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第二部『日ノ本統一! そして…』

第七話

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三原城城主・小早川隆景が備中高松城の清水宗治へ援軍として向っていたが、それより先に物見として数名で構成された部隊が引き返して来たのだった。


隆景「いったいどうしたのだ?」
「はっ!こちらに向って軍勢が押し寄せております!その数およそ2万!」

隆景「何?まさか備中高松城がもう落ちたのか?」
「いえ、昨日に備中高松城へ入った草の報告ではまだだったので、それは有り得ないかと…」

隆景「では、どこの軍勢だというのだ!」
「分かりませんが、三原城に戻り篭城をお勧め致す!」

隆景「もう、その策は無意味だ!あの地鳴りのような音と砂煙を見てみろ!」


そう、もう目と鼻の先に羽柴軍が迫りつつあったのだ。


光秀「殿!あれに見えるは小早川家の旗印・小早川隆景の隊に相違ございません!」
「おお!あの名将で知られる小早川隆景と合間見える機会に巡り会えたのは幸運だぞ!死ぬまでの語り草にしたいのぅ。」

光秀「敵の兵力は、ざっと5000です!このまま一気に踏み潰す事も可能ですがどう致しますか?」
「うむ。急いで大殿に合流したいかなのぅ…」


そこに福島正則を含む猛将7名が秀吉と光秀の話に割り込んで来た!


正則「殿!我らに小早川隆景と同等の兵をお貸し下されませぬか?」
「何だ?藪から棒に!」

清正「正則と嘉明とも話したのですが、殿が「死ぬまでの語り草」という程の名将と同等の兵力で戦い、名声を轟かせたいのです!」
「ほう。あの小早川隆景は手強いぞ?」

嘉明「相手にとって不足無しとはこの事です!是非、許可を!」
「ふむ。どうしたものかの?光秀。」

光秀「やらせてみては如何かと。」


秀吉が腕を組んで考え
「よし。許可しよう!では、福島正則、加藤清正、加藤嘉明、脇坂安治、糟屋武則、片桐且元、平野長泰の各隊には騎馬700を貸し与える。厳密にいえば少し足りないが、発言したからには勝て!勝って、名声を手に入れろ!」


”おおおぉぉぉぉぉ!!”



【本来は賤ヶ岳の戦い(羽柴秀吉と柴田勝家の戦い)で「賤ヶ岳の七本槍」として有名になった。】

【福島正則(フクシママサノリ)。秀吉とは親戚で桶屋の息子たっだとも。賤ヶ岳の七本槍の一人で関ヶ原の戦いでは東軍の主力と成って戦った。】

【加藤清正(カトウキヨマサ)。秀吉とは親戚で賤ヶ岳の七本槍の一人。賤ヶ岳や朝鮮で軍功を立て関ヶ原の戦いでは正則同様で東軍につく。】

【加藤嘉明(カトウヨシアキ)。秀吉の家臣で賤ヶ岳の七本槍の一人。水軍を率いて活躍し伊予20万石の所領を持っていたが、関ヶ原の戦いで東軍につき家康に会津40万石の所領に移封した。】

【脇坂安治(ワキサカヤスハル)。賤ヶ岳の七本槍の一人。この方は小早川秀秋並に凄い。関ヶ原の戦いでは西軍にいたが寝返り大谷吉継隊を崩壊させた張本人。戦後は伊予5万石の所領を得た。】

【糟屋武則(カスヤタケノリ)。賤ヶ岳の七本槍の一人。赤松家に仕た後、別所家を経て秀吉の小姓として仕えた。関ヶ原の戦いでは西軍で参戦した。】

【片桐且元(カタギリカツモト)。賤ヶ岳の七本槍の一人。小牧長久手や賤ヶ岳、九州・小田原征伐に参戦し活躍した。秀吉死後は淀殿の側近と対立し家康に下った。】

【平野長泰(ヒラノナガヤス)。賤ヶ岳の七本槍の一人だが、その以降での活躍が無く領地も雀の涙で関ヶ原の戦いでは東軍だった為、生き残った程度のお方。】



対する小早川隆景の方は…


隆景「尻尾を巻いて逃げるのも癪に障る!ここは一戦して…」
「殿!敵の軍勢が突如止まりましたぞ!」

隆景「何と面妖な…」
「殿!敵の一隊がこちらに進軍して来ました!使者でしょうか?」

隆景「いや。違うなぁ…」


小早川隆景の眼前に福島正則が単騎で現れ叫んだ!


