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魔法学園編
053話 それぞれの夜
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僕は特別生の肩に両手を置き魔力を注いでいた。
この謎の状況に疑問を感じつつ、動かす事の出来ない体で漠然と様子を見守る。
気付くと特別生の全身が黒く脈打つ”根”のような物に浸食され、それが僕の腕にも這い上がり肘の辺りまで到達していた。
「うわあぁ!?」
僕は焦って両手を離すが、その”根”は独立して僕の腕を侵食し始めた。
すぐに両肩まで”根”が這い上がり、皮下で虫が蠢くような感覚が直に伝わってくる。
「嫌だ! なんだこれ!? 来るな!! うわぁぁ!?」
体が寄生虫に侵されるのを目視する恐怖、そしてこの先自分がどうなるかは予想ができた。
目の前でその光景を目撃したからだ。
思い出した瞬間、それは現実となり歪な刃が僕の皮膚を食い破り内部から飛び出した。
「……あああっ!?」
真っ暗な部屋で僕は叫びながらベッドから勢いよく半身を起す。
夢……夢か。
途中から理解していたはずなのに、それを考える間も与えない程の圧倒的な恐怖が余韻として今も残り続けていた。
僕は自分の両手を見て、傷1つ無い事を確認してやっと現実感を取り戻した。
その時部屋の明かりがつき、気配の方へ目をむけるとルームメイトのクリストフが不機嫌そうな顔で悪態を付いた。
「うるさいな、何時だと思ってんだよ……」
苛立ちが表情に現れているにも関わらず、僕は彼を見て何故か安堵した。
クリストフは僕と同じ公爵家の生まれで、同年次席で入学した能力の高い男だ。
信心深い家系の生まれで、祖父が他国の教皇に就任していると話していた。
僕は悪夢を振り払い、彼に謝った。
魘されて起きたのは本日2回目だ、短時間で2回も大声で起こされてうんざりしている事だろう。
もはや特別性の存在がトラウマになってしまったのかと不安になる。
それほど、あの体の内部から異物が飛び出した映像は鮮烈に僕の脳に焼き付いたのだ。
最も不可解なのが、そんな状態で即死する事無く生きているあの特別生だ。
常識的に物ごとを考えられる者ならば、特別生が死んだと思っているはず。
「今日起きた訓練場での事故を目撃したのか?」
クリストフは自身のベッドに腰掛け、気怠そうに質問を投げかけてきた。
僕は”隷属の印”の事を隠し、今日目撃した全てを彼に話した。
知的好奇心旺盛なクリストフは興味深そうに僕の話に聞き入っていた。
「体内から黒い刃が突き出て大量出血して…なお、生きている。僕だったら…そうだな、集団幻覚を疑うね。だってそうだろう? その状態で生きているなんて常識的に考えて不可能だ」
彼もまた、特別生に対して懐疑的な所は僕と意見が合っていた。
高い能力というのは血筋として受け継がれていくもので、例外として貴族の妾から生まれた平民がその高い能力を発現させる事があると聞く。
特別生もその部類で、噂の半分は理由があって虚言を言っているのではないかと疑っていた。
現にヤツは剣や体捌きはそこそこできるようだが、魔法に関しては素人同然で授業に付いてこれていない様子だった。
「ふん、僕は最初から最後まで現場にいたのだ、あれが幻覚な訳がない。疑うなら訓練場を見てくるがいい、おびただしい血痕が残っているはずだ」
「だとしたら、ラルク君だっけ? 彼の特殊才能か特殊技能だろう。アーネン先生と同じモノを持っているとかな」
彼の推測では、ユーイン家に務めていた妾が残した血筋で、平民ながら何らかの才能を受け継いだ……とかならアーネン先生やクーヤ先生の彼に対する優遇している姿勢も頷けると言う。
俗に言う血縁の隠し子を引き取ったという所だ。
「即死のような状態から生還、アーネン先生が持つ特殊才能【自動再生】の劣化版のようなものを保有しているんじゃないか? 血縁者なら可能性はあるだろう?」
「確かに、そう考えると辻褄が合うな。先生のように目に見えて強力なものでは無いが、それが発動してさえいれば死なない訳だ」
彼の考察はとても的を射ていて、とても興味深い。
もしかしたら”隷属の印”の事も何か知っているんじゃないだろうか?
