特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重

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閑話休題 -アスペラルダ国境道~関所~フォレストトーレ国境道-

閑話休題 -16話-[ハイラード共同牧場~マリーブパリアⅡ]

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 涙の別れから1週間と2日。
 お互いが1週間離れて、合計ほぼ2週間分の距離を開けたとしても、
 クーの魔法は継続して利用が出来、
 夜には体を流しにメリーが顔を出し、そのまま捜索の報告を受け、
 その間に作った晩ご飯をメリーに持たせ、
 入れ替わりにクーがこちらと合流して一緒に晩ご飯を食べる流れが出来ていた。

 メリーには申し訳ないが夕食だけは1人で食べてもらい、
 俺とクーの平穏は保たれた。

 メリーとクーには先を急いでもらい、
 その分こちらで影倉庫シャドーインベントリの様子をちょくちょく伺い、
 有効範囲のチェックを進めてきた。
 その為、俺達はまだマリーブパリアへ到着しておらず、
 あと2~3日掛かる予想であった。


 * * * * *
『魔法の反応からしてあちらの森方向です』
「ご主人様の言われていたとおり、
 生き物は全員逃げ出した後のようですね」

 風の国の木々は全体的にアスペラルダに比べるととても大きく、
 ネシンフラ島よりもさらにオベリスクを発見するのは困難を極めた。
 しかしながら、クーデルカの魔法の減衰効果は確かにあり、
 オベリスクの存在は確実なものとなった。

「減衰速度としてはどうでしょうか?」
『ネシンフラ島よりも範囲が広いので、
 時期としては同じ、もしくはもっと早い段階で建てられたと思います』
「クーデルカ様の魔力も減り始めましたら、
 その先からは私だけで行かせて頂きます」
『長時間でなければ大丈夫ですから、
 位置を特定したらさっさと退散しましょう』
「かしこまりました」

 念の為周囲をサーチ魔法で生き物を探しつつ、
 魔法が反応を示した森の奥へと進んでいく。
 始めに反応が確認されてから2時間も進むと、
 やがて少し開けた場所にオベリスクを見つけた。

「見つけました」
『こちらも影に反応がありました。
 魔物だと思いますが四足歩行の生き物が40匹ほど周囲にいます。
 それに、お父さまとアネゴの話を聞く限りでは、
 もうこの地点ではコールは出来ないですね』

 サーチに反応があった報告がクーデルカからもたらされ、
 この先からは木の上を移動する事にしたメリー達は、
 開けた森の縁に生える木の上からオベリスクを目視した。

「あら~?だ~れかいるのかしらぁ~?」

 姿はハイドで消しており、
 足下にいるであろう生き物を刺激しないよう、
 慎重に近付いたメリー達を感じ取り、
 目を向けてくる女がオベリスクの裏からゆるりと出てきた。
 メリーとクーは呼吸を浅くして、出来うる限り気配を殺す。

「んん~?気のせいかしらぁ~?
 確かに気配を感じたんだけどなぁ~・・・。
 うちの豚共かしら?」

 豚と言う単語にスッと目線を地面に移すと、
 そこにいたのは宗八とマリエルが討伐をしていたブルププクという魔物と、
 同じく牧場を襲ったハイイヌという魔物がいた。
 しかし、体の所々を欠損している個体が多く、
 なぜ生きているのかと疑問を抱かせるが平然と動く彼らを見るに、
 おそらくはあの女が元凶であると感じ取る。

(『魔神族でしょうか?』)
(「外見的な判断はいまのところラインの出る外装をしている程度です。
  魔術師のようなマントで体が隠れてしまっているのでまだわかりません」)
(『どうしましょうか?
  このまま引いてお父さまに報告しますか?』)
(「いえ、少しでも動けば気付かれる恐れがあります。
  ここはじっと様子を見て、いざとなれば影に逃げましょう」)
(『わかりました』)

 様子を伺い続けると、
 どうやら誰かと待ち合わせをしているのか、
 ずっと「まだかしらぁ~」や「早くして欲しいわぁ~」と口にしている。
 と、メリー達がいる縁の反対側からマントを羽織る4人組が近付いていく。
 一瞬宗八が依頼した冒険者かと思い間に入ろうかと躊躇したが、
 オベリスクで待つ女が立ち上がり、腕を振るうのが早かった。

「ぐるぅぅぅぅぅっ!」
「わぉおおおおおおおん!!」

 女のシグナルを受けて足下にいた魔物達が一斉にざわめき始め、
 現れた4人組に駆け寄っていく。
 当然、開けた場所の縁に待機していた魔物が四方八方から彼らに牙を剥く。

「ちっ」
「少し遅れただけでこれですか・・・」
「おばさんは嫌ですねぇ」
「・・・・」

 4人のうち1人は背後に振り返り、
 2人が前に進み出てきた。
 そのうちの1人は手を前に掲げると、
 一瞬でハイイヌが手元に移動して黒焦げにされる。

(「アクアポッツォに出たナユタという魔神族ですね」)
(『では、他の4人も魔神族である可能性がありますね』)

 前に出たもう1人は特に何も構えを取る事はなかったが、
 魔物達が次々と燃え始めて元より痛んでいた体は真っ黒になるまで燃え続けた。
 その間も魔物は焦げて崩れ落ちる体で前へと進もうとしているのが分かる。

(『異常な光景です・・・』)

 真ん中に立つ人物は特に何もする気は無い様子で、
 周囲の3人が次々と倒す中、
 何事も無いかのように足を止める事無く前へと進める。

 背後から近付く魔物達は体を膨らまされて最後には内部から四散しており、
 何をされているのかメリー達には理解出来なかった。

 3人に守られていた人物は女の元へ辿り着くと、
 無造作に片手を振るうと、
 女は上半身が吹き飛び、残る下半身はその場で倒れ込む。
 女が死ぬと同時に周りにいた魔物達もその動きを止め絶命していく。

(「クーデルカ様・・・、
  ご主人様に連絡を取れますでしょうか?」)
(『念話は可能ですが、何を伝えるのですか?』)
(「こちらからは影に潜る事は不可能です。
  ご主人様側から引っ張り込めないか確認を」)
(『っ!自分の魔法ながら気付いていませんでした・・・。
  すぐに伝えます!』)

 その間も事態は進み、
 殺された女の周囲に4人組が集まる。
 すでにメリーの頭の中には冒険者という可能性は欠片もなく、
 全員が魔神族と名乗る集団なのだと確信していた。

「ちょっとひどいじゃないですかぁ~。
 なぁ~んで殺すんですかぁ~?」

 何故か殺されたはずの女の声がした。
 ゾクリと背筋の凍るような悪寒を感じ取ったその瞬間、
 メリーは服を掴まれ、そのまま影へと飲み込まれていった。
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