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第10章 -青龍の住む島、龍の巣編Ⅰ-
†第10章† -22話-[エピローグⅢ]
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『君たち、誰?』
『先ほど説明したアスペラルダの人間です』
『あぁ、助けてくれたって言う?
なんか魔力は回復してるのにダルイのはなんで?』
『おそらく瘴気に犯されて無理な暴れ方をしたからでしょう』
なんだろうか。
アイス・ドラゴンやフロスト・ドラゴン達が基準になっているからか、
ブルー・ドラゴンのガキっぽい口調にすごく引っかかる。
「ブルー・ドラゴン、お初にお目にかかります。
アスペラルダから参りました水無月宗八と申します」
『アクアーリィ!』
『『・・・・』』
ニルはお役目が終わった時点であっちに帰した。
俺の挨拶に続けてアクアも名乗るが、
それに続く挨拶をクーもノイも行わずじっと様子を見ている。
「先ほどは瘴気の浄化の為とはいえ攻撃を加えたことお詫びいたします」
『普通だったら怒るところなんだろうけど、
抵抗している間の事は見えていたから仕方ないって理解はしているよ』
「ありがとうございます」
『それで?僕が気を失ってからの間に何があったのか、
その部分を知らないんだよね。
ムグンダールも目と腕を失ってるし』
ムグンダールとはフロスト・ドラゴンの片割れの名前らしい。
ちなみにもう片割れは再び小さくなって俺の肩の上に乗っかって魔石作りに専念してくれている。
とりあえず、事情の説明をフロスト・ドラゴンと合同で行い、
セーバーPTも中心部の広場に戻す運びとなった。
ついでにフロスト・ドラゴンの傷を治す試しについても相談したところ、
『出来るならやっちゃってよ。見ていて不便そうだよ』とのこと。
「では、この文字を飲み込んでください」
『・・・了承』
いくらブルー・ドラゴンに許可をもらったとはいえ、
やはり知らない魔法を体内に入れるのを嫌なのか不承不承という苦々しい顔を器用に示しながら一口に飲み込んでしまう。
『があああああああああああああああああ!!!!』
『おぉぉぉ・・・これ自分じゃやりたくないよ・・・』
ゴキリゴキリ、バキボキ、グチュグチュグチャ・・・・。
失われた腕と目玉の細胞が活性化し急激な分裂運動を行い始め、
みるみるうちに肉は盛り上がり、
骨も構築されどんどんと血管が再生するのに合わせて血がドパドパと地面に流れ出ていく。
失われた部位の修復ほど痛いものはないだろう。
ガタイがでかい分叫び声も大きく、
両手で耳を塞いでも体全体で受ける振動波が否応なしに共鳴して頭がおかしくなりそうな五月蠅さを感じ取ってしまう。
ニルを帰すんじゃなかった・・・。
しばらくすれば叫びも収まり、
片目から血の涙を流しハァハァと息を荒げて片足を着くフロスト・ドラゴン。
よく気絶しなかったもんだ。
俺たちなんて先ほどの叫びが効いていてまだ体の感覚と耳が遠くなってしまっている。
「ブルー・ドラゴンも念のためやっておきますか?」
『え?ぼ、僕はいいよ。
オベリスクで空いた穴は時間が経てば治るレベルだし、
精々胸のところの窪みが痛いかなぁ~って程度だよ。その治療はいらないよ』
『ムグンダール様の治療が始まってすぐやりたくないと口にしておりました』
「あの叫びの中で聞こえたのか?」
『口の動きを読みました』
クーはどこまで有能になれば気が済むのだろうか。
「ムグンダール、大丈夫ですか?
しばらく小さくなった方がいいかと思います。
魔石もまた用意いたしますので・・・」
『はぁはぁ・・・助かる』
魔法生物である龍の治療にはおそらく魔力を相当に使用したのだろう。
せっかく潜口魚戦で失った魔力が回復したばかりなのに、
また枯渇状態になっている様に見受けられた為、
小さくなることを提案すると思いの外素直に言うことを聞いてくれた。
「アクア」
『あ~い。《ホワイトフリーズ》セット:魔石~』
小さくなったフロスト・ドラゴン用にアクアが魔石に魔法を込め、
それを口に含むとふらつきながらもブルー・ドラゴンの側を離れようとはしなかった。
たぶんフロスト・ドラゴンは俺たちと同じ近衛の立場なんだろうな。
小さくなっても立ちっぱなしで休もうとしないフロスト・ドラゴンの様子を上から見下ろしていたブルー・ドラゴンは、
冷たいため息をひとつ吐くと同じ程度まで自信の体を小さく変化させた。
『こっちの方がボクは格好いいと思うです』
「俺もだ」
小さくなったブルー・ドラゴンは、
横長で立派な翼を残しつつスリムで小さい体型になり、
その姿にノイを俺は感嘆の声をこぼす。
賢いワイヴァーンに見える。
しかも色違いのレアモンスターに見える。
『何か失礼な事を考えているね?』
「滅相もございません。
小さい姿の方が我々としても首が疲れませんし助かります」
『ふぅ~ん、まぁいいけど・・・で?
