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第03章 -港町アクアポッツォ編-
†第3章† -06話-[アクアポッツォの守護者]
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すぐ行くとは言ってもそりゃいきなりだし、
相手は寝る間も惜しんで研究するチームの一人だ。
簡単に抜ける事も引き継ぎも出来るわけもない。
2時間はくらいは覚悟して置いた方がいいだろうと、
パーティ内で意見も一致した事もあり、
ひとまず得体の知れないオベリスクから離れ、
割りと近かった砂浜へと移動することにした。
魔法の効果を低下させるなら転移も妨害に合う可能性があったし、
お昼を回る時間という事もあった。
「こちらであれば、それなりに広いですね」
「凸凹もしてないからゆっくり出来そうですよ、お兄さん」
「クー、柔らかめに広げられるか?」
『任せてください』
舟の上で試したサイズではなく、
ピクニックシート並の大きさで制御魔法を使ってもらう。
クーが進化して厚さが2倍になったようで、
2mmくらいだった板は4mmのシートへと進化した。
素足で黒シートを踏んでみて柔らかさを調整する。
「まぁ、こんなもんだろ」
『おぉ~!やわらかい?!』
「面白い感触ですね」
「このまま寝られそうです」
「寝てもいいけど、黒いから熱を吸収するぞ」
『そこはどうしようもなくて・・・早めにお食事にしましょう』
「クーちゃんは初めての食事ですね!」
進化後に影の中に収納して持ってきた道具類を出していく。
食材も事前にウルミナさんから頂いてきたのでそれも出して、
メリーは調理道具を調べていく。
鍋にはアルシェが水を貯めていき、
アクアは海辺まで遊びに出かけた。
クーもアクアと同じく、
手が小さいのでまだ調理台に立つことは出来ないが、
真剣な目で調理を進めるメリーの手元を見つめている。
俺も出し終えると手持ち無沙汰になる。
移動用調理台はそこまで広くないから一人しか立てない。
「ちょっと釣りしてくるわ」
「かしこまりました、もし釣れましたら調理致しますので」
「はいよー」
「あ、お兄さん。私も一緒に行っていいですか?」
「いいよ。どうせなら一緒にやってみようか?」
『あっ・・・』
小さく声を漏らしながらこちらを振り返るクー。
そういえば小さい道具はクーが選んだんだったか・・・、
なら一番に触るのはクーにしてあげたい。
しかし、今の状態は調理も見ていたいし、
釣りも最初にしたいと板挟みになっているみたいだ。
「俺の竿を交代で投げよう」
「わかりました」
クーにウインクをして影から竿ケースを引っ張り出し、
俺用のロッドとリールを素早く組み立てる。
ついでに釣り用の椅子を出して調理が良く見える位置に配置し、
クーを持ち上げてそのまま座らせる。
『ありがとうございます、お父さま』
「今度一緒にやろうな」
『はい!』
アルシェを引き連れて、
ルアーケースを持ち出してその場を離れた。
* * * * *
サーフ(砂浜)と岩場を発見したけど、
初心者の俺がまともに釣れたのは餌釣りだった。
だが、ここは異世界・・・どんな魚がいるのか分からないのだ。
「ここで釣りが出来るんですか?」
「天秤は無理だが、重りは買えたから、
砂浜でやる餌釣りと岩場でやる穴釣りのどっちかだな」
「どんな魚が釣れますか?」
「時期によるよ。
俺は夏・・・火の月に島に渡ってキスという魚を釣っていたし、
その島の岩場ではアラカブだったかな?
それを釣ってたよ」
「どちらも知らない名前のお魚ですね」
そりゃそうだろう。
ただ、似た魚はいると思うから見れば何の仲間か判断くらい出来るだろう。
ひとまず、釣れる釣れないの前にこの世界の道具を試さないとな。
竿は良くしなる丈夫な木材で作られ、
リールは樹脂?みたいな肌触りで軽すぎる。
ラインは・・・これ何の糸?
「これはアマムシの糸ですね。
村でも飼っているはずですよ。
すごく丈夫で一般人の服の中では最上位の防御力を誇るそうです」
「防御力と糸切(バレ)は関係あるのか?」
もちろんハンドルは好きな形をチョイスした。
俺はいつもT字のハンドルを使っていたから、
やっぱり落ち着くわぁ!
針を外したルアーを付けて、とりあえず投げてみる。
「アルシェ、投げるから俺の後ろに立つなよ」
「わかりました」
年に数回しか釣りに行かない釣り人の実力を見よ!
ブゥゥン!
これこれ!この音よ!
友達はヒュン!って音だったけど、俺はこんな音だったわww
だいたい20mくらいに先まで飛んで着水する。
余分に伸びたラインを巻いて、少し待ち、
徐々にラインを巻き取っていく。
「ここいいなぁ。岩がほとんどないから張り付いてても根掛かりしないぞ」
「根掛かりってなんですか?」
「水の底にある岩や海藻、その他諸々に針が引っかかって、
回収が不可能になる状態だな。
そうなると一生懸命頑外れるように頑張るんだけど、
最悪糸から切ることになる」
「お金を捨てる行為という事は理解しました」
絶対それを釣り人に言うなよアルシェ。
1時間で10000円投げ捨てた奴を俺は知ってるからな。
ラインもほとんど巻き終わり、
ルアーも見えてくるかと思っていたら、
ガッと何かが食いついた!
「お兄さん!何かが引っ張ってますよ!」
「針もないのに引っ張る魚がいるかっ!!」
どうせあと少しなのだからと、
ラインをそのまま巻いていくと・・・
「何してるんだ?」
『あれ?、ますたーだぁ!』モグモグ
「・・・」
水色の生き物が釣れた。
どんな馬鹿魚かと思ったら馬鹿娘だった。
針がなくて良かったゾ。
とりあえずデコピンをしてアルシェに預けておこう。
しかし、あのサイズの馬鹿を釣り上げたのに竿が折れなかったし、
ラインも切れなかったのは正直驚いた。
これがあれば多少無茶をしてもシーバスが釣り上げられるだろう!
べ、別にシーバスを何度もバラした訳じゃないんだからね!
「次は針付きのルアーに変えて投げてみるか・・・?
でも初心者にルアーって釣れるイメージないからなぁ」
「いつもはどんな物で釣りを?」
「虫だな。長細いやつとか」
「虫ですか・・・」
「まぁ、やり始めればいずれ慣れると思うけどな。
やってる奴も見てる奴も慣れるさ。
アクア、長細い虫を取ってこい」
『やー!』
「邪魔した罰だ!」
『さっきデコピンしたー!』
それもそうか。仕方ないな、俺が探してくるか。
その間にアルシェに投げさせて雰囲気だけでも楽しんでもらおうか。
「アルシェ、この竿を俺がやったみたいに投げてみな」
「っ!わかりました!」
キラキラした目で竿を手にするアルシェ。
特別な事ではないけれど、釣りをする姫様が現実に居ないことは想像がつく。
楽しい思い出になるように最善を尽くしてやろう。
アルシェが見様見真似で竿を握る手に自分の手を重ねる。
「ぅお兄さん!?」
「右手の握りはこうだ。親指は糸の上を抑える。
竿の手前は魚によっては腹に指した方が楽になる。
左手は特に言うことはないけど、
振った瞬間に右手の親指を離すとルアーが飛んでいく。
ルアーが重しとなって飛んでいくからな、そこを意識しろ。
そのあと右手で糸を止めないといけない」
「こ、こっちですね?止めるのは親指ですか?」
「そうだ、一気に止めると指の皮を傷めるし道具にも良くないから、
何度かに分けて止めると離すを繰り返して減速しろ」
「・・・ふんふん、わかりました」
専用の手袋でもあれば違うだろうけど、
まぁヒールもあるし浮遊精霊の鎧もあるから問題ないかな?
