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第09章 -奇跡の生還!蒼き王国アスペラルダ編Ⅲ-
†第9章† -06話-[メイフェルとデート、土精の遣い]
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「おら、メイフェル。口にケチャップ付いてるぞ。
こっちゃ向け」
「・・・・」
例え異世界といえど、
子供の感性を刺激する料理の盛り方は変わらないらしい。
トマトベースの炒飯がお椀盛りにされ、
ポテトや人参やブロッコリーによく似て異なる野菜と小分けにされたチキンで構成されたお子様ランチ。
『宗八、貴方アクアたちと一緒に居るときと変わらないわ。
それにケチャップって何、です?』
「ケチャップは俺の方で言うトマトの液体がどろっとした感じのソースだよ。
こっちだと・・・ケチョムだったか?似た名前だよなぁ」
6歳のメイフェルはスプーンとフォークを使って好き嫌いなく食べているが、
口回りは例のケチャップによく似たケチョムが付着していたのを拭いてやる。
「そういえばさ、アニマ。
人間と魔族と獣人の違いってあるのか?」
『違いといっても人間は宗八のいう陽の魔力がほどほどの地域の人種で、
魔族はその濃度が高い地域に済む人種、です!
まぁ高いと言っても何倍も違うわけではない、です!』
そう聞くと、俺たちの世界で言う白人黒人黄色人種程度なのか?
でも魔族と言えば角が生えている印象。
『もちろん角は生える種もいますし、
人種と言ってもこちらとあちらでは永い時のなかで完全に別物となっています。
地域によって魔力濃度も異なるので、
各地で独自の影響を身体に及ぼし姿は獣人にも見える種もいます、です!』
「なるほどなぁ。
そこまで人種が細分化されているなら友好派もいるかもな。
獣人は?」
『獣人は人種とは違う大陸で元からいた種族、です!
大陸の形が変わるに従って色んな方面に分布を伸ばして、
いまは土の国のさらに向こうが主な住処になっているはず、です!
基本的に身体能力は高いですが、
魔法は不得手というのが特徴ですかね・・』
「あとは元となる動物の特徴とかか」
『ですね。メイフェルはメークル族。
首回りと手首足首に暖かな毛が生えているのと、
頭のクルクルした角でわかりやすい種、です!』
現在いるのは冒険者食堂カンパレスト。
以前訪れていた際にアルシェとマリエルがバイト戦士として働いていた例の食堂だ。
どうせなら他国の飯を食べてみようかとも思ったんだけど、
結局値段も高いしカンパレストに入ることとなった。
俺たちをこの席に案内してくれたのは見たこともない店員だったことから、
あれから従業員も増えて経営も順調な軌道へと乗ったらしい。
あとでアルシェ達にも伝えてあげよう。
「魔法が不得手っていうのは全く使えないわけじゃないんだろ?」
『いいえ、全く使えません。
彼らは[気]を使うことで身体能力を向上させて戦う種、です!
それも成長と共に自然と使えるレベルで使用し始めるので、
人間でいう魔法がこれに該当するのでしょう』
「それは魔導書で覚えても使えないってこと?」
『そう、です!
どういうわけか、魔導書は人種にしか使いこなすことが出来ないので、
獣人が魔導書を読んでも使用した扱いにならず、
習得も出来ないですし魔導書も消えません』
それなら確かに納得のいく話ではある。
ゲームキャラでイメージすればわかりやすいけど、
獣人が前衛向きキャラ、人間が前衛も後衛もほどほどに出来るキャラ、
魔族が後衛向きキャラの枠なんだろう。
ただ、何事も例外というのは存在するのでここで思考停止するのは危険か・・・。
「いずれは獣人の大陸も魔界にも行ってみたいんだけどなぁ・・・」
『獣人の大陸は獣人の身体能力が無ければ、
人種ではたどり着けないほど道のりが険しかったと思います』
「俺たち空飛べるから」
『あ~、そうでしたね』
それにしても気ねぇ。
視線は自然と黙々と食を進めるメイフェルへと移り、
メイフェルも視線に気づいたのかお子様ランチから俺へと移って、
視線が絡むとニコッと笑ってくる。
かわいい。
とりあえず頭を撫でてあやしておく。
そういえばポルタフォールでパブロ副官と模擬戦をした時、
最後に打ち込んだ打撃が通背拳になった事があったけど、
あれは偶然が産んだ産物だった。
あれがもしも気を含んだ1撃だったのだとすれば、
人間にも扱えるものだったりするのかな?
