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ラグナロク編
232話 融合率69パーセント
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ほんの一瞬の出来事だった。
ミカエル殿が破壊神ヨグトスの胸部を破壊しDOS殿が頭部を破壊。
そしてシノブ殿が残った部位をあの呪いの刀で完全消滅させた。
誰もが勝利を確信した瞬間だった。
シノブ殿が空中から現れた光る上半身に抱き着かれて、その物体は彼女の身体に吸収される様に一体化した。
シノブ殿は一瞬意識を失った様な感じで目を瞑り揺らりと態勢を崩した。
彼女は俯いたままゆっくりと目を開き、自分の両手を閉じたり開いたりしていた。
「・・・やはり強制的に融合すると拒絶反応が有りますね。まだ69パーセントといった所ですね。」
強制的に融合だとっ!?
まさか破壊神ヨグトスはシンブ殿の体を乗っ取ったのか!?
以前シノブ殿が破壊神アザドゥから聞いた話では、この世界の肉体は現実世界の精神そのものと言っていた。
シノブ殿の精神を破壊神ヨグトスが乗っ取ったと言う事は、ヤツの目的の次元上昇が実現出来る状態になったと言う事だ。
その場合、シノブ殿はどうなるんだ?
・・・・くそっ!どうする。
どうしたら良い?
シノブ殿の肉体に入っている以上、攻撃をする事は出来ない。
思わずミカエル殿の方に目をやる。
常に状況を冷静に見つめ合理的な判断をする彼なら的確な指示をしてくれると思ったのだが・・・彼の表情を見るに戸惑いながら何かを考えている様子だ。
DOS殿と咲耶殿が俺達の近くに移動して様子を見る。
2人も今以上に近付く事が出来ない。
無理も無い。
この場の誰もが手を出せない状況だ。
両手に持つ刀の柄に汗が滲む。
・・・最悪の状況に陥ったんじゃないだろうか。
「これでは次元上昇出来ない。・・・ふふ、そうか。君達に協力をして貰えば良いか。シノブが完全に屈服するまで・・・ね。」
シノブ殿は何か独り言をブツブツと喋っていたかと思うと、不意に顔を上げて此方を向きニヤリと不敵に笑う。
その笑顔には明らかな敵意が込められている。
殺気はでは無いが不気味な威圧感を受けた俺は思わず刀を構える。
「ミカエル殿、拙者はどうしたら良いでござるか?」
「分からない。・・・シノブは破壊神ヨグトスに取り込まれてしまったのか?いや、だとしたら次元上昇を開始するはずだ。何故しないんだ?まだ準備が整っていないのか?」
「ヤツは頻りにシノブに手を差し伸べていた。【神足】のスピードでシノブを捕縛する事は可能だったのに、敢えてしなかった。シノブが自発的に手を伸ばすのを待っていた様子だった。」
「では、もしかしてまだシノブを完全に取り込めてないと言う事ですか?」
シノブ殿と融合した破壊神ヨグトスの様子を見ながら話をしていると、黄金色の光を放っていた我々の装備が徐々に光が薄くなりそして光の粒子は完全に消えた。
ハーデス殿が時間制限が有る的な事を言っていたのを思い出す。
超絶強いチート能力向上魔法のフィーバータイムは終了した様だ。
当然、破壊神ヨグトスに掛かっていた能力弱体魔法も消滅した可能性が高い。
これは万事休す・・・なのか?