「とりあえず一回投げて大丈夫そうなら餌を探してくるよ」
「わかりました・・・いきます!」
流石に武術を鍛えただけあって大振りの割にヒュンッ!と音がした。
同じく鍛えているはずなのになんでいつもの音だったんだろ?
かつてのイメージで投げたからかな?
俺の倍ほど先の海に落ちるルアーを見て、
ラインも確認する。
思ったほど余分に出ていないようだ。
俺の初めてなんかは船を釣り上げたもんだよ!
回収する時すげぇドキドキしたもんな。
それに比べてアルシェの人生一投目は上手くいって何よりだ。
「少しだけハンドルを回して糸を回収しな。
水に入るまでの糸がピンと張れば大丈夫だ」
「はい」
「あとは少し巻いては待って少し巻いては待ってを繰り返していてくれ。
アクアは護衛を頼むぞ」
『はい、よろこんで~』
まだ覚えてたのかそれ。
2人から視線を切り森の方へと向かう。
いまは島の反対側にいる。
つまりはアクアポッツォの人に見られる心配がない。
だから、いまの時期に釣りもしているわけだけど、
あっちに戻ったらしばらく禁止だからな、少しのお試しくらいは見逃していただきたい。
「とはいえ、餌用の虫とかいつも買ってたし森にいるもんかねぇ」
売ってた虫の名前もおぼろげだぞ。
岩虫とかそんな感じだったような・・・、
あとカニも売ってたな。
あとはイソメとか・・・匂いが出てればいけるのかな?
いや、スルメがこの世界にあるか分からないし、
俺の中ではスルメで釣れる=ザリガニだから。
釣り方もサビキ釣りとかあったなぁ。
あれは手作りでも掛かってくれるかな?
10分ほど探したがほど良い虫が見つからないので、
渋々足を浜辺へと向けて戻る事にした。
森の切れ目から何投目かを投げるアルシェが見えた。
しかし、アクアの姿がない・・・。
あいつどこ行った?
「アルシェ、アクアはどこ行ったんだ?」
「え?あ、お兄さん。おかえりなさい。
アクアちゃんならいまお魚になってます!」
魚になる?
クーのように変身するという事はだろうか?
その時、アルシェのラインの先・・・、
つまり海に沈んているはずのルアーが水面を撥ね上げる。
そのルアーは普通ではなかった。
何かがルアーを掴んでいた。
それはどこからどう見てもアクアだった!
「さ、魚が釣れないからつまらないだろうって、
アクアちゃんが魚が掛かったらこんな感じだよって」
おそらくは制御を駆使してそれっぽくしているのだろう。
掴んだままのアクアを普通に釣り上げようとしたら、
普通は水の抵抗で苦しくなるだろうけど、
水精霊のアクアならではのお遊びか。
遊びにしては危険が伴うけど、
確かに見た目は釣りをしているように見える。
「アルシェ、魚の頭がこっちを向いたタイミングで巻け」
「でもそれだと逃げるだけの魚は釣れませんよ?
なんだか糸も勝手に出てしまいますし」
「無理をすると糸が切れてしまうから。
釣りは長期戦になる事も少なくないんだよ」
「なるほど、こうですね!」
タモ(網)までは用意してないので、
そのままアクアを釣り上げると、
キスのようにピチピチ跳ねながら砂浜を引き摺られるアクアをそのまま回収し、
抱きかかえたまま海から離す。
「アクア」
『ここ、さかないないんだもん!』
俺が何を言いたいのか理解しているようで、
名前を呼んだだけなのにこの反応だ。
え?ってか魚いないの?
こんなに自然が豊富な環境ならナブラが沸いててもおかしくないのに?
「魚いないのか?」
『うん、けっこうとおくまでみたけどいなかったよ?』
「お兄さん、魚だけじゃなくて精霊たちもこの付近にはいないみたいです」
じゃあ、ここにいる生物は俺たちだけってことか?
いくらなんでもおかしいだろ・・・。
この島から離れたアクアポッツォでは未だに魚が捕れているはずだから、
異常はこのネシンフラ島だけということだ。
そして、この島に存在する怪しいものと言えば・・・。
「オベリスクが原因かもな」
「魔力を拡散するということで精霊は理解できますが、
なぜ魚までいなくなってしまうんですか?」
「精霊がいる=水がきれいという事なんだろう。
そして精霊がいなくなったことで水質に変化が起こり、
魚たちは別の場所へ移動したんじゃないかな」
アクアを小脇に抱え、アルシェの近くまで戻る。
魚がいないのであれば釣りをしても意味がないので、
とっとと道具を回収してみんなのもとへ戻ることにした。
『あ!なにかいるよ~!』
アクアは俺に抱えられてお尻が前を向き、
頭は後ろに向いていた。
そのアクアが声をあげて海に何者かの存在を教えてくれる。
声に反応して海の方向へ振り返ると確かに何かが海の水面に生えていた。
アルシェも俺と同じくアクアの声に反応して海の何かを見ていた。
「あれ、何でしょうか?さっきまで居ませんでしたよね?」
「さぁな・・・。何か生き物の一部に見えるって事以外は・・・」
あ!そういえば、
依頼内容に大きい個体がいる可能性がどうたらって書いてたな!
おそらくオベリスクを見に来た村民があれの影でも見たってところか?
考え事をしている俺の服がクイクイと引っ張られる。
「お、お兄さん・・・あれ、近付いてきてません?」
「え?マジか?」
『きてるよ~!』
「一旦退避しよう。
遠目に姿を見てから対応を判断しよう。
場合によってはメリー達も連れて空に逃げないと」
もしかしたら振動なんかに敏感だといけないので、
ゆっくり下がりながら目線は切らないように退避を始める。
「どこの部分が出てると思います?」
「う~ん、エラ・・・かな?
本当にエラだったらフラゲッタとは関係のない個体という事になるな」
「エラって確か、魚が息をする為に必要な部分ですよね?」
「あぁ、エラ呼吸と言ってな。
水に含まれる酸素を吸収する器官になる」
「酸素ってなんですか?」
この世界の知識は歪だなぁ。
エラという器官の知識はあるのに酸素なんかの科学知識が抜けている。
病気はキュア等の状態異常回復の魔法では治らない。
その関係で解体新書的な書物は出来ているみたいだし、
他の動物にも同じ機能を持つ臓物が有ることも知っているらしい。
しかし、魔法と相性が良い科学を何故解明しなかったんだ?
