですよ。
もし敵対されて攻撃されたとしても護衛隊長が来るまで生き残ればいいだけですから」
「どういう意味ですか?
流石に肝いりの護衛隊長でも我々を相手にして簡単には行かないと思いますよ」
精霊使い、水無月宗八を知らないとそんなものでしょうね。
将軍は特に気を悪くした様子はなく、
単純に戦力的な話で兵士達の強さを誇っているようだ。
「護衛隊長は浮遊精霊の加護を解除出来ますので、
対人戦においては基本的に敵無しでしょうから」
「え!?それは・・・。
アスペラルダの姫殿下を疑うようで申し訳ないのですが・・・」
「ふふふ、冗談では無く『どけ』と言うだけで、
どこに攻撃されても骨が折れるようになりますよ」
「それは確かに・・・、対人においては最強と言える手札ですね」
街道はどこも凸凹としてしまっておりアクアちゃんは私に巻き付き、私とスィーネさんは魔法で滑っていく。
それに併走して駆け足のアーグエングリンの面々には申し訳ないが、
結構な距離を頑張ってもらいましょう。
* * * * *
「お疲れ様で~す」
空から見ればアインスさんやパーシバルさんが詰めているという屋敷はわかりやすかった。
周囲には松明が焚かれ明かりが確保されているし、
冒険者の姿もチラホラ見えている。
それに死んだ城下町の中に明かりが付いている建物が集まる中に、
一際目立つ大きな家があれば誰だって察することは出来るだろう。
「あ、お疲れ様です。皆様は2階の大部屋に集まっておいでです」
「ありがとう」
屋敷に入って挨拶すると、
簡易的な受付が出来上がっていてアスペラルダのギルド職員が案内してくれた。
短い期間で痛んでキィキィと音を鳴らす階段を上ると、
聞き覚えのある声が聞こえてきたので導かれるように進んでいくと3国の面々が集まっていた。
「遅れてすみません」
「宗八、こちらへ来てください」
部屋へ入ると大きなテーブルの上に食事が並べられており、
すでに食べ始めている様子だった。
アルシェに呼ばれてすぐに隣の席へと誘導され、
メリーに椅子を引かれて座った。
俺の後を付いて歩いていたブルー・ドラゴンは小さい姿のまま足下に潜り込んでいつもの居眠りを始める。
「では、メンバーも集まったのでさっそくご相談を始めさせて頂きます」
「内容としては城下町の下から瘴気の魔石が見つかったと伺いました。
その対処についてでよろしいですか?」
「その認識で大丈夫です」
アルシェの声に一旦食事の手を止めた面々は頷く。
まず確認の声を上げたのはアインスさんだ。
「私たちは瘴気の発生について詳しく調べることが出来ないまま開戦をしております。
原因として魔神族が関わっているのは確かなので討伐、
もしくは奪還が出来れば瘴気の発生も抑えられると漠然と考えおりましたが、
改めて城下町の地面を土精も伴って調べた所おかしな事実が浮かび上がりました」
「表層よりも下層の方が濃度が濃かった、と・・・」
この合いの手はパーシバルさんだ。
「その通りです。
通常、人の住む街中などで瘴気が発生し始めたのなら、
逆に表層が濃く下層が薄いはずなのに、下層の方が濃くさらに魔石化もしていた」
「常識的な事を伺うようですが、魔石はどうやって生成されるのですか?」
「気にしなくて大丈夫ですよ、聖女クレア。
どこに解決の芽があるかもわかりませんから疑問はどんどん出してください。
魔石は魔力溜まりが発生した時に生成が始まり、
やがて長い時間を掛けて徐々に大きくなっていきます」
「ありがとうございます、アルシェ。
確か水無月さんの話では瘴気と魔力は表裏の関係にあるのではと聞いたのですが・・・」
全員の視線が俺に向く。
話を聞きながら食事も進めていたのでひとまず飲み込んでから口を開いた。
「そう考えているだけで確定の話ではありません。
まず普通の魔石は自然魔力が地表に出ている精霊石の欠片に反応して生成が始まります。
薄い自然魔力と欠片一つから徐々に濃度が高くなり、
魔力が固形化して大きくなる。これが魔石です
ですが、瘴気の魔石は地面の中で生成され大きくなっていた」
「一般的な魔石については理解出来ますが、
何故瘴気の魔石は地面の中で生成が始まったとお考えですか?」
子供用椅子に座るリリトーナさんが問いかけてきた。
「詳しくは現在魔法ギルドの知り合いが調査中です。
生成の初動についてはおそらく違いはありません。
ただ、今回に至っては下層の広範囲が高濃度の瘴気に汚染された大地だった。
そこかしこから大量の魔石が発掘されてもおかしい状況ではありません」
「ファグス将軍は何か気になることや気付いたことはありますか?」
「いえ、申し訳ないのですが、
私はアルカンシェ姫殿下や水無月殿ほどに見識がなく、特に気になったところはありませんでした」
一度対話の空気が変わった。
全員が今の内容を自分に落とし込んで理解を進める時間となったのだ。
その間に俺は食事を進める。
マリエルも一緒にバクバク食べまくっている。
「魔石の発生については今は置いておくしかないですな。
次の議題はその対処方法ですかな?」
「まさしく本題はそこになります」
開口したのは教国のギルマスであるプレイグだ。
内容を理解し、ちゃんと本命の話に繋げたのは流石と言わざるを得ない。
話が再開されたので俺とマリエルの食事はストップした。
「厄介な事に濃度が高く魔石のある地層は50mほど下層であり、
我々が使う魔法剣でもそこまで届きません」
魔力とて気体と同じく、
壁に当たれば貫通するわけではない。
障害物が小さければ回り込んで対象に当てることも可能だが、
相手が地面となれば話はかなり違ってくる。
まずどこまでも続く大地を相手にどうしろと?