僕は彼に意見を聞きたいと言う欲求が喉元まで出ていたが、情報が漏れた事が発覚し自分の信用が下落するのが予測できたので思い留まった。
”隷属の印”に関しては独自に調べてみる事としよう。
数日前に起きた食料保管庫の食材消失事件も気になるが……
恐らく、監視対象のラルクとは無関係だろう。
僕はクリストフに頼んで睡眠を誘発する魔法を使ってもらい、3度目の眠りへとついた。
◇◇◇◇◆◇
レオからの報告を受け、急いで保健室に駆け込んだ。
教員は隣の別室にいるらしく、消灯された保健室の奥のベッドにラルクは眠っていた。
肩の辺りには包帯が巻かれ、レオが言うには隷属の印を数人に見られたらしい。
この包帯は怪我に対してではなく、隷属の印を隠すために巻かれているのだろう。
「お前、印の事を何か聞かれたのか?」
「いいや、だがあのアーネンとかいう女は何か知っているような口ぶりだったぜ」
「面倒な事にならなければ良いがな」
俺様は寝ているラルクの前髪を小さな猫の手で優しく撫でた。
そしてその時の状況をレオに詳しく伺った。
あの緑眼鏡がラルクの体内に魔力を流した瞬間、何かの術式が発動したらしい。
俺様は包帯の上からラルクの鎖骨の辺りに触れてみた。
……まだ、隷属の印は残っている。
確か隷属の印は発動後に被験者が全身から出血し死亡した後、印が消えるという特徴があったはずだ。
……ラルクが死ねない体だから消えなかったのか?
それとも誤動作のような形だったから残ったのだろうか。
普通に考えるなら隷属の印が発動したとなると、これをかけた本人が発動させたと考えるのが普通だ。
ラルクの話では、ネディロとかいうアルテナ国の教皇が付けたと言う話を昔していたな。
しかし、そんなやつが学園に来たら噂になっているはず。
話にあった緑眼鏡が魔力を流し込んだ事が原因か?
いや、それは無いだろう。
そんな程度で誤動作するような安い代物ではないはずだ。
何か複雑な条件が重なって、誤動作したとしか思えない。
「ラルクが死ぬ事は無い。”不死状態”という特殊才能を持ってるからな」
「そうなのか? 何だよ心配して損したぜ」
レオが拗ねたような表情をしながら、ホッとした様子で胸を撫で下ろす。
この馬鹿さ加減に少し苛立ちを覚え、吐き捨てるように説明をしてやる。
「肉体はな。精神は別だ、それに欠損部位が自動的に再生しない。だから俺様達が守る義務があるんだ」
俺様にもラルクに備わっている不死の概念は分からない。
粉々に四散しても細胞が1つでも残っていれば治癒での再生が可能なのだろうか?
脳が欠損した場合、今までに累積した記憶も再生できるのだろうか?
