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第二部『日ノ本統一! そして…』
第弐話
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信長が似非商人を演じて明智秀満を自分の屋敷に移動している頃、その屋敷に佐和山城城主・森可成の息子二人が訪ねて来ていた。
森長可、森蘭丸の兄弟である。
本来は六人兄弟である。
【森可隆(モリヨシタカ)。よく森長可の方が長男として出て来るが、本当の森可成の嫡男は可隆である。しかし、手筒山の戦いの戦いで森長可と共に戦死した。】
【森長可(モリナガヨシ)。よく森長可の方が長男として出て来るが実は次男。鬼武蔵との異名を持つ父譲りの猛将だったが、小牧長久手の戦いで戦死。】
【森蘭丸(モリランマル)。または乱丸ランマルや成利ナリトシとも。森可成の三男で信長が寵愛した美少年とも言われているが実際は、何処にでもいる小姓の一人だったらしい。本能寺の変で戦死。】
【森坊丸(モリボウマル)。または長隆ナガタカとも。森可成の四男で信長の小姓の一人。本能寺の変で戦死。】
【森力丸(モリリキマル)。森可成の五男で信長の小姓の一人。本能寺の変で戦死。】
【森忠政(モリタダマサ)。森可成の六男で長可の死後、森家の後を継いだとされている。】
蘭丸「兄上、信長様とはどういう御方でしょうね。」
「そりゃお前、恐ろしく怖い鬼みたいな御方だと親父殿より聞いているからな!」
蘭丸「それが本当なら、怖いですね。でも、そんな御方だったら織田家を支えられないと思うのですが。」
「そりゃお前、怖いが度量が大きいのだろう!」
と、話て待っている兄弟であった。
丁度その頃、信長の屋敷前まで来た信長は
「お武家様、信長様の屋敷はここですが屋敷前に兵が居りますので、信長様が居るか確かめて来ます。」
秀満「よし分かった。」
信長は屋敷に向って小走りに走って行き、兵と何やら話し始めた。
秀満「おい、そこの小僧。何やら時間がかかりそうだが、あの商人は大丈夫なのか?」
「はい!この界隈では一番力を持っている人物ですので。」
秀満「ほう。(それほど有名な大商人という事か。)」
「あっ!話を付けて来たみたいですぞ。」
似非商人(信長)「お武家様、話を通して来ましたので一緒に来て下さい。」
「うむ。」
そして屋敷に向うと屋敷の手前に居る兵が一礼して
「の、いや、そこの商人から話は聞かせて頂、いや聞いている。信長様には伝えている。通れ。」
秀満「はっ!では。って、おい!ワシより先に入るな!いくら力がある商人でも節度をわきまえろ!馬鹿者が!」
「おま…」と言いかけた兵を行長が制した。
似非商人(信長)「これは失礼致しました!ささ、お先にどうぞ。」
「何がお先にどうぞだ!」
似非番頭(行長)「もうそのくらいでお許し下さい。主も謝っておるので…」
「良く出来た小僧だ!ここは小僧に免じて許すとしよう。」
似非商人(信長)「ありがとうございます。(何がここは小僧に免じて許すとしようだ!馬鹿が!しかし、いったい何処の阿呆だ?)」
そして、お武家様(秀満)を先に行かせて信長は先回りをし居間に向うと、また見知らぬ者が鎮座していた。
信長「おい!こやつらは誰だ?」
「はっ!この方達は森可成の息子達です。」
そう側近の小姓が話すと、二人は頭を畳に押し付けた。
そして、信長は前に回って一段上がった上座に座ると
「面をあげよ!」
長可「お初のお目にかかり光栄にございます。某は森可成・嫡男、森長可にございまする。」
蘭丸「同じく、森可成の次男・森蘭丸にございます。」
「ほう。あの可成のか… それにしても長可は可成に似ていて無骨な武者という感じじゃが… 蘭丸と申すお前は…」
と、蘭丸をぼーっと見つめて少し沈黙し
「おっと、失礼した。賢そうな顔じゃ。(こやつは本当にあの蘭丸か?前はもっと精悍な顔立ちだった気がするが、今の顔はまるでおなごではないか!いや、ワシは騙されんぞ!今の蘭丸は女で間違いない!しかし、ワシが生き返り歴史が変わった変動とでもいうのか… 後で人払いをして確かめてみるとしよう。)」
と、蘭丸の性別が違う事を見抜く信長であった。
蘭丸は少し照れて
「あ、ありがとうございまする。」
信長「うむ。あっ!あのな、お前達。これからワシの事を知らない、どこかの家中の阿呆がここに来る。ワシは後ろを向いて話をするが、決して笑うでないぞ?良いな!」
「「は?はっ!!」」
二人は何か分からず返答した。
蘭丸が小声で
「兄上、私は信長様を気に入りました。それに怖くない、むしろ面白い御方だと思います。」
長可「怖くなかったが、面白いと思うのはお前だけと思うがな。しかし、お前の性別がばれたのでは?」
「そんな気がしますが… でも、どこまでも付いて行きたいと思ってますから問題ないです。」
長可「そうか… もう何も言わん。(こやつは頑固だからな。)」
そうこうしている内に武家(秀満)が姿を現した。
秀満は信長が居る部屋の手前に座り頭下げる。
信長は秀満の姿を見ずに
「誰じゃ?」
秀満がうつむいたまま
「はっ!初めて御意を得ます。某は羽柴秀吉・配下の明智光秀の婿養子にあたる明智秀満でございます。」
信長「金… いや光秀の配下か。それで何のようじゃ?」
「はっ!光秀様は殿から宇喜多家の出城で砥石山城及び直家居城・岡山城攻略において全権を委ねられています。そこで大殿に光秀様からの文を預かっていますので、読んで頂きたく持参致した次第です。」
信長「ほう。(金柑め、いったい何を企んでいるのだ?)それより、よくワシの屋敷が分かったな。」
「はっ!何でも、この界隈で力がある商人に連れて来られました。」
信長「力とは権力という事か?」
「はっ!大殿を差し置いて、全くけしからんとしか言い様がありません!」
信長「ふむ。」
その話を信長の座って居る左斜め前で聞いていた二人は小声で
「兄上、あの秀満って方が哀れで成りません…」
長可「いや、あの阿呆が確認しなかったのが悪いのだ!見ろ!大殿の横顔を!怒りで震えておるわ!」
「あれは、笑いを堪えているのではないでしょうか?」
とか話していると信長が動いた。
信長「それより、今ワシは書物を読んでいて前を向けんが(嘘だがな)、頭を下げているのだろう?面をあげて待つが良い!」
「はっ!あり難き幸せ!」
と、頭を上げる秀満が信長の後ろ姿を見て思った。
(あの柄の着物、どこかで見た様な…)
そして、信長が振り向いた!
