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閑話休題 -アスペラルダ国境道~関所~フォレストトーレ国境道-
閑話休題 -17話-[ハイラード共同牧場~マリーブパリアⅢ]
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「おい、メリー!大丈夫かっ?」
クーからの救援要請に従ってメリーとクーを影の中に引きずり込んだ後、
メリーの様子がおかしく、
自分の体を抱きしめて震えを抑えようとしているようだった。
顔を覗けば顔色も青ざめている事に気がつき頬を軽く叩いて意識をこちらへ向けさせる。
「・・・ご主人様」
「どうした?何か攻撃でも受けたか?」
『いえ、気付かれてはいなかったはずですが・・・』
クーが言うとおり、
特に外傷などは見当たらない。
何か精神的にダメージを受けるような光景でも見たんだろうか?
「っ!ご主人様っ!あれはいけません!
絶対に手を出してはいけない部類の者ですっ!!
危険すぎますっ!ひとりでも手に負えないのにあんな人数はとてもっ・・・」
意識を取り戻したのか、
呆けていたかと思えばいきなり俺に詰め寄り、
服を掴みながら感情のまま投げ掛けてくる。
後半から徐々に涙声になりながら、
俺に懇願する姿に耐えきれず頭を抱きしめる。
「大丈夫だ。
何を見たかは知らないけど、俺達が正面から戦うような事にはならない」
「しかしっ!」
「落ち着けメリー。大丈夫だから」
何かに怯えるメリーへ落ち着くように言葉を掛けながらクーへ指示を出す。
あまりこういう姿を見せるのは良くないだろうしな。
「(クー、先に外に出ていてくれ)」
『(わかりました)』
クーが影から出て行ってもメリーの怯えは収まらなかった。
しかしながら訥々(とつとつ)と己の中で渦巻く感情を言葉にし、
俺へと伝える努力をしてくれた。
「私たちが見た魔神族の数は5人です・・・。
うち1人は話に聞いていたアポーツ使いのナユタ。
他は離れた獲物を燃やしたり、破裂させる技を使っておりました」
オベリスクの近くでは魔法の減衰効果は発揮されていたのに、
魔神族の攻撃は減衰しておらず、
フルパフォーマンスのキレで魔物を駆逐していったという。
「オベリスク近くで1番始めに発見した魔神族は、
おそらく魔物を操るタイプの魔法を使います。
しかし、魔物の様子もおかしく・・・死んでいてもおかしくないほどに、
体が欠損している物も動き回っておりました。
そして、最後の1人は魔法すら使わず・・・・、
腕を振るうだけで同じく魔神族を屠りました・・・っ!
ご主人様っ!あの者達はなんなのですかっ!
あきらかに常軌を逸した存在ですっ!危険ですっ!」
「メリー!」
「早く手を打たねばっ!」
「メリーっ!!」
パンッと両頬を叩き、顔を上げさせる。
慟哭を垂れ流していたメリーの言葉を遮り、
こちらの目と無理矢理合わせさせる。
その目には本当の怯えが潜んでおり、
あの時俺が引きずり込むまでの間に焼き付いた光景が恐怖を植え付けたようだ。
涙を流す目を閉じさせて両の親指で拭いつつ、
メリーの耳に言葉を問いかける。
「メリー。お前の役割は何だ」
「・・・ご主人様と姫様に仕える事です」
「違う。危険が生じた際にアルシェを連れてその場を脱する事だ」
彼女の基本職業はメイド。
アルシェの側にいるのはお世話をするのはもちろんだが、
彼女の役割は、アルシェを安全な場所へ逃がす事にある。
「お前の周りには今、誰がいる?」
「・・・ご主人様とアルシェ様、マリエル様、
アクアーリィ様とクーデルカ様がいらっしゃいます」
「そうだ。だがもし、魔神族と対峙する状況になった時、
お前はアルシェだけを連れて逃げろ。それが役割だ」
「それではご主人様達がっ!」
「死ぬだろうな、でも足止めは出来る。
今回メリーが持ち帰った情報に俺が知る能力の候補をギルドへ渡す。
そうすればいずれは誰かが倒す事も出来るだろう」
「・・・」
「俺やアクア達、マリエルが死ぬ事になっても、
守って死ねるんだから無駄死にじゃないんだ。
というか、もしの話だからな。
次に、俺の役割は何だ」
もう、涙は止まっていた。
「勇者や姫様の影に紛れて魔神族の情報を集め、
対策を整える事です・・・」
「そうだ。俺達は魔神族を倒すのが目的ではなく、
魔神族の計画を挫く為に動く事だ。
オベリスクを折ったり、魔神族の対応方法を検討したり能力を解析したり、
協力者を求めたりな」
俺には時間がないのだ。
勇者が魔王を倒せば強制的に元の世界に帰還させられてしまうから、
帰る前に集められるだけ情報を集め、
必要な記録を残して、記して、伝えていき、
やがてはこの世界の住人が魔神族に対応出来るように準備を進める。
逆に言えば魔神族と直接相対する時間などないのだ。
「わかったか?
