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ルーン技師見習い編
016話 研修終了
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◇◇◇◇◆◇
目にも止まらぬ速さで街中を疾走する黒い生物と、それを追いかける美しい踊り子の姿が巷で噂になっていた。
壁を走り屋根を飛び越え、家屋の中を素早く縦断していく。
西の露店街、東の住宅街、中央の貴族街……
その神出鬼没の1匹と1人は今日もこの街のどこかで目撃されていた。
しかし、目撃者は口を揃えてこう話す。
「黒い毛玉を人間離れした身体能力の人物が追い回していた。でもその黒い物体が何なのか? 追いかけている人物の人相が早過ぎて分からない」…と。
俺様はここ数日間逃げ回っていた。
何故なら、しつこい魔人に追いかけ回されていたからだ。
「てめぇ! どんだけしつけーんだよ!!」
「うるせぇ! きちんと詫びるまで追いかけてやるぜ!!」
こいつ自分が寝ている時間以外は気配を探って追いかけてきやがる。
今日なんて行きつけの屋台の裏で張り込んで居やがった!
TPOを考えろってんだ!食事を邪魔されるのが1番腹が立つ。
しかし本当に名前を思い出せない。
髪型のせいか服装の違いかは分からないが、相手は自分の事を覚えてるっぽいんだよな。
偉そうな態度の魔人は腐る程いるし、たいがいのヤツはボコしたり再起不能にしてきたからな……。
考え事していたら腹が減って来た。
はぁ……研修後のラルクと一緒に食べ歩きグルメツアーを楽しみにしていたってのに……
結局、初日の夜しか豪華な食事にありつけて無いじゃないか!!
船酔いで苦しいなか頑張ってリサーチした俺様の努力を無駄にしやがって!!
考えたら、だんだん腹が立ってきた!!
俺様は正面の木に爪を引っかけて、幹を軸にして回転するようにターンする。
そして速度を落とす事無く、魔人の鳩尾を目掛けて突進する。
俺様の強烈な一撃が魔人の正中線を正確に捉える。
「おぶおぅ!?」
野生の豚が鼻を鳴らすような野太い呻き声をあげて魔人は腹部を押さえる。
鋼のような筋肉繊維を持つ魔人でも、人体構造を変形出来ない連中の弱点はズバリ”繊維の間隙を縫う"だ!
俺様は隙の出来た魔人の顔面を蹴り飛ばし、再び走り出した。
「ばーか! ばーか!! うんこ!!!」
ヤツの知能指数に合わせて、あえて低次元で低俗な言葉で罵る。
あー少しすっきりした!
額に肉球跡のついた顔がみるみる内に恐ろしい形相へと変貌し、充血した黄金色の瞳が縮瞳する。
「…………コロスッ!!!」
やべっ!
ブチギレやがった!?
あの目はマジだ!
ブチギレてリミッターの外れた魔人の身体能力が向上し移動速度も比例して上昇する。
俺様は都市を覆う巨山の外側を山頂に向かって走っていた。
最近、都市内は不穏分子を探しているのか衛兵の動員数が増えて行動し辛くなっていた。
この魔人の手下共が何か企んでいるようだが、俺様がコイツを押さえておけばラルクに直接ちょっかいをかける事は出来ないはずだ。
手下共は団長とねーちゃんに任せるとしよう。
俺様は山頂付近の岩場を隠れながら、更に挑発をする。
行動パターンから推測するにヤツは猪突猛進の脳筋で間違いない。
「謝りゃ良いのか!? ごめん、ごめん! すみませんでした!!」(棒読み)
岩場から尻尾だけを出して、出来るだけ相手を煽るように謝罪の言葉を述べる。
我ながら主役に抜擢された舞台俳優のような名演技だと思う。
「てめぇ! 舐めてんのか!! ぶっ殺す!」
俺様の名演技に感動した魔人の怒りゲージがMAXに溜まったようだ。
魔人は怒りに任せて正面から突進してきた。
冷静さを失ったヤツの攻撃は案の定大振りになり、軌道が読み易い為簡単に回避する。
空ぶった魔人の拳が山頂の地面を大きく抉る。
おー!すげぇ威力だな。
確実に物理攻撃特化型といった所だ。
だが、当たらなければどうという事も無い!
「うぜぇ!!」
魔人の怒りに任せた連撃を華麗に回避し、岩場に身を隠しながら隙を伺う。
ヤツの攻撃間合いはだいたい分かった。
さて、俺様も攻撃させて貰うぜ!
攻撃を回避し着地した瞬間に前足で地面に土属性の上位魔法を設置して後方に飛びのく。
その時、敢えて脚を滑らせて態勢をワザと崩したように見せた。
作戦に引っ掛かった魔人が「馬鹿めっ!!」と叫び俺様に飛び込んできた。
その言葉をそっくりそのまま返してやるぜ!