秀満「お前は!?さっきの商人ではないか!!さては某を愚弄するつもりか!」
と、秀満が膝元に置いていた刀を取り抜き斬りかかって来た瞬間、長可が信長の前に出て秀満の喉元で刀を寸止めしてたが、それより先に蘭丸が信長を見たら短い火縄銃を秀満に向けて構えていた。
(あの兄上より早かった。凄い…)
長可「秀満とやら!その御方こそ織田家当主・織田信長様じゃあ!刀を抜くとはどういう事か分かっているのかぁあ!!」
「え?あ、あ、」
と、秀満はすぐさま持っていた刀を投げ、元居た部屋の外に土下座し
「これは誠に申し訳ございません!お許し下さい!」
信長「秀満!ワシも悪かったが、身分が低かろうと先に名前なりを確認してからにした方が良いぞ?」
「はっ!以後、気を付けまするぅぅぅ!」
信長「もう良いわ!それより、光秀からの文を後ろに控えている行長に渡せ!」
「え?さっきの番頭ではありま… まさか、この御方も…」
信長「おい、行長。その者に挨拶しろ!それと、長可と蘭丸もじゃ。」
行長「某の名は小西行長でござる。大殿とこの町を作っておりまする。」
長可「先程は失礼。某は父・森可成の嫡男で名は森長可と申す。」
蘭丸「同じく次男の森蘭丸でござる。」
三人の名前を聞いていた秀満は
「こちらこそ、失礼致した。(しかし、蘭丸とかいう可成様の次男は美しいな… ってワシは何を思っているのだ!あれは男!)」
などと、自問自答して蘭丸を見ていると信長が
「おい!何をしておる、早く文を渡せ!」
秀満は慌てて、光秀の文を行長に渡し信長の手に渡った。
信長「何々…」
〔信長様、殿を通さず無礼とは思いますが今回限り宇喜多の二つの城攻略を殿より任されています。柴田様が山名の鳥取城を落とした後、殿が宇喜多の城と尼子の城をを攻めないと行けないのですが兵力的に不利と成ります。その不利というのも、殿が赤松最後の城を攻める為に軍勢を二手に分けたからです。そこで岡山城を攻める際に九鬼水軍の力を貸して欲しいのですが、如何でしょうか?それに九鬼水軍の宿敵である村上水軍の拠点が目と鼻の先にあるので、これも叩けると思われます。なにとぞ、お願い申し上げまする。〕
信長「(良い所に目を付けたな…)おい、秀満よ。すぐに光秀の処に帰り伝えよ!必ず援軍に向うとな!」
「はっ!分かりました!ではすぐに向いまする!」
こうして、慌しく秀満は信長屋敷を後にした。
信長は側近の小姓に
「長可と蘭丸以外、人払いをしろ!お前もじゃ。」
と、命じたのだった。
人払いを終えた信長は早速、蘭丸に話かけ
「お前は何故、男の格好をしておるのだ?」
蘭丸「えーっと…」
長可「某が説明します。見ての通り、蘭丸はただでさえソレなので目立つのです。」
「ソレなので?」
長可「なので身を守る為に男の格好をしているのです。」
「で、あるか。これだけ美形だと、男共は放ってはおくまいしな… よし、蘭丸はワシの側室に成れ!」
蘭丸「え?!某が信長様の?」
「嫌か?嫌なら無理にとは申すまいが…」
長可「お受けしろ、蘭丸!」
「嫌では有りません。でも今まで男として育って来ているので作法とか言葉使いが…」
信長「そんな事か。お前はワシの側近中の側近の小姓として、常にワシの近くに居ろ!この秘密は、この日ノ本を治める時まで我ら三人の秘密とする!これからは、側室兼小姓と成るので宜しく頼む。」
と、信長は蘭丸に頭を下げたが蘭丸は
「大殿!頭を上げて下さい。でも側室という事は夜も…」
信長「そ、それは致し方ないがな。ワシも男だからのぅ。」
蘭丸は顔全体が赤く染まり
「あ、あの。不束者ですが、よろしくお願い申し上げます!小姓の時は剣術の心得がありますので信長様をお守り出来るかと思います。」
長可「蘭丸の剣術は某も保障します!さすがに某よりは劣りまするが。」
「おお!それは心強い、しかし先程の対応は見事であった!そこで、お前はワシの直属の家臣に取り立てようと思うのじゃがどうだ?当然ではあるが小姓としてではないからな。」
長可「某にまで過分な… ありがとうございまする!是非お願い致します。」
「おお!そうか、そうか。しかし、蘭丸の性別に関する事は絶対公言するなよ?」
長可「それは心得ています。」
「よし、では早速仕事を任そうかの。それと、蘭丸は必ずワシの側を付かず離れずという位置におれ!」
蘭丸「はっ!」
「うむ。では長可、これから紀伊の新宮城に向かい滝川一益に会い、この文を渡しせ!仕事はこれだけではない。行き方はそちに任せるが、越後の上杉、東北の伊達、三河の徳川にもこの別にしたためた文を渡して戻って来い!長旅にはなる。盗賊山賊の類しかおらんがそちの腕なら大丈夫だろうて。」
長可「はっ!すぐに準備を整え出立致しまする。」
「おっと、滝川にあった後にそちの父へ報告をするのを忘れるでないぞ!蘭丸の事だがワシの小姓として取り立てたと報告しておけ!」
こうして森長可は馬に乗って信長の屋敷を後にした。
信長「蘭丸よ、ワシと作りかけの町に出て行長と共に残りの仕事をこなして行こうかの!付いて参れ!」
そう話すと信長も二人と共に町へと繰り出したのであった。
そして、織田家きっての猛将・柴田勝家は波多野家最後の城で攻防を繰り広げていた。
柴田勝家は配下の拝郷家嘉、佐久間盛政、毛受勝照、柴田勝豊らと共に波多野家の城を破竹の勢いで次々と落とし波多野秀冶居城・八上城(現在の兵庫県丹波篠山市)までも落とし、最後の城である福知山城(現在の京都府福知山市)まで追い詰めていた。
【拝郷家嘉(ハイゴウイエヨシ)。信長の命で勝家に仕える事になり、北陸方面の一向一揆制圧の貢献した。信長死後、勝家に従い秀吉との賤ヶ岳の戦いで討死。】