お前が怯えるのは聞いた話と現実が合致して、
正確なイメージが出来たからだ。
けれど、俺達は戦わない。
その恐怖心を世界中の誰もが感じる事がないように、
俺達は俺達の戦い方をしなくちゃならない。わかるな」
「・・・はい。私たちは、直接戦うわけじゃないのですよね?」
「そうだ。日頃鍛えているのは旅の危険を抑える為だ。
お前が鍛えているのはアルシェを守る為だ・・・そうだろ?」
「・・・すぅ・・はぁぁぁぁ・・・・。
もう、大丈夫です。ご迷惑をおかけいたしました」
落ち着きを取り戻したメリーは俺からスッと離れ、
身だしなみを整える。
冷却庫から濡れタオルを取り出してメリーへ渡すと、
顔へとじっと当てて気を引き締め直し、
上がってきた顔を見ればもう大丈夫だと思えた。
「じゃあ、上がってから詳しい報告を見せてもらおうか」
「はい、かしこまりました。ご主人様」
* * * * *
精霊達を介して闇組のシンクロと水組のシンクロを同時に行い、
中間に俺が入る事によって、
全員にメリーとクーが見たイメージ映像を流すことで、
情報の共有を図る。
「あの、私は?」
「流石に頭に流すのは無理だから、
俺達が噛み砕いて話をしてやるから、
今回は我慢してくれ」
「わかりました」
新参のマリエルには悪いが、
気軽に行っているように見えるシンクロも実のところ高等技術で、
長い期間を精霊と共に過ごして絆を深め、
心をひとつにする必要がある。
これは出来なくても仕方が無い事なので、
ノイ次第では彼女も精霊使いのひとりになれる事だろう。
初めて2重シンクロをしたネシンフラ島でのオベリスク対応の際、
試みとしては成功したけれど俺への負担が激しい事が特に問題だった。
おそらくこれも慣れが必要なのだと考えて、
短時間ではあるが時間を見つけては訓練を繰り返した。
結果として、内側からあふれ出そうとする奔流は以前よりも形を潜め、
数分はコンスタントに保ち運用出来るまでになった。
「「「『『シンクロ!』』」」」
アクアから伝わる蒼いオーラと、
クーから伝わる漆黒のオーラが混ざり合い、
さらに深い青へと変化する。
「イメージを伝えます」
「頼む」
『いきます』
2人から流れてきたイメージが映像となり脳内で再生される。
その映像から俺の中で生まれた魔神族の可能性が漏れ始め、
アルシェ達に伝染していく。
「彼らは属性があるのでしょうか?」
「実際のところ、能力の情報はナユタの[アポーツ]だけだから、
なんとも言えないが、可能性はありそうだな」
『ぱいろきねしす?』
「人体発火能力ですか・・・。
確かに魔物に手を翳すでもなく燃え始めましたが・・」
『スポンティニアス・コンバッションが能力なら厄介ですね』
「こちらは近寄れないのに、敵は近寄るだけでいいんですね・・・」
まず話題に上がったのはナユタの隣に立つ魔神族。
おそらくはその人物の能力であろうと映像を見る限りで推測され、
オベリスクの近くで威力が発揮されたことから、
ナユタと同じく超能力の類いと考えた。
イメージとしては、やはり有名な超能力のパイロキネシス。
発火能力の代名詞とも言えるが、
俺の中では正直弱いイメージの能力だった。
もうひとつの可能性のスポンティニアス・コンバッションが発動出来るなら、
危険度も比較にならないほど高くなる。
パイロキネシスは対象を指定して発火するのは主な発動と記憶しているが、
もうひとつの方は、効果範囲に入れば発火するタイプ。
つまり、近付くと確実にダメージを負う為、積極的な攻めが出来ない。
「女の方は魔物の死体を操っているみたいだな」
「死霊使いってどんな能力なのですか?」
「わからん。
死体を操る様子から判断しただけで超能力とも違うからな。
どちらかと言えば黒魔術が主要能力で死霊使いは副産物かも知れない」
特に最後の声は上半身を千切られ殺された女の声だったように思う。
死んでも復活すると言う事は誰かが生き返らせた可能性もあるが、
魔法ではないとなれば、体を精製して魂を定着させたという考えも出来る。
対策を考えなければ永遠に倒す事が出来ないこれまた厄介な敵だ。
「背後の魔神族は魔物を膨らませて破裂させていますが、
こちらはどのような原理でしょうか?」
「属性別となれば風が一番可能性はあるが、
俺も風の超能力についてはすぐに心当たりが出ない」
『つぎ~!』
『女性を殺した魔神族ですね』
「残る属性から考えれば土属性が一番合いますかね?」
確かに防御力が上がる=体の強度が上がることで物理ダメージも期待出来るが、
これは超能力ではなく超身体と言えるのではないか?