「メイフェルも気を使えるのか?」
「・・・っ!っ!」フルフル
『メイフェルは戦闘が得意な種ではないですからね。
使えても微弱なものですから、
おそらく自身で認識していないレベルで使用しているのでしょう』
いまの俺の強さで昨日の試した限りでは、
割とすでに限界値に達していると感じた。
人種としてはまだ先を行っている将軍やアナザーワンといった存在はいるにしても、
俺という個人の才能の話で言えば、
この辺りが個人戦力としては限界だ。
もちろんステータス更新をすれば少々強くも成れるだろうさ。
レベルもまだ46なので、
100まで上げれば171GEM手に入る。
それだけの余裕があって尚、
マティアスには勝てる気がしない・・・。
あの素手での膂力は風精霊纏していて、
アニマの守護もあったというのに1撃で瀕死にまで追い込まれた。
あれはもうアニメや漫画の世界の住人だよ・・・。
『宗八?』
「いや、なんでもない」
テーブルの上に座りながらも考え込む俺の顔をのぞき込みながら、
心配をしてくれるアニマに頭を振って答える。
これからの事を考えれば情報の確信に近づく度に、
あのレベルに近い敵との戦闘だって起こりえる。
でも今の俺では足止めにもならない。
ってことは、
もっと創意工夫を凝らして技術を向上させないといけないし、
それは俺だけなく精霊達にも今以上の苦労をさせることになる・・・。
「どうしたもんかねぇ・・」
気も使える様になれば、
肉弾戦のレベルは比べものにならないくらい向上するだろうし、
イメージとしてはDBレベルまでいければ、
マティアスの相手も出来るかなぁなんて思ったりもしている。
ハチャメチャよ、絶対に俺には押し寄せてこないでくれよ・・・。
まぁ、獣人がどのくらい肉弾戦の力を持っているのかってのもわからないし、
そちらも含めて今後は情報を集めることとしよう。
* * * * *
「何か気になるものがあればじっくり見てもいいからな」
「・・・」コクコク
お腹を膨らましたあとは、
雑貨屋に寄ってお菓子を少々と小さなぬいぐるみを買ってあげ、
今は売っている物が日々移り変わる露天エリアへとメイフェルとアニマを連れてやってきていた。
『小さな子に甘い宗八のことだから高い物を買うかと思っていた、です・・』
「うちのが高い物を持ったメイフェルを見たら、
面倒になるからな。
買っても同じレベルの物だけにするのが無難なんだよ」
『アクアとニルは直接不満を言うでしょうけど、
クーは静かに落ち込みそう、です』
「・・・っ!」クイクイ
買ってあげる品物についても余所の子だからといって贔屓しては、
うちの精霊どもが不満を持つのは必然だ。
だからこそこっちも、
商品を吟味するメイフェルに何を買うかと問いながらもある程度誘導をして今手にしている商品を購入したのだ。
そんな子供事情を説明しているところで足下で繋いでいた手を引っ張り、
もうひとつの手に持っているペロペロキャンディーで指しながら、
気になる露天を見つけたことをアピールするメイフェル。
その飴先を見てみると、
商品は楽器のなりそこないみたいなガラクタがいくつか並び、
売り子の姿は土だか岩だかで作られた小さなカマクラ?の中に避難して暖を取っているらしい。
「はいはい、見てみようか」
『奇妙な形、です』
商品を前にしゃがみ込むメイフェルに合わせて俺もしゃがみ込む。
頭上からはアニマものぞき込んでは商品の正体を考えている。
商品は楽器に見えなくもないガラクタと、
石で作られたお守り?とフィギュアみたいな人形。
ただ、誰の人形かもわからないので手にしようとは思わないんだよなぁ。
「いらっしゃい」
「いらっしゃいませだ!馬鹿者!」
なんか異世界では初めて見る頭がハッピーな格好の少女と、
この寒い中肌着が半裸のくせに上着は暖かな物を着込む男性の2名が、
あの小さな岩クラからもそっと出てきた。
「あー、ここは何を売っている露天なんですか?」
しゃがんでから俺と繋いでいた手を離して手乗りサイズの人形を手にしては、
コレは何だろう?と疑問が浮かぶ顔つきをするメイフェル。
「メインの商品は手作りのお守りと雑貨だね。
人形は家のなかでのアクセントとして買って貰えればいいんだよ」
『アクセント・・・』
俺の質問には男性の方が答えてくれた。
まぁテーブルしかない部屋のなかにこの人形が置いてあれば、
確かにアクセントとしては機能するんだろうけどね。
木彫りの熊みたいな事をイメージしてなんとか納得する俺と、
必要性を検討し始めるアニマ。
「じゃあこっちは?」
「こっちは私が研究している新しい楽器よ!」
正解したくは無かった楽器なのだと答えたのは少女の方。
メインは男性でサブは少女が作った作品のようだし、
この2人は夫婦とかではなく親子か師弟なのかもしれないな。
「楽器は弦楽器が3つだか4つしかないと聞いているんだけど・・」
「そうよ!だから新しい楽器を作れないかといろいろな人脈を利用して、
なんとかここまでは形になったんだけどね・・」
「なにか問題が?」
「これを鳴らせたのが風精霊の知り合いだけなのよね。
他の協力者に吹かせても全く音が鳴らなくて、
精霊と人間の違いじゃ何が原因なのかよくわからなくって」
中身がどうなっているのかはわからないけど、
口を付ける部分と音が出る部分は理解できる。
一応弦楽器ではなく管楽器だろうけど、
石で作られている所為でトランペットサイズのくせして4キロくらいある。
「吹くって事は息を入れればいいのか?口はこっち?」
「あ、チャレンジしてみる?そうよ、口はそっち」
「・・・っ!」
メイフェルがやる気を漲らせた瞳で俺に飴を差し出してくる。
あぁ、持っててってことか。
でも、4キロの楽器を持てるのかね?
そんな俺の懸念は気にしたのが馬鹿らしくなるほどあっけなく解決した。
『気を使っているのでしょう』
「本来は持ち上がらない物でも気を使えばいけるのか・・。
意識してじゃないのか?」
『使った様子から、
この程度は息をするようにいつも利用しているレベルなのでしょう』
「ふぅん」
息を思いっきり吸い込むメイフェルは、
肺がいっぱいになったタイミングで、
急いで小さな筒状になっている吹き込み口に口を付ける。
ほっぺもリスの様に膨らませ、
どんどんと息を流し込んでいくのだが、
ラッパ部分からはコォーという息が流れ出てくる音だけが聞こえてくる。
「もう諦めたらどうだ?やはり風精霊にしか鳴らせない代物なんだろう」
「えぇー、せっかくここまで形になったんですよ?
ここで諦めたらクリエイターの名が廃りますよぉ」
「・・・っ!」
「一気に息を使いすぎて酸欠になっただけだ。
落ち着いてゆっくり息をしな」
結局音は一切鳴らすことの出来なかったメイフェルは、
頭がくらくらしていると訴えかけてきた。
ゆっくりと深呼吸をさせると症状もすぐに収まり、
メイフェルは次はお前だとばかりに俺に楽器を突きつけてくる。
「う~ん、吹き込み口が小さいし・・・、
楽器に吹き込むのも久し振りだからうまくいくかなぁ?」
『以前に吹いた事があるのですか?』
「元の方でな。それも10年以上前の話だし、
マッピも無い状態は難しいんだよ」
「マッピ?」
「まぁ物は試しです、吹いてみてください。
鳴ればヒントに繋がるかもしれませんし」
見た目はピストンもなく管部分の多くが箱に収められたおかしな形のトランペット。
箱を横から両手で掴んでそっと口を細い筒へと付けて落ち着いて息を吐き出しながら唇を震わせる。
プゥワ~~~~~~~♪
「おぉ!」
「鳴った!鳴りましたよ!人間でも鳴らせるんじゃないですかぁー!!」
「・・・・」パチパチパチ
音は辛うじて鳴ったけど、
なんとも気の抜ける音だな・・・。
いや、俺が音をちゃんと鳴らせていないからってのが原因なんだけどさ。
音が鳴って喜ぶ店員2人とオー!という口をして拍手をくれるメイフェル。
「どうやって鳴らしたのか違いを教えてもらってもよろしいですか?」
「音というのは空気の振動なので、
震えていない息が流れただけでは吹き込み音しか出ないんです。
だから唇を震わせて空気に振動を発生させれば音が鳴るんです」
「空気の振動?」
「・・・・っ!」クイクイ
「何教えてほしいのか?
