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異世界崩壊編 後編

215話 ボーナスポイントの振り方

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その日の夜、期を見計らってミカさんがデイアに声を掛けていた。

DOSどっちゃんの指示で私達は各々前日に宿泊した部屋を借り休息を取る事にした。
その夜は疲労からか夢を見る事は無かった。

そして翌日の早朝、物音で起きて私は溜息を付く。

昨夜仕掛けた【粘着麻痺罠】に簀巻きになっているサクラとデイアとの姿が有った。
サクラは日常的だがデイアも罠に引っ掛かるのは3回目だ。

「お、おはようございます。」

「あなたねぇ・・・我が家を何だと思っているのですか?」

「シノブ殿、おはようでござる。」

この配置から見るにサクラが最初に引っ掛かって、その後部屋に訪れたデイアが引っ掛かった様子だ。

溜息を付きつつデイアの【粘着罠】を解除し、サクラは簀巻きのまま2階の窓から中庭へ頬り投げておいた。

「・・・・あの侍は大丈夫か?」

簀巻きにしたサクラを捨てたのを見て、デイアは驚いている様子だった。
まぁ日常茶飯事です。

「あの馬鹿は程度では死にませんのでご安心ください。」

「そ、そうか。それより昨夜ミカエルさんから話があって、私も「深紅の薔薇」に誘って貰ったんだ。これからよろしく頼む。」

「そっか、デイアさんよろしくね。デイアさんが居ると心強いよ。」

「デイアで良い、私もシノブと呼ぶが良いか?」

「うん、もちろん。」

昨夜玉座で泣き崩れていたデイアの姿から比べると少しは元気が戻った様に見える。

その後、私はデイアに【破壊刀イレース】の事をしつこく質問された。

彼女からしてみれば禍々しい邪気を纏った妖刀にしか見えないとの事だった。

破壊神アザドゥの力の一部が込められているのだからデイアの見解は間違ってはいない。

この刀の由来と刀に宿る「レイ」の事を話した。
彼女は装備出来無いのでレイと会話する事は出来ないので私が通訳的に間に入る形で会話をする。

レイの喋る口調のまま通訳していると、「シノブ、私を揶揄っているのではあるまいな?」と疑われる始末。

「いやいや、生まれたばかりの刀なので幼い感じなんですよ。」と弁明するが、訝しげな表情をしながら刀を眺めていた。

「深紅の薔薇」でレイの声を直に聞けるのは装備出来る私とサクラだけなのだ。
こんな事なら2階から突き落とすんじゃ無かったとナノサイズ程度の後悔をした。

その後広間に集まった皆で城の備蓄保存食を朝食にして、改めてデイアの加入をミカさんから正式に発表される。

そしてギルド加入の儀式を行った。

慌ただしくて忘れていたがクリス君以降に加入した際のステータスボーナスポイントの事を忘れていたのを思い出し、余剰ポイントを全て「回避能力」に振ろうとして少し考える。

多分だけど【破壊刀イレース】は、物理攻撃力では無くSPの最大値でダメージが上昇する。

ゲームでは「精神値」に1ポイント振れば最大SPが5ポイント上昇する設定だったはずだ。

ステータスウィンドが開けないので数値として可視化出来ないが余剰ポイント8ポイント有るはずなのでSP数値に換算するとSP+40となる。

決して少ない数値では無い。
ダメージ換算でどれくらい行くか分からないけど悪く無い選択だ。

しかし、最終ボスと考えている魔人ヨグトスの攻撃が一撃が致命的な感じだったら回避性能は1番必要となる能力だ。

これは・・・・悩むな。

私は皆に聞いて回った。
皆はこの世界では一体どんなカスタマイズにしたのだろうか?

ミカさんはとサクラは「物理攻撃力」、DOSどっちゃんは「射撃命中率」、暗黒神ハーデスハーちゃんは「魔法攻撃力」、咲耶は「魔法防御力」を上げたと話していた。

クリス君達は4人は何の事か分かって無かった様なのでミカさんが追加能力の振り方等を詳しく説明をしていた。

その後、クリス君とシャルとセーニアは咲耶と同じく「魔法防御力」に振っていた。

理由を聞くと古代神カノプスの使って来た回避不可能な聖属性魔法がトラウマレベルの恐怖になったからだと口を揃えて話していた。

デイアは全ての魔法反射する防具を装備している為、暗黒神ハーデスハーちゃんと同じく「魔法攻撃力」を上げた様だ。

皆はそれぞれ長所を上げるか短所を補うかと言う2択的な考えでポイントを振っている様だった。
私は1人だけ「攻撃命中率」を選んでいたDOSどっちゃんに何故命中率を選んだのか聞いてみた。

「・・・・シノブ、ゲームでのヨグトス戦を覚えているか?」

「うん、ヨグトスは炎の化身トゥグと同じ様な不定形な虹色の球体で、弱点属性を変化させるバリアチェンジを持っているヤツだよね。」

「そうだ、シノブは古代神カノプスを見てどう思った?ゲームとの違いは。」

「うーん、かなり大きかったしそれに比例して魔法が広範囲でダメージも大きかった。」

「そうだ。サイズが異常な位大きかった、確実にデータを改竄していると目で見える程に。」

「うん、でもDOSどっちゃん的には目標が大きい方が銃弾を命中させ易いんじゃない?」

「ああ、だが問題はソコでは無い。」

DOSどっちゃんは一旦言葉を止める。

私が何かに気が付くのを待っている様な感じだ。
ボスが大きいと命中率を上げる必要が有る・・・?

良く分かんないな、問題はソコじゃない・・・
あ、そうか分かった。

私が気付いたと言った表情を察した様だ。

「・・・もし魔人ヨグトスが極小のサイズだったら・・・って事?」

「ああ、もしくはシノブの様に回避率が異常に高いとかな。私がシノブと戦う時は必ず近接戦闘するだろう?それは遠距離銃撃を当たるのが困難だからだ。」

確かにそうだ。
DOSどっちゃんはプレイヤースキルが高いから近距離も遠距離も強い。

しかし回避力極振りの私と戦う時は短銃とナイフでの近接戦闘をしてくる。
そしてプレイヤースキルの差で負ける。

元々スナイパーも忍者も命中率は高い方だから気にした事が無かったが、DOSどっちゃんの言う様に規格外の回避能力や極小サイズにデータ改竄されていたら攻撃を当てるのですら困難かも知れない。

ナルホドと納得するが「回避能力」「精神力」に加えて、「攻撃命中率」・・・・悩みが2択から3択になってしまった。

悩んだ挙句、私は師匠であるDOSどっちゃんの読みを信じて「攻撃命中率」にボーナスポイントを全振りした。

その後私達は転送装置の有る神具の部屋に行き、アビスダンジョンへ向かう準備をする為にこの世界で唯一無事だと思われる機械都市ギュノス国へと向かった。
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