これからどうするつもり?』
「どうするとは?」
『僕もねブルー・ドラゴンとはいえ、
オベリスクなんてものが相手だと死んじゃうってのがわかったし、
出来れば龍族全体を守る為の知恵を貸してほしいところなんだよね』
龍ってファンタジー小説とかだと割と高飛車というかプライドがめちゃ高いけど、
この世界の龍は以外と殊勝なんだな。
アイス然りフロスト然り、
お堅い口調だったからイメージ的にも似たようなものかと思っていたけれど、
ブルー・ドラゴンの先の言葉に反対意見も挟んでこない。
「そもそも今回はステルシャトーがブルー・ドラ・・」
『ブルー・ドラゴン。フリューネでいいよ』
「・・・フリューネの[竜玉]を戯れに欲しがったことで起きた事故のようです。
なので、この場で同じ生活をすることも可能かと思います」
『ふぅ~ん・・・エルレイニア、どう思う?』
『危機感を拭えないのは事実。
我々が敗北し彼らに助けられたのも事実。
人里から離れていても危険があちらから来るのであれば、
ブルー・ドラゴンだけでも彼らと行動を共にした方がいいのではないかと』
その辺どうなの?といった表情で俺に顔を向けるフリューネ。
「だが、断る!」
『あれぇ?なんか力強く断られたんだけど!?
ほら、僕は戦闘も出来るし希少な存在だし、えっと・・、
そうそう!精製できる魔石もフロスト・ドラゴンよりも高品質に出来るよ?』
「確かに一緒に来ていただければ守りやすくなりますし、
戦闘面も助けていただけるのはありがたい。
でも、これ以上世話を増やせないので」
協力いただく代わりに守るという部分は個人的に有りだと思っている。
フリューネの言う通りに魔石の精製は今後も続けていく必要があるし、
戦闘もこなせる上に魔力タンクとしては最高級品。
全然有り・・・・なんだけどぉ。
「うちにはすでに世話の掛かる5姉妹が居ますので」
『そうだ~!ますたーはアクア達の相手で忙しいんだ~!』
『お父さまの愛はクー達の物です!』
『別にボクはどっちでもいいです』
『(私ぁ賛成派、です)』
この場には一人足りないけれど、4姉妹中2人は声を大にして不要を主張。
1人は無効票、残る1人は賛成と意見も分かれた。
しかし、どちらにしろフリューネの喋りを鑑みた結果、
面倒が増えることは確実だし何より勇者よりも戦力過剰になることがモブキャラとして引っかかった。
『得を理解しつつも家族を優先する。納得。
では、ブルー・ドラゴンの世話に我かムグンダールを付ければどうか?』
『検討。守りが1枚になるのは不安が勝る』
『しかし、いずれにせよ我らは敗北する。
であれば人間に協力して本丸は逃がし、
巣の管理の必要性から我らが残るのは必然』
どうやら龍サイドは俺たちの元へブルー・ドラゴンを逃がしたいらしい。
それでも即決出来るほど俺たちのことを知らないし、
いままで離れて暮らしていた理由などもあるんじゃないかな?
だが行く行かない討論はそれほど時間も掛からずに終了し、
結局のところは駄目なところを探すよりも利の方が大きく傾いたっぽい。
「じゃあ、どうしても着いて来るんですか?」
『肯定。ムグンダールは療養が必要なため残し、
我とブルー・ドラゴンが其方に着いて行く』
『そういうことになったよ。よろしくね。水無月宗八』
むむむ・・・。
これは面倒な事になったとはいえ、俺たちには得もある。
世話役も着いて来るならまぁ俺たちの負担は限りなく少なくなるかな?
「はぁ・・・、わかりました。
我々に協力いただく代わりに私たちはフリューネを守ればいいのですか?」
『それと我らは精霊たちよりも普段吸収する魔力量が多い』
「つまり食事の提供も希望されるのですね。
その点については常に、でしょうか?それとも我々と同じ食事の時だけでしょうか?」
『僕は減った分の供給をしてもらえればいいかなぁ。
どうせアスペラルダに行ったら小さい体で居なきゃならないだろうから、
動かすときの消費量も少ないし』
ふぅ~む。その程度でいいなら別に面倒ではないか・・・。
飯時に魔石に魔法を込めて口に含ませておけばいいだけだし、
魔神族との戦闘もそうそう起こるものではない。
シュティーナの言い方では、
フリューネの[竜玉]を狙ったのはステルシャトーの独断だったっぽいしな。
「はぁ・・・。
アクアとクーはあっちに連絡。龍二匹を連れて今日戻るって伝えてくれ」
『あ~い』
『かしこまりました』
決まってしまえば覚悟も出来るという物だ。
あっちでの生活とかをどうするのかとかはもう後で考えるとして、
今は連れ帰る事に決まったのだから帰る準備を進めることにしよう。
「では我々は帰る準備を行いますので、
フリューネも準備があれば整えておいてください」
『何かあるかな?』
『ございません』
『じゃあ、準備が整うまでのんびり待っていることにするよ』
「わかりました」
島に住む龍たちが基本的に寝て過ごしている事は周知の事実であったし、
本などの娯楽もないだろうから、
予想通りではあるんだけどね。