唇の力を抜いたまま息をちょっとだけ抜いてみろ。
息を押し出して勝手に唇が動く感じだ」
俺の説明を聞いたメイフェルが物欲しそうな顔をして服を引っ張ってくるので、
目の前にしゃがんでから片方の手でピースを作ってから自分の唇の端にあてがい実演してやる。
そして空いたもう片方の手もピースを作ってメイフェルの口端を押さえてやった。
プルッ!プルッ!と実演を見せながらメイフェルに教える横で、
店員もアニマも同じようにプルプルと挑戦をしている図は、
果たして道行く方々から見るとどう映るのだろうか。
少しの練習でなんとか形になってきたプルプルで再挑戦をするメイフェルは、
なんとかプヘェ~、プ・・・プヘェ~と音を鳴らせて嬉しかったのか、
その場でぴょんぴょんとジャンプで喜びを表す。
「獣人の子も鳴らせたってことはお客さんの言うとおりなんだなぁ。
よくそんな事を知っていましたね」
「まぁ、偶々ですけどね」
「あのあの!他に何か改良した方がいいとかアドバイスはありませんかっ?」
「吹き込み口が小さいので音が出しづらいですから・・・、
あー、ちょっと待ってください」
アドバイスをするにしてもどういう物が必要かと具体性を持たせる為に、
一旦言葉を切って念話でアクアに連絡を取る。
「シンクロ」
「「っ!?」」
蒼天のオーラが吹き出すことにギョッとする店員の反応は気にせずに、
両手を合わせてマウスピースをイメージしながらゆっくりと手を開いていけば、
そこには氷で出来たマウスピースがコロンと転がっている。
作ったこれは目の前にあるトランペットモドキに合わせて作ったので、
このまま吹き込み口に装着することも出来る。
「あの・・・」
「こういう口を付ける部分を追加すれば音も出しやすくなると思いますよ。
試しにメイフェル、冷たいけどちょっと吹いてみるか?」
「・・・っ!」コクコク
何かを言いかける店員さんだったけど、
興味津々といった様子でマウスピースを見つめるメイフェルを優先して、
楽器に装着して試しに吹かせてみると、
今度はちゃんと俺よりもしっかりとした音が鳴る結果となった。
「まぁ、このままだと音も3音程度しか出せないので、
空気の流れを変えて色んな音が出せる様になればもっと良くなりますよ」
「3音とはどういう意味でしょうか?」
俺が吹いたことがあるのは3ピストンの楽器だけなので、
それを鑑みれば音としては押さなくても鳴らせる、ド・ソ・ドだけだ。
口を楽器に付けて競馬で聞くようなSEを吹いてこういう音だと伝える。
『宗八、上手いですね』
「マッピがあればこのくらいは出せるさね」
「いまの音しか現状は出せないって事ですね、なるほど・・」
「制作者じゃないのに初見でそこまで見抜けるとは・・・、
貴方・・・クリエイターですね!」
「いえ、違いますけど。
音について研究したことがあるだけですよ。
アドバイスはこのくらいですけど、参考になりましたか?」
「いやはや、参考どころではありませんよ。
まさに脱帽でした」
「これで開発を辞めなくてもいいですよね、パラディウム様!」
元の悩みであった風精霊以外に音を鳴らすことの出来なかった不出来な楽器だったが、
その問題の解決が出来たことで開発も継続して行えるようだ。
楽器は吹けても構造までは覚えていない俺としては彼女の開発が上手くいくことを願うばかりだ。
* * * * *
「・・・」
「これにするか。
俺もアルシェ達にお土産で買っておくかな・・・」
楽器の話は終わり、
改めて落ち着いて商品を吟味したメイフェルが選び抜いたお守りを指さし、
俺も淡い青色が混ざる水晶で作られたお守りをお土産にと検討を始めた。
「その・・お客さん。
つかぬ事をお聞きしますが・・・」
「ん?なんですか?」
「もしかしてとは思っていたんですけど、精霊使いなのですか?」
「えぇ・・まぁそうですね。
契約している精霊のほとんどは別行動中ですから、いまは頭の上のコレだけですけど」
「コレ!?宗八はいい加減ワタクシの扱いをもうちょっとどうにか出来ないのですかっ!」
検討するそんな中で店員の男性、パラディウムさんから質問され、
精霊使いであることと、
精霊の定位置のひとつである頭上で寝転ぶアニマを指差して回答す
る。
紹介が雑だったことに定期クレームを入れるアニマの戯れ言は右から左に聞き流し、
何故精霊使いか確認してきたのかと続きを促してみる。
『実は私たちは土属性の上位精霊で、
こうやって行商と開発をしながら各地を旅しているのですよ。
そんな中で数ヶ月前に我らの王ティターン様から捜索を頼まれまして』
「捜索・・・何を?」
『1年くらい前に私たちの故郷から多くの浮遊精霊が誘拐され、
犯人と連れ去られてしまった精霊の行方を捜索していたのですが、
その件で進展があったらしく』
『なんでも、
とある精霊使いが数名の浮遊精霊を助けてくれたんだそうです。
故郷まで連れてきてくれた上位の風精霊から聞いた話から、
ぜひ礼をしたいから会えたら案内しろと命令が各地の土精霊に下されて・・・』
断片的に出てきた情報から土属性の浮遊精霊が誘拐された事、
キュクロプスから助けた土精数名とポルタフォールで助けた数名の事、
故郷まで連れてきたのが風精の上位者となれば、
その捜索されている精霊使いは俺の可能性が高い。
でも、自分から名乗り出るのはなんか言い出しづらい。
だって見栄張ってるみたいじゃないか?
