上 下
249 / 252
AMNESIA編

249話 想い出の、その先に

しおりを挟む
次に訪れたのはMAP表示の東側に位置する大陸北部の国だ。

漁業と海運貿易が盛んな「バンボゥ国」街の外周を大きな運河が流れ、運河と街を隔てる巨大な外壁が覆った都市だ。

豊かに発展したその国はオスロウ国の街並みに似ている印象を受けた。

平民の暮らす区画と貴族街が明確に分かれており、どこか階級格差の見える造りだった。
街を一周し、再度街の入口に到着した時にまたしても頭の中に光が瞬く。

複数の黒いドラゴンが群れを成して空を舞う、そして更に巨大なドラゴンとの戦い。
亜人種デミヒューマンと共に壮絶な死闘の末、勝利を収める。

喜ぶ人々に囲まれた立食パーティーの様子、像がぼやけて見えないが天使の様な姿をした人物と魔王の様な人物が人々に持て囃されている。

・・・どこかで見た事が有る様な気がする。

バンボゥ国から南下した場所に巨大な砂漠が広がっており、その砂漠の中央に存在する「コダ国」へと到着する。

街の中央には巨大なミミズを模した様なオブジェが多数有り、その中央にはミミズの大群と果敢に戦う女性の石像が飾られていた。

オアシスの中央に豪華な装飾を施された城が有り、皆に城内へと案内される。
その国の国王と王妃に会い、幼い王女を紹介される。

幼いその少女はやたらとヤンチャで王族とは思えない程、礼儀を欠いた女の子だった。

その子に出会った瞬間に、記憶の欠片がまたも頭の中に蘇る。

王族同士のお見合いの様な風景、何故か私の中で笑いを堪える様な感情が湧いて来る。

同じ顔をした浅黒い肌の女性が2人・・・
これは・・・いや違う。

誰?

城を出てティオネムと言うダチョウに似た鳥類型の乗物をレンタルして、砂漠を更に南下する。
山岳地帯で鳥類から降り、洞窟を通って更に南下して行く。

洞窟を抜けると荘厳な雪景色が広がっていた。
次に到着した国は「ピトゥリア国」。

雪の女王でも出てきそうな雰囲気の街は石造りの建物が多く、雪国に慣れた国民は比較的薄着な人々が多かった。

この国の城に足を運び国王と王妃、そして幼い王子と出会う。
小学生位の年齢の王子と目が合った瞬間にまた記憶の断片が蘇る。

大勢の冒険者達と巨大な人型生物と戦う映像が浮かぶ、王子に似た面影の青年とコダ国の王女に似た顔立ちの女性が共に背中を預け戦っている。

雪原での戦闘は過酷を極め、街は破壊される。

再度戦い巨大なボスを倒す。
そして互いの手を取る青年と少女。

セーニア、アレクス・・・これが2人の名前なのか?

ピトゥリア国から船に乗り西へと向かう。

次は島国の「ホウシェン国」。
松林に日本風古民家屋に彩られた風景は江戸時代を思わせる雰囲気を漂わせていた。

神社・仏閣の様な建物を見て回り、巨大な城に住む天帝と呼ばれる王様と出会う。
筋肉質の巨体で豪快に笑う天帝は皆と仲良さそに話をしていた。

部屋の天井の隙間から忍者らしき人間が数人様子を覗いていて驚く。

護衛の人だろうか?
忍者を見た瞬間にまたしても映像が浮かんでくる。

この城の外で妖怪の様な生物と戦っている。
巨大な骸骨に尾が九つ有る狐。

そして巨大な宙に浮く球体。

場面が変わり街を修繕する人々を眺める私、そして先程見た忍者に何かを教えている風景。

最後に見えたのは、壊れた天守閣で悲し気な目をした少年が黄色い宝石を抱えて立ち尽くしている風景。

アル・・・ラト?