まぁ、俺だって化学式だのなんだのと詳しい知識があるわけじゃない。
高校で習った水兵リーベ僕の船七曲がるシップスクラークカ程度の知識では、
この世界に変化を起こせるだけの力はないだろう。
どことなく魔神族はそういった科学に似た何かを持っている気がする。
異世界x科学の小説は読んだことはあるけど、
設定とか結構細かく作られているし、
何を何グラム加えるとコレになる!とか流し読みは当たり前だった。
「風の国に入ったら説明もしやすいし、
その時に教えてあげるよ」
「忘れないでくださいよ-?」
「はいはーい」
* * * * *
海に潜む何者かに気付かれずにメリーとクーが待つ場所へ戻ってきた。
食事も丁度出来上がったところだったが、
あの大物が海から上がりこちらへ来る場合も考え、
ひとまず封をしっかりとして、影倉庫に沈める。
そのまま5人でこの場を離れて遠目で観察する事になった。
間にオベリスクを挟み、反対側へと離れた。
アルシェの[アイシクルブロック]改め[アイシクルキューブ]を足場に、
アクアのレンズで観察する。
「《アイシクルキューブ!》」
「前はブロックじゃなかったか?」
「この間アクアちゃんに、
ブロックよりキューブの方がかわいいと言われまして」
「そんな理由で魔法名は変わるのか・・・」
「私が創った魔法なんですからいいじゃないですかっ!」
「氷の塊やん」
「なにか?」
「いえ何も」
どうせ最後は制御になるなら魔法名なんて何でも良いのかな。
キューブは俺たちの足下から発生し、
俺たちを乗せたまま迫り上がる。
周りに木々が生い茂っている為、
木より高めに設定してもらった。
「確かに生物の一部に見えますね」
『でっかいお魚』ジュルリ
『くー、よだれたれてるよ~?』
『おっと、クーとしたことが失礼』
「クーちゃんお魚が好きなんですね」
『受肉してからなんだか鼻について離れないんですっ!』ジュルリ
「猫の好物がそのまま引き継がれたのでしょうか?」
「お前ら・・・、あれが討伐対象だったら結構苦労する大きさだぞ。
ちゃんと見てるの俺だけじゃないか・・・」
アクアが造ってくれた水レンズで観察している俺のすぐ後ろで、
漫才のような掛け合いをしている仲間共に注意を促す。
そろそろエラ野郎が海から這い上がって浜辺へと姿を現しそうだった。
「結構ギリギリだったな」
まず、ザバァッと頭部が海面に出現した。
この時点で割と平べったい頭であることが判明し、
出現したポイントから水深を考えると縦にかなりデカい事がわかる。
続けて大きな目玉が出現した。
「なんですか・・・あの生き物・・・」
「見たことはありませんね」
「・・・・」
ここまで出現した時点で俺には正体がわかった。
いや、わかったというかその生物がなんという生物かわかった。
目玉が海面から出現したあとは、
ノッシノッシと浜辺へと進み、
体まですべてお目見えした。
全体的に丸く、後ろ足は常にしゃがみ体勢で、
前足は土下座のように体の前に整えられている。
そしてでっぷりとした体のくせにドッシドッシと・・・、
いや、ぴょんぴょんと飛び跳ねながら前へと進むあの動き。
「蛙だ」
「カエル?それってカエル妖精のカエルですか?」
「沼で見かけた彼らとは似ても似つきませんが・・・」
「俺にとってはあのデブ蛙がよく知る蛙なんだがなぁ。
カエル妖精とは別種のカエルと言うことでとりあえず納得しておいてくれ」
『デブガエル・・ふふふ』
『お姉さま、人の身体的特徴を笑ってはいけませんよ』
『えー!デブガエルはますたーがいったんだよー!?』
「クーはあからさまにガッカリするんじゃないよ、まったく。
八つ当たりまでして・・・」
エラだけしか見えていない時は魚かとワクワクしていたクーは、
正体が蛙とわかった時点で興味を失っていた。
というか、蛙にエラはおかしくないか!?
あれ?オタマジャクシのうちに無くなる・・あれ?
オタマジャクシの時点でエラってあったかな?
うーん、子供の時以外は蛙もオタマジャクシも見ないから、
記憶が曖昧すぎる。
デジモンだったらどっちもエラはついていなかったはずだ。
「でも、何故あんな大きな蛙はこの島に出てきたのでしょうか?」
「ご飯の時にカエル妖精がなんて言ってたか覚えているか?」
「えっと・・・神に感謝を、でしたかね」
「その神様って可能性もあるかなぁってさ」
でも、蛙の妖精?精霊?で思いつくのってヴォジャノーイっていう、
人が川とかに干渉するのを嫌って嫌がらせをする程度の存在だったような?
世界ごとに価値観が違ったり、
それこそ世界線が違えば良いヴァジャノーイのいるだろうけどな。
観察を続けると、
巨大蛙は浜辺からドッシドッシとオベリスクの方角へと進み出す。
この時点ではまだ魔物なのか精霊なのか、
はたまた敵なのか味方なのかすら判断が出来ない。
つまり、オベリスクについてからの行動次第で判断が付くこととなる。
『オベリスクに近付いていきますね。何をするのでしょう?』
「行動次第では接触を図ろうかと思ってるんだけど・・・」
『ねぇねぇ、あれってせいれいならみずせいれいかな?』
「そうだと思いますよ?カエル妖精の方々も氷水魔法が得意ですし」
『わかった~』
アクアが俺の近くから背後の方へと離れてごそごそし始める。
メリーが気を遣ってアクアについて下がるのも感じたし、
いまは蛙の動向を見守ろう。
ようやく蛙がオベリスクの30m離れた地点にたどり着いた。
何故かそこで停止して、周囲をきょろきょろと確認し出す。
何をしているのか?
生物も精霊もオベリスクによってこの近辺を離れ、
俺たち以外は誰も居ないというのに・・・。
と、そのとき、
巨大蛙はアクアに負けない大口を開けて、
ヒュッと風切音を残し、
口の奥から飛び出た大きな舌をオベリスクに向けて高速で伸ばし、
オベリスクと衝突する。
バアァァァァァン!!という衝突音と、
ベシャァァァァン!!という粘液が炸裂する不協和音を奏でながら、
オベリスクは見るからに凄まじい衝撃を受けた。
しかし、その表面にはてらてらと光り輝く粘液がこびりつくだけで、
折れることはおろか、ヒビすら入ってはいなかった。
明らかに今の俺たちが出せるどんな攻撃よりも威力があるであろうベロパンチを受けて無傷とは・・・どうすればいいんだよ。
「柱に攻撃したということは敵ではないんですかね?」
「もう少し判断材料がほしいってのが正直なところだな。
蛙の正体が判れば接触もしやすくなるんだが・・・」
内心はすでに接触をしても大丈夫では?という思いがある。
しかし、もしもが有った場合あの攻撃がこちらに向く可能性を考えると不用意な接触はできる限り避けたかった。
あと一歩、あとひとつでも材料があれば・・・。
『ますたー、い~い?』
いつの間にか後方に下がって何かをしていたアクアと、
それに付き添っていたメリーが近くまで戻っていた。
「どした?」
『えっとね、こーるしたの』
「コール?誰に?」
『すぃーねにしたの。デブガエルしってる?って。
そしたらね、それはう゛ぉじゃのーいっていかいの精霊だって』
『お姉さま、ヴォジャノーイってなんですか?』
『しらない』
ヴォジャノーイ。
スィーネが知っていると言うことは間違いなく敵では無いのだろう。
ただし、ヴォジャノーイという精霊ではなく、
ヴォジャノーイという位階の精霊なのか。
では、あの蛙は純粋培養で条件を満たした上で進化をした水精霊って事でいいのかな?