絶妙なタイミングで地面から複数の岩槍が突き出し、魔人の全身を串刺しにする。
無数に突起した細い土槍が貫通した部位から紫色の血液が大量に噴き出す。
すかさず俺様は腹部の巨大な口を広げ、動きの封じられた魔人の全身を覆う。
「いってぇぇ……なぁ!!」
魔人は全身串刺しになりながら両手の土槍を力任せに破壊し、生意気にも口の上下を両手で支えるように掴み咀嚼を阻害する。
「ぐぎぎぎぎぎ……!!」
俺様の咬合力を上回るとは、ちょっと意外だったな。
「だが俺様の得意技は魔法なんだぜ!」
大口を押さえた状態のままの魔人に至近距離から炎を司る極大攻撃魔法を放つ。
巨大な灼熱の炎球が喉の奥から魔人を貫く土槍ごと全身を焼き尽くす。
「だぁぁぁぁ!!!!」
……ふん、耐えたか。
土槍が融解した事で拘束の解けた魔人は俺様の口から手を放し後退する。
腕力はお前の方が強いかも知れねぇが俺様に勝とうなんて1000年早ぇぜ!!
「流石だな! このベ・リア様にダメージを与えるとはな!」
「あっ……ああ、ベ・リアか!!」
ベ・リア……そう!魔人ベ・リア。
9年?いや10年以上前になるか、同僚にそんな名前のヤツがいた事を思い出す。
魔人デウスと数名の魔族を率いて、他国に亡命した……んだったかな?
俺様の記憶に残っているベ・リアの印象は生意気な後輩って感じだ。
「……お前、もしかして俺の事を忘れていたのか?」
「うん。」
――――ブチン!!
野太いゴムがはち切れたような音が周囲にこだました。
「アァァァルゥゥゥゼエェェエエェェ!!!」
とことん付き合ってやんよ!後輩君!!
標高800メートルを超えるタロス国の死火山の山頂で、幼さの残る甲高い声が響き渡った。
◇◇◆◇◇◇
僕はレウケ様の案内で王宮に招かれていた。
例の王都襲撃事件の詳細な状況報告をする為に、国王並びに宰相と大臣に謁見する。
「では、レウケ様。手筈通りにお願いします」
「分かっている。決して悪いようにはしない」
――――遡る事、1時間前。
僕はレウケ様と共に貴族用の馬車に乗り、王城への道程を揺られていた。
彼の実父で、この国の現国王ルゥシェフル・タル・タロスに謁見しなければならない。
徒歩でもさほど距離は無いが、敢えて馬車を御用立てて貰ったのには訳がある。
それは今からする会話内容をレウケ様以外に聞かれないようにする為だ。
「ラルクの事を報告しないで欲しい? ……どういう事だ」
レウケ様は怪訝そうな表情をする。
彼が魔獣を討伐したとなれば、この国で英雄として祭り上げられるだろう。
そして個人カードを持たない彼は、恐らく再度ステータス調査を行われる。
ラルクが破壊神の加護を持っている事は重要機密事項。
それを他国に漏らす訳には行かない。
アルテナ国が各国に情報を流して無ければだが……。
破壊神は禁忌の対象だ。
現在の我が国でも人間種を中心とした王国・貴族達は諸外国と同じ教育を受けている事から破壊神の加護を持つ者に対して、畏怖と差別の象徴として認識されている。
しかし、その事を王族や貴族が大々的に公表できないのはタクティカ国に残る極少数の古代妖精種と古くから国で暮らす者達の同一神信仰が存在するからだ。
信仰や宗教といったものは人々の心の拠所であり、時に宗教観の対立により国家間戦争が勃発する事は歴史がそれを証明している。
保守派の多い人間種は現在の自分の地位を脅かす事態を敬遠している。
その為、僕と数人の信頼できる手駒に監視役をさせている訳だ。
僕は言葉を選んで彼の問いに答える。
「はい、彼には自由に生きて欲しいからです」
「……言ってる意味が分からない。真実を報告する事で彼が自由を失うとでも?」
「家柄や称号は……時に足枷になります。それは貴方が1番理解している立場ではございませんか?」
「…………」
自分も"公爵"という家柄の長男という束縛があり、生まれた時から決められた道を歩かされてきた。
教養・武芸・社交、どれも一流の教育を受け、若くして騎士団長の地位についている。
それは街で暮らす多くの人々が望んでも手に入らないモノかも知れない。
とても恵まれているのは理解している、だがそれは自分が望んだモノでは無い。
レウケ様は第3王子として生を受け、王位の絡んだ派閥から早々に抜け出し自由を手に入れた。
彼なら称号や家柄の束縛がどういった弊害を生むか「深読み」してくれるはずだ。
「彼はルーン技師としての才覚があると聞きました。英雄に祭り上げられたら、その大輪の花の芽を摘む事になるかも知れません」
「ふむ……」
彼は考え込むように俯く。
ラルクがこの先自分の教えた技術を受け継いでルーン技師として歴史に名を残す未来と、英雄としていつ死ぬか分からない戦乱の人生を歩む未来……。
それを自分の半生と天秤にかけて、自分ならどちらを選ぶかを悩んでいるんだ。
……答えは決まっている、彼は自分と同じく「ラルクに自由に生きる事」を望むはずだ。
「……具体的にどう報告するつもりなんだ?」