【佐久間盛政(サクマモリマサ)。叔父である勝家の指揮下で加賀平定に貢献。賤ヶ岳の戦いでは秀吉に捕まり家臣に成るように薦められたが拒否した為、処刑されたらしい。】
【毛受勝照(メンジュカツテル)。早くから勝家に仕え、賤ヶ岳の戦いでは勝家の身代わりとなり討死。】
【柴田勝豊(シバタカツトヨ)。母が勝家の姉だが勝家の養子になった。しかし、従兄弟の盛政と不仲だった為、秀吉に降伏の道を選んだ。】
【波多野秀冶(ハタノヒデハル)。丹波の大名。一時は三好家に属していたが独立。後に信長の攻撃を受け降伏し処刑された。】
家嘉「殿。後一歩ですが、降伏を促してみては如何でしょうか?」
「いや、大殿の命令は「滅ぼせ」であった為、このまま手を緩めず攻め続けろ!」
盛政「そうじゃ!何を弱腰な事を言ってる、拝郷殿。」
「兵の消耗が思いのほかあったので殿に進言しただけだ。」
勝家「それは分かるが、猿より一刻も早く毛利の城をいくつか落としてワシの力を大殿に見せ付けなくては成らんのだ。その為には、波多野如きで手間取ってられん!」
そして、波多野家の最後の城が落ち、丹波一国を平らげたが勝家の焦りで総数5万もいた兵が3万5千まで減ってしまったのだった。
家嘉「兵の数がかなり減ってしまいましたが、この後の丹後・宮津城の一色家はどうのように落としますか?」
「そこは越前金ヶ崎城の利家に援軍を頼もうと考えている。」
盛政「それは良い考えですな。」
「そうであろう?利家なら二つ返事で引き受けてくれるに違いない!」
家嘉「しかし、金ヶ崎城を開けては一条谷の朝倉家が息を吹き返す可能性も出て、空の元浅井領地までのも攻め込まれてしまいます。」
「では、どうするのじゃ!また総力戦で落とすしか無いではないか!」
家嘉「しからば、次こそは降伏勧告を促し、一色家の兵を取り込み兵力の増強を図れば良いと思いまする。それに一色家に関しては大殿から明確な指示は受けていません。」
「おお!それもそうだな。では、その降伏勧告は当然家嘉が行ってくれるのであろう?」
家嘉「某がですか?」
「お前の案だしな。行ってくれるな!」
こうして、言い出しっぺである拝郷家嘉が一色義道居城・宮津城に向う事に成ったのであった。
【一色義道(イッシキヨシミチ)。丹後一色家当主。信長によって京を追われた将軍・義昭を庇護し、信長の攻められ一度は退けるが二度目の時に家臣に裏切られ自害。】
柴田勝家に拝郷家嘉が策を提案し、了承を得る事に成功したのは良いが、まさか自分が行くはめに成るとは思いも寄らなかったが命令なので渋々、一色義道居城・宮津城(現在の京都府宮津市)に向うのだが家嘉は勝家に不満があった為、勝家への嫌がらせも考えて交渉に挑む事にした。
そして、当然の様に城門前の門兵に
「ここは一色家一色義道様の城だ。用の無い者は即刻立ち去れ!」
家嘉「いや、某は織田家家老・柴田勝家・配下拝郷家嘉と申します。一色義道様に、お取次ぎ下さらぬか?これが証拠の品じゃ。」
「これは失礼致しました。しばし待たれよ。」
と、門兵が城の中に消えて行った。
まだ一色家と敵対していなかった事もあり、すんなり通してくれた。
本丸内の屋敷で家嘉が待っていると、一色義道が現れ
「面を上げよ!そちが織田の者か?今回は何用で来られたのだ?」
家嘉「はっ!実は先刻、波多野家を滅ぼし、次の目標がこの宮津城に成った為…」
と、話終える前に義道が急に怒鳴り出し
「宣戦布告にでも来たのか!!このたわけが!」
しかし、それは想定内だった為
「有体に申せば、そうでござるが我らの目的は降伏し一時だけ軍門に下って欲しいのです。」
義道「何?!話が見えんのだが?一時とはどういう事だ。」
「味方に付くふりをして頂ければ良いという事です。」
義道「仮に、そちの言う「ふり」をした後はどうする?」
「我らは山名家に攻め入るので、その後方で待機して頂ければ所領は安堵し一色家も元の、一大名としてこの国を治めて頂きたい。」
義道「ほう。それで良いなら、「ふり」をしても良い。」
「おお!あり難き幸せ!山名家攻略に向う遂行体勢を伝えておきますが、こちらの兵力は3万5千です。」
義道「ほう。(こやつ、兵力を見せつけ裏切らないようにする為か。しかし、大軍勢ではないか!)それは凄い兵力ですな。それなら山名も、落ちたも同然ですな。」
「我らの真意も分かった頂いたという事でよろしいでしょうか?」
義道「真意か… よし、わかった!領内を通る事を許す。その「ふり」も了解した。」
「あり難き幸せ!我らが山名に向う際は最後方に付いて、我ら一緒に進軍するふりもお願い仕る。(これで、偉そうな脳筋馬鹿に一泡吹かせられるわ。)」
義道「あい、分かった!その「ふり」も承知した。しかし、今後は織田と親睦を深めたいので拝郷家嘉が渡り役をして欲しいのだが?どうじゃ。」
「それは大丈夫ですぞ。では「ふり」を宜しくお頼み申す。(馬鹿め、山名・毛利を滅ぼした暁にはワシがその領地を召し上げてやるわ!)」
何にせよ、交渉は成功したのであった。
拝郷家嘉が帰った後、義道は家臣を集めて相談する。
【一色義清(イッシキヨシキオ)。義道の弟。一時一色家を相続したが細川忠興に追い詰められ討死。】
【稲富祐直(イナドメスケナオ)。一色家家臣。後に徳川家家臣に。鉄砲の名人。主家が滅亡し細川忠興に仕えたが忠興と揉めて出奔し徳川家に仕えた。】
【細川忠興(ホソカワタダオキ)。有名なのは忠興の嫁で、何を隠そう明智光秀の娘・玉子だ。何が有名だというと、この玉子という人物こそ細川ガラシャである。信長没後、秀吉に仕えたが秀吉没後、今度は家康に味方して家名を残した。】