『ただ、うちの王は口べたで詳しい情報を受け取れていないから、
各地の上位精霊はみんな混乱しているんですよね・・・。
名前も分からないし、性別もわからないですから・・・』
『うんうん』
『それはご愁傷様ですね。
確かにそれだけでは探しようがないですし、
精霊使いもそう多いわけではないですから増々探しようもないでしょう』
『いや、全くですよ。
我々が見つけた精霊使いは捜索を始めてお客さんが初めてですから』
そりゃ前途多難で苦労をしているんだな、土精可哀想。
ほ~、ふ~んと相槌を打ちながら会計を進める。
話を聞いて一番真剣なのは無精の王アニマだけという体たらくだ。
『ちょっと宗八、何か彼らにアドバイスはないんですか?』
「え?俺だって他の精霊使い探して見つからないから生産したんだぞ?
アドバイスなんて俺が欲しいくらいだっての」
『使えないマスター、です!』
『いえ、偶々出会えた精霊使いが、
いきなり当たりというのも運が良すぎるという物です。
身に覚えのない話をされても迷惑なのは百も承知なので仕方ありません』
まぁ内心はお探しの人物が俺かなぁ?とは思っていますけどね。
ただ、セリア先生かノイの名前が出てこない限りは、
警戒心が勝って名乗り出る気にはならないな。
そろそろメイフェルも話に飽きたという顔もしているし、
時間もないから俺も他の露天を見たいので、
最後の質問を投げてここを離れる決意をする。
「最後に聞きますけど、
助けられた精霊の名前とかは聞いていますか?」
『名前ですか?いえ、数名同時に届けられたとかで名前までは・・・』
『いや、1人だけ名前が判明していたはずだ・・・、
確か名前は・・・グランツァー、そうだ!グランツァー!』
俺の質問に少女の方は覚えていなかったらしいが、
パラディウムさんの方は心当たりがあったようだ。
しかもその名前に名付け覚えが有り、
数名の土精の中でも1人だけしか名乗らなかった時点で確定だろう。
「あー、じゃあその探しているっていう精霊使いは俺で正解ですね」
『へ?』
「フルネームはノイティミル=グランツァー。
砂トカゲの姿をしていて、
アイアンノジュールに届けた風精はセリア=シルフェイドですかね」
『えぇ・・・?』
「というか、俺も明日からノイの迎えに向かう予定だったんですよね」
『『ええええええええええ!!??』』
「・・・・?」
『どうせ、そんな事だろうと思っていました。
何に巻き込まれるかわからないから警戒していたんですね・・』
拍子抜けの結果に間抜け顔をさらす土精2人組。
メイフェルは話をよくわかっていない顔で何を驚いているのだろうと首を傾げ、
アニマは俺の回答に呆れてため息まで吐く始末。
お前も俺がわかってきたじゃないか。
基本は面倒くさがりなんだ。事なかれ主義なんだよ。
「で?確証を持ってからそのお話はまた持ってきてくださると助かるのですが?」
『そ、そうですね・・。
私たちもちょっといきなり過ぎてどうするのが正しいのか判断つきませんし、
一旦この話は持ち帰らせて頂きます』
『ご連絡は・・・どうしましょうか?』
「ギルド経由でアスペラルダのギルドマスターであるアインスさん宛てに、
場所と時間だけ伝えてくれればいいですよ。
2ヶ月以内であればそちらに合わせます」
『わかりました。至急で確認を取ります』
「よろしくお願いします、ではこれで」
『あ、ちょっと待ってください!』
とりあえず精霊使いの捜索についての話には期間を設けることで、
この場で拘束されることを回避するのに成功した。
メイフェルも飴を舐め終えてしまい、
新しいお菓子を肩掛けバッグから取り出して食べ始めてしまっている。
早く次の刺激をお姫様に提供しなくてはエスコート役としては失格だろう?
そう思って立ち上がったところで少女の方から留められてしまう。
なんじゃい。
『購入されたお守りに何を願うか決めてください。
この中に水晶の板を入れるのですが、
そこに文字を入れられるんです』
『なんともロマンチックなお守り、です!
これならアルカンシェも満足するでしょう』
ドッグタグ程度の大きさのお守りは真ん中が空洞として作られており、
その中に願い事を刻んだ板状の水晶を入れることで完成するとの事。
別にそこまで大仰な事を考えて選んだ訳でもないから、
無難にアルシェは・・無病息災。
マリエルは・・・一族繁栄。
メリーは・・・縁結び。
マリエルはカエル妖精一族の生活を変えるためという目的を持って島を出たし、
メリーに至っては腐っているから良縁があることを願って縁結びを祈願する。
『はいは~い、すぐにご用意いたしますね』
そう言ってマッピを作った俺と同じように両手で板を挟み込むと、
一瞬で文字が刻まれてはお守りへと差し込まれていく。
『は~い、お待たせ致しました。
では、またお会いしましょう。毎度、ありがとうございました~』
『語尾を伸ばすなっ!ありがとうございました。
またのご利用をお待ちしています!』
少しお気楽ハッピーな少女と真面目な青年の可笑しな土精2人組だったな。
立ち上がりながらメイフェルの髪をワシワシとして出発することを伝えると、
やっと~?ってな不満顔をしつつ頭に乗っける手を繋いで早く早くと引っ張られる。
はいはい、お待たせ申し訳ありませんでしたよ。
お時間はまだまだありますから、
お走りになられると危ないのでゆっくり歩いて行きましょうね。
『なんだか宗八が小さい子に気に入られる理由が少しわかりました。
言葉は雑ですけど、
気配りとかそういう細かな部分が大事にされているとわかるのですね』
「んなわけないだろ。
グズると面倒だから飴を与えたり、
ほどほどに頭を撫でたり、
繋ぎたがる気配を察して手を繋いだりしているだけだ」
『それ、です!』
こっちゃ向け」
「・・・・」
例え異世界といえど、
子供の感性を刺激する料理の盛り方は変わらないらしい。
トマトベースの炒飯がお椀盛りにされ、
ポテトや人参やブロッコリーによく似て異なる野菜と小分けにされたチキンで構成されたお子様ランチ。
『宗八、貴方アクアたちと一緒に居るときと変わらないわ。
それにケチャップって何、です?』
「ケチャップは俺の方で言うトマトの液体がどろっとした感じのソースだよ。
こっちだと・・・ケチョムだったか?似た名前だよなぁ」
6歳のメイフェルはスプーンとフォークを使って好き嫌いなく食べているが、
口回りは例のケチャップによく似たケチョムが付着していたのを拭いてやる。
「そういえばさ、アニマ。
人間と魔族と獣人の違いってあるのか?」
『違いといっても人間は宗八のいう陽の魔力がほどほどの地域の人種で、
魔族はその濃度が高い地域に済む人種、です!