「ねぇ皆・・・私の為に死んでくれる?」
突然シノブ殿が信じられない発言をした、間違い無く彼女の声だ。
冗談で死ねと笑いながら突っ込まれた事は有るが、此処まで何気無い雰囲気で言われたのは初めてだ。
これは彼女自身の発言じゃない。
破壊神ヨグトスが彼女の体を使って言っているんだ。
彼女の全身に黒い魔力が集まり始める。
戦闘態勢を取る様子から先程の発言は本気だと分かる。
「DOS・・・・シノブを倒せばヨグトスは死ぬと思うか?」
「シノブが廃人となり、この世界が消滅すると思う。何か方法は無いか・・・ハーデスが干渉出来れば方法が模索出来るかも知れないが。」
「ハーデスの話では、この世界はハーデスの会社サーバー内に存在すると言っていましたね。だったら今話しているログをモニタリングしているかも知れません。ただ、ウィルスがどうのとか言ってましたから・・・」
「この世界はサーバー内に有って、シノブ殿の肉体と精神を繋げているバイパスがSMOネットワークシステムなら・・・ハーデス殿もヨグトスも回線を遮断する事は出来ないはずでござる。流石に厨二病のハーデス殿でも拙者達ごとサーバーダウンして証拠隠滅なんて事はしないでござろう。多分・・・・」
「・・・・ハーデスは他部署の上に最高責任者じゃないから分からんぞ。」
DOS殿が怖い事を言いだす。
破壊神ヨグトスを消去する1番簡単な方法は、このままサーバーの電源を落とす事だ。
ハーデスがログアウトした瞬間に現実と時間が同期した風な事を破壊神ヨグトスが口走っていた。
だからハーデスは外の世界からこの世界に干渉出来た。
サーバーの電源を落せばシノブを含む我々5人の精神と共に破壊神ヨグトスは消滅させれる。
その方法を取った場合は確実に5人の植物人間的症状のプレイヤーが表に出てしまう。
特にシノブは両親と同居だから、明日の朝シノブが学校に登校する時間には発見されて確実に問題視される話題として世間を賑わすだろう。
そしてサービス当初の意識不明事件も掘り出されて、マスコミに報道されるのが容易に想像が付く。
ハーデス殿の話では、神々とか天使とか言ってたがアレは多分数人の責任者と同僚が手伝っている的なニュアンスだと思う。
・・・てことは少なくとも今の事態を数十名は把握していて、なんらかの対策を講じているはずだ。
シノブ殿を倒すこと無く破壊神ヨグトスを分離する方法なんて分からないし、我々も死ぬ訳にはいかない。
「攻撃する事無く相手の全ての攻撃を凌いで時間を稼ぐ」が最善策だが・・・回復薬も残り少ない。
しかも相手はチート能力が復活しているかも知れないと・・・分が悪い。
「・・・ハーデスの干渉に賭ける、それまで時間を稼ぐしか無い。」
「DOS・・・そうですね、それしか無い。」
「次元上昇してもGAMEOVER、シノブを倒してもGAMEOVER、私達が死んでもGAMEOVER、サーバーダウンしてもGAMEOVER。難易度が超絶究極級以上ですね。」
「・・・・シノブ殿の攻撃を回避するのは、更にもう1ランク上の難易度でござるよ。」
破壊神ヨグトスが何故急に攻撃態勢になったか分からないが、俺達は武器を構え本物のシノブと対峙する。
まったくこの世界ときたら・・・
シノブ殿は絶対に拙者が助ける。
そして一緒に現実世界に戻って見せる!
ミカエル殿が破壊神ヨグトスの胸部を破壊しDOS殿が頭部を破壊。
そしてシノブ殿が残った部位をあの呪いの刀で完全消滅させた。
誰もが勝利を確信した瞬間だった。
シノブ殿が空中から現れた光る上半身に抱き着かれて、その物体は彼女の身体に吸収される様に一体化した。
シノブ殿は一瞬意識を失った様な感じで目を瞑り揺らりと態勢を崩した。
彼女は俯いたままゆっくりと目を開き、自分の両手を閉じたり開いたりしていた。
「・・・やはり強制的に融合すると拒絶反応が有りますね。まだ69パーセントといった所ですね。」
強制的に融合だとっ!?
まさか破壊神ヨグトスはシンブ殿の体を乗っ取ったのか!?
以前シノブ殿が破壊神アザドゥから聞いた話では、この世界の肉体は現実世界の精神そのものと言っていた。
シノブ殿の精神を破壊神ヨグトスが乗っ取ったと言う事は、ヤツの目的の次元上昇が実現出来る状態になったと言う事だ。
その場合、シノブ殿はどうなるんだ?
・・・・くそっ!どうする。
どうしたら良い?
シノブ殿の肉体に入っている以上、攻撃をする事は出来ない。
思わずミカエル殿の方に目をやる。
常に状況を冷静に見つめ合理的な判断をする彼なら的確な指示をしてくれると思ったのだが・・・彼の表情を見るに戸惑いながら何かを考えている様子だ。
DOS殿と咲耶殿が俺達の近くに移動して様子を見る。
2人も今以上に近付く事が出来ない。
無理も無い。
この場の誰もが手を出せない状況だ。
両手に持つ刀の柄に汗が滲む。
・・・最悪の状況に陥ったんじゃないだろうか。
「これでは次元上昇出来ない。・・・ふふ、そうか。君達に協力をして貰えば良いか。シノブが完全に屈服するまで・・・ね。」
シノブ殿は何か独り言をブツブツと喋っていたかと思うと、不意に顔を上げて此方を向きニヤリと不敵に笑う。
その笑顔には明らかな敵意が込められている。
殺気はでは無いが不気味な威圧感を受けた俺は思わず刀を構える。
「ミカエル殿、拙者はどうしたら良いでござるか?」
「分からない。・・・シノブは破壊神ヨグトスに取り込まれてしまったのか?いや、だとしたら次元上昇を開始するはずだ。何故しないんだ?まだ準備が整っていないのか?」
「ヤツは頻りにシノブに手を差し伸べていた。【神足】のスピードでシノブを捕縛する事は可能だったのに、敢えてしなかった。シノブが自発的に手を伸ばすのを待っていた様子だった。」
「では、もしかしてまだシノブを完全に取り込めてないと言う事ですか?」
シノブ殿と融合した破壊神ヨグトスの様子を見ながら話をしていると、黄金色の光を放っていた我々の装備が徐々に光が薄くなりそして光の粒子は完全に消えた。
ハーデス殿が時間制限が有る的な事を言っていたのを思い出す。
超絶強いチート能力向上魔法のフィーバータイムは終了した様だ。
当然、破壊神ヨグトスに掛かっていた能力弱体魔法も消滅した可能性が高い。
これは万事休す・・・なのか?