【細川ガラシャ。言わずと知れた明智光秀の娘・玉子。忠興の嫁。絶世の美女。秀吉没後、家康に味方していた忠興のせいで三成が忠興の弱みであるガラシャを人質にしょうとして拒んだ為、実力行使にでた三成の配下の者に屋敷ごと燃やされたとも、自分がキリスタンで自殺できないから殺して貰い爆死したとも言われている。】
義清「兄上!何故、あの者と取引をしたのですか?」
「あの者は使える!織田に媚を売っておいて損はないとワシは思ったのだ。」
義清「しかし、それでも即決は良くないですぞ?」
「まぁ、最後まで話を聞け!織田の軍勢の数だが波多野を倒したと言っていたので、信憑性がある。それにあの数に総力戦でも仕掛けられたら、間違いなく皆殺しにされる。しかし、あの拝郷家嘉という男はどうも今の柴田とかいう男に不満らしき物を感じた。ゆえに、あの男に賭けてみたのじゃ。」
義清「そのような考えとは知らず、申し訳ありませんでした。」
「いや、そちの忠誠心には感謝しかない。それより、祐直はどうみる?」
祐直「某は一介の足軽大将に過ぎませんので… (この一色家も織田の良い様に使われるのが目に見えているな。いっそ織田信長に仕えるのも良いかもな。)」
「そちがそう申すのなら、この話はここまでじゃ。」
そして、拝郷家嘉は柴田勝家に降伏勧告が成功した事を告げた。
勝家「家嘉の報告を受けた今、ワシらは山名家の出城である出石城(現在の兵庫県豊岡市出石町)に攻め込み一刻も早く山名祐豊居城・鳥取城(現在の鳥取県鳥取市)を落とし毛利に攻め込むとしようではないか!」
盛政「あの猿よりも早く、殿が大殿に力を再び認めさせる為に!」
それから間もなくして、山名の出石城を攻め落とした辺りで、変な噂が勝家の耳に飛び込んで来た!
その噂の内容が勝家を驚嘆させる内容であった…
山名家の出城である出石城を攻め落とし、山名祐豊居城・鳥取城に向おうとしていた柴田勝家に思わぬ噂が舞い込んで来た。
盛政「殿、少し良いですか?」
「鳥取城が目の前に見えて来たのに、どうしたと言うのじゃ!」
盛政「はっ!あくまでも噂なのですが、猿が毛利を落とした暁には西は周防・長門から東は播磨そして我らが落としすであろう尼子家、山名家の所領が全て猿の物に成るという噂です。」
「おい!その噂はどこから出てるのじゃ?ワシを惑わす魂胆に違いない!おい、勝豊。貴様に命じる、すぐに出所を探せ!」
勝豊「は、はい!(なんでワシなんだ?お気に入りの盛政に任せれば良かろうに!)」
そして数日後、出所が判明し
「殿!この噂は真実です。出所は摂津高津の大殿が新たな町を作っている場所からです。」
勝家「で、それが出所という証拠は?」
「出所も何も大殿が酒に酔い、大声で叫んでいるのを何人も聞いたと…」
勝家「う、嘘じゃ!そんなはずは無い!ワシは信勝様から引き抜き家老にして頂いき信頼も大きい、このワシを!勝豊!!いい加減な事をぬかすと斬り殺すぞ!!」
「こんな話、いい加減なはずございません!」
勝家は大声で叫び地団駄を踏んだ。
”うおぉぉぉぉぉぉ!!大殿、いや信長様!何故じゃ!何故、猿の方がいいのじゃ!”
盛政「殿!こうなったら鳥取城を落とした後に、猿を懲らしめてやりましょう!」
「馬鹿者!!そんな事をしたら余計、大殿に嫌われてしまうわ!ここは山名家に休戦を申し込み、大殿に直接聞きく!勝豊の事を信用してない訳ではないが、やはり直接聞いた方が踏ん切りが付く。盛政よ、勝照に伝えて山名家の鳥取城へ出向き休戦交渉してこいと伝えろ!」
勝照が鳥取城の山名祐豊と交渉を行ってる間に、勝家は軍を摂津高津にいる信長の元に移動させる準備を行っていた。
勝家「交渉が難攻しているのか?もう3日目だぞ?盛政よ、お前も行って勝照の様子を見て参れ!」
そして、盛政が鳥取城の大手門に差し掛かった時、勝照が門から出て来るのを確認した。
盛政「おーい、勝照。首尾はどうだった?」
「はっ!滞りなく休戦に応じました。すぐ殿にお伝えしなくては!」
盛政「そなたの帰りが遅いので、見て参れと殿に言われてな。ワシも一緒に行く。」
勝家は今か今かと待ちわびていたが、2人の姿を見るやいなや、急いで駆け寄って
「どうであった?成功しかた?」
勝照「はっ!少し時間がかかりましたが、成功致し先方には約2ヶ月の休戦を約束して貰いました。」
「よし!それだけあれば行って帰って来れる!では摂津高津に向け戻るぞ!」
勝豊「殿!この軍勢も連れて戻るのですか?」
「当たり前じゃ!お前はいつも反論するが、何が不服なんじゃ!全く訳がわからん。」
勝豊は思った。
(これでは、まるで猿と殿ではないか!差し詰め某は殿と同じ境遇であろうな。)
その数日後、信長の元に柴田勝家の不穏な情報を耳にした。
信長「何じゃと?権六が兵を率いて、この摂津高津に迫って来ているだと?」
蘭丸「柴田様って、あの織田家最強の武将ですよね?その御方が何故、この町に?」
「ワシの草の情報は間違えた事がない!(まさか。光秀と同じ事を?)この町で暴れられたら、かなわん!摂津高津城の付近に寺院は無いか?小高い丘に建ってる寺院があれば尚良い。」
蘭丸「寺院ですか?分かりました。」
「そうじゃ!(本能寺の変、再び。かも知れんが、今度はそうはいかんぞ!)それと、石山本願寺の麓におるワシの軍勢を呼びよせろ!後は、蘭丸の兄次第じゃが…(さて、何処がいの一番に来るかのぅ。)」
信長は最悪の想定をして、勝家を待ち構える事にしたのだった。
森長可、森蘭丸の兄弟である。
本来は六人兄弟である。
【森可隆(モリヨシタカ)。よく森長可の方が長男として出て来るが、本当の森可成の嫡男は可隆である。しかし、手筒山の戦いの戦いで森長可と共に戦死した。】
【森長可(モリナガヨシ)。よく森長可の方が長男として出て来るが実は次男。鬼武蔵との異名を持つ父譲りの猛将だったが、小牧長久手の戦いで戦死。】
