上 下
208 / 252
異世界崩壊編 後編

208話 魔法都市共同作戦締結

しおりを挟む
-魔法都市ハイメス国-

転送装置で転送を終えた私達はハイメス国の城内の一室に降り立った。

そこは薄暗い部屋になっており、外側から硬く閉ざされている様だった。
私は内側から開錠特殊技能レゾナンススキルを使用して扉を開ける。

扉の外には魔法騎士マジックナイトの扉番が1名待機していた。
中から扉を解放して出て来た私達の姿を見て、慌てて逃げ出して行った。

「・・・・逃げちゃった。」

「まぁ新人っぽかったからな。」

「私とDOSの顔を知らないみたいでしたしね。この開かずの間の警備は新人の仕事なんでしょう。」

以前この国の兵士長的立場で所属していたDOSどっちゃんと咲耶は、この城で暮らしていた時期が有ったので内部情報に詳しい。

2人に案内される形で城内を歩いていると大勢の兵士に囲まれる。
どうやら先程部屋の番をしていた兵士が不法侵入して来た不審者対応の為に応援を呼んだのだろう。

「あ、あいつらです!神具の間の中から出て来た不審者共は!」

寝具?
あ、神具なのかな?

起動出来無い転送装置は神の道具として祭られていたのだろうか。

「貴様等何者だ!・・・・うん?ま、魔槍様に爆雷の女神様ではございませんか!?」

なんか懐かしい呼び方だな、オスロウ国との戦争時にハイメス国軍として参加していたDOSどっちゃんは「姿無き魔槍」、咲耶は「爆雷の女神」と呼ばれていたんだっけ。

「お久しぶりです、驚かせてすみません。」

「い、いえ。しかし一体どうやって城に入られたのですか?」

咲耶は転送装置の事を簡潔に説明し、新人兵士に非が無い事を伝える。

数人の兵士が国王に報告に行き、兵士達はそれぞれの持ち場に戻って行った。

私達は応接室に案内されて待機される様に促される。
相変わらずここのSP回復効果の有るハーブティーは美味しい。

殆どの国は転送装置は街の入口に設置されているがイベントの関係でこの都市は城内に設置されている。

私達元プレイヤーしか起動出来無いのだから「神具」と言って祭っていた様だ。
まさかそこから人が現れるとは驚いたに違い無い。




その後デイアと魔法騎士マジックナイト隊長と警備兵に守られた国王と王妃が部屋へとやって来た。

まずはサクラがデイアにお礼を述べる。
希少鉱石レアメタル森羅万象しんらばんしょう】で強化された【しん童子切安綱どうじぎりやすつな】見せ頭を下げる。

その美しい刀身の刀を魔法騎士マジックナイト達が物珍しそうに見つめ騒いでいた。

国王と王妃は以前会った時よりもやつれている様子で表情も硬い。
DOSどっちゃんが先頭を切って挨拶をする。

大抵ミカさんがするのだが彼は窓際の椅子に座り、心ここに在らずと言った感じで赤い空を眺めている。

DOSどっちゃんは転送装置の転移の事とオスロウ国崩壊、現状巨大モンスターの標的となっている事を伝える。

「そうか、オスロウ国は滅んだか。」

デイア姫はちらりとクリス君の方に一瞬目をやり、すぐに視線をDOSどっちゃんの方へ戻す。咲耶は改めて魔法士隊の古代神カノプス討伐の協力を願い出た。

「空を飛ぶ100メートル級のモンスターを魔法で撃墜・・・戦力は8000人以上の国民を一撃で消滅させる聖属性魔法とDOSさんを斬り刻む斬撃力をも持っているですか。」

「ええ、強力な魔法障壁とヤツを撃墜するだけの遠隔魔法攻撃力が必要なのです。」

「考えは有る。デイア様とこの国の力を貸しては貰え無いだろうか。」

「シノブ、未来予知は無いのか?」

突然会話を振られて、思わず驚く。

そう言えば、この国での私の立ち位置は「予言者」と言う特殊才能ギフト所持者とサクラが宣言してから完全に信じられていたんだった。

私は恨めしそうにサクラの方に目をやると、サクラはそっぽを向いていた。

アイツ笑いを堪えているんじゃないか?
ムカツク・・・しかし、どうする?

もはや全部説明した方が良いのだろうか・・・?