正則「そこに、おわすは小早川隆景殿とお見受け致す!我らは、そこもとと同数の兵力で戦を所望する!もはや、逃げるとかぬかすなよ?」


その挑発を受けた隆景の配下が
「殿!あんな挑発に乗ってはいけません!後方の本体が襲い掛かってくるかと!」


という意見が出たが、あえて隆景が
「名を名乗られい!」

正則「これは失礼した。某は織田家家臣・羽柴秀吉様の配下・福島正則でござる。」
「ほう。ワシは毛利家家臣・小早川隆景だ!後方にいるであろう、そこもとの殿である羽柴秀吉軍が、戦いの最中に襲い掛かってくる事がなければ、この戦いに応じようではないか!」

正則「その心配には及ばず!我らは殿から「小早川隆景とは凄い名将だ!」と聞いている。是非、合間見えたい!」
「ふ、ははは!面白い!よかろう!このワシが戦いの何たるかを小童風情に教えてやるわ!」

正則「それでこそ、小早川隆景殿だ!開始の合図ですが、この横の海岸の沖合いに軍船が見えるのが分かりますかな?」


そう言われて沖を見た隆景は
「何だ?!あの船は!?」

正則「あれは織田の鉄甲船という船だ。もし我らに勝つ事が出来れば、あの船の詳細を教えてやる!」
「ほう。それは是非知りたいな。こう見えても、ワシは船での戦いの方が得意でな!」

正則「では、あの船から轟音が聞こえますので、それを合図に始めましょう!」


そう言うと正則は小早川隊から離れて行った。


隆景「(小早川隆景とは凄い名将か…)これは負けられんな!者共この戦、勝ちに行くぞ!」
「しかし、殿。あの沖にある船は何かおかしいですな。」

隆景「うむ。」


丁度その頃、村上水軍と九鬼水軍の戦いが始まり、九鬼水軍総大将・九鬼嘉隆の号令と共に各船に搭載された大筒が一斉に火を吹いたのであった!!



時を同じくして、伊達政宗が吉川元春と、織田信長・上杉謙信が毛利元就と、徳川家康が備中高松城に対し城攻めを開始したのであった。


沖合いに居る軍船からの轟音が響き渡り、それを合図に福島正則を筆頭に清正、嘉明、安治、武則、且元、長泰の7名が700の各騎馬隊を指揮し、小早川隆景の隊に向って突撃して行った!!


それを後方で傍観していた秀吉は
「おいおい。陣形も何もないのか?これでは、ただの猪武者ではないか!」

光秀「いや、これはこれで良いかと!」
「何故そう言える?」

光秀「小早川隆景は計算高い知将と聞き及んでおりますれば…」
「そうか!知将としての勘が狂うという事だな?しかし、相手は海千山千の猛者だぞ?」

光秀「開幕はこれで大丈夫ですが、さてその海千山千殿がどう出るか見ものですな。」



その小早川隆景の配下が
「殿!敵が突撃して参ります!」

隆景「何だと?一直線にか?」
「はっ!そのようです!」

隆景「ワシも舐められたものだな!全軍横陣に並べ!敵が突っ込んで来たらワザと中央突破させろ!その後、後方に集結し鋒矢陣に成り今度はワシらが相手を強襲するぞ!」


”おおおぉぉぉぉぉぉ!!”



そして案の定、福島らは突撃して来て難なく小早川隊の突破に成功した。


正則「何と手応えな無い!簡単に成功したぞ!清正。」
「だが、小早川隆景の姿が無いぞ!」


すると、後続の且元が
「正則!不味いぞ!さっき簡単に突破出来たと思ったのは罠だ!後方から小早川が我らに向って突っ込んできたぞ!」

正則「何だと?!致し方ない!反転して…」


騎馬は簡単に止まれず、反転するところを突かれ後続の武則と長泰と且元の隊が壊滅した!