踵を反しながら俺は失礼な事を考えつつ、
足はセーバー達の元へと向かう。
「どうだったよ」
「龍を連れてアスペラルダに帰ることになった。
テントは全部片していい」
「クランリーダー。我々も登城させていただけるのですか?」
「まぁ、その辺はアルシェたちがうまくやるだろうから、
部屋は用意されると思うぞ。
その後の動きについては各所と相談になるだろうけど」
こいつらは元々フォレストトーレ出身なので、
アスペラルダの戦力を考えるわけにもいかない。
そして通常通りに入国をしたわけでもない。
扱いに関しては俺の部下って事に落ち着くと思うんだけど、
それでも着地地点がどうなるかは王様達が判断を下すことになる。
ただ、ゼノウ達という先進者がいるから悪いようにはならないだろうさ。
『水無月宗八。魔石が出来たぞ』
「おぉ!じゃあ帰る準備を進めている間に外で試してみるかな。
片すのは慌てなくていいからな。
ちょっと外に出てくる」
『我の尻に手を宛がうのだ』
嫌だなぁ・・・。
忘れてたけど、魔石って龍のう○こなんだよね。
でも、もう帰るって指示も出したし受け取るしかないんだよね・・・。
『マスター、このまま受け取らなくてもいいんじゃないです?』
「確かに・・・。
フロスト・ドラゴン、降りていただいてもいいですか?」
『・・・了承』
何故に渋々なんだ・・・。
入り口まで戻ってきた俺たちはさっそくフロスト・ドラゴンを肩から下ろし、
珍しい龍の魔石排出シーンを雁首揃えて見守る。
ブチチ・・グチョ・・・ブリブリ。
鶏で言えば総排泄口といえばいいのか、
とにかくう○こが出る穴と卵の出る穴は同じらしく、
まず粘りけのある透明な液体が先行してヒクつく穴からトローリと垂れ始め・・・。
『其方ら・・・、何故後ろに回って寝そべっているのだ?』
「あ、いえ、お気になさらず。
早々見る機会がないので社会科見学というか・・・。
あ、クー。液体は念のため確保しておいてくれ」
『かしこまりました、お父さま』
『ううぅぅぅ、ヒクヒクしてるです・・・』
『おぉ~すごいね~』
『・・・・・ゴクリ』
寝転ぶ俺の周りと体や頭の上に乗って龍の排出を見守る俺たちだが、
その姉妹の中で一番興味津々なのが生唾まで飲んでいるアニマというね。
おまえ一番知識も経験もあるやろがいっ!
ブリョリリョブチチチ・・・。
お、おぉぉ・・・、おおおおおおおおおおおお!!!
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!
『さぁ、手にするといい』
フロスト・ドラゴンは人差し指サイズの魔石を無事に出産すると、
後ろで寝そべる俺たちへと向き直り先の言葉を口にした。
視線を龍の顔から戻すと、
目の前には氷の地面にキラキラと陽の光によって輝くベチョベチョの魔石。
再び視線をあげると何かを成し遂げた顔をした龍。
「・・・・アクアちゃん、キレイキレイしてちょうだい」
『あい。《アクアボール》』
スッと立ち上がると長女に掃除をお願いする。
アクアも触りたくはないのか入念にアクアボールを回転させて、
洗濯機で洗うが如くグルグルと水をかき回して粘液を魔石から分離させていく。
『は~い、綺麗になりましたぁ~』
「あんがと。う~ん、やっぱり形とかは調整出来ないんですね」
『出来上がる形はその時その時で変わる。
ブルー・ドラゴンであればもう少々希望の形に仕上げられるはずだ。
我は小さめに調整する程度しか出来ぬ』
「これを使ってさらに濃度の高い魔力を魔石にする工程を繰り返せば、
徐々に濃度を上げられますよね?」
『肯定。まずは其方が扱えるレベルを計るためにも使ってみよ。
我の見立てでは後二度精製を繰り返すラインまでならば扱えるだろう』
フロスト・ドラゴンに促されるままに俺は魔石を握り込む。
結局のところ自分の魔力を意識して濃度を上げることは出来ても、
希望するラインには全くと言っていいほど届かず、
魔神族に効果のあるラインとなれば魔法剣になるので、
実際どのくらいのレベルまで濃度を引き上げなければならないのかもわかっていない。
「《アイシクルエッジ》セット:魔石」
『そろそろ中級魔法を覚えてもいい頃合いです?』
『魔導書がないんだよ~』
『ダンジョンに潜る時間もありませんしね』
『アクアの魔法では純宗八魔力で造れなくなる、です』
拾った魔石に魔力を込めた場合の効率だと、
宝物庫に落としている程度の欠片であればすぐ充満するが、
それよりも二回り大きいこの魔石だと俺の魔力から造られているとはいえどの程度の効率か・・・。
魔石を手で摘まみ覗き込むと、
中心部に現れた俺の魔力光が徐々に徐々に大きくなっていくのがわかる。
この調子なら2分くらいで充満しそうだ。
これが中級魔法や上級魔法であればさらに早く充填出来るだろう。
『・・・2分と12秒です』
「まぁ、予想通りか」
人差し指と中指の間に魔石を挟んだ状態で前方に手を伸ばす。
イメージは無詠唱による魔力を直接制御力で操作して攻撃に転用すること。