困った顔の私を見てDOSどっちゃんが助け船を出してくれた。
そして、この世界の実態と今起きている事態の明確な内容をつつみ隠さず話をし。

当然デイアを含め護衛の兵士や国王も信じられないと言った表情で様々な質問をDOSどっちゃんに投げかける。

その質問に対してDOSどっちゃんは淡々と答える、冗談を言うタイプでは無い事は国王も含め兵士長も知っている。

しかし、余りにも突飛な内容に受け入れられないといった感じだった。

「今の話が本当ならばシノブは予言者では無く神そのものではないか!そして、そこのソーサラーも。それにしても、ヨグトスとやらを倒しても世界は消えるとはな・・・なんとも報われないな。DOSさんが嘘を言うとは思えないが座して滅ぼされるのは納得がいかないですね。」

デイアは国王と王妃を真直ぐ見据えて話を始めた。

「お父様、私が前衛に出て軍を動かします。咲耶さん、DOSドスさん、そして皆さんご協力をお願いできますか?」

「こちらからもお願いします。」

「ああ、よろしく此方こそ頼む。」

DOSどっちゃんとデイアは硬く握手を交わし、ハイメス国との共同戦線が締結された。

その後のハイメス国の対応は早く、即時国民に対して国王からの非常事態宣言の通達が行われ全国民が都市防衛の為に行動を開始した。

ハイメス国はゲーム設定上、全国民が高い魔力を持つと言う設定が活きているらしく一般市民が都市を守る多重結界装置の魔力供給へと周る様に衛兵から指示が長されていた。

普段結界を作動させている部署の人間は戦闘部隊へと回る予定だと話していた。

こうして防衛準備は着々と進みDOSどっちゃん暗黒神ハーデスハーちゃんとデイア姫、各種騎士隊長を中心となり古代神攻略作戦が練られて行った。

その後斥候に出ていた少数の騎士がオスロウ国とハイメス国を隔てた山岳地帯で停滞している古代神カノプスの目撃情報が入る。

話を聞いた限り、第1形態より移動速度は遅いらしく本国への到着は明朝程度になる予測が立てられていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

家族全員異世界へ転移したが、その世界で父(魔王)母(勇者)だった…らしい~妹は聖女クラスの魔力持ち!?俺はどうなんですかね?遠い目~

厘/りん
ファンタジー
ある休日、家族でお昼ご飯を食べていたらいきなり異世界へ転移した。俺(長男)カケルは日本と全く違う異世界に動揺していたが、父と母の様子がおかしかった。なぜか、やけに落ち着いている。問い詰めると、もともと父は異世界人だった(らしい)。信じられない! ☆第4回次世代ファンタジーカップ  142位でした。ありがとう御座いました。 ★Nolaノベルさん•なろうさんに編集して掲載中。

異世界でお金を使わないといけません。

りんご飴
ファンタジー
石川 舞華、22歳。  事故で人生を終えたマイカは、地球リスペクトな神様にスカウトされて、異世界で生きるように言われる。  異世界でのマイカの役割は、50年前の転生者が溜め込んだ埋蔵金を、ジャンジャン使うことだった。  高級品に一切興味はないのに、突然、有り余るお金を手にいれちゃったよ。  ありがた迷惑な『強運』で、何度も命の危険を乗り越えます。  右も左も分からない異世界で、家やら、訳あり奴隷やらをどんどん購入。  旅行に行ったり、貴族に接触しちゃったり、チートなアイテムを手に入れたりしながら、異世界の経済や流通に足を突っ込みます。  のんびりほのぼの、時々危険な異世界事情を、ブルジョア満載な生活で、何とか楽しく生きていきます。 お金は稼ぐより使いたい。人の金ならなおさらジャンジャン使いたい。そんな作者の願望が込められたお話です。 しばらくは 月、木 更新でいこうと思います。 小説家になろうさんにもお邪魔しています。

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

私、異世界で監禁されました!?

星宮歌
恋愛
ただただ、苦しかった。 暴力をふるわれ、いじめられる毎日。それでも過ぎていく日常。けれど、ある日、いじめっ子グループに突き飛ばされ、トラックに轢かれたことで全てが変わる。 『ここ、どこ?』 声にならない声、見たこともない豪奢な部屋。混乱する私にもたらされるのは、幸せか、不幸せか。 今、全ての歯車が動き出す。 片翼シリーズ第一弾の作品です。 続編は『わたくし、異世界で婚約破棄されました!?』ですので、そちらもどうぞ! 溺愛は結構後半です。 なろうでも公開してます。

処理中です...