【森蘭丸(モリランマル)。または乱丸ランマルや成利ナリトシとも。森可成の三男で信長が寵愛した美少年とも言われているが実際は、何処にでもいる小姓の一人だったらしい。本能寺の変で戦死。】
【森坊丸(モリボウマル)。または長隆ナガタカとも。森可成の四男で信長の小姓の一人。本能寺の変で戦死。】
【森力丸(モリリキマル)。森可成の五男で信長の小姓の一人。本能寺の変で戦死。】
【森忠政(モリタダマサ)。森可成の六男で長可の死後、森家の後を継いだとされている。】
蘭丸「兄上、信長様とはどういう御方でしょうね。」
「そりゃお前、恐ろしく怖い鬼みたいな御方だと親父殿より聞いているからな!」
蘭丸「それが本当なら、怖いですね。でも、そんな御方だったら織田家を支えられないと思うのですが。」
「そりゃお前、怖いが度量が大きいのだろう!」
と、話て待っている兄弟であった。
丁度その頃、信長の屋敷前まで来た信長は
「お武家様、信長様の屋敷はここですが屋敷前に兵が居りますので、信長様が居るか確かめて来ます。」
秀満「よし分かった。」
信長は屋敷に向って小走りに走って行き、兵と何やら話し始めた。
秀満「おい、そこの小僧。何やら時間がかかりそうだが、あの商人は大丈夫なのか?」
「はい!この界隈では一番力を持っている人物ですので。」
秀満「ほう。(それほど有名な大商人という事か。)」
「あっ!話を付けて来たみたいですぞ。」
似非商人(信長)「お武家様、話を通して来ましたので一緒に来て下さい。」
「うむ。」
そして屋敷に向うと屋敷の手前に居る兵が一礼して
「の、いや、そこの商人から話は聞かせて頂、いや聞いている。信長様には伝えている。通れ。」
秀満「はっ!では。って、おい!ワシより先に入るな!いくら力がある商人でも節度をわきまえろ!馬鹿者が!」
「おま…」と言いかけた兵を行長が制した。
似非商人(信長)「これは失礼致しました!ささ、お先にどうぞ。」
「何がお先にどうぞだ!」
似非番頭(行長)「もうそのくらいでお許し下さい。主も謝っておるので…」
「良く出来た小僧だ!ここは小僧に免じて許すとしよう。」
似非商人(信長)「ありがとうございます。(何がここは小僧に免じて許すとしようだ!馬鹿が!しかし、いったい何処の阿呆だ?)」
そして、お武家様(秀満)を先に行かせて信長は先回りをし居間に向うと、また見知らぬ者が鎮座していた。
信長「おい!こやつらは誰だ?」
「はっ!この方達は森可成の息子達です。」
そう側近の小姓が話すと、二人は頭を畳に押し付けた。
そして、信長は前に回って一段上がった上座に座ると
「面をあげよ!」
長可「お初のお目にかかり光栄にございます。某は森可成・嫡男、森長可にございまする。」
蘭丸「同じく、森可成の次男・森蘭丸にございます。」
「ほう。あの可成のか… それにしても長可は可成に似ていて無骨な武者という感じじゃが… 蘭丸と申すお前は…」
と、蘭丸をぼーっと見つめて少し沈黙し
「おっと、失礼した。賢そうな顔じゃ。(こやつは本当にあの蘭丸か?前はもっと精悍な顔立ちだった気がするが、今の顔はまるでおなごではないか!いや、ワシは騙されんぞ!今の蘭丸は女で間違いない!しかし、ワシが生き返り歴史が変わった変動とでもいうのか… 後で人払いをして確かめてみるとしよう。)」
と、蘭丸の性別が違う事を見抜く信長であった。
蘭丸は少し照れて
「あ、ありがとうございまする。」
信長「うむ。あっ!あのな、お前達。これからワシの事を知らない、どこかの家中の阿呆がここに来る。ワシは後ろを向いて話をするが、決して笑うでないぞ?良いな!」
「「は?はっ!!」」
二人は何か分からず返答した。
蘭丸が小声で
「兄上、私は信長様を気に入りました。それに怖くない、むしろ面白い御方だと思います。」
長可「怖くなかったが、面白いと思うのはお前だけと思うがな。しかし、お前の性別がばれたのでは?」
「そんな気がしますが… でも、どこまでも付いて行きたいと思ってますから問題ないです。」
長可「そうか… もう何も言わん。(こやつは頑固だからな。)」
そうこうしている内に武家(秀満)が姿を現した。
秀満は信長が居る部屋の手前に座り頭下げる。
信長は秀満の姿を見ずに
「誰じゃ?」
秀満がうつむいたまま
「はっ!初めて御意を得ます。某は羽柴秀吉・配下の明智光秀の婿養子にあたる明智秀満でございます。」
信長「金… いや光秀の配下か。それで何のようじゃ?」
「はっ!光秀様は殿から宇喜多家の出城で砥石山城及び直家居城・岡山城攻略において全権を委ねられています。そこで大殿に光秀様からの文を預かっていますので、読んで頂きたく持参致した次第です。」
信長「ほう。(金柑め、いったい何を企んでいるのだ?)それより、よくワシの屋敷が分かったな。」
「はっ!何でも、この界隈で力がある商人に連れて来られました。」
信長「力とは権力という事か?」
「はっ!大殿を差し置いて、全くけしからんとしか言い様がありません!」
信長「ふむ。」
その話を信長の座って居る左斜め前で聞いていた二人は小声で
「兄上、あの秀満って方が哀れで成りません…」
長可「いや、あの阿呆が確認しなかったのが悪いのだ!見ろ!大殿の横顔を!怒りで震えておるわ!」
「あれは、笑いを堪えているのではないでしょうか?」
とか話していると信長が動いた。
信長「それより、今ワシは書物を読んでいて前を向けんが(嘘だがな)、頭を下げているのだろう?面をあげて待つが良い!」
「はっ!あり難き幸せ!」
と、頭を上げる秀満が信長の後ろ姿を見て思った。
(あの柄の着物、どこかで見た様な…)
そして、信長が振り向いた!