自己再生ができないんだ、そんな都合の良い特殊才能とは思えない。
「精神が壊れたらどうなるんだよ?」
ラルクは廃人になるだろうな。
そうなったら……
「レイス様が悲しむ。下手したらこの世界そのものが、消滅してもおかしくない」
破壊神レイス様の力は、”全てを消滅させる事のできる力”と聞いた事がある。
それは俺様の”喰らう”とは少し違う。
俺様に取り込まれた者や物は物質と能力を残し、魂は「輪廻の環」というシステムに還元される。
しかしレイス様が消滅させたものは本当の意味での”消滅”をするらしい。
それは、この世界を構成するエネルギーの粒の抹消と同義だとおっしゃられていた。
よって、この世界そのものが”減る”らしい。
まさに、神の力そのものだ。
「前にも聞いたがシャレにならねぇな、レイス様の威圧感もそれを本能で感じるからだろうな」
レオがうんうんと頷き納得した様子だった。
取り敢えず、原因が分からんから様子見するしかない。
何者かの策謀の線もあるしな、レオにも警戒を強化してもらわねぇと。
「それより先輩、禁書庫は見つかったのか?」
「いや、図書室はあるが大図書館なんてものは敷地内に無い」
ここ2週間、俺様はずっと禁書庫の存在する大図書館を探し続けていた。
校内や体育館、訓練場に食堂とその中にあった大型冷蔵庫の中まで調べ、食材を全部食べ隠し通路を探したが見つかる事は無かった。
少なくとも、この敷地内に大図書館と呼ばれる場所は存在しなかった。
幾つか入れない場所はあったが、どれも大図書館と呼べる程の広さでは無さそうだった。
もしかして敷地内じゃないのか?
それとも何らかの結界的なもので巧妙に隠しているとしか思えない。
考えられるとしたら、まだ1度しか入った事の無いアイツの研究室の奥か。
しばらく緑眼鏡の尾行をするか?
……流石にそれは危険すぎるな、止めていおこう。
まぁ時間はあるし、最終的に1年後には入れる事が確定しているからな。
禁書庫の件は無理しないようにしよう。
「まぁ、夜は俺様がラルクを見てるからお前は部屋で寝てろ」
「今日はここで寝る」
そう言うとレオはラルクの足元で丸くなった。
俺様を呼びに来た時、こいつの泣きそうな顔は少し笑えたけどな。
こいつなりにラルクを心配していたんだろう。
それよりも……
俺様は眠るラルクの頬に手をおく。
結構心配したんだぜ、本当に無事で良かった。
犯人がいるかどうかは分からないが、お前がこうなった原因は必ずあるはずだ。
もし……
犯人がいたのならこの俺様が八つ裂きにして喰らってやる。
◆◇◇◇◇◇
巨大な黒い扉が目の前にあり、ほんの少しだけ開いており中から光が線となって漏れ出していた。
その扉が「ギギッ」という錆びついたような音を立てて片側だけが少し開いた。
その結果、暗闇を照らす光の線の角度が少しだけ広くなった。
僕は扉の中が気になり、覗こうとするが眩し過ぎて光の先に何が有るのか見えなかった。
そうこうしていると、急に世界が暗転し、全てが闇に包まれた。
視界が開けたと思ったら、薄暗い部屋の天井画見えた。
「おっ! 起きたか。気分はどうだ?」
見慣れた黄金色の2つの瞳が薄暗い部屋で爛々と輝いていた。
首には大きなガマ口の財布をぶら下げ、微笑みながら僕を見つめていたのはスピカだった。
こいつはレオニスと違って夜行性だから、夜になると活動を開始する。
「ここは?」
「保健室らしいぜ? お前、直前の記憶はあるか?」
えーっと……確か訓練場で……
記憶の糸を辿るけれど、突然全身に激痛が走り目の前が赤く染まったと思ったら気を失った……としか思い出せない。
何だか体が重い、頭もボーっとして何もする気にならない。
こんな感覚は生まれて初めてだ。
「お前、魔力が殆ど残って無いから起き上がれないだろ?」
そう言われ、僕は体を起こそうとしたが力が入らず起き上がれなかった。
なるほど、魔力が完全に無くなるとこうなるのか……。
「……なぁスピカ、トイレに行きたい時はどうすれば良いと思う?」
「何っ!? ま、待て! 漏らすなよ! レオを起こすからな! なっ!!」