「ねぇ皆・・・私の為に死んでくれる?」
突然シノブ殿が信じられない発言をした、間違い無く彼女の声だ。
冗談で死ねと笑いながら突っ込まれた事は有るが、此処まで何気無い雰囲気で言われたのは初めてだ。
これは彼女自身の発言じゃない。
破壊神ヨグトスが彼女の体を使って言っているんだ。
彼女の全身に黒い魔力が集まり始める。
戦闘態勢を取る様子から先程の発言は本気だと分かる。
「DOS・・・・シノブを倒せばヨグトスは死ぬと思うか?」
「シノブが廃人となり、この世界が消滅すると思う。何か方法は無いか・・・ハーデスが干渉出来れば方法が模索出来るかも知れないが。」
「ハーデスの話では、この世界はハーデスの会社サーバー内に存在すると言っていましたね。だったら今話しているログをモニタリングしているかも知れません。ただ、ウィルスがどうのとか言ってましたから・・・」
「この世界はサーバー内に有って、シノブ殿の肉体と精神を繋げているバイパスがSMOネットワークシステムなら・・・ハーデス殿もヨグトスも回線を遮断する事は出来ないはずでござる。流石に厨二病のハーデス殿でも拙者達ごとサーバーダウンして証拠隠滅なんて事はしないでござろう。多分・・・・」
「・・・・ハーデスは他部署の上に最高責任者じゃないから分からんぞ。」
DOS殿が怖い事を言いだす。
破壊神ヨグトスを消去する1番簡単な方法は、このままサーバーの電源を落とす事だ。
ハーデスがログアウトした瞬間に現実と時間が同期した風な事を破壊神ヨグトスが口走っていた。
だからハーデスは外の世界からこの世界に干渉出来た。
サーバーの電源を落せばシノブを含む我々5人の精神と共に破壊神ヨグトスは消滅させれる。
その方法を取った場合は確実に5人の植物人間的症状のプレイヤーが表に出てしまう。
特にシノブは両親と同居だから、明日の朝シノブが学校に登校する時間には発見されて確実に問題視される話題として世間を賑わすだろう。
そしてサービス当初の意識不明事件も掘り出されて、マスコミに報道されるのが容易に想像が付く。
ハーデス殿の話では、神々とか天使とか言ってたがアレは多分数人の責任者と同僚が手伝っている的なニュアンスだと思う。
・・・てことは少なくとも今の事態を数十名は把握していて、なんらかの対策を講じているはずだ。
シノブ殿を倒すこと無く破壊神ヨグトスを分離する方法なんて分からないし、我々も死ぬ訳にはいかない。
「攻撃する事無く相手の全ての攻撃を凌いで時間を稼ぐ」が最善策だが・・・回復薬も残り少ない。
しかも相手はチート能力が復活しているかも知れないと・・・分が悪い。
「・・・ハーデスの干渉に賭ける、それまで時間を稼ぐしか無い。」
「DOS・・・そうですね、それしか無い。」
「次元上昇してもGAMEOVER、シノブを倒してもGAMEOVER、私達が死んでもGAMEOVER、サーバーダウンしてもGAMEOVER。難易度が超絶究極級以上ですね。」
「・・・・シノブ殿の攻撃を回避するのは、更にもう1ランク上の難易度でござるよ。」
破壊神ヨグトスが何故急に攻撃態勢になったか分からないが、俺達は武器を構え本物のシノブと対峙する。
まったくこの世界ときたら・・・
シノブ殿は絶対に拙者が助ける。
そして一緒に現実世界に戻って見せる!
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