正則「ええい!武則と長泰と且元は戦線を離れよ!後はワシの元に集結し、一塊に成れ!」

と、体制を立て直したが形勢が圧倒的に小早川優勢に変化したのだった。


その光景を傍観していた秀吉は
「それ見た事か!猪は所詮、猪じゃ!しかし、さすが小早川隆景じゃな。」

光秀「そうですな。あの一瞬で陣形を考える手腕は敵ながら惚れぼれしますな。」
「うむ。さて、正則はどう対処するかの。」


その優勢の小早川陣営の士気は非常に高く成っていた!


隆景「皆、一旦静まれ!冷静になるのじゃ!」
「殿!一気に攻めましょう!」

と、兵達は隆景の言葉も聞けない程、高揚感に浸っていたのを正則が見逃さなかった!


正則「敵は今ので冷静差が消えてるぞ!あいつらの顔から血の気を引いてやろうぞ!突撃ぃぃぃ!」


その突撃で小早川陣営は隆景以外、大混乱に陥りほぼ壊滅したのだった。


隆景「まさか、こんな事になるとはな… 油断大敵とは良く言ったものだな…」


そこに福島が駆け寄り
「勝敗は決した!小早川殿、殿も元に来て頂くが宜しいか?」

隆景「ワシに異論は無い!何処へなりと連れて行け!」


そして小早川隆景は敗軍の将として秀吉の前に座らされた。


秀吉「ワシが、この者らの主の織田家家臣・羽柴秀吉じゃ!今回の戦いは残念じゃったな、隆景殿。」
「ワシが兵を抑え付けれなかった事が敗因であった。完敗だ。」

秀吉「いや、見た所。隆景殿の兵は援軍の為に急遽集めた兵達であろう?」
「その通りではあるが言い訳はせん。」

秀吉「まさに武士の鑑であるな。そんな隆景殿が、こんなところで死なすのは勿体ない!」
「何を言いたいのだ?秀吉殿。」

秀吉「織田信長様の元で働く気はないかと思うてな。」

光秀「殿!勝手にそんな事を決めて宜しいのですか?」
「構わん!大殿も同じ事を言うに違いないからな!どうじゃ、隆景殿。」

隆景「その申し出は有りがたいが、まだ毛利家が滅んでない以上、受けられない!」
「うむ。それはもっともな言い分じゃな。よし!それでは、その毛利が滅びるところを、その目に見てもらう事としよう!悪いが縄をかけさせてもらうぞ!」

隆景「ワシは敗軍の将だ!好きにしろ!但し、毛利家の情報は一切喋らんからな!(この男は猿みたいな形をしてるのに、本性は鬼か?)」


こうして、小早川隊は福島らの隊に負け、小早川隆景は秀吉に捕らわれの身になった。


この戦いと同じくして、伊達政宗が信長よりも早く先行して、吉川元春の居る山吹城に進軍していた。



吉川陣営では
「殿!早く出陣して大殿と挟撃の準備をした方が得策かと!」

元春「分かっておる!今頃は隆景も援軍に向ってる頃合いだしな!大殿との挟撃で織田信長に一泡吹かすぞ!皆の者、出陣じゃ!!」


”おおおぉぉぉぉぉ!”


しかし、その道中でまさかの遭遇戦が始まるのだった。




吉川元春は織田家本陣の織田信長を毛利元就と挟撃するための合流地点に向け兵を進めていた。


元長「父上!前方に見慣れぬ旗印の騎馬の一団がこちらに向って来ていますぞ!」
「馬鹿者!敵だ!!」

元長「まさか、もう三刀屋城を落としたという事ですか?父上!」
「そのまさかではあるが、織田の旗印では無いのは確かだが… いったい何処の家中の軍勢だ?」

元長「上杉でしょうか?」
「いや、上杉家の物ではないが…」


そこへ騎馬武者が単騎で駆けて来て
「某は伊達政宗が家臣・片倉景綱と申す!吉川元春殿の軍勢と見たが、如何に!!」

元春「その通りだが、伊達というのは初めて聞くが?「いったい何用かな?」と聞くまでもないか?」
「そうですな!貴殿との戦を楽しみにしている我が殿に変わって、宣戦布告する!いざ、尋常に勝負でござる!」