秀満「お前は!?さっきの商人ではないか!!さては某を愚弄するつもりか!」
と、秀満が膝元に置いていた刀を取り抜き斬りかかって来た瞬間、長可が信長の前に出て秀満の喉元で刀を寸止めしてたが、それより先に蘭丸が信長を見たら短い火縄銃を秀満に向けて構えていた。
(あの兄上より早かった。凄い…)
長可「秀満とやら!その御方こそ織田家当主・織田信長様じゃあ!刀を抜くとはどういう事か分かっているのかぁあ!!」
「え?あ、あ、」
と、秀満はすぐさま持っていた刀を投げ、元居た部屋の外に土下座し
「これは誠に申し訳ございません!お許し下さい!」
信長「秀満!ワシも悪かったが、身分が低かろうと先に名前なりを確認してからにした方が良いぞ?」
「はっ!以後、気を付けまするぅぅぅ!」
信長「もう良いわ!それより、光秀からの文を後ろに控えている行長に渡せ!」
「え?さっきの番頭ではありま… まさか、この御方も…」
信長「おい、行長。その者に挨拶しろ!それと、長可と蘭丸もじゃ。」
行長「某の名は小西行長でござる。大殿とこの町を作っておりまする。」
長可「先程は失礼。某は父・森可成の嫡男で名は森長可と申す。」
蘭丸「同じく次男の森蘭丸でござる。」
三人の名前を聞いていた秀満は
「こちらこそ、失礼致した。(しかし、蘭丸とかいう可成様の次男は美しいな… ってワシは何を思っているのだ!あれは男!)」
などと、自問自答して蘭丸を見ていると信長が
「おい!何をしておる、早く文を渡せ!」
秀満は慌てて、光秀の文を行長に渡し信長の手に渡った。
信長「何々…」
〔信長様、殿を通さず無礼とは思いますが今回限り宇喜多の二つの城攻略を殿より任されています。柴田様が山名の鳥取城を落とした後、殿が宇喜多の城と尼子の城をを攻めないと行けないのですが兵力的に不利と成ります。その不利というのも、殿が赤松最後の城を攻める為に軍勢を二手に分けたからです。そこで岡山城を攻める際に九鬼水軍の力を貸して欲しいのですが、如何でしょうか?それに九鬼水軍の宿敵である村上水軍の拠点が目と鼻の先にあるので、これも叩けると思われます。なにとぞ、お願い申し上げまする。〕
信長「(良い所に目を付けたな…)おい、秀満よ。すぐに光秀の処に帰り伝えよ!必ず援軍に向うとな!」
「はっ!分かりました!ではすぐに向いまする!」
こうして、慌しく秀満は信長屋敷を後にした。
信長は側近の小姓に
「長可と蘭丸以外、人払いをしろ!お前もじゃ。」
と、命じたのだった。
人払いを終えた信長は早速、蘭丸に話かけ
「お前は何故、男の格好をしておるのだ?」
蘭丸「えーっと…」
長可「某が説明します。見ての通り、蘭丸はただでさえソレなので目立つのです。」
「ソレなので?」
長可「なので身を守る為に男の格好をしているのです。」
「で、あるか。これだけ美形だと、男共は放ってはおくまいしな… よし、蘭丸はワシの側室に成れ!」
蘭丸「え?!某が信長様の?」
「嫌か?嫌なら無理にとは申すまいが…」
長可「お受けしろ、蘭丸!」
「嫌では有りません。でも今まで男として育って来ているので作法とか言葉使いが…」
信長「そんな事か。お前はワシの側近中の側近の小姓として、常にワシの近くに居ろ!この秘密は、この日ノ本を治める時まで我ら三人の秘密とする!これからは、側室兼小姓と成るので宜しく頼む。」
と、信長は蘭丸に頭を下げたが蘭丸は
「大殿!頭を上げて下さい。でも側室という事は夜も…」
信長「そ、それは致し方ないがな。ワシも男だからのぅ。」
蘭丸は顔全体が赤く染まり
「あ、あの。不束者ですが、よろしくお願い申し上げます!小姓の時は剣術の心得がありますので信長様をお守り出来るかと思います。」
長可「蘭丸の剣術は某も保障します!さすがに某よりは劣りまするが。」
「おお!それは心強い、しかし先程の対応は見事であった!そこで、お前はワシの直属の家臣に取り立てようと思うのじゃがどうだ?当然ではあるが小姓としてではないからな。」
長可「某にまで過分な… ありがとうございまする!是非お願い致します。」
「おお!そうか、そうか。しかし、蘭丸の性別に関する事は絶対公言するなよ?」
長可「それは心得ています。」
「よし、では早速仕事を任そうかの。それと、蘭丸は必ずワシの側を付かず離れずという位置におれ!」
蘭丸「はっ!」
「うむ。では長可、これから紀伊の新宮城に向かい滝川一益に会い、この文を渡しせ!仕事はこれだけではない。行き方はそちに任せるが、越後の上杉、東北の伊達、三河の徳川にもこの別にしたためた文を渡して戻って来い!長旅にはなる。盗賊山賊の類しかおらんがそちの腕なら大丈夫だろうて。」
長可「はっ!すぐに準備を整え出立致しまする。」
「おっと、滝川にあった後にそちの父へ報告をするのを忘れるでないぞ!蘭丸の事だがワシの小姓として取り立てたと報告しておけ!」
こうして森長可は馬に乗って信長の屋敷を後にした。
信長「蘭丸よ、ワシと作りかけの町に出て行長と共に残りの仕事をこなして行こうかの!付いて参れ!」
そう話すと信長も二人と共に町へと繰り出したのであった。
そして、織田家きっての猛将・柴田勝家は波多野家最後の城で攻防を繰り広げていた。
柴田勝家は配下の拝郷家嘉、佐久間盛政、毛受勝照、柴田勝豊らと共に波多野家の城を破竹の勢いで次々と落とし波多野秀冶居城・八上城(現在の兵庫県丹波篠山市)までも落とし、最後の城である福知山城(現在の京都府福知山市)まで追い詰めていた。
【拝郷家嘉(ハイゴウイエヨシ)。信長の命で勝家に仕える事になり、北陸方面の一向一揆制圧の貢献した。信長死後、勝家に従い秀吉との賤ヶ岳の戦いで討死。】