こいつもすぐには候補が思いつかなかった。
その後はマリエルにも口頭にて説明を行い、
概要だけでも理解してもらった。
実際の所は対面もしくは、
戦闘する光景をもっと見ないと分からない為、
ひとまずの考察はここまでとする。
「それにしても、ナユタだけでも対応に困るというのに、
他に4人いるとは・・・ちょっとめげてしまいそうです」
「大丈夫だ、俺もめげそうだから」
「それ大丈夫じゃないですよぉー!
私たちの頼りはお兄さんなんですからねっ!」
「わかってるよ。色々と考えてみるさ」
それにしても、
予想以上に魔神族に接近していた事に肝を冷やした。
メリーとクーだったからこそ情報を持ち帰れたが、
これが俺やアルシェだった場合、最悪無駄死にしていたと思う。
集まっていた理由は聞き出せなかったが、
集まる理由がこの近くにある可能性は高い。
町に着いたら情報収集を徹底しなきゃならないな・・・。
クーからの救援要請に従ってメリーとクーを影の中に引きずり込んだ後、
メリーの様子がおかしく、
自分の体を抱きしめて震えを抑えようとしているようだった。
顔を覗けば顔色も青ざめている事に気がつき頬を軽く叩いて意識をこちらへ向けさせる。
「・・・ご主人様」
「どうした?何か攻撃でも受けたか?」
『いえ、気付かれてはいなかったはずですが・・・』
クーが言うとおり、
特に外傷などは見当たらない。
何か精神的にダメージを受けるような光景でも見たんだろうか?
「っ!ご主人様っ!あれはいけません!
絶対に手を出してはいけない部類の者ですっ!!
危険すぎますっ!ひとりでも手に負えないのにあんな人数はとてもっ・・・」
意識を取り戻したのか、
呆けていたかと思えばいきなり俺に詰め寄り、
服を掴みながら感情のまま投げ掛けてくる。
後半から徐々に涙声になりながら、
俺に懇願する姿に耐えきれず頭を抱きしめる。
「大丈夫だ。
何を見たかは知らないけど、俺達が正面から戦うような事にはならない」
「しかしっ!」
「落ち着けメリー。大丈夫だから」
何かに怯えるメリーへ落ち着くように言葉を掛けながらクーへ指示を出す。
あまりこういう姿を見せるのは良くないだろうしな。
「(クー、先に外に出ていてくれ)」
『(わかりました)』
クーが影から出て行ってもメリーの怯えは収まらなかった。
しかしながら訥々(とつとつ)と己の中で渦巻く感情を言葉にし、
俺へと伝える努力をしてくれた。
「私たちが見た魔神族の数は5人です・・・。
うち1人は話に聞いていたアポーツ使いのナユタ。
他は離れた獲物を燃やしたり、破裂させる技を使っておりました」
オベリスクの近くでは魔法の減衰効果は発揮されていたのに、
魔神族の攻撃は減衰しておらず、
フルパフォーマンスのキレで魔物を駆逐していったという。
「オベリスク近くで1番始めに発見した魔神族は、
おそらく魔物を操るタイプの魔法を使います。
しかし、魔物の様子もおかしく・・・死んでいてもおかしくないほどに、
体が欠損している物も動き回っておりました。
そして、最後の1人は魔法すら使わず・・・・、
腕を振るうだけで同じく魔神族を屠りました・・・っ!