そして、穴を空けて一閃を打ち込んでも、
結局その穴の表面しか浄化出来ないのであれば意味は無いのだ。
「火も風も水も表面で返されてしまい、
土の精霊も流石に対処し切れないと回答を頂いております」
「そもそも今すぐに対処しなければならないのですかな?
どこの国も今は最終決戦に向けて慌ただしく動いているでしょう?」
「そこについては申し訳ありません。
具体的な理由はないのです」
「どういう事ですかな?」
「精霊使いとしての勘、だけが理由なのです。
私やマリエルは破滅の呪いに対して耐性が強いのですが、
瘴気の魔石を見た瞬間から胸騒ぎが止まりませんでした。
これを見逃してはならないと妙な焦りを覚えたのです」
「ふむぅ・・・」
破滅の呪いは精霊使い以外の人間に有効な呪いだ。
破滅に関する事件や証拠、解決に必要な行動や場所。
そういう事が出来ないし辿り着けない。
考えつかないし行動も起こせないままに破滅に飲まれる。
そして、精霊使いだからといって全員が呪いを撥ね除けられるかといえばそうでもない。
量産型精霊使いと俺達では認識に差があったのだ。
おそらく精霊使いとしての質が高くなれば抵抗力があがるとかなのだろうが、
具体的な原因については調べ切れていない。
「アルカンシェ姫は、
その魔石や下層の高濃度瘴気の浄化をしたいとお考えなのですね?
その方法を皆で考えたいという事でしょうか?」
これは勇者メリオだ。
俺は食事を再開した。
「地面の下へ影響を及ぼすには水を染みこませる方法が水精スィーネから提案されました。
他の属性では対応も出来そうにないのでその手で対処しようとは思っています」
『問題は水が染みこむには時間が掛かるって事。
マリエルは水はけが悪いって言ってるし、
パラディウムも土を掘り返すのは現実的ではないって言っていたわ』
「じゃあ、議題は城下町の地面への対処についてですか?」
「はい。
現状表面は浄化をして綺麗になったように見えますが、
下層に瘴気が潜んでいるのであればいずれまた瘴気が漂い始めるでしょうし」
つまりアルシェが危機感を持って対応したい案件は、
下層の浄化だけれども放置をすれば瘴気が再び城下町を汚染するだろうし、
今後の魔神族の動きとして掃除しておきたいという事だな。
俺も来る途中に見てきたけど、
アレは見ていて気持ちの良いものでは無かった。
カティナもそろそろ到着して調査をし始めてくれているだろうか。
「という内容を前提に、
ラフィート王子にアスペラルダの王女としてお願いがございます」
ざわついていた声が一気に静まる。
アルシェの言葉は彼女の正面に座るフォレストトーレ王子のラフィートへと投げかけられた。
「つまり、我が国の城下町を潰す必要があるのだな?」
「その通りです」
集まったメンバーはそれぞれの国での立場がある。
それこそ国を守る為に色々な方面で精を出しているだろう。
だからこそ、自国の街を掘り返して潰すと言われれば言葉に詰まるのは誰もが同じ思いだ。
簡単に承諾は出来ない。
それこそ瘴気によってボロボロになっているとしても悩まない為政者はいない。
ラフィート王子も例に漏れず、
アルシェの返答を聞いてから約2分ほど瞳を閉じて思考の海に身を投じた。
――そして、その瞳がようやっと開いた。
「・・・いいだろう」
隣のアルシェがゆっくりと息を吐いていく。
「ご決断に感謝いたします」
立ち上がって礼をするアルシェに続いて、
俺達アスペラルダのメンバーは礼をする。
「教国を代表して私からも、ラフィート王子。感謝を」
クレアもアルシェに習って礼をする。
もちろんサーニャとトーニャと勇者と仲間達、
そしてギルマスのプレイグは俺達と同じくクレアに合わせて礼をした。
「僭越ながらアーグエングリン王に代わり、
大将軍として感謝申し上げます、ラフィート王子」
こっちも兵士の方々とギルマスのリリトーナさんが礼をしていた。
ラフィート王子も頷いて、座るように手を振って促す。
「ただし、復興の際にも人を出して欲しい」
「アスペラルダを代表し、お約束致します」
「ユレイアルド神聖教国を代表して、同じくお約束致します」
「我らアーグエングリンも大将軍の地位に賭けて、合力致します」
アルシェは迷い無く言い切った。
クレアは一瞬自分の裁量で決めて良いのかと思案を挟む顔をしたが、
それでも言い切ってくれた。
続くファグス将軍は瞳も閉じて自分の領分を考え抜いたのだろう。
覚悟を決めた顔つきだったから最低でも自分が動かせる範囲で助けてくれると思う。
「助かる。では、時間も無いことだし検討に入ろう」
その言葉で張り詰めていた空気は話し合いへとシフトした。