そのイメージに合わせて手の先に存在する自分で掻き集めるよりも濃度の高い魔力を操作してみると・・・。
「あれ?普通の魔力と同じ感覚で操作できる・・・」
『宗八の魔力制御力は成長してそれなりではありますが、
元の魔力濃度から上げるために集める。
その過程で制御力を使ってしまい濃度が希望する高さにならないの、です』
「じゃあ、濃度は関係なく操作に関しては問題ないのか?」
『いえ、それもそっちの龍が説明していたように、
扱える濃度レベルは存在する、です』
ここぞとばかりにアニマ先生の知識の恩恵を受け、
現状の理解を進める。
つまり、本来は自身の制御力を用いて集めるところから始めなければならないけれど、
魔石で濃度を上げる事によって操作に集中できるということか。
『でも、まだ直接攻撃には向かないね~』
「そうだな、まだ足りない。
魔石の再精製でどのくらいまで魔石の効率が上がるか、だな。
まぁ魔法剣に使おうと思えば、
砕くときと同じように魔力を乗せて撃つことも出来るんだろうけど、
今は先に剣の確保を先にしないとな」
そうと分かれば魔石の魔力は解除してしまい、
続きは城に戻ってから行うことにする。
「んじゃ、帰ろうか」
『あい!』
* * * * *
「ようこそいらっしゃいました、ブルー・ドラゴン。
アスペラルダ国の姫、アルカンシェ=シヴァ=アスペラルダでございます。
王と王妃が挨拶と今後について話があるとの事なのですが、よろしいでしょうか?」
『かまわないよ。宗八はどうするのかな?』
「私も着いて行った方がよろしければ同行致します」
『じゃあ、一緒に来てもらおうかな』
「わかりました」
ゲートを繋げて夕刻に差し掛かった頃に城に戻った俺たちをアルシェが出迎えてくれた。
一応、生物学上は上位種の龍相手とはいえ、
友好関係もなくただただ遠くで暮らしていた者同士で龍の方から国に来たからか、
王達はいつもの謁見のまでフリューネを出迎えるらしい。
「お兄さん、お帰りなさい」
「ただいま、アルシェ。
アクア達を任せてもいいか?」
「はい、長引くようであれば先に寝かせておきます」
「ありがとう。あと、クレアには連絡入れた?」
「そちらも滞りなく。
明後日と伝えましたけど間違いないですよね?」
「あぁ。明日はセリア先生との合流地点に先についておきたいから、
一日そっちで潰す予定。
で、明後日クレア達と一旦合流しよう」
「わかりました。では、ブルー・ドラゴン。
お先に失礼いたします」
『出迎えご苦労だったね。
また機会を作って話をしようよ』
「ありがとうございます」
フリューネと地面を歩くフロスト・ドラゴンを連れて出発する前に、
アルシェにお疲れの微笑みとなでなでをプレゼントし、
子供達には口パクで大人しく寝ているようにと伝えると、
みんなして俺の見送りに手を振ってくれる。
「セーバー達もあと少し付き合ってくれ。
出来る限り早めに解放して部屋の割り当てもするから」
「お前、その発言は護衛隊長の言葉じゃないぞ・・・」
『どちらかと言えば王子みたいでしたわね~』
「もう面倒だからある程度否定しないことにしただけだ。
部屋とかについてはアルシェとメリーがすでに調整済みだろうけど、
登城するわけだし王様と王妃様にはお目通りしておかないとな」
後ろからワラワラと落ち着いた様子で着いてくるセーバーPT。
ゼノウ達が登城した時とは違って大人だなぁという印象を受けるが、
弓使いのモエアだけはキョロキョロと忙しなく周囲を見回している。
「モエア、貴女落ち着きなさい」
「だって城に来るのなんて初めてだし~、
やっぱりフォレストトーレとは色々と雰囲気が違うわねぇ~」
魔法使いのアネスがモエアの挙動を窘めるが、
あまり効果はなさそうだ。
しかし・・・。
「流石に謁見の間の扉に着くと大人しくなったな」
「これだけ重厚且つ空気が張り詰めていればモエアといえどわかりますから・・・。
クランリーダー、基本的に我々はどうすればいいでしょうか?」
「謁見自体初めてなんだよ」
PTのサブリーダーを務めるノルキアが若干不安げな顔でそんな事を聞いてくるので、
俺は逆にセーバーにどうなんだ?という意思を込めて視線を送ったのだが、
田舎出身のセーバーは初体験だそうだ。
「入ったら陣形を崩さず俺の後に続け。
視線は揺らさず王と王妃の足下でも見ていろ。
俺が跪いたら遅れずに跪いて声が掛かるまで顔を上げるな。
呼ばれれば順々に名前を伝えればいい。だろ、メリー」
「はい。その流れでよろしいかと」
「うおっ!?びっくりしたぁ・・・気配全くしなかったんですけど・・・」
「ディテウスはまだまだだな。
名乗りが終わったら下がるように指示されるから部屋から出てメリーの案内で今日は休め」
「了解」
『お城はお城で色々大変なのですわね~』
リュースィの脳天気な言葉を最後に、
扉脇の兵士が大きな声でいつもの奴を発する。
「ブルー・ドラゴン一行入りますっ!!」
さて、今日最後のお仕事頑張りますかっ!