『う゛ぉじゃのーいもしゅごしゃだって』
「スィーネ様と同じ立場ですね」
「どうしますか、お兄さん?」
「ふぅん・・・。なら、接触してみるか。
何か情報がもらえるかもしれないしな」
* * * * *
接触を図るためにアルシェのキューブが解除され、
ゆっくりと地面へと近付いていく。
とはいえだ、ここはネシンフラ島の島民すら立ち入らない奥地。
そんなところにぞろぞろと姿を現すと怪しさ満点で、
話を聞いてもらえないばかりか攻撃だってされかねない。
では、どうするか?
『こんにちわ~』
「こんにちは、大きな水精さん」
正解は同じ水精霊とシヴァ神の加護持ちで話をする場を整えるでした。
周囲は森で覆われているため、出来る限りいきなり遭遇を避けたかった。
アルシェ達には背後以外からの接触を指示し、
彼女たちは蛙の左斜め前方から現れる選択をした。
『ん~、なんじゃお主達は。
小さいのはここの精霊じゃ無いのぅ、
そっちの小さいのもカエル妖精じゃないようだが?』
「私たちは王都アスペラルダから参りました。
いまはカエル妖精の村で数日お世話になっています」
『あくあーりぃです!こっちはあるです!』
「私はアルカンシェと申します」
『ふむ、儂はここいら一帯の守護を仰せつかっておる。
お主らは何用でこの島にたちいったのだ?』
「仲間と共にフラゲッタ討伐のクエストを受けまして、
私は以前にも来たことがあったので友達に会いにきたという理由もあります」
ここまでは順調に見える。
声をどこから発声しているのか知らんが、
離れたここまで少し聞こえると言うことは結構な声量なんだろうか?
アルシェ達の鼓膜は大丈夫か?
挨拶から目的、自分たち以外の人間が居ることを明かした。
そろそろ登場をして話に混ざりたいところだ。
見てるだけなのは正直居心地が悪いしいざという時にすぐそばに行けないのも怖い。
『娘よ、お主はまだ幼いな。友達とはカエル妖精の事であろうが、
この島は子供禁制の島のはずじゃが?』
「私のフルネームはアルカンシェ=シヴァ=アスペラルダ。
私の両親は王と妃を勤めております。
以前訪れたのは3年前に行われた視察の時にお母様に付いて、
ネシンフラ島へ参りました」
『おぉ!あの時の童か!記憶にあるぞ!
確かに当時の面影を残しておるな。
では、何故姫のお主が冒険者紛いの事をしておるのじゃ?』
「はい、その前に紹介したい仲間が近くに控えておりますので、
こちらへ来させてもかまいませんか?
説明もしやすくなるのですが・・・」
『かまわんぞ、お主の正体が知れれば他も信用たるじゃろう』
アルシェと話をしている蛙の声はかすかに聞こえるけど、
アルシェの声は聞こえないから何を話しているのだろうか・・・。
ピリリリリリリリ・・・・
[アルカンシェから連絡が来ています][yes/no]
〔もしもし?〕
オベリスクに近い性か、音質がかなり悪く、
砂嵐のような音が常に聞こえ、
声も音量が安定していなかった。
「聞こえてる。どうした?」
〔話も一段落して冒険者をしている説明に移りました。
この話はお兄さん達も混ぜて話した方が良いので紹介することにしました〕
なるほど。
ナイス判断と言わざるを得ないな。
「了解した、すぐにみんなで向かう。
それと、アクアはどうしてる?」
〔えっと・・・、精霊様の頭の上です・・・〕
「ぐっ・・・すぐ行く」
あの娘は本当にもう!
緊張の会話シーンじゃ無いのかよ!
『お父さま?行くのですか?』
「あぁ、行こう。自己紹介でひとまず戦闘は回避されたようだ。
今から冒険者になった理由の話をするらしい」
「そのタイミングでの紹介なのですね」
「そういうことだ、行くぞ!」
* * * * *
結論。ヴォジャノーイは良い人?だった。
アルカトラズ様に似た口調ではあるが、フレンドリーな対応に対し、こちらは少しお堅い印象を受ける。
まぁ守護職なんだし実直な性格が条件になっているのかもしれないが。
俺の正体は秘密にしてまま、
世界を回って破滅に関する情報収集と対応、
ついでに魔神族関連のあれやこれやを解決する事を目的としている旨は説明した。
オベリスクに例に漏れず、
おそらく魔神族の作品の可能性があるため、
調査を始めようという時にヴォジャノーイが現れ、
こちらも敵か味方かわからなかったので様子見をしていた旨も説明した。
『選択としては間違って居ないじゃろう。
用心に越したことは無いからのぉ。
儂も黒い柱の存在は知っておったが、
何故か気にもしなかった。
それだけではなく儂も生き物や小さい精霊達と同様に、
ここを離れてしまっておったわ』
「破滅の呪い・・・証拠が揃ってきましたね」
「これで2回目ですね。
スィーネ様は襲撃時にその場にいたので効果はなかったようですが」
『クー達はお父さまの近くにいつも居るから効果が無いんですね』
『せりゃーとおなじだね~』
現実味を帯びてきた破滅の呪いは世界的問題点が、
目から零れてしまうことと問題という認識が出来ない2点だ。
もともと王が言っていた水嵩の減少は魔神族の仕業で、
ポルタフォールでも同じく落水を仕掛けていた。
そしてこの地で精霊や妖精を弱らせる柱の登場だ。
オベリスクはヴォジャノーイの一撃にも耐えたということは、
耐久力が異常に高く、魔法も無効化するし、
周囲の魔力も拡散させる。
「ヴォジャノーイ様、質問をしてもいいでしょうか?」
『かまわん』
「精霊や妖精種は魔力拡散が進み、
魔力がなくなるとどうなりますか?」
『まず精霊じゃが・・・大気中の魔力がなくなり、
やがては己を構成する魔力も拡散され・・・死ぬじゃろう』
予想的中だった。
『しかし、浮遊精霊は人間に纏う事で生き延びられる。
成長した精霊も搾取という形になってしまうが、
人間から魔力を吸うことが出来る。
これで生きながらえることは可能じゃ。
次に妖精種じゃが、
やつらは人間の血が入った精霊種という扱いじゃから、
人ほどでは無くとも自身で魔力を作り出せる。
しかし、同じく大気中の魔力も吸うておる。
妖精は精霊と違い、人から魔力を吸えぬ。
大気中の魔力が無くなった場合、
いずれ体調を崩し、子を産めなくなり・・・全滅するじゃろう』
想像よりも洒落にならない規模の問題だった。
精霊はともかく妖精種は人間でもあり精霊でもあるため、
魔力生成も魔力吸収も半端だそうだ。
だからこそ、一番被害が拡大するのは妖精種であり、全滅は免れない。
『人も例外では無い。
今は近くに居てもさほど影響は無いが、
それこそ世界中の魔力が拡散され始めれば、
魔法が使えなくなり、生成魔力よりも拡散が早まるじゃろう。
そうなると浮遊精霊が死ぬ。
浮遊精霊が死ぬと不死の加護が外れ、
人もちょっとしたことで死ぬようになる。
そうなると、冒険も出来ず、魔族に抵抗も出来ず、
やがて少しずつ絶滅していくじゃろうな』
相手は寝る間も惜しんで研究するチームの一人だ。
簡単に抜ける事も引き継ぎも出来るわけもない。
2時間はくらいは覚悟して置いた方がいいだろうと、