「範囲が広すぎますね」
「地面に対してのアプローチもそれによって難しくなってるな・・・」
「ですが、確かに早めに対処しなければここも危ないという事ですよね?」
「人力では、ちと手間じゃな」
「クレチアなら地面を割るくらい出来ない?」
「流石にクレチアさんでも範囲が広すぎます」
「農家を大量に雇うのはどうだ?」
「こんな戦場に来てくれる奇特な農家はおりませんし、大勢必要です」
「実際どのくらいの範囲が汚染されているかも調べなければ・・・」
「地図を持ってきてくれ!」
この場に居る人間全員が検討を口にし、
右から左から様々な意見が出ては消えていく。
1時間も話し合った頃には出し尽くしたという空気が場を支配していた。
「――手が無い・・・」
誰が口にしたのかもわからない。
だが、人間にさせるにせよ精霊にさせるにせよ、
此処フォレストトーレは腐っても城下町だ。
30万の国民が生活をしていたという事は、
それだけ街も広く広大である。
つまり、どうあってもこの広さが足を引っ張り全員が納得出来る答えが出てこなかった。
俺ならどうするか・・・と色んな方法を黙って検討していたところ、
ふと視線を感じたのでそちらを見やるとラフィート王子が何故かこちらを見つめていた。
「水無月宗八、お前ならどうするのだ?」
今度は全員の視線が俺に集まる。
いやいや、3国の賢い連中が会議して答えがないなら俺だって答えなんて持ってないよ。
「なるほど。それはこちらとしても無視出来ませんね」
日中に続けての訪問に最初は戸惑っていたファグス将軍も、
私が訪れた理由を聞くと理解の色を示してくださりました。
「こちらも城下町の開放と共に、
火の国方面に残されたオベリスクの処理に入っています。
その状況で敵が突如沸くというのは流石に死人が多く出かねません。
土精パラディウム様に了承頂けるのであればすぐにでも動きたいのですが・・・」
『かまいません。
どこまで協力出来るかわかりませんが調査すべきなら動きましょう』
「ありがとうございます」
アーグエングリンの天幕にはノームの位階を持つ土精が残るとのことで、
防御面では居ないよりマシだとパラディウム様は言われていました。
なかなか下の位階には厳しい方ですね。
「今回は私もご一緒してもよろしいでしょうか?」
いざ出発しようとしたところで立ち上がり声を上げたのは、
アーグエングリンの司令官の立場であるファグス将軍でした。
「調査をして対処も考えるので、
問題が本当にあれば解決までの時間はわかりませんよ?
司令官が動いてよろしいのですか?」
「うちは瘴気の浄化が遅くて現状からの動きはほぼありません。
数時間程度なら同行しても大丈夫です」
「わかりました。
一応将軍とはいえ兵士は付けてくださいね」
「ご忠告痛み入ります」
他国の姫が同行者数名を伴っているのに、
他国の大将が1人だとちょっと色々ありますからね・・・。
別に敵対する訳ではありませんが、念のためにね。
城下町の入り口までぞろぞろと移動して来ました。
特にパラディウム様の反応に変化はありませんね。
「とりあえず、近くの既に捲れている場所で調査してみましょうか。
ゼノウ達は周囲の様子を見てきてください」
「了解」
「パラディウム様、縦穴はどの程度まで掘れますか?」
『必要であればどこまでも掘り続けることは出来ます。
私が穴に入った状態であればですが・・・』
う~ん、どうしましょうか。
土に混ざり物があると判断出来るのはおそらく土精である彼だけ。
そして穴も魔法で掘れるのも彼だけとなると、危険の一極化。
あまり選択したくないですね。
『我が身ならば気にしないでください。
この度の参戦はアスペラルダの皆様への感謝であり、
今回はノームを救ってくださった謝礼とでも思ってくださればいいかと』
「助かります。
ですが、何か分かった時点で報告をお願いします。
継続するなどの判断は私たちにさせてください」
『わかりました。
では、さっそく掘っていきます。《ディグ》』
穴を掘る為の魔法なんてあるんですね。
土精なので全部制御力で土を掘り出してしまうと思っていました。
『ちょっと、アルシェ』
「どうしました?」
少し離れたところに出来ていた水たまりに集まっていた水精2人。
アクアちゃんは何故か駆け回っていて、
スィーネさんから呼ばれて穴から離れる。
『ちょっと水が臭いわ』
「臭い?」
『瘴気が混ざっちゃってるって事。
濃度はすんごく薄いけど、たぶん地面全体も同じような感じよ』
でもパラディウム様は何も仰らなかったけど・・・。
戦闘開始時の濃度に比べると薄いから気にしなかった?