元春「どこの馬の骨とも分からん奴に、この吉川元春が倒せると思うな!かかって参られい!」
「おお!では後ほど!ごめん!」


吉川元春は久しぶりに熱くなったのである。


元春「皆の者!前方の伊達とか申す田舎者を蹴散らし、大殿と合流するぞ!元長、広家、準備致せ!」
「「はっ!」」



【吉川元長(キッカワモトナガ)。吉川元春の長男。元春と同じ猛将で各地を転戦し毛利家に尽くしたが、豊臣政権の九州征伐時に病死。】

【吉川広家(キッカワヒロイエ)。吉川元春の三男。元長が早期に病死した為、吉川家を継ぎ毛利家の家政を担当する。関ヶ原の合戦後には毛利家が断絶しないように奔走した。】



宣戦布告を終えた景綱が
「殿!敵将・吉川元春の同意を得ましたぞ!その時「どこの馬の骨とも分からん奴」とか言われましたぞ!」

政宗「ほう… この戦に勝って、伊達の名声を広めなくてはな!それに、義兄様に大見栄切って来たしな。」
「ですな!陣形はどうします?」

政宗「偃月の陣で攻める!当然ではあるが先頭は、このワシが担う!」
「いや、いくらなんでもそれは危険ですぞ!」

政宗「ワシは後方でこそこそ指揮をするのが嫌なのじゃ!お前も分かってる事だろう?」
「ですが… 分かりました!十分、お気を付けて下さい!全軍、偃月の陣形を取れ!」


そして、吉川陣営では元春が
「敵の兵力は我らより多いが、臆する事は無い!この中国では無敵の強さを誇る我らに牙をむいた事を後悔させてやれ!陣形ほこのままで良い!弓隊構え!敵が射程に入り次第撃て!」


すると、先頭にいた政宗が弓隊が狙ってる事に気付いたが構わず突撃した!!


元長「父上!敵前方騎馬の数隊の突撃して来る速度が早いですぞ!」
「何?!ええい、これでは間に合わん!弓隊は後方に下がれ!」


その命令で弓隊が下がろうとした時に、政宗の一隊が突っ込んで来て弓隊が大混乱に陥った。


元長「父上!某が、弓隊を助けに行って来ます!ごめん!」
「馬鹿者!待て!おい!」


元長は先頭で指揮する騎馬武者も見つけ
「そこの騎馬武者!某は吉川元長だ!貴様の首を頂きに参上した!覚悟いた…」



しかし、元長の台詞を最後まで聞かずに元長は政宗の短式火縄銃で頭を撃ち抜かれ馬から落ちたのだった。


政宗「(どこの馬の骨とか言う前に、お前らの戦い方は時代遅れなんだよ!馬鹿が!)吉川元長討ち取ったり!!」


それと同時に弓隊の士気は落ち政宗らの軍勢に蹂躪され壊滅したのだった。


広家「父上!兄上が討死したとの事です!」
「何だと!!で、どんな死に方であったか?」

広家「火縄銃で頭を撃ち抜かれたとの事です!」
「何と!?元長の死で分かったが、相手は火縄銃を持ってるという事だ!無闇に突撃せず距離を取れ!」

景綱「殿!敵の後続が後退しておりますぞ!」
「火縄で撃ち殺されたので、火縄を警戒したのだろう。だが!!皆の者、押せ押せじゃ!構わず突っ込め!」


”おおおぉぉぉぉぉぉ!!”


広家「父上!このままでは全滅です!」
「いたしかたない!撤退じゃ!撤退!!」

景綱「殿!敵はまた後退しています!」
「あれは撤退してるな。深追いはするな!この戦いは我らの勝利じゃ!勝どきを上げよ!!」


”えい!えい!おおぉぉぉぉ!”