レウケ様は顔を上げ、真剣な表情で問いかけて来る。
僕は事前に考えておいたシナリオをレウケ様に話した。
"ティンダロス国の猟犬と呼ばれる召喚獣が突然現れて街を破壊し住民を蹂躙していた所に、謎の剣士が現れて猟犬を討伐した"
……という簡単なものだ。
条件として、ラルクが猟犬を倒した事は僕とネイ様とレウケ様と彼の一部の同僚しか知らない。
その場にいた兵士の生存者達はラルクが猟犬を倒したのを目撃してはいるが、それが誰なのかを知らないという事。
念の為、リアナさんとカルディナさんには口止めをしてある。
破壊神の加護の事を自国の王にすら報告しないネイ様が、ラルクの事を他言するとは思えない。
英雄という功績を存在しない「謎の剣士」に肩代わりさせる事でラルクは今まで通りの生活が送れると言う話だ。
こうする事でレウケ様も知らされていない破壊神の加護が表に出る事は回避出来る。
レウケ様は信用できる人物だとは思うが、加護の話をする訳にはいかない。
「……なるほど。余が余計な事を言わなければ、ラルクの日常を守れる訳だ」
「ラルクの顔を目撃した兵士や衛兵達には多少の根回しが必要でしょうけどね。まぁ、テロの可能性を示唆して事件の事を他言しないようにとでも言っておけば良いでしょう」
「分かった、その案を採用しよう。王には余が説明をする、レヴィン殿は直接質問された時にだけ答えてくれれば良い」
「はい、承知しました」
・
・
・
-タロス城 謁見の間-
その後、タロス城にて国王ルゥシェフル様と謁見する。
予定通り事件内容の報告はレウケ様が行う。
僕は質問された時にだけ受け答えをする程度だ。
国王の横に控えるのはレウケ様の双子の兄、第2王子で宰相のアノス様。
主にアノス様が質問事項を纏め、淡々と報告進行を行う。
他国の王と謁見するのは初めてではないが、やはり緊張するものだ。
宰相アノス様は勉学面において大変優秀だが魔力に乏しく、次期国王候補から外されたと聞く。
その為、自らの実力で宰相の地位を勝ち取ったらしい。
……そしてもう1人の王族、長男の第1王子ステュクス様。
何故かこの報告の場にステュクス様の姿なかった。
レウケ様は事件とは別件でラルクの事を名前を伏せて報告していた。
研修生の中にルーン文字の5つ刻みを成功させた天才がいると言う話だ。
完成品は試し切りで壊れたと言う話をしていた。
しかし、その話は偉業であるにも関わらず、あっさりと流されていた。
ルーン技術は魔力を必要とする為、現代では世界的にマイナーな部類に入る。
それに加えてレウケ様が王族としての責務を果たさずに興じている道楽程度に思われているのかも知れない。
僕としてはラルクが目立たない方が好都合なので特に問題は無い。
つつがなく国王との謁見は終了した。
帰りの馬車で僕はお世話になったレウケ様と握手をして、残りの研修を改めてお願いした。
「ときにレヴィン殿、ラルクを弟子として我が国に迎えるというのは駄目だろうか?」
「恐らくセロ社長が許さないと思いますので、先に私の方からお断りしておきます。いずれ彼はタクティカ国で開業をすると思いますよ」
開業するというのはラルクを渡さない為のハッタリだ。
けれど彼のルーン技術の才能をセロ社長が知ったら、あながち非現実的な話でもないかも知れない。
「それは残念だ。彼が女性ならば無理やりにでも嫁にでも迎えていただろうな」
「フフッ、それに関しては僕も同感です」
このタロス国は、立地が悪く資源の少ないタクティカ国との数少ない友好国だ。
今回の事件解決に貢献した事で、より良い関係に繋がれば良いな。
工房前で下ろして貰い、その足で宿舎に戻る。
既に夜は更けていた、随分と長い時間拘束されていたなと改めて感じる。
……さて、次は僕が帰国した際に今回の件を国王に報告しなければならない。
もちろん、この国の報告と差異の無いように「謎の剣士」に登場して貰う予定だ。
不意に、あの絶望的な状況下に現れたラルクの姿を思い出す。
僕はあの獣を一撃で倒した彼の姿に、子供の頃夢見た英雄を重ね感動すら覚えた。
そして彼のルーン技術の才能はタクティカ国の発展に必ず貢献するはずだ。
僕が生涯を掛けて陰ながら彼を助けよう、騎士としてでは無く1人の友人として……
◆◇◇◇◇◇
――研修5日目。
研修3日目と4日目に5文字刻みを成功させた僕はレウケ様から「免許皆伝認定」を頂いた。
そして、最終日はゆっくりと休むようにと言われ宿泊施設でルーンに関する本を借りて読んでいた。
ベッドの横ではネイがペティナイフを器用に使い林檎の皮を剝いている。
タロス国への報告はレウケ様とレヴィンが行ってくれたらしい。
王族出身のレウケ様や貴族のレヴィンなら、より正確な情報を報告できるだろう。
正直僕は王様に謁見して状況報告する自信が無かったので安堵していた。
全身に受けた打撲痕はレウケ様が回復魔法で治してくれたようだ。
「健康体なら、休む必要ってあるんですか?」と聞いたら「精神疲労は癒せんからな」と言われた。