『土に染みこんだ瘴気が雨で湿った水に移った。
薄くても瘴気は瘴気だから無視は出来ないでしょうけれど、
パラディウムは薄い表層じゃなくてもっと深くが大事だと思っているんじゃない?』
「・・・ちょっと待ってください」
もしかして、私全然お兄さんの考えを理解出来てなかった?
どこまで瘴気が浸食しているかじゃなくて、
どこの深さに瘴気が溜まっているかが調査の目的だった?
「そういえば行くように言われて詳しい話を聞かずに来ちゃっていましたね」
『アルシェって馬鹿ね。
お兄ちゃんもきっとそこまで深く考えてないわよ。
それにアルシェをサポートする為に私たちが着いてきてるんだし、
別に落ち込むことでも無いわ』
「はい、反省はほどほどにします。
ありがとうございます、スィーネさん」
そうですよね。
お兄さんも気になるだけで調査をしておいてくれって軽く言ってくるものね。
何がどうなっていないか調べてくれとは言わないから、
現地で何か進展があれば程度なのかもしれない。
『アルカンシェ様』
私が反省している間にさっと掘って調べがついたらしいパラディウム様が戻ってきていた。
仕事が早いですね。
「いかがでしたか?」
『魔石がありました』
そう言って手にする魔石を私の前に差し出してくる。
見た目は欠片と呼ぶには大き過ぎるし、
色も紫色と私の知る属性とは異なる。
「正解を言いたくないです」
『理解しているなら大丈夫かと・・・』
口にしたくない。
視線を側で同じモノを見ているファグス将軍に向けて圧力を掛ける。
貴方も理解していますよね?言ってください。
「瘴気の魔石・・・ですか?」
『ですね。私も初めて見ました』
『気持ち悪いわね~』
「これひとつではありませんよね?」
『表層とは比べものにならない濃度に汚染された層が50m程下にありました。
これはまだ浅い層から出て来ましたが、
おそらくまだまだ存在しているものだと思います』
もぉ・・・お兄さ~ん・・・。
ナイス判断でしたけど、また厄介な案件が持ち上がりましたよぉ。
とりあえず、私たちだけではわからないことはいつも通りカティナさんに頼りましょうか。
「パラディウム様。
申し訳ありませんが、もう幾つか回収をお願いします。
その辺に集めて放っておいてください」
『わかりました』
私が指を差した先は周囲に何もない空き地。
モンスター化する事を懸念して発見がしやすい場所を選んだ。
パラディウム様は私の指示に素直に従ってくださり、
魔石を放ると穴の奥へと戻っていきました。
「アルカンシェ姫、どうされるのですか?」
「専門家に調査を依頼します。
我々は魔石を数個確保したら別の場所の調査に動きましょう」
「わかりました。お任せします」
ファグス将軍から委任を頂き、すぐに揺蕩う唄を起動させる。
「《コール》カティナさん」
〔ハイハーイ!〕
まだコールも鳴っていないのに、すごい早い。
〔どうしたデスカ!?まだ紅い夜の事後調査中デスカラァ!〕
「城下町の50mほど下層から瘴気の魔石らしい石が出て来ました」
〔何デストォ!?え~、あ~、う~~~~ん・・・。
アルシェの優先度はどう思っているデスカ?〕
「紅い夜は一旦現地での対処法はわかりましたから、
現状進行している可能性が高い瘴気の魔石を調べていただきたいです」
〔わかったデスヨォ!
すぐに調べるデスケドォ、ゴミ箱行きはやめておいた方が良さそうデスカラァ〕
「ですね」
気体の瘴気が物質に染みこんでモンスター化するなら、
固体となった瘴気も同じ力を持つ可能性を捨てられない。
だったら、戦闘員の多いこっちに来て調べた方が幾分安全でしょう。
「アーグエングリン陣営方面から城下町に入ってすぐの空き地に置いておきます」
〔了解デスヨォ!アルシェ達はやってる事の続きをしてて良いデスカラァ!〕
「わかりました、よろしくお願いします」
話している間にも幾つかの魔石が掘り出されており、
目の前に転がる光景が視界に入ってくる。
カティナさんとの会話に集中していたから気が付きませんでしたが・・・。
「アクアちゃん、マリエル、ニルちゃん。こちらへ」
『ど~したの~?』
『ニルをお呼びですわねー!!』
「どうしましたか?」
「見覚えがありませんか?」
私の視線を追って3人も同じ光景を視界に捕らえる。
一番初めにパラディウム様が見せた魔石は小さなコップ程度の大きさだった。
ですが、魔石は大なり小なり疎らな様で、
空き地に幾つも転がる魔石たちを見ると・・・。
とある記憶が掘り起こされる。
「似てますね」
『ね~』
『ですわねー』
私の意図を察した3人の同意も得た。
やっぱりそういうこと?