元春「伊達か… 次はこうはいかんぞ!広家、山口まで下がるぞ!」
「大殿には?」

元春「何、大丈夫じゃ。どうにかしてくれるだろう。」


そう言うと、吉川元春らは山口城に敗走して行ったのであった。




毛利元就は吉川元春が伊達に破れて敗走した事を知らずに織田本体が来るのを待ち構えていた。


隆元「父上。織田信長は元春が後方から来るのを見越してるやもしれませんが?」
「それでもワシの首が欲しいはず!必ずこちらにやってくる!織田を出来るだけ引きつけ、後方から来る元春に気付かせぬように、仕向けなければな!」

隆元「そうですな。気取られては元も子もないですし…」


そこに一報が飛び込んで来た!


隆元「父上!織田です!織田信長に上杉謙信です!間違いありません!」
「うむ。ついに来たか!して、兵力は如何ほどか?」

隆元「はっ!我が毛利の、およそ2倍はあるかと!」
「2倍だと?!勝負にならんではないか!!」

隆元「しかし、元春が来たら兵力差は無くなりますので、ここは粘るしかございません!」
「むう。致し方ない!あらかじめ作っておいた柵越しに弓隊を配置し、矢の雨を降らせ敵を接近させるな!」


織田軍はというと…


謙信「かなり大掛かりな柵だな。迂闊に攻撃すると手痛いしっぺ返しを食らう恐れがあるぞ?大殿。」
「謙信よ。何故、わざわざ接近して攻撃を仕掛ける必要があるのだ?」

と、自慢げに新型の大筒を見せびらかす様に話す。


信長「この大筒は世界と戦う為に作らせた特別な物だ。毛利で試し撃ちしようと思ってな!」
「そう言えば、今までの大筒とは違う造りですな…」

信長「さすが謙信!目の付け所が違うな!そうじゃ、これは組み立てに時間がかかるのが難点ではあるが、砲身が固定大筒より長く飛距離も2倍の約160間(150m程)あるのだ!しかも、今回の我らの陣は小高い丘の上ときてる!」
「うむ。さらに射程が延びるという事か!」

信長「それに、あれは吉川元春が我らの後方から来ると信じての陣形じゃ!」
「時間稼ぎか… 大殿!ワシも、その大筒の威力を見てみたい!早く組み立てて下され!」

と、大急ぎで新型の大筒を組み立て始めたのであった。


そして、毛利側では全く攻めて来る気配すらしない織田軍をあざ笑っていた。


隆元「父上!織田は動きませんな。」
「ふふふ。馬鹿め!後方から元春が襲い掛かってくるとも知らずにな!」

隆元「ですね。織田が混乱し始めたら、攻勢に転じる事が出来ますからね。」
「そうじゃ!これで、織田にも致命打を与えられるであろう。」


しかし、毛利の元に別の物が降り注ぐのであった!



信長「通常弾準備致せ!!」
と、信長の号令が発せられ、新型の大筒50基の砲身が毛利本陣に向けられた!

信長「全砲撃開始!撃って撃って撃ちまくれ!」


”どどどどおぉぉぉぉぉぉんんん!”


という、轟音が響き渡った!


隆元「父上。雷でしょうか?」
「どこかで雨でも降っておるのかな…」


それが毛利親子の最後の言葉となった…



”どかあぁぁぁぁぁん!”


”どごおぅぅぅぅぅん!”


と、地面が爆発し数多の人や馬がバラバラになり宙を舞ったのだ…


謙信「何という威力じゃ!(織田信長という男の頭の中はどうなっておるのだ?割って見て見たいものだな…)」


こうして、毛利元就、隆元や多くの兵達が爆死したのであった。


(これからの合戦は、こういう戦になっていくな…)

と、思う信長であった。



丁度そこに、伊達政宗が後方から戻って来て信長に戦いの結果を報告した。


政宗「大殿!戦いには勝ちましたが、吉川元春には逃げられました。」
「それは残念だな。お前が吉川元春を討ち取っていたら、この戦は終わっていたのだぞ?」

政宗「え?それはどういう事ですか?」
「辺りを見ても分からんか?」

と、政宗は改めて辺りを見て驚いた!