レウケ様から聞いた話だが、この国でもあの黒い獣の被害で多くの人が命を落としたらしい。
その中にはレヴィンの部下も1名含まれていたと話していた。
レヴィンは気丈に振舞っていたけれど、内心は心を痛めているに違いない。
僕は彼に何かしてあげれるだろうか……。
「……ん」
目の前にウサギ型に成型された林檎を差し出される。
少し躊躇したが僕は林檎に顔を近付けて、おもむろに頬張る。
シャク モグモグ……
「……ん」
僕が食べ終えたタイミングを見測っらたように、目の前にもう1切さし出される。
「あの、ネイさん。」
「……ネイ」
「さん」付けをした事を注意されるとは思わなかった。
のりツッコミ並みの早さだったのでちょっと驚く。
「はい、ごめんなさい。あのねネイ」
「……何?」
ネイは小動物のような無邪気な瞳で首を傾げる。
なんだろう……ちょっと指摘し辛い。
「凄く言い難いんだけどさ……」
「……何?」
「もう怪我も治ってますので1人で食べれるというか……その、それに周囲の方々が微妙に戸惑っているので…」
意味が伝わって無いのかネイの表情は変わらない。
「?」って感じのままだ。
先日の事件からネイの過保護度が増したような気がする。
それは良いんだけれども……
部屋にはレウケ様の指示で20代くらいの若い衛兵2人が僕の護衛役として待機していた。
そして、その若い男性衛兵達から嫉妬の籠った視線が向けられていたのだ。
人目も憚らずイチャイチャしているように見えているのだろう。
……客観的に考えると、イチャイチャしてるんだ。
"林檎をあーん"としだした時点から苛立ちが表情に出始めていた。
微妙な雰囲気の中、急に扉がガチャリと開いた。
「ちゃーす! あ、御苦労様でっす!」
「こんにちわ!」
リアナ先輩とカルディナ先輩が休憩時間にお見舞いに来てくれたようだ。
先輩達が護衛兵に明るく挨拶した事で、彼等の表情が嬉しさで緩んだのが見えた。
これはありがたい、まさに天の助けだ!
先輩達が来た事で、この微妙だった雰囲気が解消されるかも知れない。
「先輩お疲れ様です!」
僕は笑顔で2人を招き入れた。
先輩達は特殊2文字刻みを成功させて、早々に研修を切り上げたらしい。
特殊2文字刻みとは同じルーン文字を2文字連続で刻む事で、効果が倍以上になるモノらしい。
ただし、その難易度は3文字刻みと同じくらい難しいらしく苦戦したと話していた。
結局2人共成功したので、研修カリキュラムを終了したらしい。
「ラルク君はもう体調は良いの? じゃ、明日の自由行動は大丈夫そうだな!」
「レヴィン様もお誘いしたのですが、開放されている海岸へ行きませんかって話していたんですよ」
「海岸ですか?でも、海の水は冷たくて泳げないんじゃ……」
地図の座標的に、この島は寒冷地にあたる。
とてもじゃないけど流氷が浮いているような海では泳ぐことが出来ないんじゃないか?
素朴な疑問を投げかける僕に対して、リアナ先輩はニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
「この島の東側の海は地下の火山活動のおかげで、泳げる程度の水温の場所があるみたいなの! そこがビーチとして開放されてるんだって! 当然、水着も借りれるって!」
「へぇ、凄いですね。面白そう」
故郷のアルテナ国は温暖な気候だったので、海へは何度か泳ぎに行った事はあった。
しかし、極寒のタクティカ国に着いてからは海で泳ぐ機会は全くなかった。
先輩達と話していると、不意に何かの気配を強く感じた。
部屋の入口で待機している2人の衛兵が拳を強く握り、怒りと嫉妬の表情を浮かべていた。
嫉妬が殺気にランクアップしたような……そんな感じ。
男女2人のイチャイチャが女性3人に囲まれてハーレムにランクアップしたように見えたのかも知れない。
僕は敢えて見て見ぬ振りをして、手渡されたパンフレットに目を通す。
研修は実質今日で終わり、明日の最終日は休暇として用意されている。
明日は研修参加者全員で海岸に繰り出すのか、なんだか楽しみだな。
目にも止まらぬ速さで街中を疾走する黒い生物と、それを追いかける美しい踊り子の姿が巷で噂になっていた。
壁を走り屋根を飛び越え、家屋の中を素早く縦断していく。
西の露店街、東の住宅街、中央の貴族街……
その神出鬼没の1匹と1人は今日もこの街のどこかで目撃されていた。
しかし、目撃者は口を揃えてこう話す。
「黒い毛玉を人間離れした身体能力の人物が追い回していた。でもその黒い物体が何なのか? 追いかけている人物の人相が早過ぎて分からない」…と。
俺様はここ数日間逃げ回っていた。
何故なら、しつこい魔人に追いかけ回されていたからだ。
「てめぇ! どんだけしつけーんだよ!!」
「うるせぇ! きちんと詫びるまで追いかけてやるぜ!!」
こいつ自分が寝ている時間以外は気配を探って追いかけてきやがる。
今日なんて行きつけの屋台の裏で張り込んで居やがった!