「何に似ているのですか?」
「禍津核に似ているんです。
正確に言えば、砕いた禍津核に似ているのですが・・・」
それだけではなくて・・・。
「瘴気の気配がしない所も似ているんです」
「禍津核とは確か・・・、
低位階精霊を捕らえてモンスターを産み出すモノでしたね」
「最近は低位階精霊だけでは済んでいませんが、認識は間違っていません」
なんでしょう。変な胸騒ぎがします。
これは本当に見逃すと拙いということでしょうか?
「マリエル、嫌な予感がします」
「奇遇ですね、姫様。私もムカムカしてます。
瘴気の魔石を前にしていると落ち着きません」
妖精族の彼女は半分精霊なので、
私より如実に嫌悪感を感じている事だろう。
「表層が薄くて下層の瘴気が濃いのですか?」
ファグス将軍の言葉に私は肯定を示す。
「そうなんです、おかしいんですよ。
どこから瘴気が発生したかなどに関しては調査を後回しにする予定でしたが、
もう答えに辿り着いていると言っても過言ではありませんね」
「地下・・・ですか。
それも50m以上となると人間だけではどうしようもありません」
「流石の土精でも城下町全体の調査は骨が折れますし。
放っておくのはもっと拙いと思います」
ただ、どうすればいいでしょう。
地面の中の広範囲に浄化を広げるにしても、
一閃は当たった場所しか浄化を出来ないし、
他の魔法でも結局はそんな深くまでを一気に浄化する手立てはないはず・・・。
『水なら地面にも染み込むでしょ?大量の聖水を流し込めば?』
「大量の聖水?」
『どこから~?』
良いアイデアが出ずに悩む私とアクアちゃんは、
何でも無いような事の様に提案してきたスィーネさんの意見に吸い寄せられる。
『どこってアルシェは[アクエリアス]使えるわよね?』
「――っ!その手がありましたねっ!!」
『スィーネ賢い~!!』
『こらアクア、馬鹿にしてんの~?』
『ふぃ~、ひっはああいえ~!』
上級魔法[アクエリアス]。
初代水精王の名を冠する魔法で有り、
魔導書として存在する水氷属性魔法の最上位魔法。
店売りはもちろんしておらず、
ダンジョンの中でもランク7以上の高ランクダンジョンでなければ見つからない。
そんなレア魔法を加護のおかげでアルシェは初めから習得しているのだ。
「アクエリアスの効果は大量の水を流して仲間ごと敵を飲み込み、
仲間は回復させ敵には状態異常を起こさせるというモノでしたね」
「あら、将軍。よくご存じですね」
「娘が魔法使いで冒険者をしておりまして、
知識についてはそこから仕入れております」
娘自慢を交えてますけど、
将軍の立場なら使い手が少なくとも知識としては入れておく必要があるでしょう。
「シンクロすれば仮契約もあるのでスィーネさんの制御力も引っ張って来れますが・・・。
パラディウム様、城下町の地面は染みこみますか?」
『いえ、人が住む為に踏み固めていますからまず染みこむには時間が掛かりすぎます。
多少モンスター化の影響で凸凹しておりますが大した差は出ないでしょう』
私に農業についての知識は皆無なので、
魔石の採掘を終えて戻った土精パラディウムに確認をしてみましたが、
やはりダメっぽいですね。
土を触っているマリエルにも視線を向けましたが・・・。
「畑ではありませんから水はけが最悪ですね。
アクエリアスで聖水を流した所で全部外に流れて終わりですよ」
「土精2人で土を掘り返すって出来ます?」
『流石に・・・』
「ですよねー」
ダメね。
緊急でなんとかした方がいい内容。
だけど、土の中って意外と簡単には行きませんしチームを分けて対処しますか。
まずは対応検討班。
「現実的な話し合いが必要ですね。
教国も混ぜて対処方法を検討しましょう。
ファグス将軍。リリトーナさんも呼んでアインスさんとパーシバルさんの詰める屋敷に移動しましょう」
「わかりました」
次に調査班。
「パラディウム様はゼノウPTと一緒に調査を進めて頂けますか?」
『了解です』
「了解」
後はギルマスや主要人物を集める為にゲートを使って貰わないとですね。
足を影の上に乗せてトントンと足先でノックすれば波紋が広がり声が届くようになる。
「メリー、クーちゃん。
悪いけれど教国へ行って頂戴。ゲートを設置して事情説明と人員の確保をお願い。
マリエル、ニルちゃんはリリトーナさんの元へ行って頂戴。
先にゲートを刻んで貰ってから飛んでね」
「『かしこまりました』」
「了解です」
『かしこまりーですわー!』
影から出て来たメリー達と、
土から手を離して立ち上がったマリエル達の返事を聞き、
足を進め始めながら最後に兄へと報告を入れる。
「《コール》宗八」
ピリリリリリリリ、ピリリリリリリリ、ポロン♪
〔応、どした?〕