ご主人様っ!あの者達はなんなのですかっ!
あきらかに常軌を逸した存在ですっ!危険ですっ!」
「メリー!」
「早く手を打たねばっ!」
「メリーっ!!」
パンッと両頬を叩き、顔を上げさせる。
慟哭を垂れ流していたメリーの言葉を遮り、
こちらの目と無理矢理合わせさせる。
その目には本当の怯えが潜んでおり、
あの時俺が引きずり込むまでの間に焼き付いた光景が恐怖を植え付けたようだ。
涙を流す目を閉じさせて両の親指で拭いつつ、
メリーの耳に言葉を問いかける。
「メリー。お前の役割は何だ」
「・・・ご主人様と姫様に仕える事です」
「違う。危険が生じた際にアルシェを連れてその場を脱する事だ」
彼女の基本職業はメイド。
アルシェの側にいるのはお世話をするのはもちろんだが、
彼女の役割は、アルシェを安全な場所へ逃がす事にある。
「お前の周りには今、誰がいる?」
「・・・ご主人様とアルシェ様、マリエル様、
アクアーリィ様とクーデルカ様がいらっしゃいます」
「そうだ。だがもし、魔神族と対峙する状況になった時、
お前はアルシェだけを連れて逃げろ。それが役割だ」
「それではご主人様達がっ!」
「死ぬだろうな、でも足止めは出来る。
今回メリーが持ち帰った情報に俺が知る能力の候補をギルドへ渡す。
そうすればいずれは誰かが倒す事も出来るだろう」
「・・・」
「俺やアクア達、マリエルが死ぬ事になっても、
守って死ねるんだから無駄死にじゃないんだ。
というか、もしの話だからな。
次に、俺の役割は何だ」
もう、涙は止まっていた。
「勇者や姫様の影に紛れて魔神族の情報を集め、
対策を整える事です・・・」
「そうだ。俺達は魔神族を倒すのが目的ではなく、
魔神族の計画を挫く為に動く事だ。
オベリスクを折ったり、魔神族の対応方法を検討したり能力を解析したり、
協力者を求めたりな」
俺には時間がないのだ。
勇者が魔王を倒せば強制的に元の世界に帰還させられてしまうから、
帰る前に集められるだけ情報を集め、
必要な記録を残して、記して、伝えていき、
やがてはこの世界の住人が魔神族に対応出来るように準備を進める。
逆に言えば魔神族と直接相対する時間などないのだ。
「わかったか?
お前が怯えるのは聞いた話と現実が合致して、
正確なイメージが出来たからだ。
けれど、俺達は戦わない。
その恐怖心を世界中の誰もが感じる事がないように、
俺達は俺達の戦い方をしなくちゃならない。わかるな」
「・・・はい。私たちは、直接戦うわけじゃないのですよね?」
「そうだ。日頃鍛えているのは旅の危険を抑える為だ。
お前が鍛えているのはアルシェを守る為だ・・・そうだろ?」
「・・・すぅ・・はぁぁぁぁ・・・・。
もう、大丈夫です。ご迷惑をおかけいたしました」
落ち着きを取り戻したメリーは俺からスッと離れ、
身だしなみを整える。
冷却庫から濡れタオルを取り出してメリーへ渡すと、
顔へとじっと当てて気を引き締め直し、
上がってきた顔を見ればもう大丈夫だと思えた。
「じゃあ、上がってから詳しい報告を見せてもらおうか」
「はい、かしこまりました。ご主人様」
* * * * *
精霊達を介して闇組のシンクロと水組のシンクロを同時に行い、
中間に俺が入る事によって、
全員にメリーとクーが見たイメージ映像を流すことで、
情報の共有を図る。
「あの、私は?」
「流石に頭に流すのは無理だから、
俺達が噛み砕いて話をしてやるから、
今回は我慢してくれ」
「わかりました」
新参のマリエルには悪いが、
気軽に行っているように見えるシンクロも実のところ高等技術で、
長い期間を精霊と共に過ごして絆を深め、
心をひとつにする必要がある。
これは出来なくても仕方が無い事なので、
ノイ次第では彼女も精霊使いのひとりになれる事だろう。
初めて2重シンクロをしたネシンフラ島でのオベリスク対応の際、
試みとしては成功したけれど俺への負担が激しい事が特に問題だった。