TPOを考えろってんだ!食事を邪魔されるのが1番腹が立つ。
しかし本当に名前を思い出せない。
髪型のせいか服装の違いかは分からないが、相手は自分の事を覚えてるっぽいんだよな。
偉そうな態度の魔人は腐る程いるし、たいがいのヤツはボコしたり再起不能にしてきたからな……。
考え事していたら腹が減って来た。
はぁ……研修後のラルクと一緒に食べ歩きグルメツアーを楽しみにしていたってのに……
結局、初日の夜しか豪華な食事にありつけて無いじゃないか!!
船酔いで苦しいなか頑張ってリサーチした俺様の努力を無駄にしやがって!!
考えたら、だんだん腹が立ってきた!!
俺様は正面の木に爪を引っかけて、幹を軸にして回転するようにターンする。
そして速度を落とす事無く、魔人の鳩尾を目掛けて突進する。
俺様の強烈な一撃が魔人の正中線を正確に捉える。
「おぶおぅ!?」
野生の豚が鼻を鳴らすような野太い呻き声をあげて魔人は腹部を押さえる。
鋼のような筋肉繊維を持つ魔人でも、人体構造を変形出来ない連中の弱点はズバリ”繊維の間隙を縫う"だ!
俺様は隙の出来た魔人の顔面を蹴り飛ばし、再び走り出した。
「ばーか! ばーか!! うんこ!!!」
ヤツの知能指数に合わせて、あえて低次元で低俗な言葉で罵る。
あー少しすっきりした!
額に肉球跡のついた顔がみるみる内に恐ろしい形相へと変貌し、充血した黄金色の瞳が縮瞳する。
「…………コロスッ!!!」
やべっ!
ブチギレやがった!?
あの目はマジだ!
ブチギレてリミッターの外れた魔人の身体能力が向上し移動速度も比例して上昇する。
俺様は都市を覆う巨山の外側を山頂に向かって走っていた。
最近、都市内は不穏分子を探しているのか衛兵の動員数が増えて行動し辛くなっていた。
この魔人の手下共が何か企んでいるようだが、俺様がコイツを押さえておけばラルクに直接ちょっかいをかける事は出来ないはずだ。
手下共は団長とねーちゃんに任せるとしよう。
俺様は山頂付近の岩場を隠れながら、更に挑発をする。
行動パターンから推測するにヤツは猪突猛進の脳筋で間違いない。
「謝りゃ良いのか!? ごめん、ごめん! すみませんでした!!」(棒読み)
岩場から尻尾だけを出して、出来るだけ相手を煽るように謝罪の言葉を述べる。
我ながら主役に抜擢された舞台俳優のような名演技だと思う。
「てめぇ! 舐めてんのか!! ぶっ殺す!」
俺様の名演技に感動した魔人の怒りゲージがMAXに溜まったようだ。
魔人は怒りに任せて正面から突進してきた。
冷静さを失ったヤツの攻撃は案の定大振りになり、軌道が読み易い為簡単に回避する。
空ぶった魔人の拳が山頂の地面を大きく抉る。
おー!すげぇ威力だな。
確実に物理攻撃特化型といった所だ。
だが、当たらなければどうという事も無い!
「うぜぇ!!」
魔人の怒りに任せた連撃を華麗に回避し、岩場に身を隠しながら隙を伺う。
ヤツの攻撃間合いはだいたい分かった。
さて、俺様も攻撃させて貰うぜ!
攻撃を回避し着地した瞬間に前足で地面に土属性の上位魔法を設置して後方に飛びのく。
その時、敢えて脚を滑らせて態勢をワザと崩したように見せた。
作戦に引っ掛かった魔人が「馬鹿めっ!!」と叫び俺様に飛び込んできた。
その言葉をそっくりそのまま返してやるぜ!