パーティ内で意見も一致した事もあり、
ひとまず得体の知れないオベリスクから離れ、
割りと近かった砂浜へと移動することにした。
魔法の効果を低下させるなら転移も妨害に合う可能性があったし、
お昼を回る時間という事もあった。
「こちらであれば、それなりに広いですね」
「凸凹もしてないからゆっくり出来そうですよ、お兄さん」
「クー、柔らかめに広げられるか?」
『任せてください』
舟の上で試したサイズではなく、
ピクニックシート並の大きさで制御魔法を使ってもらう。
クーが進化して厚さが2倍になったようで、
2mmくらいだった板は4mmのシートへと進化した。
素足で黒シートを踏んでみて柔らかさを調整する。
「まぁ、こんなもんだろ」
『おぉ~!やわらかい?!』
「面白い感触ですね」
「このまま寝られそうです」
「寝てもいいけど、黒いから熱を吸収するぞ」
『そこはどうしようもなくて・・・早めにお食事にしましょう』
「クーちゃんは初めての食事ですね!」
進化後に影の中に収納して持ってきた道具類を出していく。
食材も事前にウルミナさんから頂いてきたのでそれも出して、
メリーは調理道具を調べていく。
鍋にはアルシェが水を貯めていき、
アクアは海辺まで遊びに出かけた。
クーもアクアと同じく、
手が小さいのでまだ調理台に立つことは出来ないが、
真剣な目で調理を進めるメリーの手元を見つめている。
俺も出し終えると手持ち無沙汰になる。
移動用調理台はそこまで広くないから一人しか立てない。
「ちょっと釣りしてくるわ」
「かしこまりました、もし釣れましたら調理致しますので」
「はいよー」
「あ、お兄さん。私も一緒に行っていいですか?」
「いいよ。どうせなら一緒にやってみようか?」
『あっ・・・』
小さく声を漏らしながらこちらを振り返るクー。
そういえば小さい道具はクーが選んだんだったか・・・、
なら一番に触るのはクーにしてあげたい。
しかし、今の状態は調理も見ていたいし、
釣りも最初にしたいと板挟みになっているみたいだ。
「俺の竿を交代で投げよう」
「わかりました」
クーにウインクをして影から竿ケースを引っ張り出し、
俺用のロッドとリールを素早く組み立てる。
ついでに釣り用の椅子を出して調理が良く見える位置に配置し、
クーを持ち上げてそのまま座らせる。
『ありがとうございます、お父さま』
「今度一緒にやろうな」
『はい!』
アルシェを引き連れて、
ルアーケースを持ち出してその場を離れた。
* * * * *
サーフ(砂浜)と岩場を発見したけど、
初心者の俺がまともに釣れたのは餌釣りだった。
だが、ここは異世界・・・どんな魚がいるのか分からないのだ。
「ここで釣りが出来るんですか?」
「天秤は無理だが、重りは買えたから、
砂浜でやる餌釣りと岩場でやる穴釣りのどっちかだな」
「どんな魚が釣れますか?」
「時期によるよ。
俺は夏・・・火の月に島に渡ってキスという魚を釣っていたし、
その島の岩場ではアラカブだったかな?
それを釣ってたよ」
「どちらも知らない名前のお魚ですね」
そりゃそうだろう。
ただ、似た魚はいると思うから見れば何の仲間か判断くらい出来るだろう。
ひとまず、釣れる釣れないの前にこの世界の道具を試さないとな。
竿は良くしなる丈夫な木材で作られ、
リールは樹脂?みたいな肌触りで軽すぎる。
ラインは・・・これ何の糸?
「これはアマムシの糸ですね。
村でも飼っているはずですよ。
すごく丈夫で一般人の服の中では最上位の防御力を誇るそうです」
「防御力と糸切(バレ)は関係あるのか?」
もちろんハンドルは好きな形をチョイスした。
俺はいつもT字のハンドルを使っていたから、
やっぱり落ち着くわぁ!
針を外したルアーを付けて、とりあえず投げてみる。
「アルシェ、投げるから俺の後ろに立つなよ」
「わかりました」
年に数回しか釣りに行かない釣り人の実力を見よ!
ブゥゥン!
これこれ!この音よ!
友達はヒュン!って音だったけど、俺はこんな音だったわww
だいたい20mくらいに先まで飛んで着水する。
余分に伸びたラインを巻いて、少し待ち、
徐々にラインを巻き取っていく。
「ここいいなぁ。岩がほとんどないから張り付いてても根掛かりしないぞ」
「根掛かりってなんですか?」
「水の底にある岩や海藻、その他諸々に針が引っかかって、
回収が不可能になる状態だな。
そうなると一生懸命頑外れるように頑張るんだけど、
最悪糸から切ることになる」
「お金を捨てる行為という事は理解しました」
絶対それを釣り人に言うなよアルシェ。
1時間で10000円投げ捨てた奴を俺は知ってるからな。
ラインもほとんど巻き終わり、
ルアーも見えてくるかと思っていたら、
ガッと何かが食いついた!
「お兄さん!何かが引っ張ってますよ!」
「針もないのに引っ張る魚がいるかっ!!」
どうせあと少しなのだからと、
ラインをそのまま巻いていくと・・・
「何してるんだ?」
『あれ?、ますたーだぁ!』モグモグ
「・・・」
水色の生き物が釣れた。
どんな馬鹿魚かと思ったら馬鹿娘だった。
針がなくて良かったゾ。
とりあえずデコピンをしてアルシェに預けておこう。
しかし、あのサイズの馬鹿を釣り上げたのに竿が折れなかったし、
ラインも切れなかったのは正直驚いた。
これがあれば多少無茶をしてもシーバスが釣り上げられるだろう!
べ、別にシーバスを何度もバラした訳じゃないんだからね!
「次は針付きのルアーに変えて投げてみるか・・・?
でも初心者にルアーって釣れるイメージないからなぁ」
「いつもはどんな物で釣りを?」
「虫だな。長細いやつとか」
「虫ですか・・・」
「まぁ、やり始めればいずれ慣れると思うけどな。
やってる奴も見てる奴も慣れるさ。
アクア、長細い虫を取ってこい」
『やー!』
「邪魔した罰だ!」
『さっきデコピンしたー!』
それもそうか。仕方ないな、俺が探してくるか。
その間にアルシェに投げさせて雰囲気だけでも楽しんでもらおうか。
「アルシェ、この竿を俺がやったみたいに投げてみな」
「っ!わかりました!」
キラキラした目で竿を手にするアルシェ。
特別な事ではないけれど、釣りをする姫様が現実に居ないことは想像がつく。
楽しい思い出になるように最善を尽くしてやろう。
アルシェが見様見真似で竿を握る手に自分の手を重ねる。
「ぅお兄さん!?」
「右手の握りはこうだ。親指は糸の上を抑える。
竿の手前は魚によっては腹に指した方が楽になる。
左手は特に言うことはないけど、
振った瞬間に右手の親指を離すとルアーが飛んでいく。
ルアーが重しとなって飛んでいくからな、そこを意識しろ。
そのあと右手で糸を止めないといけない」
「こ、こっちですね?止めるのは親指ですか?」
「そうだ、一気に止めると指の皮を傷めるし道具にも良くないから、
何度かに分けて止めると離すを繰り返して減速しろ」
「・・・ふんふん、わかりました」
専用の手袋でもあれば違うだろうけど、
まぁヒールもあるし浮遊精霊の鎧もあるから問題ないかな?