「地面の下層から瘴気の魔石と思われる魔石が幾つか出て来ました。
濃度も表層より下層の方が濃い様です」
〔城の地下にでも瘴気を湧かす何かがあるのかねぇ。
で、対処方法は何か案があるの?〕
「いえ、地面の中の浄化は少々厳しいですから、
アインスさんの詰める屋敷に各国のギルマスと要人を集めて検討しようかと」
〔俺も行った方が良い?〕
「出来れば。
何か私たちで気付けないことでもアイデアが湧くかも知れません。
正直、勘に過ぎませんが見逃してはならない気がして・・・」
〔わかった。瘴気の魔石だけみたらそっちに合流するよ〕
「お願いします。
調査現場にはパラディウム様とゼノウPTが居ますし、
カティナさんには既に調査依頼済みです」
〔了解。じゃああとでな〕
通話も切れたので、
スィーネさんとアクアちゃんに目配せをして出発を伝える。
「では、私たちも移動を始めましょう。ファグス将軍」
「はい、護衛に兵士も連れて行きます」
声は冷静ですが将軍は少し面食らっているご様子。
一国の姫が戦場を動き回っているのも見る機会のない光景だろうし、
今も尚多く居た仲間を分散させて人間を1人も連れずに出発するのだ。
水精スィーネとアクアちゃんを連れているとはいえ、
アーグエングリンからしてみれば正気の沙汰じゃないでしょう。
部下の兵士も将軍の指示の元、
王族を守るような位置取りをして歩き始めた。
「驚きました」
「何をでしょう?」
隣に駆け足で並んだファグス将軍。
「ご自身の仲間をここまで減らす事にです。
本来なら姫殿下ご自身が戦場に出て指示を飛ばすのも正直受け入れがたい事態ですが、
冒険者のPTはともかく、あの妖精族とメイドは側近でしょう?
一応他国の将軍や兵士と共に行動するというのに・・・」
「冒険者も側近も必要だから私から離したに過ぎませんよ。
それにアクアちゃんは私とペアで戦って居ますし、
スィーネさんも居ればひとまず死ぬことはありませんから」
ファグス将軍は私をアスペラルダの要人として軽率に動き過ぎだと心配してるらしい。
最後の言葉も今は戦争を行っていないにしても、
国の中にはそれぞれ色んな陣営で思惑も多岐に渡る為、
ご忠告をしてくれた様だ。
「あら、将軍は私が守られるだけの姫様だとお思いで?」
「戦えるにしても、ですよ。
国の為に身を捧げる兵士の1人としては、
他国といえど王族が戦場を少数で他国の兵士に囲まれているという状況は心臓に悪いです」
「あははは、大丈夫ですよ。
もし敵対されて攻撃されたとしても護衛隊長が来るまで生き残ればいいだけですから」
「どういう意味ですか?
流石に肝いりの護衛隊長でも我々を相手にして簡単には行かないと思いますよ」
精霊使い、水無月宗八を知らないとそんなものでしょうね。
将軍は特に気を悪くした様子はなく、
単純に戦力的な話で兵士達の強さを誇っているようだ。
「護衛隊長は浮遊精霊の加護を解除出来ますので、
対人戦においては基本的に敵無しでしょうから」
「え!?それは・・・。
アスペラルダの姫殿下を疑うようで申し訳ないのですが・・・」
「ふふふ、冗談では無く『どけ』と言うだけで、
どこに攻撃されても骨が折れるようになりますよ」
「それは確かに・・・、対人においては最強と言える手札ですね」
街道はどこも凸凹としてしまっておりアクアちゃんは私に巻き付き、私とスィーネさんは魔法で滑っていく。
それに併走して駆け足のアーグエングリンの面々には申し訳ないが、
結構な距離を頑張ってもらいましょう。
* * * * *
「お疲れ様で~す」
空から見ればアインスさんやパーシバルさんが詰めているという屋敷はわかりやすかった。
周囲には松明が焚かれ明かりが確保されているし、
冒険者の姿もチラホラ見えている。
それに死んだ城下町の中に明かりが付いている建物が集まる中に、
一際目立つ大きな家があれば誰だって察することは出来るだろう。
「あ、お疲れ様です。皆様は2階の大部屋に集まっておいでです」
「ありがとう」
屋敷に入って挨拶すると、
簡易的な受付が出来上がっていてアスペラルダのギルド職員が案内してくれた。
短い期間で痛んでキィキィと音を鳴らす階段を上ると、
聞き覚えのある声が聞こえてきたので導かれるように進んでいくと3国の面々が集まっていた。
「遅れてすみません」
「宗八、こちらへ来てください」
部屋へ入ると大きなテーブルの上に食事が並べられており、
すでに食べ始めている様子だった。
アルシェに呼ばれてすぐに隣の席へと誘導され、
メリーに椅子を引かれて座った。
俺の後を付いて歩いていたブルー・ドラゴンは小さい姿のまま足下に潜り込んでいつもの居眠りを始める。
「では、メンバーも集まったのでさっそくご相談を始めさせて頂きます」
