特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重

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閑話休題 -アスペラルダ国境道~関所~フォレストトーレ国境道-

閑話休題 -14話-[ハイラード共同牧場Ⅳ]

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「行けと言われれば行かせて頂きますが・・・、
 クーデルカ様もですか?」
「そうだ」
「なんで皆でいかないんですか?」

 メリーとアルシェは困惑の表情で俺の言葉を待つが、
 マリエルは直接どうしてなのか聞いてくる。

「牧場についた時にいたハイイヌは山向こうから来たそうだ。
 彼らはこの牧場に着くまでずっと飲まず食わずだったみたいでな、
 距離的には馬車で2週間ほどらしい」
「それは確かにおかしな話ですね。
 いくらなんでもここまでその距離を走りっぱなしというのは・・・」
「隊長はその山向こうに何かがあると考えたんですね?」
「あぁ・・・オベリスクがあるんじゃないかと思ってな」

 オベリスク。
 マリエルの故郷、ネシンフラ島で初めて見つけた異物。
 魔法生物だけでなく、体内に魔力を保有する生き物に悪影響を及ぼす柱で、
 おそらくは精霊や妖精だけでなく、
 人間に獣人、まだ出会っていない巨人族や竜族。
 果ては全ての生き物を死滅させかねない魔力霧散兵器。

「あれがあるんですか?」
「ですが、見つけたとしても私達だけでは破壊出来ません」
「破壊はアインスさん経由でクエストを発行してもらう。
 いずれ冒険者が向かって叩き折ってくれる」
「じゃあ、なんで今回は2人を行かせるんですか?」
「確認したい事があるんだよ・・・。
 破滅の呪いを逃れる可能性として今のところ2つ検討されている。
 ひとつが異世界人の称号を持つ者」
「それが一番可能性が高いですし、実績もありますから・・」
「ふたつめが精霊使いだ。
 つまり、俺以外にもサブマスターになったアルシェとメリーにも、
 破滅避けの可能性が生まれたわけだ」

 俺ひとりでは異世界人と精霊使い、
 2つの可能性を持ち合わせている為、どちらが正解なのか確認が出来ない。
 しかし、ここでアルシェかメリーに確認してもらえれば、
 少なくともいまの状態よりは話の整理がしやすくなるのだ。

「なんで私じゃないんですか?」
「総合的に考えて年齢や能力を検討した結果、
 アルシェより5歳年上の18歳で、
 魔法もなしに素早く移動出来、クーと合わせれば大抵の状況を切り抜けられる」
「能力うんぬんに関わらず、姫様を単独行動させるわけにはいきません」
「そうですねぇ、ここは師匠とメリーさんの言うとおりだと思います」

 もちろんアルシェバージョンも考えたが、
 そもそもアルシェは俺の隠れ蓑で付いてきているわけなのだから、
 いくら調査の為とはいえ、ここで行かせて無駄な危険を孕ませる意味が無い。
 王様達から預けられているというのも行かせられない理由のひとつだ。
 俺が側にいて守らないと約束を違えてしまう。

「かしこまりました。
 クーデルカ様と一緒に明日山向こうへと調査に向かいます」
「あちらについたらクーの魔法を使い続けてくれ。
 減衰する方向へと向かってくれればあると思う。
 それと影倉庫シャドーインベントリの範囲テストも兼ねているから、
 帰りは影から帰っておいで」
「かしこまりました」

 連絡には揺蕩う唄ウィルフラタもあるし、念話もある。
 ひとりが残っていれば影倉庫シャドーインベントリを通して会うことだって出来るのだ。
 オベリスクの調査とは言え、そこまで厳しい条件じゃない。
 破壊しにいく冒険者と道中に会う事が出来れば場所を伝えて、
 すぐ破壊してもらう事だって出来るだろうし。

「では、1週間から2週間近く別行動になるんですか?」
「早く済めば1週間程度かな・・・。
 クーと離れるのは少し心配なんだけどな、
 メリーだけだと夜も休められなくなるからさ」
「極力早めに見つけられるように致します」
「いや、無理はしない程度でいい。
 インベントリの有効範囲が続く限りは会う事は出来るから」

 クーの影倉庫シャドーインベントリはパーティ共有魔法だ。
 しかし、今までパーティが離ればなれで行動する事はなかったから、
 正確な有効範囲がわからなかった。
 オベリスクの調査ついでに解れば今後の戦略にも組み込めるかも知れない。
 知っておいて損は絶対無いはずだ。

「俺達は交代で寝ることになるからな。
 初めてのクー抜きでの野営だし、気を付けて寝よう」
「わかりました」
「始めての野営・・・わくわくします」


 * * * * *
 2時間ほど寝ていたメイフェルを起こして、
 子供達のところへと連れて行く。
 陽も暮れてきているからうちの子供達とメイフェルを交換して、
 互いの家へと帰る予定だ。
 驚いたのは、メイフェルが俺達と離れることに駄々をこねるかと思いきや、
 そんな事もなく明日俺達が牧場を離れる事を理解してくれた事だ。

 獣人は幼くとも厳しい現実を理解しているということなのだろうか。

『明日からですか?
 う、ぅわかりました!でも、今夜は抱きしめて寝てください!』
「お安いご用だよ。
 アクアもアルシェも今夜は俺の所に来ないってさ」
『やったぁ~!!お父さまを独り占めですねぇ!』

 帰ってきたクーにも別行動を伝えると、
 少し戸惑い気味ではあったが条件付きで了承してくれた。
 いつもならアクアは俺の右隣の脇辺りに入ってきて俺に抱きつく形で眠り、
 アルシェも寝始めはメリーの近くで寝ていたのに、
 気がつけば俺の左側にアクアと同じく抱きついて寝ている。
 クーは猫型でも人型でも俺のお腹の上で眠る。
 今夜はクー1人なので横向きになって、
 クーを抱きしめて眠る事になりそうだ。
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