絶妙なタイミングで地面から複数の岩槍が突き出し、魔人の全身を串刺しにする。
無数に突起した細い土槍が貫通した部位から紫色の血液が大量に噴き出す。
すかさず俺様は腹部の巨大な口を広げ、動きの封じられた魔人の全身を覆う。
「いってぇぇ……なぁ!!」
魔人は全身串刺しになりながら両手の土槍を力任せに破壊し、生意気にも口の上下を両手で支えるように掴み咀嚼を阻害する。
「ぐぎぎぎぎぎ……!!」
俺様の咬合力を上回るとは、ちょっと意外だったな。
「だが俺様の得意技は魔法なんだぜ!」
大口を押さえた状態のままの魔人に至近距離から炎を司る極大攻撃魔法を放つ。
巨大な灼熱の炎球が喉の奥から魔人を貫く土槍ごと全身を焼き尽くす。
「だぁぁぁぁ!!!!」
……ふん、耐えたか。
土槍が融解した事で拘束の解けた魔人は俺様の口から手を放し後退する。
腕力はお前の方が強いかも知れねぇが俺様に勝とうなんて1000年早ぇぜ!!
「流石だな! このベ・リア様にダメージを与えるとはな!」
「あっ……ああ、ベ・リアか!!」
ベ・リア……そう!魔人ベ・リア。
9年?いや10年以上前になるか、同僚にそんな名前のヤツがいた事を思い出す。
魔人デウスと数名の魔族を率いて、他国に亡命した……んだったかな?
俺様の記憶に残っているベ・リアの印象は生意気な後輩って感じだ。
「……お前、もしかして俺の事を忘れていたのか?」
「うん。」
――――ブチン!!
野太いゴムがはち切れたような音が周囲にこだました。
「アァァァルゥゥゥゼエェェエエェェ!!!」
とことん付き合ってやんよ!後輩君!!
標高800メートルを超えるタロス国の死火山の山頂で、幼さの残る甲高い声が響き渡った。
◇◇◆◇◇◇
僕はレウケ様の案内で王宮に招かれていた。
例の王都襲撃事件の詳細な状況報告をする為に、国王並びに宰相と大臣に謁見する。
「では、レウケ様。手筈通りにお願いします」
「分かっている。決して悪いようにはしない」
――――遡る事、1時間前。
僕はレウケ様と共に貴族用の馬車に乗り、王城への道程を揺られていた。
彼の実父で、この国の現国王ルゥシェフル・タル・タロスに謁見しなければならない。
徒歩でもさほど距離は無いが、敢えて馬車を御用立てて貰ったのには訳がある。
それは今からする会話内容をレウケ様以外に聞かれないようにする為だ。
「ラルクの事を報告しないで欲しい? ……どういう事だ」
レウケ様は怪訝そうな表情をする。
彼が魔獣を討伐したとなれば、この国で英雄として祭り上げられるだろう。
そして個人カードを持たない彼は、恐らく再度ステータス調査を行われる。
ラルクが破壊神の加護を持っている事は重要機密事項。
それを他国に漏らす訳には行かない。
アルテナ国が各国に情報を流して無ければだが……。
破壊神は禁忌の対象だ。
現在の我が国でも人間種を中心とした王国・貴族達は諸外国と同じ教育を受けている事から破壊神の加護を持つ者に対して、畏怖と差別の象徴として認識されている。
しかし、その事を王族や貴族が大々的に公表できないのはタクティカ国に残る極少数の古代妖精種と古くから国で暮らす者達の同一神信仰が存在するからだ。
信仰や宗教といったものは人々の心の拠所であり、時に宗教観の対立により国家間戦争が勃発する事は歴史がそれを証明している。
保守派の多い人間種は現在の自分の地位を脅かす事態を敬遠している。
その為、僕と数人の信頼できる手駒に監視役をさせている訳だ。
僕は言葉を選んで彼の問いに答える。
「はい、彼には自由に生きて欲しいからです」
「……言ってる意味が分からない。真実を報告する事で彼が自由を失うとでも?」
「家柄や称号は……時に足枷になります。それは貴方が1番理解している立場ではございませんか?」
「…………」
自分も"公爵"という家柄の長男という束縛があり、生まれた時から決められた道を歩かされてきた。
教養・武芸・社交、どれも一流の教育を受け、若くして騎士団長の地位についている。
それは街で暮らす多くの人々が望んでも手に入らないモノかも知れない。
とても恵まれているのは理解している、だがそれは自分が望んだモノでは無い。
レウケ様は第3王子として生を受け、王位の絡んだ派閥から早々に抜け出し自由を手に入れた。
彼なら称号や家柄の束縛がどういった弊害を生むか「深読み」してくれるはずだ。
「彼はルーン技師としての才覚があると聞きました。英雄に祭り上げられたら、その大輪の花の芽を摘む事になるかも知れません」
「ふむ……」
彼は考え込むように俯く。
ラルクがこの先自分の教えた技術を受け継いでルーン技師として歴史に名を残す未来と、英雄としていつ死ぬか分からない戦乱の人生を歩む未来……。