「とりあえず一回投げて大丈夫そうなら餌を探してくるよ」
「わかりました・・・いきます!」
流石に武術を鍛えただけあって大振りの割にヒュンッ!と音がした。
同じく鍛えているはずなのになんでいつもの音だったんだろ?
かつてのイメージで投げたからかな?
俺の倍ほど先の海に落ちるルアーを見て、
ラインも確認する。
思ったほど余分に出ていないようだ。
俺の初めてなんかは船を釣り上げたもんだよ!
回収する時すげぇドキドキしたもんな。
それに比べてアルシェの人生一投目は上手くいって何よりだ。
「少しだけハンドルを回して糸を回収しな。
水に入るまでの糸がピンと張れば大丈夫だ」
「はい」
「あとは少し巻いては待って少し巻いては待ってを繰り返していてくれ。
アクアは護衛を頼むぞ」
『はい、よろこんで~』
まだ覚えてたのかそれ。
2人から視線を切り森の方へと向かう。
いまは島の反対側にいる。
つまりはアクアポッツォの人に見られる心配がない。
だから、いまの時期に釣りもしているわけだけど、
あっちに戻ったらしばらく禁止だからな、少しのお試しくらいは見逃していただきたい。
「とはいえ、餌用の虫とかいつも買ってたし森にいるもんかねぇ」
売ってた虫の名前もおぼろげだぞ。
岩虫とかそんな感じだったような・・・、
あとカニも売ってたな。
あとはイソメとか・・・匂いが出てればいけるのかな?
いや、スルメがこの世界にあるか分からないし、
俺の中ではスルメで釣れる=ザリガニだから。
釣り方もサビキ釣りとかあったなぁ。
あれは手作りでも掛かってくれるかな?
10分ほど探したがほど良い虫が見つからないので、
渋々足を浜辺へと向けて戻る事にした。
森の切れ目から何投目かを投げるアルシェが見えた。
しかし、アクアの姿がない・・・。
あいつどこ行った?
「アルシェ、アクアはどこ行ったんだ?」
「え?あ、お兄さん。おかえりなさい。
アクアちゃんならいまお魚になってます!」
魚になる?
クーのように変身するという事はだろうか?
その時、アルシェのラインの先・・・、
つまり海に沈んているはずのルアーが水面を撥ね上げる。
そのルアーは普通ではなかった。
何かがルアーを掴んでいた。
それはどこからどう見てもアクアだった!
「さ、魚が釣れないからつまらないだろうって、
アクアちゃんが魚が掛かったらこんな感じだよって」
おそらくは制御を駆使してそれっぽくしているのだろう。
掴んだままのアクアを普通に釣り上げようとしたら、
普通は水の抵抗で苦しくなるだろうけど、
水精霊のアクアならではのお遊びか。
遊びにしては危険が伴うけど、
確かに見た目は釣りをしているように見える。
「アルシェ、魚の頭がこっちを向いたタイミングで巻け」
「でもそれだと逃げるだけの魚は釣れませんよ?
なんだか糸も勝手に出てしまいますし」
「無理をすると糸が切れてしまうから。
釣りは長期戦になる事も少なくないんだよ」
「なるほど、こうですね!」
タモ(網)までは用意してないので、
そのままアクアを釣り上げると、
キスのようにピチピチ跳ねながら砂浜を引き摺られるアクアをそのまま回収し、
抱きかかえたまま海から離す。
「アクア」
『ここ、さかないないんだもん!』
俺が何を言いたいのか理解しているようで、
名前を呼んだだけなのにこの反応だ。
え?ってか魚いないの?
こんなに自然が豊富な環境ならナブラが沸いててもおかしくないのに?
「魚いないのか?」
『うん、けっこうとおくまでみたけどいなかったよ?』
「お兄さん、魚だけじゃなくて精霊たちもこの付近にはいないみたいです」
じゃあ、ここにいる生物は俺たちだけってことか?
いくらなんでもおかしいだろ・・・。
この島から離れたアクアポッツォでは未だに魚が捕れているはずだから、
異常はこのネシンフラ島だけということだ。
そして、この島に存在する怪しいものと言えば・・・。
「オベリスクが原因かもな」
「魔力を拡散するということで精霊は理解できますが、
なぜ魚までいなくなってしまうんですか?」
「精霊がいる=水がきれいという事なんだろう。
そして精霊がいなくなったことで水質に変化が起こり、
魚たちは別の場所へ移動したんじゃないかな」
アクアを小脇に抱え、アルシェの近くまで戻る。
魚がいないのであれば釣りをしても意味がないので、
とっとと道具を回収してみんなのもとへ戻ることにした。
『あ!なにかいるよ~!』
アクアは俺に抱えられてお尻が前を向き、
頭は後ろに向いていた。
そのアクアが声をあげて海に何者かの存在を教えてくれる。
声に反応して海の方向へ振り返ると確かに何かが海の水面に生えていた。
アルシェも俺と同じくアクアの声に反応して海の何かを見ていた。
「あれ、何でしょうか?さっきまで居ませんでしたよね?」
「さぁな・・・。何か生き物の一部に見えるって事以外は・・・」
あ!そういえば、
依頼内容に大きい個体がいる可能性がどうたらって書いてたな!
おそらくオベリスクを見に来た村民があれの影でも見たってところか?
考え事をしている俺の服がクイクイと引っ張られる。
「お、お兄さん・・・あれ、近付いてきてません?」
「え?マジか?」
『きてるよ~!』
「一旦退避しよう。
遠目に姿を見てから対応を判断しよう。
場合によってはメリー達も連れて空に逃げないと」
もしかしたら振動なんかに敏感だといけないので、
ゆっくり下がりながら目線は切らないように退避を始める。
「どこの部分が出てると思います?」
「う~ん、エラ・・・かな?
本当にエラだったらフラゲッタとは関係のない個体という事になるな」
「エラって確か、魚が息をする為に必要な部分ですよね?」
「あぁ、エラ呼吸と言ってな。
水に含まれる酸素を吸収する器官になる」
「酸素ってなんですか?」
この世界の知識は歪だなぁ。
エラという器官の知識はあるのに酸素なんかの科学知識が抜けている。
病気はキュア等の状態異常回復の魔法では治らない。
その関係で解体新書的な書物は出来ているみたいだし、
他の動物にも同じ機能を持つ臓物が有ることも知っているらしい。
しかし、魔法と相性が良い科学を何故解明しなかったんだ?