トイレに行きたい訳では無いが、単純に疑問に感じた事を聞いただけなんだけど……
いつも冷静なスピカが凄く焦り出したのは、少し面白かった。
「いや、今は大丈夫だから。」
「何だ、脅かすなよ。もう少し寝てれば起き上がって歩く事くらいはできるようになるさ」
そうなのか、今は何も考えられない。
スピカの言う通り素直に寝るとしよう。
◇◆◇◇◇◇
夜遅く母上に呼び出され、研究室を訪ねた。
そこからラルクの事を色々と質問された。
彼とはどこで知り合ったのか?個人カードは見たのか?……など。
私は何気無く彼と知り合った経緯や、一緒に経験した出来事や教団と揉めた事も話した。
楽しそうに話をしていると、ある瞬間から母上の表情が変化した事に気付いた。
「クーちゃん、誘拐事件ってどういう事かしら?」
怒ったような表情の低い声で問いかけてきた母上を見て、私はハッとした。
……しまった、迂闊だった。
そう言えば、父上がサンサーラ教団に誘拐されて揉めた事を母上には一切話してなかったんだ。
信頼できる血縁者という立場が故に完全に油断して、自慢をするかのようにラルクの凄さを語ってしまった。
安易に口外出来ない話だから、全容を細部まで知っているのは直接関係した人々と爺くらいだから話せるのが嬉しくてつい。
――そこから約2時間半、怒涛の説教タイムが始まった。
観念した私は洗い浚い全てを話した。
もともと話すべき事だったし、私的には問題は無いが……
聞く側の機嫌の良し悪しが選べなかったのは私の不徳の致すところだ。
「そう、彼はクーヤと同じく神様を冠する加護を持っているのね。魔力の貯蔵量が多いのはその為……少しだけ謎が解けたような気がするわ。あとラルク君にマウリッツの事をお礼を言わないといけないわ」
母上は色々と考え込んで、物々と独り言を言い始めた。
私は話の中で何か違和感を感じ始めていた。
……何故、急にラルクの事を詳しく聞き始めたのだろうか?
「母上、ラルクと何かあったのですか?」
そう質問して、私の中で嫌な想像をしてしまった。
もしかして母上は本当にラルクの事を好きになってしまったのではないだろうか?
教師が教え子と恋に落ちる…そういった物語は書籍化される程に人気のジャンルだ。
個人授業と称して、この研究室で如何わしい事を……いや、まさかね。
自分が好意的に思う同期生の男性に手を出すなんて有る訳が……ないと言い切れるだろうか。
不安と不信感が私の心を包み込む中、母上は神妙な表情に変わった。
「……今日、大変な事があったの」
……大変な事!?
まさか、ラルクに告白されたとかじゃないよな!?
それとも一線を越え……
私はゴクリと生唾を飲み込んだ。
「放課後の補習の時に、彼の体から黒くて鋭い突起物が突き出て」
「黒くて鋭い突起物が突き出て!?」
脳内で修正処理された画像が一瞬浮かび、そして消えた。
……何を考えているんだ私は。
「……母上、もっと詳しく!!」
母上は「ごめんね、言葉が足りなかったわね」と言い、詳細に話を始めた。
期待した話とは程遠い、悍ましい光景を見た母上の話が始まった。
ラルクが死にかけるような目にあった事。
そして”隷属の印”という本当の意味での呪いを誰かしらにかけられていた事。
そんな事があったのか。
「それで、ラルクは無事なんですね?」
「ええ、でも本当に死にそうだったのよ。急に呪いが発動して、彼の全ての魔力が黒い刃となって全身を突き破って出てきたのだから。普通の人間なら出血多量と魔力欠損のどちらか1つでも死んでいたはずだわ。でも、彼は皮1枚で生を繋ぎとめていた……。まさに神に愛された子よ」
母上は声こそ冷静だったが、その表情は知的探求心と興味の眼差しへと変わっていた。
私の完全な勘違いだった。
母上にとってラルクは最大級の謎を持った研究対象であり、決して恋愛対象ではないと言う事だ。
そう結論付けた瞬間、何故か心が軽くなった。
「明日、彼と隷属の印についてお話をしようと思います。貴女も気になるでしょう?」
少し意地悪そうな口調で母上が私に問い掛けて来た。
何者かが、神を冠する加護を持ったラルクを奴隷として従属させている。
そんな話、気にならない訳がない!