それを自分の半生と天秤にかけて、自分ならどちらを選ぶかを悩んでいるんだ。
……答えは決まっている、彼は自分と同じく「ラルクに自由に生きる事」を望むはずだ。
「……具体的にどう報告するつもりなんだ?」
レウケ様は顔を上げ、真剣な表情で問いかけて来る。
僕は事前に考えておいたシナリオをレウケ様に話した。
"ティンダロス国の猟犬と呼ばれる召喚獣が突然現れて街を破壊し住民を蹂躙していた所に、謎の剣士が現れて猟犬を討伐した"
……という簡単なものだ。
条件として、ラルクが猟犬を倒した事は僕とネイ様とレウケ様と彼の一部の同僚しか知らない。
その場にいた兵士の生存者達はラルクが猟犬を倒したのを目撃してはいるが、それが誰なのかを知らないという事。
念の為、リアナさんとカルディナさんには口止めをしてある。
破壊神の加護の事を自国の王にすら報告しないネイ様が、ラルクの事を他言するとは思えない。
英雄という功績を存在しない「謎の剣士」に肩代わりさせる事でラルクは今まで通りの生活が送れると言う話だ。
こうする事でレウケ様も知らされていない破壊神の加護が表に出る事は回避出来る。
レウケ様は信用できる人物だとは思うが、加護の話をする訳にはいかない。
「……なるほど。余が余計な事を言わなければ、ラルクの日常を守れる訳だ」
「ラルクの顔を目撃した兵士や衛兵達には多少の根回しが必要でしょうけどね。まぁ、テロの可能性を示唆して事件の事を他言しないようにとでも言っておけば良いでしょう」
「分かった、その案を採用しよう。王には余が説明をする、レヴィン殿は直接質問された時にだけ答えてくれれば良い」
「はい、承知しました」
・
・
・
-タロス城 謁見の間-
その後、タロス城にて国王ルゥシェフル様と謁見する。
予定通り事件内容の報告はレウケ様が行う。
僕は質問された時にだけ受け答えをする程度だ。
国王の横に控えるのはレウケ様の双子の兄、第2王子で宰相のアノス様。
主にアノス様が質問事項を纏め、淡々と報告進行を行う。
他国の王と謁見するのは初めてではないが、やはり緊張するものだ。
宰相アノス様は勉学面において大変優秀だが魔力に乏しく、次期国王候補から外されたと聞く。
その為、自らの実力で宰相の地位を勝ち取ったらしい。
……そしてもう1人の王族、長男の第1王子ステュクス様。
何故かこの報告の場にステュクス様の姿なかった。
レウケ様は事件とは別件でラルクの事を名前を伏せて報告していた。
研修生の中にルーン文字の5つ刻みを成功させた天才がいると言う話だ。
完成品は試し切りで壊れたと言う話をしていた。
しかし、その話は偉業であるにも関わらず、あっさりと流されていた。
ルーン技術は魔力を必要とする為、現代では世界的にマイナーな部類に入る。
それに加えてレウケ様が王族としての責務を果たさずに興じている道楽程度に思われているのかも知れない。
僕としてはラルクが目立たない方が好都合なので特に問題は無い。
つつがなく国王との謁見は終了した。
帰りの馬車で僕はお世話になったレウケ様と握手をして、残りの研修を改めてお願いした。
「ときにレヴィン殿、ラルクを弟子として我が国に迎えるというのは駄目だろうか?」
「恐らくセロ社長が許さないと思いますので、先に私の方からお断りしておきます。いずれ彼はタクティカ国で開業をすると思いますよ」
開業するというのはラルクを渡さない為のハッタリだ。
けれど彼のルーン技術の才能をセロ社長が知ったら、あながち非現実的な話でもないかも知れない。
「それは残念だ。彼が女性ならば無理やりにでも嫁にでも迎えていただろうな」
「フフッ、それに関しては僕も同感です」
このタロス国は、立地が悪く資源の少ないタクティカ国との数少ない友好国だ。
今回の事件解決に貢献した事で、より良い関係に繋がれば良いな。
工房前で下ろして貰い、その足で宿舎に戻る。
既に夜は更けていた、随分と長い時間拘束されていたなと改めて感じる。
……さて、次は僕が帰国した際に今回の件を国王に報告しなければならない。
もちろん、この国の報告と差異の無いように「謎の剣士」に登場して貰う予定だ。
不意に、あの絶望的な状況下に現れたラルクの姿を思い出す。
僕はあの獣を一撃で倒した彼の姿に、子供の頃夢見た英雄を重ね感動すら覚えた。
そして彼のルーン技術の才能はタクティカ国の発展に必ず貢献するはずだ。
僕が生涯を掛けて陰ながら彼を助けよう、騎士としてでは無く1人の友人として……
◆◇◇◇◇◇
――研修5日目。
研修3日目と4日目に5文字刻みを成功させた僕はレウケ様から「免許皆伝認定」を頂いた。
そして、最終日はゆっくりと休むようにと言われ宿泊施設でルーンに関する本を借りて読んでいた。