政宗「あれは、人の体ですか?バラバラになって周辺に落ちてまするが…」

謙信「おぬしの言う通りじゃ。あれは、この大筒で木っ端微塵になった人や馬の残骸じゃ…」
「なんというか… 凄まじい… としか言いようがないですな。」

信長「まぁ、何にせよ勝ちは勝ちじゃ!このまま吉田郡山城を奪いに行くぞ!」


そう言い、織田軍は誰も居ない毛利元就の居城に向かうのであった…




羽柴秀吉が小早川軍を破り小早川隆景を捕らえ、伊達政宗が吉川軍に勝ちはしたが吉川元春を取り逃がし、織田信長は毛利軍に対し大筒で快勝し毛利元就、隆元を討ち取ったその同日に、徳川家康は備中高松城で城主・清水宗治と対峙していた。


※この備中高松城は羽柴秀吉の水攻めで落とした城として有名。


家康「さて、この城をどう攻めるかじゃが… 正信、数正、康政の意見が聞きたい!まずは正信。」
「ここは、交渉して城を開城させた方が良いと思います。」

家康「で、その条件はどうのような内容だ?」
「はっ!しからばでござるが、「素直に明け渡せば兵士全てとその家族に至るまで開放する。」というのはどうでしょう?」

家康「そんな条件、誰が飲むのだ?せめて、宇喜多殿の様に領地安堵を条件に入れるくらいの器量を見せないと駄目だろうが…」
「それはさすがに無理でしょう…」

家康「次、数正はどうじゃ?」
「はっ!ここは包囲して持久戦で相手の士気を落とし、その後に正信殿の策を用いれば良いかと!」

家康「持久戦?馬鹿を申すな!それでは他の織田家臣達に遅れを取る事になるではないか!」
「それは致し方ないかと… 我が徳川家の兵が多く死ぬのは避けなければと思い…」

家康「ん?今おかしな事を口走ったか?兵が多く死ぬのは避けなければと思いだと?」
「それが何か?」

家康「確かに兵は大事ではあるが、そんな心構えではこの先、織田家の為に働く事なぞ出来んぞ?今、他の重鎮達が戦ってるのに不謹慎だ!場を弁えろ!もし、今の発言が大殿にばれたら打ち首物だぞ!」
「ひえ!わ、わかりました。申し訳ございません!」

家康「分かれば良い。急ぐ戦でなければ、数正の策でも良いのだがな… 次、康政。」
「某はよく分かりませんが、忠勝と守綱と半蔵の隊で力攻めで落として来ても良いと思います。」

家康「力攻めか… 大して大きくない城ではあるが、攻め辛い城だぞ?落とせるか?」
「はっ!忠勝が居れば必ず勝ってご覧にいれまする!」

家康「忠勝!言われてるが、どうじゃ?」
「はっ!某は、皆の期待通り勝つだけでございます!」


家康「よくぞ申した!榊原康政の案を採用する。先鋒は本多忠勝。二の備えは榊原康政。三の備えは渡辺守綱。四の備えを服部半蔵。それぞれに騎馬2000を預ける!後詰は大久保忠世・忠佐の弓隊5000に大須賀康高の鉄砲隊1000を付ける!無理はするなよ!」



その頃、備中高松城の城内では清水宗治が配下の武将達と軍評定が行われている最中であった。


武将壱「草の情報では、あの軍勢は織田ではなく織田の同盟を組んでる徳川だと判明しました。」

武将弐「徳川など、どうでもいい!兵力はどうなっておる?」

武将壱「およそ5万です!」

武将弐「5万だと!?殿、どう対処しますか?」
「心配するな!既に援軍の要請が大殿に伝わり、小早川様がこちらに向ってるはずだ!」

武将壱「その事なのですが、織田の羽柴秀吉なる家臣が小早川様の軍勢とぶつかったとの知らせが…」
「馬鹿な?!で、戦況はどうなっておる?」

武将壱「そこまでは不明でございます…」
「むう。では篭城しても無駄という事になるな。」

武将弐「では、城を明け渡して我らは羽柴なる軍勢の背後を襲うというのはどうかと。」
「その羽柴の軍勢の兵力が徳川と同等だった場合、後方から奇襲をかけたとしても虫に刺された程度にしかならん!」

武将弐「ではどういたら…」
「降伏も一つの手だが…」


そこに急報が舞い込んで来た。



武将壱「何だと?」
「どうしたのだ?」

武将壱「はっ!徳川の軍勢が押し寄せていると、物見の知らせが!」
「降伏は無理だったか… 応戦体勢を取れ!優勢まで持ち込んで徳川と好条件で交渉に持ち込む事にする!」


”おおおぉぉぉぉぉ!!”