【佐久間盛政(サクマモリマサ)。叔父である勝家の指揮下で加賀平定に貢献。賤ヶ岳の戦いでは秀吉に捕まり家臣に成るように薦められたが拒否した為、処刑されたらしい。】
【毛受勝照(メンジュカツテル)。早くから勝家に仕え、賤ヶ岳の戦いでは勝家の身代わりとなり討死。】
【柴田勝豊(シバタカツトヨ)。母が勝家の姉だが勝家の養子になった。しかし、従兄弟の盛政と不仲だった為、秀吉に降伏の道を選んだ。】
【波多野秀冶(ハタノヒデハル)。丹波の大名。一時は三好家に属していたが独立。後に信長の攻撃を受け降伏し処刑された。】
家嘉「殿。後一歩ですが、降伏を促してみては如何でしょうか?」
「いや、大殿の命令は「滅ぼせ」であった為、このまま手を緩めず攻め続けろ!」
盛政「そうじゃ!何を弱腰な事を言ってる、拝郷殿。」
「兵の消耗が思いのほかあったので殿に進言しただけだ。」
勝家「それは分かるが、猿より一刻も早く毛利の城をいくつか落としてワシの力を大殿に見せ付けなくては成らんのだ。その為には、波多野如きで手間取ってられん!」
そして、波多野家の最後の城が落ち、丹波一国を平らげたが勝家の焦りで総数5万もいた兵が3万5千まで減ってしまったのだった。
家嘉「兵の数がかなり減ってしまいましたが、この後の丹後・宮津城の一色家はどうのように落としますか?」
「そこは越前金ヶ崎城の利家に援軍を頼もうと考えている。」
盛政「それは良い考えですな。」
「そうであろう?利家なら二つ返事で引き受けてくれるに違いない!」
家嘉「しかし、金ヶ崎城を開けては一条谷の朝倉家が息を吹き返す可能性も出て、空の元浅井領地までのも攻め込まれてしまいます。」
「では、どうするのじゃ!また総力戦で落とすしか無いではないか!」
家嘉「しからば、次こそは降伏勧告を促し、一色家の兵を取り込み兵力の増強を図れば良いと思いまする。それに一色家に関しては大殿から明確な指示は受けていません。」
「おお!それもそうだな。では、その降伏勧告は当然家嘉が行ってくれるのであろう?」
家嘉「某がですか?」
「お前の案だしな。行ってくれるな!」
こうして、言い出しっぺである拝郷家嘉が一色義道居城・宮津城に向う事に成ったのであった。
【一色義道(イッシキヨシミチ)。丹後一色家当主。信長によって京を追われた将軍・義昭を庇護し、信長の攻められ一度は退けるが二度目の時に家臣に裏切られ自害。】
柴田勝家に拝郷家嘉が策を提案し、了承を得る事に成功したのは良いが、まさか自分が行くはめに成るとは思いも寄らなかったが命令なので渋々、一色義道居城・宮津城(現在の京都府宮津市)に向うのだが家嘉は勝家に不満があった為、勝家への嫌がらせも考えて交渉に挑む事にした。
そして、当然の様に城門前の門兵に
「ここは一色家一色義道様の城だ。用の無い者は即刻立ち去れ!」
家嘉「いや、某は織田家家老・柴田勝家・配下拝郷家嘉と申します。一色義道様に、お取次ぎ下さらぬか?これが証拠の品じゃ。」
「これは失礼致しました。しばし待たれよ。」
と、門兵が城の中に消えて行った。
まだ一色家と敵対していなかった事もあり、すんなり通してくれた。
本丸内の屋敷で家嘉が待っていると、一色義道が現れ
「面を上げよ!そちが織田の者か?今回は何用で来られたのだ?」
家嘉「はっ!実は先刻、波多野家を滅ぼし、次の目標がこの宮津城に成った為…」
と、話終える前に義道が急に怒鳴り出し
「宣戦布告にでも来たのか!!このたわけが!」
しかし、それは想定内だった為
「有体に申せば、そうでござるが我らの目的は降伏し一時だけ軍門に下って欲しいのです。」
義道「何?!話が見えんのだが?一時とはどういう事だ。」
「味方に付くふりをして頂ければ良いという事です。」
義道「仮に、そちの言う「ふり」をした後はどうする?」
「我らは山名家に攻め入るので、その後方で待機して頂ければ所領は安堵し一色家も元の、一大名としてこの国を治めて頂きたい。」
義道「ほう。それで良いなら、「ふり」をしても良い。」
「おお!あり難き幸せ!山名家攻略に向う遂行体勢を伝えておきますが、こちらの兵力は3万5千です。」
義道「ほう。(こやつ、兵力を見せつけ裏切らないようにする為か。しかし、大軍勢ではないか!)それは凄い兵力ですな。それなら山名も、落ちたも同然ですな。」
「我らの真意も分かった頂いたという事でよろしいでしょうか?」
義道「真意か… よし、わかった!領内を通る事を許す。その「ふり」も了解した。」
「あり難き幸せ!我らが山名に向う際は最後方に付いて、我ら一緒に進軍するふりもお願い仕る。(これで、偉そうな脳筋馬鹿に一泡吹かせられるわ。)」
義道「あい、分かった!その「ふり」も承知した。しかし、今後は織田と親睦を深めたいので拝郷家嘉が渡り役をして欲しいのだが?どうじゃ。」
「それは大丈夫ですぞ。では「ふり」を宜しくお頼み申す。(馬鹿め、山名・毛利を滅ぼした暁にはワシがその領地を召し上げてやるわ!)」
何にせよ、交渉は成功したのであった。
拝郷家嘉が帰った後、義道は家臣を集めて相談する。
【一色義清(イッシキヨシキオ)。義道の弟。一時一色家を相続したが細川忠興に追い詰められ討死。】
【稲富祐直(イナドメスケナオ)。一色家家臣。後に徳川家家臣に。鉄砲の名人。主家が滅亡し細川忠興に仕えたが忠興と揉めて出奔し徳川家に仕えた。】
【細川忠興(ホソカワタダオキ)。有名なのは忠興の嫁で、何を隠そう明智光秀の娘・玉子だ。何が有名だというと、この玉子という人物こそ細川ガラシャである。信長没後、秀吉に仕えたが秀吉没後、今度は家康に味方して家名を残した。】