まぁ高いと言っても何倍も違うわけではない、です!』
そう聞くと、俺たちの世界で言う白人黒人黄色人種程度なのか?
でも魔族と言えば角が生えている印象。
『もちろん角は生える種もいますし、
人種と言ってもこちらとあちらでは永い時のなかで完全に別物となっています。
地域によって魔力濃度も異なるので、
各地で独自の影響を身体に及ぼし姿は獣人にも見える種もいます、です!』
「なるほどなぁ。
そこまで人種が細分化されているなら友好派もいるかもな。
獣人は?」
『獣人は人種とは違う大陸で元からいた種族、です!
大陸の形が変わるに従って色んな方面に分布を伸ばして、
いまは土の国のさらに向こうが主な住処になっているはず、です!
基本的に身体能力は高いですが、
魔法は不得手というのが特徴ですかね・・』
「あとは元となる動物の特徴とかか」
『ですね。メイフェルはメークル族。
首回りと手首足首に暖かな毛が生えているのと、
頭のクルクルした角でわかりやすい種、です!』
現在いるのは冒険者食堂カンパレスト。
以前訪れていた際にアルシェとマリエルがバイト戦士として働いていた例の食堂だ。
どうせなら他国の飯を食べてみようかとも思ったんだけど、
結局値段も高いしカンパレストに入ることとなった。
俺たちをこの席に案内してくれたのは見たこともない店員だったことから、
あれから従業員も増えて経営も順調な軌道へと乗ったらしい。
あとでアルシェ達にも伝えてあげよう。
「魔法が不得手っていうのは全く使えないわけじゃないんだろ?」
『いいえ、全く使えません。
彼らは[気]を使うことで身体能力を向上させて戦う種、です!
それも成長と共に自然と使えるレベルで使用し始めるので、
人間でいう魔法がこれに該当するのでしょう』
「それは魔導書で覚えても使えないってこと?」
『そう、です!
どういうわけか、魔導書は人種にしか使いこなすことが出来ないので、
獣人が魔導書を読んでも使用した扱いにならず、
習得も出来ないですし魔導書も消えません』
それなら確かに納得のいく話ではある。
ゲームキャラでイメージすればわかりやすいけど、
獣人が前衛向きキャラ、人間が前衛も後衛もほどほどに出来るキャラ、
魔族が後衛向きキャラの枠なんだろう。
ただ、何事も例外というのは存在するのでここで思考停止するのは危険か・・・。
「いずれは獣人の大陸も魔界にも行ってみたいんだけどなぁ・・・」
『獣人の大陸は獣人の身体能力が無ければ、
人種ではたどり着けないほど道のりが険しかったと思います』
「俺たち空飛べるから」
『あ~、そうでしたね』
それにしても気ねぇ。
視線は自然と黙々と食を進めるメイフェルへと移り、
メイフェルも視線に気づいたのかお子様ランチから俺へと移って、
視線が絡むとニコッと笑ってくる。
かわいい。
とりあえず頭を撫でてあやしておく。
そういえばポルタフォールでパブロ副官と模擬戦をした時、
最後に打ち込んだ打撃が通背拳になった事があったけど、
あれは偶然が産んだ産物だった。
あれがもしも気を含んだ1撃だったのだとすれば、
人間にも扱えるものだったりするのかな?