こうして、激しい攻城戦が始まったのであった。




本多忠勝らの軍勢が備中高松城に攻撃を仕掛けていた頃、瀬戸内の海上では村上水軍と九鬼水軍が激突していた。


九鬼水軍の大筒の一斉砲撃で村上水軍は一瞬で数千隻の軍船が海の藻屑と消えたのを後方で見ていた村上武吉は、その攻撃に驚いていた。


武吉「何だ?!今のは?水面と船が爆発した様に見えたが、元吉はどう見る?」
「あれは大筒という武器に総意ありません!」

武吉「あれが織田が誇る武器の大筒か… で、どういう武器なのだ?」
「火縄銃の大きくした様な武器で、一度に多くの死傷者が出るらしいです。」

武吉「一度と一発でという意味か?」

と、息子・元吉に問うと頭を縦に振った。


武吉「で、あの光景に繋がる訳だな?しかし、あの船首に開いてる穴が大筒の位置に当る訳だから、ひい、ふう、みい…」
「父上!一隻2個で50隻ですから100個ですぞ!」

武吉「おお!さすがはワシの息子だ!ではあの船の側面にもあの穴が空いてるのでは?」
「それは有り得ません!」

武吉「何故そう言いきれるのだ?」
「あの大筒の単価が、600貫(約9000万円)も致します。」


武吉は、また驚き
「そ、そんな高価な武器なのか!?(あの船を鹵獲出来たら、もう小早川に頭を下げなくて良くなるのではないか?)元吉よ!あの船を手に入れるぞ!!」

元吉「父上。それはもう無理です。周りを見て下され…」


武吉は改めて周りを見渡すと、船はもう自分の船と数隻の自軍の船しか残っておらず、既に水軍としての体を成さなく成っていた。


そこの一隻の大型軍船が近付いて来て、その大きな巨体のてっぺんを武吉が見ると九鬼嘉隆が居るのが見えた。


嘉隆「村上殿、久しいな。」
「ほう。まさか大将自らワシに挨拶に来るとはな!おい、元吉!弓で九鬼嘉隆を射殺…」


”どおぉぉぉん!”


その命令より先に、ある男の一発の銃声で元吉が船上に倒れたのであった。


武吉は慌てて元吉に駆け寄り
「元吉ぃぃぃぃ!!糞!いったい何が?き、き、貴様は何故九鬼水軍に居るのだ!?」


そこに居た人物とは、鉄砲の名手・雑賀孫市であった。



【雑賀孫市(サイカマゴイチ)。鈴木重秀(スズキシゲヒデ)は雑賀衆の頭領として「孫市」の名前を継ぐ。諸説が多数存在するが、織田信長と敵対し石山本願寺に立て篭もり徹底抗戦したが、講和した後は行方不明になる。】




孫市「本願寺様と織田殿は昵懇の間柄でな!当然、我ら雑賀衆としては織田に味方するのが筋であろう?村上の。」
「貴様が出張って来たという事は、この戦はもうどう足掻いても負けだな…」

孫市「村上殿にしては潔いな。嘉隆殿!この村上武吉をどうするよ?」
「息子の元吉には気の毒だったが、村上武吉殿さえ良ければ某の軍門に下るか?」

武吉「何が気の毒だ!貴様は地獄でワシが成敗してくれるわ!」
「なら致し方ないな。先に地獄で待っておられよ!」


”どおぉぉぉん!”