「内容としては城下町の下から瘴気の魔石が見つかったと伺いました。
その対処についてでよろしいですか?」
「その認識で大丈夫です」
アルシェの声に一旦食事の手を止めた面々は頷く。
まず確認の声を上げたのはアインスさんだ。
「私たちは瘴気の発生について詳しく調べることが出来ないまま開戦をしております。
原因として魔神族が関わっているのは確かなので討伐、
もしくは奪還が出来れば瘴気の発生も抑えられると漠然と考えおりましたが、
改めて城下町の地面を土精も伴って調べた所おかしな事実が浮かび上がりました」
「表層よりも下層の方が濃度が濃かった、と・・・」
この合いの手はパーシバルさんだ。
「その通りです。
通常、人の住む街中などで瘴気が発生し始めたのなら、
逆に表層が濃く下層が薄いはずなのに、下層の方が濃くさらに魔石化もしていた」
「常識的な事を伺うようですが、魔石はどうやって生成されるのですか?」
「気にしなくて大丈夫ですよ、聖女クレア。
どこに解決の芽があるかもわかりませんから疑問はどんどん出してください。
魔石は魔力溜まりが発生した時に生成が始まり、
やがて長い時間を掛けて徐々に大きくなっていきます」
「ありがとうございます、アルシェ。
確か水無月さんの話では瘴気と魔力は表裏の関係にあるのではと聞いたのですが・・・」
全員の視線が俺に向く。
話を聞きながら食事も進めていたのでひとまず飲み込んでから口を開いた。
「そう考えているだけで確定の話ではありません。
まず普通の魔石は自然魔力が地表に出ている精霊石の欠片に反応して生成が始まります。
薄い自然魔力と欠片一つから徐々に濃度が高くなり、
魔力が固形化して大きくなる。これが魔石です
ですが、瘴気の魔石は地面の中で生成され大きくなっていた」
「一般的な魔石については理解出来ますが、
何故瘴気の魔石は地面の中で生成が始まったとお考えですか?」
子供用椅子に座るリリトーナさんが問いかけてきた。
「詳しくは現在魔法ギルドの知り合いが調査中です。
生成の初動についてはおそらく違いはありません。
ただ、今回に至っては下層の広範囲が高濃度の瘴気に汚染された大地だった。
そこかしこから大量の魔石が発掘されてもおかしい状況ではありません」
「ファグス将軍は何か気になることや気付いたことはありますか?」
「いえ、申し訳ないのですが、
私はアルカンシェ姫殿下や水無月殿ほどに見識がなく、特に気になったところはありませんでした」
一度対話の空気が変わった。
全員が今の内容を自分に落とし込んで理解を進める時間となったのだ。
その間に俺は食事を進める。
マリエルも一緒にバクバク食べまくっている。
「魔石の発生については今は置いておくしかないですな。
次の議題はその対処方法ですかな?」
「まさしく本題はそこになります」
開口したのは教国のギルマスであるプレイグだ。
内容を理解し、ちゃんと本命の話に繋げたのは流石と言わざるを得ない。
話が再開されたので俺とマリエルの食事はストップした。
「厄介な事に濃度が高く魔石のある地層は50mほど下層であり、
我々が使う魔法剣でもそこまで届きません」
魔力とて気体と同じく、
壁に当たれば貫通するわけではない。
障害物が小さければ回り込んで対象に当てることも可能だが、
相手が地面となれば話はかなり違ってくる。
まずどこまでも続く大地を相手にどうしろと?
そして、穴を空けて一閃を打ち込んでも、
結局その穴の表面しか浄化出来ないのであれば意味は無いのだ。
「火も風も水も表面で返されてしまい、
土の精霊も流石に対処し切れないと回答を頂いております」
「そもそも今すぐに対処しなければならないのですかな?
どこの国も今は最終決戦に向けて慌ただしく動いているでしょう?」
「そこについては申し訳ありません。
具体的な理由はないのです」
「どういう事ですかな?」
「精霊使いとしての勘、だけが理由なのです。
私やマリエルは破滅の呪いに対して耐性が強いのですが、
瘴気の魔石を見た瞬間から胸騒ぎが止まりませんでした。
これを見逃してはならないと妙な焦りを覚えたのです」
「ふむぅ・・・」
破滅の呪いは精霊使い以外の人間に有効な呪いだ。
破滅に関する事件や証拠、解決に必要な行動や場所。
そういう事が出来ないし辿り着けない。
考えつかないし行動も起こせないままに破滅に飲まれる。
そして、精霊使いだからといって全員が呪いを撥ね除けられるかといえばそうでもない。
量産型精霊使いと俺達では認識に差があったのだ。
おそらく精霊使いとしての質が高くなれば抵抗力があがるとかなのだろうが、
具体的な原因については調べ切れていない。
「アルカンシェ姫は、
その魔石や下層の高濃度瘴気の浄化をしたいとお考えなのですね?