おそらくこれも慣れが必要なのだと考えて、
短時間ではあるが時間を見つけては訓練を繰り返した。
結果として、内側からあふれ出そうとする奔流は以前よりも形を潜め、
数分はコンスタントに保ち運用出来るまでになった。
「「「『『シンクロ!』』」」」
アクアから伝わる蒼いオーラと、
クーから伝わる漆黒のオーラが混ざり合い、
さらに深い青へと変化する。
「イメージを伝えます」
「頼む」
『いきます』
2人から流れてきたイメージが映像となり脳内で再生される。
その映像から俺の中で生まれた魔神族の可能性が漏れ始め、
アルシェ達に伝染していく。
「彼らは属性があるのでしょうか?」
「実際のところ、能力の情報はナユタの[アポーツ]だけだから、
なんとも言えないが、可能性はありそうだな」
『ぱいろきねしす?』
「人体発火能力ですか・・・。
確かに魔物に手を翳すでもなく燃え始めましたが・・」
『スポンティニアス・コンバッションが能力なら厄介ですね』
「こちらは近寄れないのに、敵は近寄るだけでいいんですね・・・」
まず話題に上がったのはナユタの隣に立つ魔神族。
おそらくはその人物の能力であろうと映像を見る限りで推測され、
オベリスクの近くで威力が発揮されたことから、
ナユタと同じく超能力の類いと考えた。
イメージとしては、やはり有名な超能力のパイロキネシス。
発火能力の代名詞とも言えるが、
俺の中では正直弱いイメージの能力だった。
もうひとつの可能性のスポンティニアス・コンバッションが発動出来るなら、
危険度も比較にならないほど高くなる。
パイロキネシスは対象を指定して発火するのは主な発動と記憶しているが、
もうひとつの方は、効果範囲に入れば発火するタイプ。
つまり、近付くと確実にダメージを負う為、積極的な攻めが出来ない。
「女の方は魔物の死体を操っているみたいだな」
「死霊使いってどんな能力なのですか?」
「わからん。
死体を操る様子から判断しただけで超能力とも違うからな。
どちらかと言えば黒魔術が主要能力で死霊使いは副産物かも知れない」
特に最後の声は上半身を千切られ殺された女の声だったように思う。
死んでも復活すると言う事は誰かが生き返らせた可能性もあるが、
魔法ではないとなれば、体を精製して魂を定着させたという考えも出来る。
対策を考えなければ永遠に倒す事が出来ないこれまた厄介な敵だ。
「背後の魔神族は魔物を膨らませて破裂させていますが、
こちらはどのような原理でしょうか?」
「属性別となれば風が一番可能性はあるが、
俺も風の超能力についてはすぐに心当たりが出ない」
『つぎ~!』
『女性を殺した魔神族ですね』
「残る属性から考えれば土属性が一番合いますかね?」
確かに防御力が上がる=体の強度が上がることで物理ダメージも期待出来るが、
これは超能力ではなく超身体と言えるのではないか?
こいつもすぐには候補が思いつかなかった。
その後はマリエルにも口頭にて説明を行い、
概要だけでも理解してもらった。
実際の所は対面もしくは、
戦闘する光景をもっと見ないと分からない為、
ひとまずの考察はここまでとする。
「それにしても、ナユタだけでも対応に困るというのに、
他に4人いるとは・・・ちょっとめげてしまいそうです」
「大丈夫だ、俺もめげそうだから」
「それ大丈夫じゃないですよぉー!
私たちの頼りはお兄さんなんですからねっ!」
「わかってるよ。色々と考えてみるさ」
それにしても、
予想以上に魔神族に接近していた事に肝を冷やした。
メリーとクーだったからこそ情報を持ち帰れたが、
これが俺やアルシェだった場合、最悪無駄死にしていたと思う。
集まっていた理由は聞き出せなかったが、
集まる理由がこの近くにある可能性は高い。
町に着いたら情報収集を徹底しなきゃならないな・・・。
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