孫市の銃弾に武吉の額を貫かれ即死し、残りの兵は尽く縛り上げ拿捕されたのだった。


孫市「九鬼殿、そんな多くの雑魚兵をどうするつもりだ?」
「なんでも、織田殿の鉱山で働かせるみたいだぞ。」

孫市「ほう。それは良い考えですな。」


こうして、毛利最大の勢力を誇る村上水軍は日ノ本から、その姿を消し事実上、九鬼水軍が日ノ本の海を制覇したのであった。


そして、備中高松城に攻撃を仕掛けていた本多忠勝らは、攻め倦んでいた…
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歴史・時代
時は1945年3月、敗色濃厚の日本軍。 今まさに沖縄に侵攻せんとする圧倒的戦力のアメリカ陸海軍を前に、日本の指導者達は若者達による航空機の自爆攻撃…特攻 で事態を打開しようとしていた。 「バカかお前ら、本当に戦争に勝つ気があるのか!?」 その男はただの学徒兵にも関わらず、平然とそう言い放ち特攻出撃を拒否した。 当初は困惑し怒り狂う日本海軍上層部であったが…!? 姉妹作「新訳 零戦戦記」共々宜しくお願い致します。 共に 第8回歴史時代小説参加しました!

天竜川で逢いましょう 起きたら関ヶ原の戦い直前の石田三成になっていた 。そもそも現代人が生首とか無理なので平和な世の中を作ろうと思います。

岩 大志
歴史・時代
ごくありふれた高校教師津久見裕太は、ひょんなことから頭を打ち、気を失う。 けたたましい轟音に気付き目を覚ますと多数の軍旗。 髭もじゃの男に「いよいよですな。」と、言われ混乱する津久見。 戦国時代の大きな分かれ道のド真ん中に転生した津久見はどうするのか!?

三賢人の日本史

高鉢 健太
歴史・時代
とある世界線の日本の歴史。 その日本は首都は京都、政庁は江戸。幕末を迎えた日本は幕府が勝利し、中央集権化に成功する。薩摩?長州?負け組ですね。 なぜそうなったのだろうか。 ※小説家になろうで掲載した作品です。

戦国三法師伝

kya
歴史・時代
歴史物だけれども、誰にでも見てもらえるような作品にしていこうと思っています。 異世界転生物を見る気分で読んでみてください。 本能寺の変は戦国の覇王織田信長ばかりではなく織田家当主織田信忠をも戦国の世から葬り去り、織田家没落の危機を迎えるはずだったが。 信忠が子、三法師は平成日本の人間が転生した者だった…

出撃!特殊戦略潜水艦隊

ノデミチ
歴史・時代
海の狩人、潜水艦。 大国アメリカと短期決戦を挑む為に、連合艦隊司令山本五十六の肝入りで創設された秘匿潜水艦。 戦略潜水戦艦 伊号第500型潜水艦〜2隻。 潜水空母   伊号第400型潜水艦〜4隻。 広大な太平洋を舞台に大暴れする連合艦隊の秘密兵器。 一度書いてみたかったIF戦記物。 この機会に挑戦してみます。

暁のミッドウェー

三笠 陣
歴史・時代
 一九四二年七月五日、日本海軍はその空母戦力の総力を挙げて中部太平洋ミッドウェー島へと進撃していた。  真珠湾以来の歴戦の六空母、赤城、加賀、蒼龍、飛龍、翔鶴、瑞鶴が目指すのは、アメリカ海軍空母部隊の撃滅。  一方のアメリカ海軍は、暗号解読によって日本海軍の作戦を察知していた。  そしてアメリカ海軍もまた、太平洋にある空母部隊の総力を結集して日本艦隊の迎撃に向かう。  ミッドウェー沖で、レキシントン、サラトガ、ヨークタウン、エンタープライズ、ホーネットが、日本艦隊を待ち構えていた。  日米数百機の航空機が入り乱れる激戦となった、日米初の空母決戦たるミッドウェー海戦。  その幕が、今まさに切って落とされようとしていた。 (※本作は、「小説家になろう」様にて連載中の同名の作品を転載したものです。)

偽典尼子軍記

卦位
歴史・時代
何故に滅んだ。また滅ぶのか。やるしかない、機会を与えられたのだから。 戦国時代、出雲の国を本拠に山陰山陽十一カ国のうち、八カ国の守護を兼任し、当時の中国地方随一の大大名となった尼子家。しかしその栄華は長続きせず尼子義久の代で毛利家に滅ぼされる。その義久に生まれ変わったある男の物語

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