「……母上、私も参加させて貰います」
この謎の状況に疑問を感じつつ、動かす事の出来ない体で漠然と様子を見守る。
気付くと特別生の全身が黒く脈打つ”根”のような物に浸食され、それが僕の腕にも這い上がり肘の辺りまで到達していた。
「うわあぁ!?」
僕は焦って両手を離すが、その”根”は独立して僕の腕を侵食し始めた。
すぐに両肩まで”根”が這い上がり、皮下で虫が蠢くような感覚が直に伝わってくる。
「嫌だ! なんだこれ!? 来るな!! うわぁぁ!?」
体が寄生虫に侵されるのを目視する恐怖、そしてこの先自分がどうなるかは予想ができた。
目の前でその光景を目撃したからだ。
思い出した瞬間、それは現実となり歪な刃が僕の皮膚を食い破り内部から飛び出した。
「……あああっ!?」
真っ暗な部屋で僕は叫びながらベッドから勢いよく半身を起す。
夢……夢か。
途中から理解していたはずなのに、それを考える間も与えない程の圧倒的な恐怖が余韻として今も残り続けていた。
僕は自分の両手を見て、傷1つ無い事を確認してやっと現実感を取り戻した。
その時部屋の明かりがつき、気配の方へ目をむけるとルームメイトのクリストフが不機嫌そうな顔で悪態を付いた。
「うるさいな、何時だと思ってんだよ……」
苛立ちが表情に現れているにも関わらず、僕は彼を見て何故か安堵した。
クリストフは僕と同じ公爵家の生まれで、同年次席で入学した能力の高い男だ。
信心深い家系の生まれで、祖父が他国の教皇に就任していると話していた。
僕は悪夢を振り払い、彼に謝った。
魘されて起きたのは本日2回目だ、短時間で2回も大声で起こされてうんざりしている事だろう。
もはや特別性の存在がトラウマになってしまったのかと不安になる。
それほど、あの体の内部から異物が飛び出した映像は鮮烈に僕の脳に焼き付いたのだ。
最も不可解なのが、そんな状態で即死する事無く生きているあの特別生だ。
常識的に物ごとを考えられる者ならば、特別生が死んだと思っているはず。
「今日起きた訓練場での事故を目撃したのか?」
クリストフは自身のベッドに腰掛け、気怠そうに質問を投げかけてきた。
僕は”隷属の印”の事を隠し、今日目撃した全てを彼に話した。
知的好奇心旺盛なクリストフは興味深そうに僕の話に聞き入っていた。
「体内から黒い刃が突き出て大量出血して…なお、生きている。僕だったら…そうだな、集団幻覚を疑うね。だってそうだろう? その状態で生きているなんて常識的に考えて不可能だ」
彼もまた、特別生に対して懐疑的な所は僕と意見が合っていた。
高い能力というのは血筋として受け継がれていくもので、例外として貴族の妾から生まれた平民がその高い能力を発現させる事があると聞く。
特別生もその部類で、噂の半分は理由があって虚言を言っているのではないかと疑っていた。
現にヤツは剣や体捌きはそこそこできるようだが、魔法に関しては素人同然で授業に付いてこれていない様子だった。
「ふん、僕は最初から最後まで現場にいたのだ、あれが幻覚な訳がない。疑うなら訓練場を見てくるがいい、おびただしい血痕が残っているはずだ」
「だとしたら、ラルク君だっけ? 彼の特殊才能か特殊技能だろう。アーネン先生と同じモノを持っているとかな」
彼の推測では、ユーイン家に務めていた妾が残した血筋で、平民ながら何らかの才能を受け継いだ……とかならアーネン先生やクーヤ先生の彼に対する優遇している姿勢も頷けると言う。
俗に言う血縁の隠し子を引き取ったという所だ。
「即死のような状態から生還、アーネン先生が持つ特殊才能【自動再生】の劣化版のようなものを保有しているんじゃないか? 血縁者なら可能性はあるだろう?」
「確かに、そう考えると辻褄が合うな。先生のように目に見えて強力なものでは無いが、それが発動してさえいれば死なない訳だ」
彼の考察はとても的を射ていて、とても興味深い。
もしかしたら”隷属の印”の事も何か知っているんじゃないだろうか?