「メイフェルも気を使えるのか?」
「・・・っ!っ!」フルフル
『メイフェルは戦闘が得意な種ではないですからね。
使えても微弱なものですから、
おそらく自身で認識していないレベルで使用しているのでしょう』
いまの俺の強さで昨日の試した限りでは、
割とすでに限界値に達していると感じた。
人種としてはまだ先を行っている将軍やアナザーワンといった存在はいるにしても、
俺という個人の才能の話で言えば、
この辺りが個人戦力としては限界だ。
もちろんステータス更新をすれば少々強くも成れるだろうさ。
レベルもまだ46なので、
100まで上げれば171GEM手に入る。
それだけの余裕があって尚、
マティアスには勝てる気がしない・・・。
あの素手での膂力は風精霊纏していて、
アニマの守護もあったというのに1撃で瀕死にまで追い込まれた。
あれはもうアニメや漫画の世界の住人だよ・・・。
『宗八?』
「いや、なんでもない」
テーブルの上に座りながらも考え込む俺の顔をのぞき込みながら、
心配をしてくれるアニマに頭を振って答える。
これからの事を考えれば情報の確信に近づく度に、
あのレベルに近い敵との戦闘だって起こりえる。
でも今の俺では足止めにもならない。
ってことは、
もっと創意工夫を凝らして技術を向上させないといけないし、
それは俺だけなく精霊達にも今以上の苦労をさせることになる・・・。
「どうしたもんかねぇ・・」
気も使える様になれば、
肉弾戦のレベルは比べものにならないくらい向上するだろうし、
イメージとしてはDBレベルまでいければ、
マティアスの相手も出来るかなぁなんて思ったりもしている。
ハチャメチャよ、絶対に俺には押し寄せてこないでくれよ・・・。
まぁ、獣人がどのくらい肉弾戦の力を持っているのかってのもわからないし、
そちらも含めて今後は情報を集めることとしよう。
* * * * *
「何か気になるものがあればじっくり見てもいいからな」
「・・・」コクコク
お腹を膨らましたあとは、
雑貨屋に寄ってお菓子を少々と小さなぬいぐるみを買ってあげ、
今は売っている物が日々移り変わる露天エリアへとメイフェルとアニマを連れてやってきていた。
『小さな子に甘い宗八のことだから高い物を買うかと思っていた、です・・』
「うちのが高い物を持ったメイフェルを見たら、
面倒になるからな。
買っても同じレベルの物だけにするのが無難なんだよ」
『アクアとニルは直接不満を言うでしょうけど、
クーは静かに落ち込みそう、です』
「・・・っ!」クイクイ
買ってあげる品物についても余所の子だからといって贔屓しては、
うちの精霊どもが不満を持つのは必然だ。
だからこそこっちも、
商品を吟味するメイフェルに何を買うかと問いながらもある程度誘導をして今手にしている商品を購入したのだ。
そんな子供事情を説明しているところで足下で繋いでいた手を引っ張り、
もうひとつの手に持っているペロペロキャンディーで指しながら、
気になる露天を見つけたことをアピールするメイフェル。
その飴先を見てみると、
商品は楽器のなりそこないみたいなガラクタがいくつか並び、
売り子の姿は土だか岩だかで作られた小さなカマクラ?の中に避難して暖を取っているらしい。
「はいはい、見てみようか」
『奇妙な形、です』
商品を前にしゃがみ込むメイフェルに合わせて俺もしゃがみ込む。
頭上からはアニマものぞき込んでは商品の正体を考えている。
商品は楽器に見えなくもないガラクタと、
石で作られたお守り?とフィギュアみたいな人形。
ただ、誰の人形かもわからないので手にしようとは思わないんだよなぁ。
「いらっしゃい」
「いらっしゃいませだ!馬鹿者!」
なんか異世界では初めて見る頭がハッピーな格好の少女と、
この寒い中肌着が半裸のくせに上着は暖かな物を着込む男性の2名が、
あの小さな岩クラからもそっと出てきた。
「あー、ここは何を売っている露天なんですか?」
しゃがんでから俺と繋いでいた手を離して手乗りサイズの人形を手にしては、
コレは何だろう?と疑問が浮かぶ顔つきをするメイフェル。
「メインの商品は手作りのお守りと雑貨だね。
人形は家のなかでのアクセントとして買って貰えればいいんだよ」
『アクセント・・・』
俺の質問には男性の方が答えてくれた。
まぁテーブルしかない部屋のなかにこの人形が置いてあれば、
確かにアクセントとしては機能するんだろうけどね。
木彫りの熊みたいな事をイメージしてなんとか納得する俺と、
必要性を検討し始めるアニマ。
「じゃあこっちは?」
「こっちは私が研究している新しい楽器よ!」
正解したくは無かった楽器なのだと答えたのは少女の方。
メインは男性でサブは少女が作った作品のようだし、
この2人は夫婦とかではなく親子か師弟なのかもしれないな。
「楽器は弦楽器が3つだか4つしかないと聞いているんだけど・・」
「そうよ!だから新しい楽器を作れないかといろいろな人脈を利用して、
なんとかここまでは形になったんだけどね・・」
「なにか問題が?」
「これを鳴らせたのが風精霊の知り合いだけなのよね。
他の協力者に吹かせても全く音が鳴らなくて、
精霊と人間の違いじゃ何が原因なのかよくわからなくって」
中身がどうなっているのかはわからないけど、
口を付ける部分と音が出る部分は理解できる。
一応弦楽器ではなく管楽器だろうけど、
石で作られている所為でトランペットサイズのくせして4キロくらいある。
「吹くって事は息を入れればいいのか?口はこっち?」
「あ、チャレンジしてみる?そうよ、口はそっち」
「・・・っ!」
メイフェルがやる気を漲らせた瞳で俺に飴を差し出してくる。
あぁ、持っててってことか。
でも、4キロの楽器を持てるのかね?
そんな俺の懸念は気にしたのが馬鹿らしくなるほどあっけなく解決した。
『気を使っているのでしょう』
「本来は持ち上がらない物でも気を使えばいけるのか・・。
意識してじゃないのか?」
『使った様子から、
この程度は息をするようにいつも利用しているレベルなのでしょう』
「ふぅん」
息を思いっきり吸い込むメイフェルは、
肺がいっぱいになったタイミングで、
急いで小さな筒状になっている吹き込み口に口を付ける。
ほっぺもリスの様に膨らませ、
どんどんと息を流し込んでいくのだが、
ラッパ部分からはコォーという息が流れ出てくる音だけが聞こえてくる。
「もう諦めたらどうだ?やはり風精霊にしか鳴らせない代物なんだろう」
「えぇー、せっかくここまで形になったんですよ?
ここで諦めたらクリエイターの名が廃りますよぉ」
「・・・っ!」
「一気に息を使いすぎて酸欠になっただけだ。
落ち着いてゆっくり息をしな」
結局音は一切鳴らすことの出来なかったメイフェルは、
頭がくらくらしていると訴えかけてきた。
ゆっくりと深呼吸をさせると症状もすぐに収まり、
メイフェルは次はお前だとばかりに俺に楽器を突きつけてくる。
「う~ん、吹き込み口が小さいし・・・、
楽器に吹き込むのも久し振りだからうまくいくかなぁ?」
『以前に吹いた事があるのですか?』
「元の方でな。それも10年以上前の話だし、
マッピも無い状態は難しいんだよ」
「マッピ?」
「まぁ物は試しです、吹いてみてください。
鳴ればヒントに繋がるかもしれませんし」
見た目はピストンもなく管部分の多くが箱に収められたおかしな形のトランペット。
箱を横から両手で掴んでそっと口を細い筒へと付けて落ち着いて息を吐き出しながら唇を震わせる。
プゥワ~~~~~~~♪
「おぉ!」
「鳴った!鳴りましたよ!人間でも鳴らせるんじゃないですかぁー!!」
「・・・・」パチパチパチ
音は辛うじて鳴ったけど、
なんとも気の抜ける音だな・・・。
いや、俺が音をちゃんと鳴らせていないからってのが原因なんだけどさ。
音が鳴って喜ぶ店員2人とオー!という口をして拍手をくれるメイフェル。
「どうやって鳴らしたのか違いを教えてもらってもよろしいですか?」
「音というのは空気の振動なので、
震えていない息が流れただけでは吹き込み音しか出ないんです。
だから唇を震わせて空気に振動を発生させれば音が鳴るんです」
「空気の振動?」
「・・・・っ!」クイクイ
「何教えてほしいのか?