まぁ、俺だって化学式だのなんだのと詳しい知識があるわけじゃない。
高校で習った水兵リーベ僕の船七曲がるシップスクラークカ程度の知識では、
この世界に変化を起こせるだけの力はないだろう。
どことなく魔神族はそういった科学に似た何かを持っている気がする。
異世界x科学の小説は読んだことはあるけど、
設定とか結構細かく作られているし、
何を何グラム加えるとコレになる!とか流し読みは当たり前だった。
「風の国に入ったら説明もしやすいし、
その時に教えてあげるよ」
「忘れないでくださいよ-?」
「はいはーい」
* * * * *
海に潜む何者かに気付かれずにメリーとクーが待つ場所へ戻ってきた。
食事も丁度出来上がったところだったが、
あの大物が海から上がりこちらへ来る場合も考え、
ひとまず封をしっかりとして、影倉庫に沈める。
そのまま5人でこの場を離れて遠目で観察する事になった。
間にオベリスクを挟み、反対側へと離れた。
アルシェの[アイシクルブロック]改め[アイシクルキューブ]を足場に、
アクアのレンズで観察する。
「《アイシクルキューブ!》」
「前はブロックじゃなかったか?」
「この間アクアちゃんに、
ブロックよりキューブの方がかわいいと言われまして」
「そんな理由で魔法名は変わるのか・・・」
「私が創った魔法なんですからいいじゃないですかっ!」
「氷の塊やん」
「なにか?」
「いえ何も」
どうせ最後は制御になるなら魔法名なんて何でも良いのかな。
キューブは俺たちの足下から発生し、
俺たちを乗せたまま迫り上がる。
周りに木々が生い茂っている為、
木より高めに設定してもらった。
「確かに生物の一部に見えますね」
『でっかいお魚』ジュルリ
『くー、よだれたれてるよ~?』
『おっと、クーとしたことが失礼』
「クーちゃんお魚が好きなんですね」
『受肉してからなんだか鼻について離れないんですっ!』ジュルリ
「猫の好物がそのまま引き継がれたのでしょうか?」
「お前ら・・・、あれが討伐対象だったら結構苦労する大きさだぞ。
ちゃんと見てるの俺だけじゃないか・・・」
アクアが造ってくれた水レンズで観察している俺のすぐ後ろで、
漫才のような掛け合いをしている仲間共に注意を促す。
そろそろエラ野郎が海から這い上がって浜辺へと姿を現しそうだった。
「結構ギリギリだったな」
まず、ザバァッと頭部が海面に出現した。
この時点で割と平べったい頭であることが判明し、
出現したポイントから水深を考えると縦にかなりデカい事がわかる。
続けて大きな目玉が出現した。
「なんですか・・・あの生き物・・・」
「見たことはありませんね」
「・・・・」
ここまで出現した時点で俺には正体がわかった。
いや、わかったというかその生物がなんという生物かわかった。
目玉が海面から出現したあとは、
ノッシノッシと浜辺へと進み、
体まですべてお目見えした。
全体的に丸く、後ろ足は常にしゃがみ体勢で、
前足は土下座のように体の前に整えられている。
そしてでっぷりとした体のくせにドッシドッシと・・・、
いや、ぴょんぴょんと飛び跳ねながら前へと進むあの動き。
「蛙だ」
「カエル?それってカエル妖精のカエルですか?」
「沼で見かけた彼らとは似ても似つきませんが・・・」
「俺にとってはあのデブ蛙がよく知る蛙なんだがなぁ。
カエル妖精とは別種のカエルと言うことでとりあえず納得しておいてくれ」
『デブガエル・・ふふふ』
『お姉さま、人の身体的特徴を笑ってはいけませんよ』
『えー!デブガエルはますたーがいったんだよー!?』
「クーはあからさまにガッカリするんじゃないよ、まったく。
八つ当たりまでして・・・」
エラだけしか見えていない時は魚かとワクワクしていたクーは、
正体が蛙とわかった時点で興味を失っていた。
というか、蛙にエラはおかしくないか!?
あれ?オタマジャクシのうちに無くなる・・あれ?
オタマジャクシの時点でエラってあったかな?
うーん、子供の時以外は蛙もオタマジャクシも見ないから、
記憶が曖昧すぎる。
デジモンだったらどっちもエラはついていなかったはずだ。
「でも、何故あんな大きな蛙はこの島に出てきたのでしょうか?」
「ご飯の時にカエル妖精がなんて言ってたか覚えているか?」
「えっと・・・神に感謝を、でしたかね」
「その神様って可能性もあるかなぁってさ」
でも、蛙の妖精?精霊?で思いつくのってヴォジャノーイっていう、
人が川とかに干渉するのを嫌って嫌がらせをする程度の存在だったような?
世界ごとに価値観が違ったり、
それこそ世界線が違えば良いヴァジャノーイのいるだろうけどな。
観察を続けると、
巨大蛙は浜辺からドッシドッシとオベリスクの方角へと進み出す。
この時点ではまだ魔物なのか精霊なのか、
はたまた敵なのか味方なのかすら判断が出来ない。
つまり、オベリスクについてからの行動次第で判断が付くこととなる。
『オベリスクに近付いていきますね。何をするのでしょう?』
「行動次第では接触を図ろうかと思ってるんだけど・・・」
『ねぇねぇ、あれってせいれいならみずせいれいかな?』
「そうだと思いますよ?カエル妖精の方々も氷水魔法が得意ですし」
『わかった~』
アクアが俺の近くから背後の方へと離れてごそごそし始める。
メリーが気を遣ってアクアについて下がるのも感じたし、
いまは蛙の動向を見守ろう。
ようやく蛙がオベリスクの30m離れた地点にたどり着いた。
何故かそこで停止して、周囲をきょろきょろと確認し出す。
何をしているのか?
生物も精霊もオベリスクによってこの近辺を離れ、
俺たち以外は誰も居ないというのに・・・。
と、そのとき、
巨大蛙はアクアに負けない大口を開けて、
ヒュッと風切音を残し、
口の奥から飛び出た大きな舌をオベリスクに向けて高速で伸ばし、
オベリスクと衝突する。
バアァァァァァン!!という衝突音と、
ベシャァァァァン!!という粘液が炸裂する不協和音を奏でながら、
オベリスクは見るからに凄まじい衝撃を受けた。
しかし、その表面にはてらてらと光り輝く粘液がこびりつくだけで、
折れることはおろか、ヒビすら入ってはいなかった。
明らかに今の俺たちが出せるどんな攻撃よりも威力があるであろうベロパンチを受けて無傷とは・・・どうすればいいんだよ。
「柱に攻撃したということは敵ではないんですかね?」
「もう少し判断材料がほしいってのが正直なところだな。
蛙の正体が判れば接触もしやすくなるんだが・・・」
内心はすでに接触をしても大丈夫では?という思いがある。
しかし、もしもが有った場合あの攻撃がこちらに向く可能性を考えると不用意な接触はできる限り避けたかった。
あと一歩、あとひとつでも材料があれば・・・。
『ますたー、い~い?』
いつの間にか後方に下がって何かをしていたアクアと、
それに付き添っていたメリーが近くまで戻っていた。
「どした?」
『えっとね、こーるしたの』
「コール?誰に?」
『すぃーねにしたの。デブガエルしってる?って。
そしたらね、それはう゛ぉじゃのーいっていかいの精霊だって』
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『しらない』
ヴォジャノーイ。
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『う゛ぉじゃのーいもしゅごしゃだって』
「スィーネ様と同じ立場ですね」
「どうしますか、お兄さん?」
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* * * * *
接触を図るためにアルシェのキューブが解除され、
ゆっくりと地面へと近付いていく。
とはいえだ、ここはネシンフラ島の島民すら立ち入らない奥地。
そんなところにぞろぞろと姿を現すと怪しさ満点で、
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では、どうするか?