僕は彼に意見を聞きたいと言う欲求が喉元まで出ていたが、情報が漏れた事が発覚し自分の信用が下落するのが予測できたので思い留まった。
”隷属の印”に関しては独自に調べてみる事としよう。
数日前に起きた食料保管庫の食材消失事件も気になるが……
恐らく、監視対象のラルクとは無関係だろう。
僕はクリストフに頼んで睡眠を誘発する魔法を使ってもらい、3度目の眠りへとついた。
◇◇◇◇◆◇
レオからの報告を受け、急いで保健室に駆け込んだ。
教員は隣の別室にいるらしく、消灯された保健室の奥のベッドにラルクは眠っていた。
肩の辺りには包帯が巻かれ、レオが言うには隷属の印を数人に見られたらしい。
この包帯は怪我に対してではなく、隷属の印を隠すために巻かれているのだろう。
「お前、印の事を何か聞かれたのか?」
「いいや、だがあのアーネンとかいう女は何か知っているような口ぶりだったぜ」
「面倒な事にならなければ良いがな」
俺様は寝ているラルクの前髪を小さな猫の手で優しく撫でた。
そしてその時の状況をレオに詳しく伺った。
あの緑眼鏡がラルクの体内に魔力を流した瞬間、何かの術式が発動したらしい。
俺様は包帯の上からラルクの鎖骨の辺りに触れてみた。
……まだ、隷属の印は残っている。
確か隷属の印は発動後に被験者が全身から出血し死亡した後、印が消えるという特徴があったはずだ。
……ラルクが死ねない体だから消えなかったのか?
それとも誤動作のような形だったから残ったのだろうか。
普通に考えるなら隷属の印が発動したとなると、これをかけた本人が発動させたと考えるのが普通だ。
ラルクの話では、ネディロとかいうアルテナ国の教皇が付けたと言う話を昔していたな。
しかし、そんなやつが学園に来たら噂になっているはず。
話にあった緑眼鏡が魔力を流し込んだ事が原因か?
いや、それは無いだろう。
そんな程度で誤動作するような安い代物ではないはずだ。
何か複雑な条件が重なって、誤動作したとしか思えない。
「ラルクが死ぬ事は無い。”不死状態”という特殊才能を持ってるからな」
「そうなのか? 何だよ心配して損したぜ」
レオが拗ねたような表情をしながら、ホッとした様子で胸を撫で下ろす。
この馬鹿さ加減に少し苛立ちを覚え、吐き捨てるように説明をしてやる。
「肉体はな。精神は別だ、それに欠損部位が自動的に再生しない。だから俺様達が守る義務があるんだ」
俺様にもラルクに備わっている不死の概念は分からない。
粉々に四散しても細胞が1つでも残っていれば治癒での再生が可能なのだろうか?
脳が欠損した場合、今までに累積した記憶も再生できるのだろうか?
自己再生ができないんだ、そんな都合の良い特殊才能とは思えない。
「精神が壊れたらどうなるんだよ?」
ラルクは廃人になるだろうな。
そうなったら……
「レイス様が悲しむ。下手したらこの世界そのものが、消滅してもおかしくない」
破壊神レイス様の力は、”全てを消滅させる事のできる力”と聞いた事がある。
それは俺様の”喰らう”とは少し違う。
俺様に取り込まれた者や物は物質と能力を残し、魂は「輪廻の環」というシステムに還元される。
しかしレイス様が消滅させたものは本当の意味での”消滅”をするらしい。
それは、この世界を構成するエネルギーの粒の抹消と同義だとおっしゃられていた。
よって、この世界そのものが”減る”らしい。
まさに、神の力そのものだ。
「前にも聞いたがシャレにならねぇな、レイス様の威圧感もそれを本能で感じるからだろうな」
レオがうんうんと頷き納得した様子だった。
取り敢えず、原因が分からんから様子見するしかない。
何者かの策謀の線もあるしな、レオにも警戒を強化してもらわねぇと。
「それより先輩、禁書庫は見つかったのか?」
「いや、図書室はあるが大図書館なんてものは敷地内に無い」
ここ2週間、俺様はずっと禁書庫の存在する大図書館を探し続けていた。
校内や体育館、訓練場に食堂とその中にあった大型冷蔵庫の中まで調べ、食材を全部食べ隠し通路を探したが見つかる事は無かった。
少なくとも、この敷地内に大図書館と呼ばれる場所は存在しなかった。
幾つか入れない場所はあったが、どれも大図書館と呼べる程の広さでは無さそうだった。
もしかして敷地内じゃないのか?