唇の力を抜いたまま息をちょっとだけ抜いてみろ。
息を押し出して勝手に唇が動く感じだ」
俺の説明を聞いたメイフェルが物欲しそうな顔をして服を引っ張ってくるので、
目の前にしゃがんでから片方の手でピースを作ってから自分の唇の端にあてがい実演してやる。
そして空いたもう片方の手もピースを作ってメイフェルの口端を押さえてやった。
プルッ!プルッ!と実演を見せながらメイフェルに教える横で、
店員もアニマも同じようにプルプルと挑戦をしている図は、
果たして道行く方々から見るとどう映るのだろうか。
少しの練習でなんとか形になってきたプルプルで再挑戦をするメイフェルは、
なんとかプヘェ~、プ・・・プヘェ~と音を鳴らせて嬉しかったのか、
その場でぴょんぴょんとジャンプで喜びを表す。
「獣人の子も鳴らせたってことはお客さんの言うとおりなんだなぁ。
よくそんな事を知っていましたね」
「まぁ、偶々ですけどね」
「あのあの!他に何か改良した方がいいとかアドバイスはありませんかっ?」
「吹き込み口が小さいので音が出しづらいですから・・・、
あー、ちょっと待ってください」
アドバイスをするにしてもどういう物が必要かと具体性を持たせる為に、
一旦言葉を切って念話でアクアに連絡を取る。
「シンクロ」
「「っ!?」」
蒼天のオーラが吹き出すことにギョッとする店員の反応は気にせずに、
両手を合わせてマウスピースをイメージしながらゆっくりと手を開いていけば、
そこには氷で出来たマウスピースがコロンと転がっている。
作ったこれは目の前にあるトランペットモドキに合わせて作ったので、
このまま吹き込み口に装着することも出来る。
「あの・・・」
「こういう口を付ける部分を追加すれば音も出しやすくなると思いますよ。
試しにメイフェル、冷たいけどちょっと吹いてみるか?」
「・・・っ!」コクコク
何かを言いかける店員さんだったけど、
興味津々といった様子でマウスピースを見つめるメイフェルを優先して、
楽器に装着して試しに吹かせてみると、
今度はちゃんと俺よりもしっかりとした音が鳴る結果となった。
「まぁ、このままだと音も3音程度しか出せないので、
空気の流れを変えて色んな音が出せる様になればもっと良くなりますよ」
「3音とはどういう意味でしょうか?」
俺が吹いたことがあるのは3ピストンの楽器だけなので、
それを鑑みれば音としては押さなくても鳴らせる、ド・ソ・ドだけだ。
口を楽器に付けて競馬で聞くようなSEを吹いてこういう音だと伝える。
『宗八、上手いですね』
「マッピがあればこのくらいは出せるさね」
「いまの音しか現状は出せないって事ですね、なるほど・・」
「制作者じゃないのに初見でそこまで見抜けるとは・・・、
貴方・・・クリエイターですね!」
「いえ、違いますけど。
音について研究したことがあるだけですよ。
アドバイスはこのくらいですけど、参考になりましたか?」
「いやはや、参考どころではありませんよ。
まさに脱帽でした」
「これで開発を辞めなくてもいいですよね、パラディウム様!」
元の悩みであった風精霊以外に音を鳴らすことの出来なかった不出来な楽器だったが、
その問題の解決が出来たことで開発も継続して行えるようだ。
楽器は吹けても構造までは覚えていない俺としては彼女の開発が上手くいくことを願うばかりだ。
* * * * *
「・・・」
「これにするか。
俺もアルシェ達にお土産で買っておくかな・・・」
楽器の話は終わり、
改めて落ち着いて商品を吟味したメイフェルが選び抜いたお守りを指さし、
俺も淡い青色が混ざる水晶で作られたお守りをお土産にと検討を始めた。
「その・・お客さん。
つかぬ事をお聞きしますが・・・」
「ん?なんですか?」
「もしかしてとは思っていたんですけど、精霊使いなのですか?」
「えぇ・・まぁそうですね。
契約している精霊のほとんどは別行動中ですから、いまは頭の上のコレだけですけど」
「コレ!?宗八はいい加減ワタクシの扱いをもうちょっとどうにか出来ないのですかっ!」
検討するそんな中で店員の男性、パラディウムさんから質問され、
精霊使いであることと、
精霊の定位置のひとつである頭上で寝転ぶアニマを指差して回答す
る。
紹介が雑だったことに定期クレームを入れるアニマの戯れ言は右から左に聞き流し、
何故精霊使いか確認してきたのかと続きを促してみる。
『実は私たちは土属性の上位精霊で、
こうやって行商と開発をしながら各地を旅しているのですよ。
そんな中で数ヶ月前に我らの王ティターン様から捜索を頼まれまして』
「捜索・・・何を?」
『1年くらい前に私たちの故郷から多くの浮遊精霊が誘拐され、
犯人と連れ去られてしまった精霊の行方を捜索していたのですが、
その件で進展があったらしく』
『なんでも、
とある精霊使いが数名の浮遊精霊を助けてくれたんだそうです。
故郷まで連れてきてくれた上位の風精霊から聞いた話から、
ぜひ礼をしたいから会えたら案内しろと命令が各地の土精霊に下されて・・・』
断片的に出てきた情報から土属性の浮遊精霊が誘拐された事、
キュクロプスから助けた土精数名とポルタフォールで助けた数名の事、
故郷まで連れてきたのが風精の上位者となれば、
その捜索されている精霊使いは俺の可能性が高い。
でも、自分から名乗り出るのはなんか言い出しづらい。
だって見栄張ってるみたいじゃないか?