『こんにちわ~』
「こんにちは、大きな水精さん」
正解は同じ水精霊とシヴァ神の加護持ちで話をする場を整えるでした。
周囲は森で覆われているため、出来る限りいきなり遭遇を避けたかった。
アルシェ達には背後以外からの接触を指示し、
彼女たちは蛙の左斜め前方から現れる選択をした。
『ん~、なんじゃお主達は。
小さいのはここの精霊じゃ無いのぅ、
そっちの小さいのもカエル妖精じゃないようだが?』
「私たちは王都アスペラルダから参りました。
いまはカエル妖精の村で数日お世話になっています」
『あくあーりぃです!こっちはあるです!』
「私はアルカンシェと申します」
『ふむ、儂はここいら一帯の守護を仰せつかっておる。
お主らは何用でこの島にたちいったのだ?』
「仲間と共にフラゲッタ討伐のクエストを受けまして、
私は以前にも来たことがあったので友達に会いにきたという理由もあります」
ここまでは順調に見える。
声をどこから発声しているのか知らんが、
離れたここまで少し聞こえると言うことは結構な声量なんだろうか?
アルシェ達の鼓膜は大丈夫か?
挨拶から目的、自分たち以外の人間が居ることを明かした。
そろそろ登場をして話に混ざりたいところだ。
見てるだけなのは正直居心地が悪いしいざという時にすぐそばに行けないのも怖い。
『娘よ、お主はまだ幼いな。友達とはカエル妖精の事であろうが、
この島は子供禁制の島のはずじゃが?』
「私のフルネームはアルカンシェ=シヴァ=アスペラルダ。
私の両親は王と妃を勤めております。
以前訪れたのは3年前に行われた視察の時にお母様に付いて、
ネシンフラ島へ参りました」
『おぉ!あの時の童か!記憶にあるぞ!
確かに当時の面影を残しておるな。
では、何故姫のお主が冒険者紛いの事をしておるのじゃ?』
「はい、その前に紹介したい仲間が近くに控えておりますので、
こちらへ来させてもかまいませんか?
説明もしやすくなるのですが・・・」
『かまわんぞ、お主の正体が知れれば他も信用たるじゃろう』
アルシェと話をしている蛙の声はかすかに聞こえるけど、
アルシェの声は聞こえないから何を話しているのだろうか・・・。
ピリリリリリリリ・・・・
[アルカンシェから連絡が来ています][yes/no]
〔もしもし?〕
オベリスクに近い性か、音質がかなり悪く、
砂嵐のような音が常に聞こえ、
声も音量が安定していなかった。
「聞こえてる。どうした?」
〔話も一段落して冒険者をしている説明に移りました。
この話はお兄さん達も混ぜて話した方が良いので紹介することにしました〕
なるほど。
ナイス判断と言わざるを得ないな。
「了解した、すぐにみんなで向かう。
それと、アクアはどうしてる?」
〔えっと・・・、精霊様の頭の上です・・・〕
「ぐっ・・・すぐ行く」
あの娘は本当にもう!
緊張の会話シーンじゃ無いのかよ!
『お父さま?行くのですか?』
「あぁ、行こう。自己紹介でひとまず戦闘は回避されたようだ。
今から冒険者になった理由の話をするらしい」
「そのタイミングでの紹介なのですね」
「そういうことだ、行くぞ!」
* * * * *
結論。ヴォジャノーイは良い人?だった。
アルカトラズ様に似た口調ではあるが、フレンドリーな対応に対し、こちらは少しお堅い印象を受ける。
まぁ守護職なんだし実直な性格が条件になっているのかもしれないが。
俺の正体は秘密にしてまま、
世界を回って破滅に関する情報収集と対応、
ついでに魔神族関連のあれやこれやを解決する事を目的としている旨は説明した。
オベリスクに例に漏れず、
おそらく魔神族の作品の可能性があるため、
調査を始めようという時にヴォジャノーイが現れ、
こちらも敵か味方かわからなかったので様子見をしていた旨も説明した。
『選択としては間違って居ないじゃろう。
用心に越したことは無いからのぉ。
儂も黒い柱の存在は知っておったが、
何故か気にもしなかった。
それだけではなく儂も生き物や小さい精霊達と同様に、
ここを離れてしまっておったわ』
「破滅の呪い・・・証拠が揃ってきましたね」
「これで2回目ですね。
スィーネ様は襲撃時にその場にいたので効果はなかったようですが」
『クー達はお父さまの近くにいつも居るから効果が無いんですね』
『せりゃーとおなじだね~』
現実味を帯びてきた破滅の呪いは世界的問題点が、
目から零れてしまうことと問題という認識が出来ない2点だ。
もともと王が言っていた水嵩の減少は魔神族の仕業で、
ポルタフォールでも同じく落水を仕掛けていた。
そしてこの地で精霊や妖精を弱らせる柱の登場だ。
オベリスクはヴォジャノーイの一撃にも耐えたということは、
耐久力が異常に高く、魔法も無効化するし、
周囲の魔力も拡散させる。
「ヴォジャノーイ様、質問をしてもいいでしょうか?」
『かまわん』
「精霊や妖精種は魔力拡散が進み、
魔力がなくなるとどうなりますか?」
『まず精霊じゃが・・・大気中の魔力がなくなり、
やがては己を構成する魔力も拡散され・・・死ぬじゃろう』
予想的中だった。
『しかし、浮遊精霊は人間に纏う事で生き延びられる。
成長した精霊も搾取という形になってしまうが、
人間から魔力を吸うことが出来る。
これで生きながらえることは可能じゃ。
次に妖精種じゃが、
やつらは人間の血が入った精霊種という扱いじゃから、
人ほどでは無くとも自身で魔力を作り出せる。
しかし、同じく大気中の魔力も吸うておる。
妖精は精霊と違い、人から魔力を吸えぬ。
大気中の魔力が無くなった場合、
いずれ体調を崩し、子を産めなくなり・・・全滅するじゃろう』
想像よりも洒落にならない規模の問題だった。
精霊はともかく妖精種は人間でもあり精霊でもあるため、
魔力生成も魔力吸収も半端だそうだ。
だからこそ、一番被害が拡大するのは妖精種であり、全滅は免れない。
『人も例外では無い。
今は近くに居てもさほど影響は無いが、
それこそ世界中の魔力が拡散され始めれば、
魔法が使えなくなり、生成魔力よりも拡散が早まるじゃろう。
そうなると浮遊精霊が死ぬ。
浮遊精霊が死ぬと不死の加護が外れ、
人もちょっとしたことで死ぬようになる。
そうなると、冒険も出来ず、魔族に抵抗も出来ず、
やがて少しずつ絶滅していくじゃろうな』
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