【細川ガラシャ。言わずと知れた明智光秀の娘・玉子。忠興の嫁。絶世の美女。秀吉没後、家康に味方していた忠興のせいで三成が忠興の弱みであるガラシャを人質にしょうとして拒んだ為、実力行使にでた三成の配下の者に屋敷ごと燃やされたとも、自分がキリスタンで自殺できないから殺して貰い爆死したとも言われている。】
義清「兄上!何故、あの者と取引をしたのですか?」
「あの者は使える!織田に媚を売っておいて損はないとワシは思ったのだ。」
義清「しかし、それでも即決は良くないですぞ?」
「まぁ、最後まで話を聞け!織田の軍勢の数だが波多野を倒したと言っていたので、信憑性がある。それにあの数に総力戦でも仕掛けられたら、間違いなく皆殺しにされる。しかし、あの拝郷家嘉という男はどうも今の柴田とかいう男に不満らしき物を感じた。ゆえに、あの男に賭けてみたのじゃ。」
義清「そのような考えとは知らず、申し訳ありませんでした。」
「いや、そちの忠誠心には感謝しかない。それより、祐直はどうみる?」
祐直「某は一介の足軽大将に過ぎませんので… (この一色家も織田の良い様に使われるのが目に見えているな。いっそ織田信長に仕えるのも良いかもな。)」
「そちがそう申すのなら、この話はここまでじゃ。」
そして、拝郷家嘉は柴田勝家に降伏勧告が成功した事を告げた。
勝家「家嘉の報告を受けた今、ワシらは山名家の出城である出石城(現在の兵庫県豊岡市出石町)に攻め込み一刻も早く山名祐豊居城・鳥取城(現在の鳥取県鳥取市)を落とし毛利に攻め込むとしようではないか!」
盛政「あの猿よりも早く、殿が大殿に力を再び認めさせる為に!」
それから間もなくして、山名の出石城を攻め落とした辺りで、変な噂が勝家の耳に飛び込んで来た!
その噂の内容が勝家を驚嘆させる内容であった…
山名家の出城である出石城を攻め落とし、山名祐豊居城・鳥取城に向おうとしていた柴田勝家に思わぬ噂が舞い込んで来た。
盛政「殿、少し良いですか?」
「鳥取城が目の前に見えて来たのに、どうしたと言うのじゃ!」
盛政「はっ!あくまでも噂なのですが、猿が毛利を落とした暁には西は周防・長門から東は播磨そして我らが落としすであろう尼子家、山名家の所領が全て猿の物に成るという噂です。」
「おい!その噂はどこから出てるのじゃ?ワシを惑わす魂胆に違いない!おい、勝豊。貴様に命じる、すぐに出所を探せ!」
勝豊「は、はい!(なんでワシなんだ?お気に入りの盛政に任せれば良かろうに!)」
そして数日後、出所が判明し
「殿!この噂は真実です。出所は摂津高津の大殿が新たな町を作っている場所からです。」
勝家「で、それが出所という証拠は?」
「出所も何も大殿が酒に酔い、大声で叫んでいるのを何人も聞いたと…」
勝家「う、嘘じゃ!そんなはずは無い!ワシは信勝様から引き抜き家老にして頂いき信頼も大きい、このワシを!勝豊!!いい加減な事をぬかすと斬り殺すぞ!!」
「こんな話、いい加減なはずございません!」
勝家は大声で叫び地団駄を踏んだ。
”うおぉぉぉぉぉぉ!!大殿、いや信長様!何故じゃ!何故、猿の方がいいのじゃ!”
盛政「殿!こうなったら鳥取城を落とした後に、猿を懲らしめてやりましょう!」
「馬鹿者!!そんな事をしたら余計、大殿に嫌われてしまうわ!ここは山名家に休戦を申し込み、大殿に直接聞きく!勝豊の事を信用してない訳ではないが、やはり直接聞いた方が踏ん切りが付く。盛政よ、勝照に伝えて山名家の鳥取城へ出向き休戦交渉してこいと伝えろ!」
勝照が鳥取城の山名祐豊と交渉を行ってる間に、勝家は軍を摂津高津にいる信長の元に移動させる準備を行っていた。
勝家「交渉が難攻しているのか?もう3日目だぞ?盛政よ、お前も行って勝照の様子を見て参れ!」
そして、盛政が鳥取城の大手門に差し掛かった時、勝照が門から出て来るのを確認した。
盛政「おーい、勝照。首尾はどうだった?」
「はっ!滞りなく休戦に応じました。すぐ殿にお伝えしなくては!」
盛政「そなたの帰りが遅いので、見て参れと殿に言われてな。ワシも一緒に行く。」
勝家は今か今かと待ちわびていたが、2人の姿を見るやいなや、急いで駆け寄って
「どうであった?成功しかた?」
勝照「はっ!少し時間がかかりましたが、成功致し先方には約2ヶ月の休戦を約束して貰いました。」
「よし!それだけあれば行って帰って来れる!では摂津高津に向け戻るぞ!」
勝豊「殿!この軍勢も連れて戻るのですか?」
「当たり前じゃ!お前はいつも反論するが、何が不服なんじゃ!全く訳がわからん。」
勝豊は思った。
(これでは、まるで猿と殿ではないか!差し詰め某は殿と同じ境遇であろうな。)
その数日後、信長の元に柴田勝家の不穏な情報を耳にした。
信長「何じゃと?権六が兵を率いて、この摂津高津に迫って来ているだと?」
蘭丸「柴田様って、あの織田家最強の武将ですよね?その御方が何故、この町に?」
「ワシの草の情報は間違えた事がない!(まさか。光秀と同じ事を?)この町で暴れられたら、かなわん!摂津高津城の付近に寺院は無いか?小高い丘に建ってる寺院があれば尚良い。」
蘭丸「寺院ですか?分かりました。」
「そうじゃ!(本能寺の変、再び。かも知れんが、今度はそうはいかんぞ!)それと、石山本願寺の麓におるワシの軍勢を呼びよせろ!後は、蘭丸の兄次第じゃが…(さて、何処がいの一番に来るかのぅ。)」
信長は最悪の想定をして、勝家を待ち構える事にしたのだった。
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