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閑話休題 -マリーブパリア街道-

閑話休題 -21話-[マリーブパリア街道Ⅲ]

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「続けて魂の話に移るぞー」
「よろしくおねがいします」
「お、おねがいします」
『もう嫌ですわ-!』

 KKA可愛い賢いアルーシェカはちゃんと頭の整理をしてから臨んでいるが、
 マリエルは多少賢い部分も見え隠れするが、
 どちらかと言えば脳筋なので頭から煙が立っているのが見えるようだ。
 ニルは勝手にクーのところに飛んでいこうとしていたから、
 トンボのように羽を掴んで拝聴させる。

「魂ってのは所謂、特殊な雷で構成されている。
 お前達には説明が難しいのでそういう事で理解してくれ」
「わかりました」
「タマシイハ、イカズチ・・」
『魂は雷・・・』
「人によっては[プラズマ]とかって呼ばれるんだけど、
 まぁ雷で構成されているんだから当たり前だろって感じだな」

 PCとか電子機器がある世界であればもっと上手い事説明出来るんだろうが、
 存在しない以上雷の多様性として説明するしかない。

「俺の世界ではこの魂を分析して、
 魂の上書きが出来るという理論まで立てられているほど、
 情報の塊なんだ」
「上書きって・・・そんなこと可能なんですか?」
「専門的な知識はないけど、俺の知識だけでも仮説は立つくらいだ。
 可能なんだろうな・・」
「じゃあ、姫様の魂を分析してニルちゃんに上書きとかも出来るんですか?」
『え!?ニル死んじゃうんですの-!?』
「いやいや、死なない死なない。仮定の話だから。
 でも、受肉していない精霊に上書きか・・・」

 逆に高次元生命体のニルの魂をコピーして、
 アルシェにペーストした場合は、
 器が適応出来なくてエラーが発生するんじゃないかと考えられる。
 その場合はおそらくアルシェは植物人間になる可能性が高い。

 では、アルシェをコピーしてニルにペーストして成功するのか?
 高次元生命体は肉体がなくてもこうして生き物として存在している。
 それは俺たちの世界の魂とは在り方が違うんじゃないか?
 だから魔神族も生き返らせたりを自在に出来るのか?

「隊長が思考モードに入りましたね」
「黙って待ちましょう。
 でも上書きって想像するだけで怖いですね」
「姫様が何人もいれば心強いですけどね」
「嫌よぉ、お兄さんの体は1つしかないのよ?
 夜が来る度にどうなるか考えるだけでも面倒だわ」
「あ、そっちの心配ですか・・・」

 もしもアルシェをペーストする事で、
 ニルの高次元足る何かを破壊や消したりする事になった場合はどうなるんだ?
 別の次元に行く?対消滅?
 肉体を持たないニルというところがネックではあるけど、
 流石に全部想像の域を出ないな。これは時間があるときにでも考察してみよう。

「すまんな、待たせたか?」
「いえ、大丈夫ですよ。
 待っている間にメリーとクーちゃんが、
 菓子とお茶を出してくれたので少し落ち着きましょう」
「おぉいつの間に・・ありがたく頂戴しよう」

 口に含むクッキーの甘味が今の思考で消費した糖分を回復させ、
 お茶の仄かな苦みが口に広がり頭の中をリフレッシュしてくれる。

「さっきのマリエルの質問だけど、答えは出なかった。
 でも逆だったら多分アルシェは魂が壊れて、
 生きているけど動かない人形みたいな状態になると思う」
「私で仮定を話さないでくださいよ-!」
「ハハハごめんな。高次元の魂の器と下界の魂の器の違いでそうなるんじゃないかってあくまでも予想だ」
「もー!」


 * * * * *
 おやつを食べてから改めて話の続きを始める。

「さっきの話の続きだけど、魂に情報量の限界はない。
 極論、神様は魂である」
「ふんふん、で、その魂があるとなんで体を動かせるんですか?」

 おやつを口に含みながら適当に聞いてくるマリエルの質問だが、
 割と重要っぽいことなのでとりあえず答えてみる。

「そこまでは俺も流石になぁ・・・。
 魂は生命として活動した間の記憶を貯め続けるから入る器の情報はない。
 体の動かし方はDNAと呼ばれる生き物の体に刻まれた情報を利用することになる。
 脳みそは半霊機関でヤハウェが溜め込んだ記憶をDLダウンロードする為の物ってくらいしか・・・」
「脳みそ、ってなんですか?」

 そこからかぁ!!そういうとこやぞ異世界!
 医学の進歩あくしろっ!
 再び枝を手にし、
 世界の横に脳みその絵を描いていく。

「えっと、人だけでなく生き物の頭の中にこんな感じの脳ってのがある。
 ここは体を動かす上でもっとも大事なところで、
 傷が付くだけで下半身だけ動かなくなったり、
 腕は動くが指は動かなかったりと機能不全を起こす。
 最悪死ぬこともあるから、人を殺したいときは頭を撃つのが常識だ」
「つまり、魂とその脳が何らかで結びついて、
 初めて私たちは生きる事が出来るんですね?」
「そうだ。
 で、話は最初に戻ってくるけど、
 ニルには魂が活動する次元の特定と、
 魂の情報を破壊する方法の模索をしてもらってるんだ。
 シンクロ出来れば資料として俺が対処した時の情報を渡せるんだけどな・・・」
「シンクロまだ難しいですよねぇ・・・ひと月も経っていませんし」
「今もそんな扱いじゃ駄目なんじゃないですかぁ?」

 マリエルの指摘に手元に視線を移すと、
 俺に羽を摘ままれたまま長話に眠りこけるニルが映る。
 子供には退屈な話だったか・・・。
 シンクロは同じ目標というか、
 意思がひとつにならないといけないんだけど、
 ニルはアクア以上に自由奔放だからなぁ。

「まぁ、王都に着くまでにはシンクロがなくても、
 魂の認識まではなんとかしたいところだな」
「他にも目標はありますか?」
「魂=記憶と説明しただろ?
 だから勇者が魔神族を倒した後に出てくる魂を捕まえて解析できれば、
 敵陣の情報のほぼ全てが手に入るんじゃないかと思ってな」
「流石隊長、エグイ事考えますねぇ」
「安全を確保したまま丸っと情報が手に入るんだぞ?
 利用しない手はないだろ・・・まぁ、この世界の魂の概念がどうなっているのかはわからんけどな」

 人種だけでも獣人や精霊だけでなくそこからさらに種類が分かれるんだ。
 人間だけ見れば俺達の世界なら白人・黒人・黄色人の3つだけど、
 この世界の住人は複雑だ・・。
 そういう部分に目を向ければ同じシステムであるはずはない。
 だから魂の捕獲が上手くいったところで俺の考えている予定調和にならない可能性もある。
 神様の話も四神に座っている4大精霊しか話は聞かないし、
 まだまだ世界の確信を知るには程遠いな・・・。
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