名前?誰の事だろう。
どう言う記憶かは定かじゃないけど、少し悲しい気分になった。

その後、転送装置を起動して再度機械都市ギュノス国へと移動する。
ギュノス国から北上し船着き場から北へと船で移動する。

紫色の雪に覆われた大地に上陸する。
モニターには最果ての地「ハルモニア大陸」と表示されていた。

「アビスダンジョン」と言う100階層ダンジョンが存在する地だと暗黒神ハーデスが教えてくれる。

私達は大陸中央に存在する巨大な大穴アビスダンジョンへと足を踏み入れる。

「ここからは戦闘が始まります。まぁ死ぬ事は無いと思いますが注意して進みましょう。目指すは50階層です。」

伊集院咲耶さんが私の手を引く。
それを見て対抗するかの様に逆の手をSAKURAサクラさんが握る。

そしてお互いに睨み合い、DOSドスさんが先頭に立ち暗黒神ハーデスさんが後方に位置する。

菱形の様な陣形を組み、洞窟内部を進んで行く。
雑魚モンスターはそこまで強く無く、私でも二撃程度で倒せる難易度だった。

19階層に辿り着いた私達は、明らかにボスが出てきそうな大扉の前に立つ。
大扉の中には巨大な炎の塊が宙に浮いていた。

その見た目は燃え盛る太陽に見えた。
皆で連携をして比較的あっさりと勝利を収める。

やはり最高レベルだけあって、受けるダメージ量が少なく与えるダメージは大きい。

更に洞窟を下り20階層に先程と同様の大扉が出現する。
10階層毎にボスフロアとなっている様だ。

その扉を開けると、6体の影の様な物が地面より湧く様に蠢いて人の姿へと変容して行く。

その影の様な物体は私達のキャラクターそっくりに変化して襲い掛かって来た、自分達と同様の特殊技能スキルを使用してくるが割とあっさり倒す事が出来た。

倒した影が部屋の中央に集まり中学生位の男の子の姿へと形を変える。
しかし眠る様に立ち尽くした状態で機能を停止する。

「シノブ、あれはアルラトだ。何か思い出さないか?」

ミカエル=アルファが男の子を指して尋ねる。
名前はアルラト・・・そう思った瞬間にまたしてもフラッシュバックが脳内を駆け巡る。

そうアルラトは女の子だ。
彼女と一緒に過ごした思い出が一気に押し寄せる。

彼女は最後に私達に敵を倒すチャンスを作る為に、命を懸けて戦ってくれたんだ。
そして私の腕の中で消滅したんだ。

思い出した瞬間にリアルで大粒の涙が一気に溢れる。
止めど無く溢れた涙でディスプレイに映ったアウラトの姿が滲む。

数々の記憶のピースが嵌って行く、楽しい思い出も悲しい思い出も全部。
私は一度ヘッドマウントディスプレイを取り涙を拭く、再度被り直して画面を見ると皆が待ってくれていた。

「大丈夫でござるか?」

「うん。大丈夫だよサクラ。」

「もう少しで最深部だ、行けるか?」

「・・・・うん。」

30階層で気体と生物の中間の様なモンスターを倒し、40階層で泡立った虹色の球体のモンスターを倒す。

そして更に下へ下へと進んで行く。
約2時間掛けて50階層に到着した。

そこには草原フィールドを白と黒とグレーで表現した様な見た目のフロアが広がっていた。
吹き抜け構造の様な形で遥か上空には紫色の空が見える。

フロア中央には10メートル以上の高さを誇る巨大なオベリスクが聳え立っていた。

私は覚えている。

これに触れるとストーリーモードラスボスの暗黒神ザナファが出現するんだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

異世界もふもふ食堂〜僕と爺ちゃんと魔法使い仔カピバラの味噌スローライフ〜

山いい奈
ファンタジー
味噌蔵の跡継ぎで修行中の相葉壱。 息抜きに動物園に行った時、仔カピバラに噛まれ、気付けば見知らぬ場所にいた。 壱を連れて来た仔カピバラに付いて行くと、着いた先は食堂で、そこには10年前に行方不明になった祖父、茂造がいた。 茂造は言う。「ここはいわゆる異世界なのじゃ」と。 そして、「この食堂を継いで欲しいんじゃ」と。 明かされる村の成り立ち。そして村人たちの公然の秘め事。 しかし壱は徐々にそれに慣れ親しんで行く。 仔カピバラのサユリのチート魔法に助けられながら、味噌などの和食などを作る壱。 そして一癖も二癖もある食堂の従業員やコンシャリド村の人たちが繰り広げる、騒がしくもスローな日々のお話です。

専業ネカマの生態

magnet
SF
36歳プロヒキニートが推しの宣伝によりゲームを始めることを決意。コツコツお金を貯め一ヶ月遅れでようやくゲームを始めるも、初心者狩りにカモられ、キャラを削除されてしまう。そんな失意の中、復習に燃える主人公(デブメガネオタク)は二度目のログイン時に前回には無かったキャラクリエイト画面を発見する。そこでは詳細な顔だけでなく、生体認証により選択できなかった性別すら変更可能で…… 人生オワコン男性による怒涛の人生逆転劇!

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ

トール
恋愛
会社帰り、駅までの道程を歩いていたはずの北野 雅(36)は、いつの間にか森の中に佇んでいた。困惑して家に帰りたいと願った雅の前に現れたのはなんと実家を模した家で!? 自身が願った事が現実になる能力を手に入れた雅が望んだのは冒険ではなく、“森に引きこもって生きる! ”だった。 果たして雅は独りで生きていけるのか!? 実は神様になっていたズボラ女と、それに巻き込まれる人々(神々)とのドタバタラブ? コメディ。 ※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています

異世界でトラック運送屋を始めました! ◆お手紙ひとつからベヒーモスまで、なんでもどこにでも安全に運びます! 多分!◆

八神 凪
ファンタジー
   日野 玖虎(ひの ひさとら)は長距離トラック運転手で生計を立てる26歳。    そんな彼の学生時代は荒れており、父の居ない家庭でテンプレのように母親に苦労ばかりかけていたことがあった。  しかし母親が心労と働きづめで倒れてからは真面目になり、高校に通いながらバイトをして家計を助けると誓う。  高校を卒業後は母に償いをするため、自分に出来ることと言えば族時代にならした運転くらいだと長距離トラック運転手として仕事に励む。    確実かつ時間通りに荷物を届け、ミスをしない奇跡の配達員として異名を馳せるようになり、かつての荒れていた玖虎はもうどこにも居なかった。  だがある日、彼が夜の町を走っていると若者が飛び出してきたのだ。  まずいと思いブレーキを踏むが間に合わず、トラックは若者を跳ね飛ばす。  ――はずだったが、気づけば見知らぬ森に囲まれた場所に、居た。  先ほどまで住宅街を走っていたはずなのにと困惑する中、備え付けのカーナビが光り出して画面にはとてつもない美人が映し出される。    そして女性は信じられないことを口にする。  ここはあなたの居た世界ではない、と――  かくして、異世界への扉を叩く羽目になった玖虎は気を取り直して異世界で生きていくことを決意。  そして今日も彼はトラックのアクセルを踏むのだった。

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

処理中です...