『先ほど説明したアスペラルダの人間です』
『あぁ、助けてくれたって言う?
なんか魔力は回復してるのにダルイのはなんで?』
『おそらく瘴気に犯されて無理な暴れ方をしたからでしょう』
なんだろうか。
アイス・ドラゴンやフロスト・ドラゴン達が基準になっているからか、
ブルー・ドラゴンのガキっぽい口調にすごく引っかかる。
「ブルー・ドラゴン、お初にお目にかかります。
アスペラルダから参りました水無月宗八と申します」
『アクアーリィ!』
『『・・・・』』
ニルはお役目が終わった時点であっちに帰した。
俺の挨拶に続けてアクアも名乗るが、
それに続く挨拶をクーもノイも行わずじっと様子を見ている。
「先ほどは瘴気の浄化の為とはいえ攻撃を加えたことお詫びいたします」
『普通だったら怒るところなんだろうけど、
抵抗している間の事は見えていたから仕方ないって理解はしているよ』
「ありがとうございます」
『それで?僕が気を失ってからの間に何があったのか、
その部分を知らないんだよね。
ムグンダールも目と腕を失ってるし』
ムグンダールとはフロスト・ドラゴンの片割れの名前らしい。
ちなみにもう片割れは再び小さくなって俺の肩の上に乗っかって魔石作りに専念してくれている。
とりあえず、事情の説明をフロスト・ドラゴンと合同で行い、
セーバーPTも中心部の広場に戻す運びとなった。
ついでにフロスト・ドラゴンの傷を治す試しについても相談したところ、
『出来るならやっちゃってよ。見ていて不便そうだよ』とのこと。
「では、この文字を飲み込んでください」
『・・・了承』
いくらブルー・ドラゴンに許可をもらったとはいえ、
やはり知らない魔法を体内に入れるのを嫌なのか不承不承という苦々しい顔を器用に示しながら一口に飲み込んでしまう。
『があああああああああああああああああ!!!!』
『おぉぉぉ・・・これ自分じゃやりたくないよ・・・』
ゴキリゴキリ、バキボキ、グチュグチュグチャ・・・・。
失われた腕と目玉の細胞が活性化し急激な分裂運動を行い始め、
みるみるうちに肉は盛り上がり、
骨も構築されどんどんと血管が再生するのに合わせて血がドパドパと地面に流れ出ていく。
失われた部位の修復ほど痛いものはないだろう。
ガタイがでかい分叫び声も大きく、
両手で耳を塞いでも体全体で受ける振動波が否応なしに共鳴して頭がおかしくなりそうな五月蠅さを感じ取ってしまう。
ニルを帰すんじゃなかった・・・。
しばらくすれば叫びも収まり、
片目から血の涙を流しハァハァと息を荒げて片足を着くフロスト・ドラゴン。
よく気絶しなかったもんだ。
俺たちなんて先ほどの叫びが効いていてまだ体の感覚と耳が遠くなってしまっている。
「ブルー・ドラゴンも念のためやっておきますか?」
『え?ぼ、僕はいいよ。
オベリスクで空いた穴は時間が経てば治るレベルだし、
精々胸のところの窪みが痛いかなぁ~って程度だよ。その治療はいらないよ』
『ムグンダール様の治療が始まってすぐやりたくないと口にしておりました』
「あの叫びの中で聞こえたのか?」
『口の動きを読みました』
クーはどこまで有能になれば気が済むのだろうか。
「ムグンダール、大丈夫ですか?
しばらく小さくなった方がいいかと思います。
魔石もまた用意いたしますので・・・」
『はぁはぁ・・・助かる』
魔法生物である龍の治療にはおそらく魔力を相当に使用したのだろう。
せっかく潜口魚戦で失った魔力が回復したばかりなのに、
また枯渇状態になっている様に見受けられた為、
小さくなることを提案すると思いの外素直に言うことを聞いてくれた。
「アクア」
『あ~い。《ホワイトフリーズ》セット:魔石~』
小さくなったフロスト・ドラゴン用にアクアが魔石に魔法を込め、
それを口に含むとふらつきながらもブルー・ドラゴンの側を離れようとはしなかった。
たぶんフロスト・ドラゴンは俺たちと同じ近衛の立場なんだろうな。
小さくなっても立ちっぱなしで休もうとしないフロスト・ドラゴンの様子を上から見下ろしていたブルー・ドラゴンは、
冷たいため息をひとつ吐くと同じ程度まで自信の体を小さく変化させた。
『こっちの方がボクは格好いいと思うです』
「俺もだ」
小さくなったブルー・ドラゴンは、
横長で立派な翼を残しつつスリムで小さい体型になり、
その姿にノイを俺は感嘆の声をこぼす。
賢いワイヴァーンに見える。
しかも色違いのレアモンスターに見える。
『何か失礼な事を考えているね?』
「滅相もございません。
小さい姿の方が我々としても首が疲れませんし助かります」
『ふぅ~ん、まぁいいけど・・・で?