ベッドの横ではネイがペティナイフを器用に使い林檎の皮を剝いている。
タロス国への報告はレウケ様とレヴィンが行ってくれたらしい。
王族出身のレウケ様や貴族のレヴィンなら、より正確な情報を報告できるだろう。
正直僕は王様に謁見して状況報告する自信が無かったので安堵していた。
全身に受けた打撲痕はレウケ様が回復魔法で治してくれたようだ。
「健康体なら、休む必要ってあるんですか?」と聞いたら「精神疲労は癒せんからな」と言われた。
レウケ様から聞いた話だが、この国でもあの黒い獣の被害で多くの人が命を落としたらしい。
その中にはレヴィンの部下も1名含まれていたと話していた。
レヴィンは気丈に振舞っていたけれど、内心は心を痛めているに違いない。
僕は彼に何かしてあげれるだろうか……。
「……ん」
目の前にウサギ型に成型された林檎を差し出される。
少し躊躇したが僕は林檎に顔を近付けて、おもむろに頬張る。
シャク モグモグ……
「……ん」
僕が食べ終えたタイミングを見測っらたように、目の前にもう1切さし出される。
「あの、ネイさん。」
「……ネイ」
「さん」付けをした事を注意されるとは思わなかった。
のりツッコミ並みの早さだったのでちょっと驚く。
「はい、ごめんなさい。あのねネイ」
「……何?」
ネイは小動物のような無邪気な瞳で首を傾げる。
なんだろう……ちょっと指摘し辛い。
「凄く言い難いんだけどさ……」
「……何?」
「もう怪我も治ってますので1人で食べれるというか……その、それに周囲の方々が微妙に戸惑っているので…」
意味が伝わって無いのかネイの表情は変わらない。
「?」って感じのままだ。
先日の事件からネイの過保護度が増したような気がする。
それは良いんだけれども……
部屋にはレウケ様の指示で20代くらいの若い衛兵2人が僕の護衛役として待機していた。
そして、その若い男性衛兵達から嫉妬の籠った視線が向けられていたのだ。
人目も憚らずイチャイチャしているように見えているのだろう。
……客観的に考えると、イチャイチャしてるんだ。
"林檎をあーん"としだした時点から苛立ちが表情に出始めていた。
微妙な雰囲気の中、急に扉がガチャリと開いた。
「ちゃーす! あ、御苦労様でっす!」
「こんにちわ!」
リアナ先輩とカルディナ先輩が休憩時間にお見舞いに来てくれたようだ。
先輩達が護衛兵に明るく挨拶した事で、彼等の表情が嬉しさで緩んだのが見えた。
これはありがたい、まさに天の助けだ!
先輩達が来た事で、この微妙だった雰囲気が解消されるかも知れない。
「先輩お疲れ様です!」
僕は笑顔で2人を招き入れた。
先輩達は特殊2文字刻みを成功させて、早々に研修を切り上げたらしい。
特殊2文字刻みとは同じルーン文字を2文字連続で刻む事で、効果が倍以上になるモノらしい。
ただし、その難易度は3文字刻みと同じくらい難しいらしく苦戦したと話していた。
結局2人共成功したので、研修カリキュラムを終了したらしい。
「ラルク君はもう体調は良いの? じゃ、明日の自由行動は大丈夫そうだな!」
「レヴィン様もお誘いしたのですが、開放されている海岸へ行きませんかって話していたんですよ」
「海岸ですか?でも、海の水は冷たくて泳げないんじゃ……」
地図の座標的に、この島は寒冷地にあたる。
とてもじゃないけど流氷が浮いているような海では泳ぐことが出来ないんじゃないか?
素朴な疑問を投げかける僕に対して、リアナ先輩はニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
「この島の東側の海は地下の火山活動のおかげで、泳げる程度の水温の場所があるみたいなの! そこがビーチとして開放されてるんだって! 当然、水着も借りれるって!」
「へぇ、凄いですね。面白そう」
故郷のアルテナ国は温暖な気候だったので、海へは何度か泳ぎに行った事はあった。
しかし、極寒のタクティカ国に着いてからは海で泳ぐ機会は全くなかった。
先輩達と話していると、不意に何かの気配を強く感じた。
部屋の入口で待機している2人の衛兵が拳を強く握り、怒りと嫉妬の表情を浮かべていた。
嫉妬が殺気にランクアップしたような……そんな感じ。
男女2人のイチャイチャが女性3人に囲まれてハーレムにランクアップしたように見えたのかも知れない。
僕は敢えて見て見ぬ振りをして、手渡されたパンフレットに目を通す。
研修は実質今日で終わり、明日の最終日は休暇として用意されている。
明日は研修参加者全員で海岸に繰り出すのか、なんだか楽しみだな。
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