その方法を皆で考えたいという事でしょうか?」
これは勇者メリオだ。
俺は食事を再開した。
「地面の下へ影響を及ぼすには水を染みこませる方法が水精スィーネから提案されました。
他の属性では対応も出来そうにないのでその手で対処しようとは思っています」
『問題は水が染みこむには時間が掛かるって事。
マリエルは水はけが悪いって言ってるし、
パラディウムも土を掘り返すのは現実的ではないって言っていたわ』
「じゃあ、議題は城下町の地面への対処についてですか?」
「はい。
現状表面は浄化をして綺麗になったように見えますが、
下層に瘴気が潜んでいるのであればいずれまた瘴気が漂い始めるでしょうし」
つまりアルシェが危機感を持って対応したい案件は、
下層の浄化だけれども放置をすれば瘴気が再び城下町を汚染するだろうし、
今後の魔神族の動きとして掃除しておきたいという事だな。
俺も来る途中に見てきたけど、
アレは見ていて気持ちの良いものでは無かった。
カティナもそろそろ到着して調査をし始めてくれているだろうか。
「という内容を前提に、
ラフィート王子にアスペラルダの王女としてお願いがございます」
ざわついていた声が一気に静まる。
アルシェの言葉は彼女の正面に座るフォレストトーレ王子のラフィートへと投げかけられた。
「つまり、我が国の城下町を潰す必要があるのだな?」
「その通りです」
集まったメンバーはそれぞれの国での立場がある。
それこそ国を守る為に色々な方面で精を出しているだろう。
だからこそ、自国の街を掘り返して潰すと言われれば言葉に詰まるのは誰もが同じ思いだ。
簡単に承諾は出来ない。
それこそ瘴気によってボロボロになっているとしても悩まない為政者はいない。
ラフィート王子も例に漏れず、
アルシェの返答を聞いてから約2分ほど瞳を閉じて思考の海に身を投じた。
――そして、その瞳がようやっと開いた。
「・・・いいだろう」
隣のアルシェがゆっくりと息を吐いていく。
「ご決断に感謝いたします」
立ち上がって礼をするアルシェに続いて、
俺達アスペラルダのメンバーは礼をする。
「教国を代表して私からも、ラフィート王子。感謝を」
クレアもアルシェに習って礼をする。
もちろんサーニャとトーニャと勇者と仲間達、
そしてギルマスのプレイグは俺達と同じくクレアに合わせて礼をした。
「僭越ながらアーグエングリン王に代わり、
大将軍として感謝申し上げます、ラフィート王子」
こっちも兵士の方々とギルマスのリリトーナさんが礼をしていた。
ラフィート王子も頷いて、座るように手を振って促す。
「ただし、復興の際にも人を出して欲しい」
「アスペラルダを代表し、お約束致します」
「ユレイアルド神聖教国を代表して、同じくお約束致します」
「我らアーグエングリンも大将軍の地位に賭けて、合力致します」
アルシェは迷い無く言い切った。
クレアは一瞬自分の裁量で決めて良いのかと思案を挟む顔をしたが、
それでも言い切ってくれた。
続くファグス将軍は瞳も閉じて自分の領分を考え抜いたのだろう。
覚悟を決めた顔つきだったから最低でも自分が動かせる範囲で助けてくれると思う。
「助かる。では、時間も無いことだし検討に入ろう」
その言葉で張り詰めていた空気は話し合いへとシフトした。
「範囲が広すぎますね」
「地面に対してのアプローチもそれによって難しくなってるな・・・」
「ですが、確かに早めに対処しなければここも危ないという事ですよね?」
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「実際どのくらいの範囲が汚染されているかも調べなければ・・・」
「地図を持ってきてくれ!」
この場に居る人間全員が検討を口にし、
右から左から様々な意見が出ては消えていく。
1時間も話し合った頃には出し尽くしたという空気が場を支配していた。
「――手が無い・・・」
誰が口にしたのかもわからない。
だが、人間にさせるにせよ精霊にさせるにせよ、
此処フォレストトーレは腐っても城下町だ。
30万の国民が生活をしていたという事は、
それだけ街も広く広大である。
つまり、どうあってもこの広さが足を引っ張り全員が納得出来る答えが出てこなかった。
俺ならどうするか・・・と色んな方法を黙って検討していたところ、
ふと視線を感じたのでそちらを見やるとラフィート王子が何故かこちらを見つめていた。
「水無月宗八、お前ならどうするのだ?」
今度は全員の視線が俺に集まる。
いやいや、3国の賢い連中が会議して答えがないなら俺だって答えなんて持ってないよ。
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