これからどうするつもり?』
「どうするとは?」
『僕もねブルー・ドラゴンとはいえ、
オベリスクなんてものが相手だと死んじゃうってのがわかったし、
出来れば龍族全体を守る為の知恵を貸してほしいところなんだよね』
龍ってファンタジー小説とかだと割と高飛車というかプライドがめちゃ高いけど、
この世界の龍は以外と殊勝なんだな。
アイス然りフロスト然り、
お堅い口調だったからイメージ的にも似たようなものかと思っていたけれど、
ブルー・ドラゴンの先の言葉に反対意見も挟んでこない。
「そもそも今回はステルシャトーがブルー・ドラ・・」
『ブルー・ドラゴン。フリューネでいいよ』
「・・・フリューネの[竜玉]を戯れに欲しがったことで起きた事故のようです。
なので、この場で同じ生活をすることも可能かと思います」
『ふぅ~ん・・・エルレイニア、どう思う?』
『危機感を拭えないのは事実。
我々が敗北し彼らに助けられたのも事実。
人里から離れていても危険があちらから来るのであれば、
ブルー・ドラゴンだけでも彼らと行動を共にした方がいいのではないかと』
その辺どうなの?といった表情で俺に顔を向けるフリューネ。
「だが、断る!」
『あれぇ?なんか力強く断られたんだけど!?
ほら、僕は戦闘も出来るし希少な存在だし、えっと・・、
そうそう!精製できる魔石もフロスト・ドラゴンよりも高品質に出来るよ?』
「確かに一緒に来ていただければ守りやすくなりますし、
戦闘面も助けていただけるのはありがたい。
でも、これ以上世話を増やせないので」
協力いただく代わりに守るという部分は個人的に有りだと思っている。
フリューネの言う通りに魔石の精製は今後も続けていく必要があるし、
戦闘もこなせる上に魔力タンクとしては最高級品。
全然有り・・・・なんだけどぉ。
「うちにはすでに世話の掛かる5姉妹が居ますので」
『そうだ~!ますたーはアクア達の相手で忙しいんだ~!』
『お父さまの愛はクー達の物です!』
『別にボクはどっちでもいいです』
『(私ぁ賛成派、です)』
この場には一人足りないけれど、4姉妹中2人は声を大にして不要を主張。
1人は無効票、残る1人は賛成と意見も分かれた。
しかし、どちらにしろフリューネの喋りを鑑みた結果、
面倒が増えることは確実だし何より勇者よりも戦力過剰になることがモブキャラとして引っかかった。
『得を理解しつつも家族を優先する。納得。
では、ブルー・ドラゴンの世話に我かムグンダールを付ければどうか?』
『検討。守りが1枚になるのは不安が勝る』
『しかし、いずれにせよ我らは敗北する。
であれば人間に協力して本丸は逃がし、
巣の管理の必要性から我らが残るのは必然』
どうやら龍サイドは俺たちの元へブルー・ドラゴンを逃がしたいらしい。
それでも即決出来るほど俺たちのことを知らないし、
いままで離れて暮らしていた理由などもあるんじゃないかな?
だが行く行かない討論はそれほど時間も掛からずに終了し、
結局のところは駄目なところを探すよりも利の方が大きく傾いたっぽい。
「じゃあ、どうしても着いて来るんですか?」
『肯定。ムグンダールは療養が必要なため残し、
我とブルー・ドラゴンが其方に着いて行く』
『そういうことになったよ。よろしくね。水無月宗八』
むむむ・・・。
これは面倒な事になったとはいえ、俺たちには得もある。
世話役も着いて来るならまぁ俺たちの負担は限りなく少なくなるかな?
「はぁ・・・、わかりました。
我々に協力いただく代わりに私たちはフリューネを守ればいいのですか?」
『それと我らは精霊たちよりも普段吸収する魔力量が多い』
「つまり食事の提供も希望されるのですね。
その点については常に、でしょうか?それとも我々と同じ食事の時だけでしょうか?」
『僕は減った分の供給をしてもらえればいいかなぁ。
どうせアスペラルダに行ったら小さい体で居なきゃならないだろうから、
動かすときの消費量も少ないし』
ふぅ~む。その程度でいいなら別に面倒ではないか・・・。
飯時に魔石に魔法を込めて口に含ませておけばいいだけだし、
魔神族との戦闘もそうそう起こるものではない。
シュティーナの言い方では、
フリューネの[竜玉]を狙ったのはステルシャトーの独断だったっぽいしな。
「はぁ・・・。
アクアとクーはあっちに連絡。龍二匹を連れて今日戻るって伝えてくれ」
『あ~い』
『かしこまりました』
決まってしまえば覚悟も出来るという物だ。
あっちでの生活とかをどうするのかとかはもう後で考えるとして、
今は連れ帰る事に決まったのだから帰る準備を進めることにしよう。
「では我々は帰る準備を行いますので、
フリューネも準備があれば整えておいてください」
『何かあるかな?』
『ございません』
『じゃあ、準備が整うまでのんびり待っていることにするよ』
「わかりました」
島に住む龍たちが基本的に寝て過ごしている事は周知の事実であったし、
本などの娯楽もないだろうから、
予想通りではあるんだけどね。
踵を反しながら俺は失礼な事を考えつつ、