それとも何らかの結界的なもので巧妙に隠しているとしか思えない。
考えられるとしたら、まだ1度しか入った事の無いアイツの研究室の奥か。
しばらく緑眼鏡の尾行をするか?
……流石にそれは危険すぎるな、止めていおこう。
まぁ時間はあるし、最終的に1年後には入れる事が確定しているからな。
禁書庫の件は無理しないようにしよう。
「まぁ、夜は俺様がラルクを見てるからお前は部屋で寝てろ」
「今日はここで寝る」
そう言うとレオはラルクの足元で丸くなった。
俺様を呼びに来た時、こいつの泣きそうな顔は少し笑えたけどな。
こいつなりにラルクを心配していたんだろう。
それよりも……
俺様は眠るラルクの頬に手をおく。
結構心配したんだぜ、本当に無事で良かった。
犯人がいるかどうかは分からないが、お前がこうなった原因は必ずあるはずだ。
もし……
犯人がいたのならこの俺様が八つ裂きにして喰らってやる。
◆◇◇◇◇◇
巨大な黒い扉が目の前にあり、ほんの少しだけ開いており中から光が線となって漏れ出していた。
その扉が「ギギッ」という錆びついたような音を立てて片側だけが少し開いた。
その結果、暗闇を照らす光の線の角度が少しだけ広くなった。
僕は扉の中が気になり、覗こうとするが眩し過ぎて光の先に何が有るのか見えなかった。
そうこうしていると、急に世界が暗転し、全てが闇に包まれた。
視界が開けたと思ったら、薄暗い部屋の天井画見えた。
「おっ! 起きたか。気分はどうだ?」
見慣れた黄金色の2つの瞳が薄暗い部屋で爛々と輝いていた。
首には大きなガマ口の財布をぶら下げ、微笑みながら僕を見つめていたのはスピカだった。
こいつはレオニスと違って夜行性だから、夜になると活動を開始する。
「ここは?」
「保健室らしいぜ? お前、直前の記憶はあるか?」
えーっと……確か訓練場で……
記憶の糸を辿るけれど、突然全身に激痛が走り目の前が赤く染まったと思ったら気を失った……としか思い出せない。
何だか体が重い、頭もボーっとして何もする気にならない。
こんな感覚は生まれて初めてだ。
「お前、魔力が殆ど残って無いから起き上がれないだろ?」
そう言われ、僕は体を起こそうとしたが力が入らず起き上がれなかった。
なるほど、魔力が完全に無くなるとこうなるのか……。
「……なぁスピカ、トイレに行きたい時はどうすれば良いと思う?」
「何っ!? ま、待て! 漏らすなよ! レオを起こすからな! なっ!!」
トイレに行きたい訳では無いが、単純に疑問に感じた事を聞いただけなんだけど……
いつも冷静なスピカが凄く焦り出したのは、少し面白かった。
「いや、今は大丈夫だから。」
「何だ、脅かすなよ。もう少し寝てれば起き上がって歩く事くらいはできるようになるさ」
そうなのか、今は何も考えられない。
スピカの言う通り素直に寝るとしよう。
◇◆◇◇◇◇
夜遅く母上に呼び出され、研究室を訪ねた。
そこからラルクの事を色々と質問された。
彼とはどこで知り合ったのか?個人カードは見たのか?……など。
私は何気無く彼と知り合った経緯や、一緒に経験した出来事や教団と揉めた事も話した。
楽しそうに話をしていると、ある瞬間から母上の表情が変化した事に気付いた。
「クーちゃん、誘拐事件ってどういう事かしら?」
怒ったような表情の低い声で問いかけてきた母上を見て、私はハッとした。
……しまった、迂闊だった。