『ただ、うちの王は口べたで詳しい情報を受け取れていないから、
各地の上位精霊はみんな混乱しているんですよね・・・。
名前も分からないし、性別もわからないですから・・・』
『うんうん』
『それはご愁傷様ですね。
確かにそれだけでは探しようがないですし、
精霊使いもそう多いわけではないですから増々探しようもないでしょう』
『いや、全くですよ。
我々が見つけた精霊使いは捜索を始めてお客さんが初めてですから』
そりゃ前途多難で苦労をしているんだな、土精可哀想。
ほ~、ふ~んと相槌を打ちながら会計を進める。
話を聞いて一番真剣なのは無精の王アニマだけという体たらくだ。
『ちょっと宗八、何か彼らにアドバイスはないんですか?』
「え?俺だって他の精霊使い探して見つからないから生産したんだぞ?
アドバイスなんて俺が欲しいくらいだっての」
『使えないマスター、です!』
『いえ、偶々出会えた精霊使いが、
いきなり当たりというのも運が良すぎるという物です。
身に覚えのない話をされても迷惑なのは百も承知なので仕方ありません』
まぁ内心はお探しの人物が俺かなぁ?とは思っていますけどね。
ただ、セリア先生かノイの名前が出てこない限りは、
警戒心が勝って名乗り出る気にはならないな。
そろそろメイフェルも話に飽きたという顔もしているし、
時間もないから俺も他の露天を見たいので、
最後の質問を投げてここを離れる決意をする。
「最後に聞きますけど、
助けられた精霊の名前とかは聞いていますか?」
『名前ですか?いえ、数名同時に届けられたとかで名前までは・・・』
『いや、1人だけ名前が判明していたはずだ・・・、
確か名前は・・・グランツァー、そうだ!グランツァー!』
俺の質問に少女の方は覚えていなかったらしいが、
パラディウムさんの方は心当たりがあったようだ。
しかもその名前に名付け覚えが有り、
数名の土精の中でも1人だけしか名乗らなかった時点で確定だろう。
「あー、じゃあその探しているっていう精霊使いは俺で正解ですね」
『へ?』
「フルネームはノイティミル=グランツァー。
砂トカゲの姿をしていて、
アイアンノジュールに届けた風精はセリア=シルフェイドですかね」
『えぇ・・・?』
「というか、俺も明日からノイの迎えに向かう予定だったんですよね」
『『ええええええええええ!!??』』
「・・・・?」
『どうせ、そんな事だろうと思っていました。
何に巻き込まれるかわからないから警戒していたんですね・・』
拍子抜けの結果に間抜け顔をさらす土精2人組。
メイフェルは話をよくわかっていない顔で何を驚いているのだろうと首を傾げ、
アニマは俺の回答に呆れてため息まで吐く始末。
お前も俺がわかってきたじゃないか。
基本は面倒くさがりなんだ。事なかれ主義なんだよ。
「で?確証を持ってからそのお話はまた持ってきてくださると助かるのですが?」
『そ、そうですね・・。
私たちもちょっといきなり過ぎてどうするのが正しいのか判断つきませんし、
一旦この話は持ち帰らせて頂きます』
『ご連絡は・・・どうしましょうか?』
「ギルド経由でアスペラルダのギルドマスターであるアインスさん宛てに、
場所と時間だけ伝えてくれればいいですよ。
2ヶ月以内であればそちらに合わせます」
『わかりました。至急で確認を取ります』
「よろしくお願いします、ではこれで」
『あ、ちょっと待ってください!』
とりあえず精霊使いの捜索についての話には期間を設けることで、
この場で拘束されることを回避するのに成功した。
メイフェルも飴を舐め終えてしまい、
新しいお菓子を肩掛けバッグから取り出して食べ始めてしまっている。
早く次の刺激をお姫様に提供しなくてはエスコート役としては失格だろう?
そう思って立ち上がったところで少女の方から留められてしまう。
なんじゃい。
『購入されたお守りに何を願うか決めてください。
この中に水晶の板を入れるのですが、
そこに文字を入れられるんです』
『なんともロマンチックなお守り、です!
これならアルカンシェも満足するでしょう』
ドッグタグ程度の大きさのお守りは真ん中が空洞として作られており、
その中に願い事を刻んだ板状の水晶を入れることで完成するとの事。
別にそこまで大仰な事を考えて選んだ訳でもないから、
無難にアルシェは・・無病息災。
マリエルは・・・一族繁栄。
メリーは・・・縁結び。
マリエルはカエル妖精一族の生活を変えるためという目的を持って島を出たし、
メリーに至っては腐っているから良縁があることを願って縁結びを祈願する。
『はいは~い、すぐにご用意いたしますね』
そう言ってマッピを作った俺と同じように両手で板を挟み込むと、
一瞬で文字が刻まれてはお守りへと差し込まれていく。
『は~い、お待たせ致しました。
では、またお会いしましょう。毎度、ありがとうございました~』
『語尾を伸ばすなっ!ありがとうございました。
またのご利用をお待ちしています!』
少しお気楽ハッピーな少女と真面目な青年の可笑しな土精2人組だったな。
立ち上がりながらメイフェルの髪をワシワシとして出発することを伝えると、
やっと~?ってな不満顔をしつつ頭に乗っける手を繋いで早く早くと引っ張られる。
はいはい、お待たせ申し訳ありませんでしたよ。
お時間はまだまだありますから、
お走りになられると危ないのでゆっくり歩いて行きましょうね。
『なんだか宗八が小さい子に気に入られる理由が少しわかりました。
言葉は雑ですけど、
気配りとかそういう細かな部分が大事にされているとわかるのですね』
「んなわけないだろ。
グズると面倒だから飴を与えたり、
ほどほどに頭を撫でたり、
繋ぎたがる気配を察して手を繋いだりしているだけだ」
『それ、です!』
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