足はセーバー達の元へと向かう。
「どうだったよ」
「龍を連れてアスペラルダに帰ることになった。
テントは全部片していい」
「クランリーダー。我々も登城させていただけるのですか?」
「まぁ、その辺はアルシェたちがうまくやるだろうから、
部屋は用意されると思うぞ。
その後の動きについては各所と相談になるだろうけど」
こいつらは元々フォレストトーレ出身なので、
アスペラルダの戦力を考えるわけにもいかない。
そして通常通りに入国をしたわけでもない。
扱いに関しては俺の部下って事に落ち着くと思うんだけど、
それでも着地地点がどうなるかは王様達が判断を下すことになる。
ただ、ゼノウ達という先進者がいるから悪いようにはならないだろうさ。
『水無月宗八。魔石が出来たぞ』
「おぉ!じゃあ帰る準備を進めている間に外で試してみるかな。
片すのは慌てなくていいからな。
ちょっと外に出てくる」
『我の尻に手を宛がうのだ』
嫌だなぁ・・・。
忘れてたけど、魔石って龍のう○こなんだよね。
でも、もう帰るって指示も出したし受け取るしかないんだよね・・・。
『マスター、このまま受け取らなくてもいいんじゃないです?』
「確かに・・・。
フロスト・ドラゴン、降りていただいてもいいですか?」
『・・・了承』
何故に渋々なんだ・・・。
入り口まで戻ってきた俺たちはさっそくフロスト・ドラゴンを肩から下ろし、
珍しい龍の魔石排出シーンを雁首揃えて見守る。
ブチチ・・グチョ・・・ブリブリ。
鶏で言えば総排泄口といえばいいのか、
とにかくう○こが出る穴と卵の出る穴は同じらしく、
まず粘りけのある透明な液体が先行してヒクつく穴からトローリと垂れ始め・・・。
『其方ら・・・、何故後ろに回って寝そべっているのだ?』
「あ、いえ、お気になさらず。
早々見る機会がないので社会科見学というか・・・。
あ、クー。液体は念のため確保しておいてくれ」
『かしこまりました、お父さま』
『ううぅぅぅ、ヒクヒクしてるです・・・』
『おぉ~すごいね~』
『・・・・・ゴクリ』
寝転ぶ俺の周りと体や頭の上に乗って龍の排出を見守る俺たちだが、
その姉妹の中で一番興味津々なのが生唾まで飲んでいるアニマというね。
おまえ一番知識も経験もあるやろがいっ!
ブリョリリョブチチチ・・・。
お、おぉぉ・・・、おおおおおおおおおおおお!!!
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!
『さぁ、手にするといい』
フロスト・ドラゴンは人差し指サイズの魔石を無事に出産すると、
後ろで寝そべる俺たちへと向き直り先の言葉を口にした。
視線を龍の顔から戻すと、
目の前には氷の地面にキラキラと陽の光によって輝くベチョベチョの魔石。
再び視線をあげると何かを成し遂げた顔をした龍。
「・・・・アクアちゃん、キレイキレイしてちょうだい」
『あい。《アクアボール》』
スッと立ち上がると長女に掃除をお願いする。
アクアも触りたくはないのか入念にアクアボールを回転させて、
洗濯機で洗うが如くグルグルと水をかき回して粘液を魔石から分離させていく。
『は~い、綺麗になりましたぁ~』
「あんがと。う~ん、やっぱり形とかは調整出来ないんですね」
『出来上がる形はその時その時で変わる。
ブルー・ドラゴンであればもう少々希望の形に仕上げられるはずだ。
我は小さめに調整する程度しか出来ぬ』
「これを使ってさらに濃度の高い魔力を魔石にする工程を繰り返せば、
徐々に濃度を上げられますよね?」
『肯定。まずは其方が扱えるレベルを計るためにも使ってみよ。
我の見立てでは後二度精製を繰り返すラインまでならば扱えるだろう』
フロスト・ドラゴンに促されるままに俺は魔石を握り込む。
結局のところ自分の魔力を意識して濃度を上げることは出来ても、
希望するラインには全くと言っていいほど届かず、
魔神族に効果のあるラインとなれば魔法剣になるので、
実際どのくらいのレベルまで濃度を引き上げなければならないのかもわかっていない。
「《アイシクルエッジ》セット:魔石」
『そろそろ中級魔法を覚えてもいい頃合いです?』
『魔導書がないんだよ~』
『ダンジョンに潜る時間もありませんしね』
『アクアの魔法では純宗八魔力で造れなくなる、です』
拾った魔石に魔力を込めた場合の効率だと、
宝物庫に落としている程度の欠片であればすぐ充満するが、
それよりも二回り大きいこの魔石だと俺の魔力から造られているとはいえどの程度の効率か・・・。
魔石を手で摘まみ覗き込むと、
中心部に現れた俺の魔力光が徐々に徐々に大きくなっていくのがわかる。
この調子なら2分くらいで充満しそうだ。
これが中級魔法や上級魔法であればさらに早く充填出来るだろう。
『・・・2分と12秒です』
「まぁ、予想通りか」
人差し指と中指の間に魔石を挟んだ状態で前方に手を伸ばす。
イメージは無詠唱による魔力を直接制御力で操作して攻撃に転用すること。
そのイメージに合わせて手の先に存在する自分で掻き集めるよりも濃度の高い魔力を操作してみると・・・。