そう言えば、父上がサンサーラ教団に誘拐されて揉めた事を母上には一切話してなかったんだ。
信頼できる血縁者という立場が故に完全に油断して、自慢をするかのようにラルクの凄さを語ってしまった。
安易に口外出来ない話だから、全容を細部まで知っているのは直接関係した人々と爺くらいだから話せるのが嬉しくてつい。
――そこから約2時間半、怒涛の説教タイムが始まった。
観念した私は洗い浚い全てを話した。
もともと話すべき事だったし、私的には問題は無いが……
聞く側の機嫌の良し悪しが選べなかったのは私の不徳の致すところだ。
「そう、彼はクーヤと同じく神様を冠する加護を持っているのね。魔力の貯蔵量が多いのはその為……少しだけ謎が解けたような気がするわ。あとラルク君にマウリッツの事をお礼を言わないといけないわ」
母上は色々と考え込んで、物々と独り言を言い始めた。
私は話の中で何か違和感を感じ始めていた。
……何故、急にラルクの事を詳しく聞き始めたのだろうか?
「母上、ラルクと何かあったのですか?」
そう質問して、私の中で嫌な想像をしてしまった。
もしかして母上は本当にラルクの事を好きになってしまったのではないだろうか?
教師が教え子と恋に落ちる…そういった物語は書籍化される程に人気のジャンルだ。
個人授業と称して、この研究室で如何わしい事を……いや、まさかね。
自分が好意的に思う同期生の男性に手を出すなんて有る訳が……ないと言い切れるだろうか。
不安と不信感が私の心を包み込む中、母上は神妙な表情に変わった。
「……今日、大変な事があったの」
……大変な事!?
まさか、ラルクに告白されたとかじゃないよな!?
それとも一線を越え……
私はゴクリと生唾を飲み込んだ。
「放課後の補習の時に、彼の体から黒くて鋭い突起物が突き出て」
「黒くて鋭い突起物が突き出て!?」
脳内で修正処理された画像が一瞬浮かび、そして消えた。
……何を考えているんだ私は。
「……母上、もっと詳しく!!」
母上は「ごめんね、言葉が足りなかったわね」と言い、詳細に話を始めた。
期待した話とは程遠い、悍ましい光景を見た母上の話が始まった。
ラルクが死にかけるような目にあった事。
そして”隷属の印”という本当の意味での呪いを誰かしらにかけられていた事。
そんな事があったのか。
「それで、ラルクは無事なんですね?」
「ええ、でも本当に死にそうだったのよ。急に呪いが発動して、彼の全ての魔力が黒い刃となって全身を突き破って出てきたのだから。普通の人間なら出血多量と魔力欠損のどちらか1つでも死んでいたはずだわ。でも、彼は皮1枚で生を繋ぎとめていた……。まさに神に愛された子よ」
母上は声こそ冷静だったが、その表情は知的探求心と興味の眼差しへと変わっていた。
私の完全な勘違いだった。
母上にとってラルクは最大級の謎を持った研究対象であり、決して恋愛対象ではないと言う事だ。
そう結論付けた瞬間、何故か心が軽くなった。
「明日、彼と隷属の印についてお話をしようと思います。貴女も気になるでしょう?」
少し意地悪そうな口調で母上が私に問い掛けて来た。
何者かが、神を冠する加護を持ったラルクを奴隷として従属させている。
そんな話、気にならない訳がない!
「……母上、私も参加させて貰います」
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