「あれ?普通の魔力と同じ感覚で操作できる・・・」
『宗八の魔力制御力は成長してそれなりではありますが、
元の魔力濃度から上げるために集める。
その過程で制御力を使ってしまい濃度が希望する高さにならないの、です』
「じゃあ、濃度は関係なく操作に関しては問題ないのか?」
『いえ、それもそっちの龍が説明していたように、
扱える濃度レベルは存在する、です』
ここぞとばかりにアニマ先生の知識の恩恵を受け、
現状の理解を進める。
つまり、本来は自身の制御力を用いて集めるところから始めなければならないけれど、
魔石で濃度を上げる事によって操作に集中できるということか。
『でも、まだ直接攻撃には向かないね~』
「そうだな、まだ足りない。
魔石の再精製でどのくらいまで魔石の効率が上がるか、だな。
まぁ魔法剣に使おうと思えば、
砕くときと同じように魔力を乗せて撃つことも出来るんだろうけど、
今は先に剣の確保を先にしないとな」
そうと分かれば魔石の魔力は解除してしまい、
続きは城に戻ってから行うことにする。
「んじゃ、帰ろうか」
『あい!』
* * * * *
「ようこそいらっしゃいました、ブルー・ドラゴン。
アスペラルダ国の姫、アルカンシェ=シヴァ=アスペラルダでございます。
王と王妃が挨拶と今後について話があるとの事なのですが、よろしいでしょうか?」
『かまわないよ。宗八はどうするのかな?』
「私も着いて行った方がよろしければ同行致します」
『じゃあ、一緒に来てもらおうかな』
「わかりました」
ゲートを繋げて夕刻に差し掛かった頃に城に戻った俺たちをアルシェが出迎えてくれた。
一応、生物学上は上位種の龍相手とはいえ、
友好関係もなくただただ遠くで暮らしていた者同士で龍の方から国に来たからか、
王達はいつもの謁見のまでフリューネを出迎えるらしい。
「お兄さん、お帰りなさい」
「ただいま、アルシェ。
アクア達を任せてもいいか?」
「はい、長引くようであれば先に寝かせておきます」
「ありがとう。あと、クレアには連絡入れた?」
「そちらも滞りなく。
明後日と伝えましたけど間違いないですよね?」
「あぁ。明日はセリア先生との合流地点に先についておきたいから、
一日そっちで潰す予定。
で、明後日クレア達と一旦合流しよう」
「わかりました。では、ブルー・ドラゴン。
お先に失礼いたします」
『出迎えご苦労だったね。
また機会を作って話をしようよ』
「ありがとうございます」
フリューネと地面を歩くフロスト・ドラゴンを連れて出発する前に、
アルシェにお疲れの微笑みとなでなでをプレゼントし、
子供達には口パクで大人しく寝ているようにと伝えると、
みんなして俺の見送りに手を振ってくれる。
「セーバー達もあと少し付き合ってくれ。
出来る限り早めに解放して部屋の割り当てもするから」
「お前、その発言は護衛隊長の言葉じゃないぞ・・・」
『どちらかと言えば王子みたいでしたわね~』
「もう面倒だからある程度否定しないことにしただけだ。
部屋とかについてはアルシェとメリーがすでに調整済みだろうけど、
登城するわけだし王様と王妃様にはお目通りしておかないとな」
後ろからワラワラと落ち着いた様子で着いてくるセーバーPT。
ゼノウ達が登城した時とは違って大人だなぁという印象を受けるが、
弓使いのモエアだけはキョロキョロと忙しなく周囲を見回している。
「モエア、貴女落ち着きなさい」
「だって城に来るのなんて初めてだし~、
やっぱりフォレストトーレとは色々と雰囲気が違うわねぇ~」
魔法使いのアネスがモエアの挙動を窘めるが、
あまり効果はなさそうだ。
しかし・・・。
「流石に謁見の間の扉に着くと大人しくなったな」
「これだけ重厚且つ空気が張り詰めていればモエアといえどわかりますから・・・。
クランリーダー、基本的に我々はどうすればいいでしょうか?」
「謁見自体初めてなんだよ」
PTのサブリーダーを務めるノルキアが若干不安げな顔でそんな事を聞いてくるので、
俺は逆にセーバーにどうなんだ?という意思を込めて視線を送ったのだが、
田舎出身のセーバーは初体験だそうだ。
「入ったら陣形を崩さず俺の後に続け。
視線は揺らさず王と王妃の足下でも見ていろ。
俺が跪いたら遅れずに跪いて声が掛かるまで顔を上げるな。
呼ばれれば順々に名前を伝えればいい。だろ、メリー」
「はい。その流れでよろしいかと」
「うおっ!?びっくりしたぁ・・・気配全くしなかったんですけど・・・」
「ディテウスはまだまだだな。
名乗りが終わったら下がるように指示されるから部屋から出てメリーの案内で今日は休め」
「了解」
『お城はお城で色々大変なのですわね~』
リュースィの脳天気な言葉を最後に、
扉脇の兵士が大きな声でいつもの奴を発する。
「ブルー・ドラゴン一行入りますっ!!」
さて、今日最後のお仕事頑張りますかっ!
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