181 / 252
異世界崩壊編 前編
181話 割れる意見
しおりを挟む
SMOで言う一般的な「武器強化」とは素体となる武器本体に基礎能力を向上させる「鉱石」、各種ステータスを向上させる「宝石」。
火・氷・風・雷・光・闇の各種「属性石」を使用する事により限りなくオリジナル性能の装備品を作る事が出来るシステムだ。
宝石による強化は失敗する事は無いが武器によって付加個数がランダム限定される。
鉱石や属性石による基本性能を向上する強化は強化回数や高性能になるほど強化成功率が低下し失敗すると武器は消滅する。
課金をする事で確実に成功する事が出来るのだが、この世界に課金と言う概念が存在しないので失敗する可能性が有る。
皆の装備はリアル世界でゲームをしていた頃に限界近くまで課金強化された装備なので成功率は低いと思う。
希少鉱石はゲーム内で伝説系の武器を造る以外には使えない設定のはず。
そして当然だがゲームの様に強化前に成功率が表示される事も無い。
正直壊れる事が確定している様な物だ。
進んで自分の武器を強化する事を躊躇うのは当たり前だと思う。
武器名を決める話とは一転し皆が沈黙する。
各々何かを考えている様だった。
沈黙を破ったのは暗黒神ハーデスだった。
彼は立ち上がり自身の持つ長杖【カドゥケウス】を突き出し皆に宣言する。
「我が半身を委ねるが異論の有る者はおるか?」
その言葉に呼応する様に腕を組み考え込んでいた咲耶とサクラも立ち上がり反論する。
「ここに居ます!」
「居るでござる!」
ミカさんとDOSが驚いた表情で3人を眺める。
私も突然の発言に意表を着かれてキョトンとしてしまう。
言い出した暗黒神ハーデスも異論が出ると思って無かった様で少したじろいでいた。
「我の火力が上がる事で戦闘が優位に運べるのは明白だ。」
「私は・・・今のままでは攻撃も補助も中途半端で足手まといです。攻撃でも補助でも皆を守れる程の武器が欲しい!」
「拙者は前衛としてもっと火力が欲しいでござる。」
3人がそれぞれの主張を掲げ話し睨み合う中、ミカさんが冷静に3人を諫める。
そもそも成功率が全く想像が出来ない程の「賭け」だ。
成功した事を想定して3人は話しているがそれで良いのか?・・・と。
整理すると暗黒神ハーデスは単純に魔法攻撃力を上げたいと言う事。
でもそれは強化成功した場合で失敗すれば火力は大幅に減少するはず。
魔法職は物理職に比べ、プレイヤースキルによるテクニカルな動きよりも武器によるダメージ倍率依存が高いのだ。
ただこの世界では至近距離で発動する事によりダメージが倍増する魔法も有る様だけれど・・・
魔法攻撃力を上げて近接戦闘をしない立ち回りでパーティーを含めた生存率を上げたいと言う話だ。
「火力こそ正義だ!このギルド唯一の魔法職である我に託すのだ!」
咲耶は元戦士職でステータスカスタマイズの「力」を限界まで上げていた。
しかし、途中で転職し補助職になった経緯が有る。
腕力極振りの補助職と言うステータス的には中途半端な立ち位置で、一般的な魔力振り補助職に比べ補助魔法の効果・性能が低い。
かと言って【雷槌ミョルニル】を使った物理攻撃に関しても、職業補正の関係上回避重視にカスタマイズした私よりもダメージ総数値が低い。
補助用の杖【パナシア】を強化する事で補助魔法の性能強化、あるいはステータスを活かす為【雷槌ミョルニル】を強化し完全攻撃特化型になりたいと言う話だ。
選択は皆の意見に合わせると話す。
「攻撃だろうと回復だろうと完璧にこなして見せます!」
そして戦士職のサクラは先の戦いでメイン武器を破壊され、攻撃力だけは高い未強化の刀を使用している。
戦士職の戦いは総合力なので一概に武器攻撃力だけ上がれば良い物では無い。
武器の重さで敏捷性が下がり回避率が変化したり、攻撃回数が減れば総合ダメージも減る。
なにより未強化の刀を素材として使用するので、咲耶や暗黒神ハーデスよりは格段に強化成功率は高いと主張している。
後は武器カテゴリー「刀」は私と貸し借りが可能と言う。
仮に強化失敗して武器を失っても上手にやり取り出来れば戦力ダウンにはならないと語る。
「拙者は死亡率が1番高い。これ以上足手纏いにはなりたく無いでござる!」
結局3人共1歩も引かず、話し合いは平行線の様相を迎えていた。
普段なら言い争う事など無いのに状況が普段と違う為、なんともギスギスした雰囲気だ。
こう言う時どうしたら良いか分からず唯々傍観してしまう自分が居る。
「3人の言い分は分かった。このまま3人で意見を出し合っても決まらないだろう。・・・そこで私とミカエルとシノブに決定権を委ねてくれないか?そして決定事項に文句無しと言わない、後腐れや遺恨を残さないと言う条件でな。」
DOSが3人の仲裁に入り3人は渋々ながら意見に同意する。
このまま誰一人譲らなければ話は進まない。
その後、私達3人は別室で話し合う事になった。
ミカさんとDOSは成功した時の話より失敗した時のリスクが低い事を考えてかつ、成功率の高い事を加味してサクラの持つ未強化の激レア装備【童子切安綱】を使用する事を押した。
暗黒神ハーデスのメイン武器【カドゥケウス】、咲耶の主力武器【雷槌ミョルニル】補助用の短杖【パナシア】は強化失敗した時に戦力に大きく影響を与える。
しかし、サクラの持っていた【童子切安綱】は今まで使っていなかった上に未強化だ。
仮に失敗しても、ある程度強化されたサブウェポン【鐵斫】で代用が効く。
その為戦力ダウンするリスクは少ないと言う話だ。
「後、秘策を考えた。」
そして更に成功率を上げる為の作戦が有るとDOSが語る。
その方法は1度サクラの【童子切安綱】を私に譲渡して、私の装備武器として強化を依頼すると言う方法を取ると語った。
破壊神アザドゥの話の中に出て来た私の中に有る「超能力」と呼ばれるモノを意識的に利用してみると言う作戦だ。
「引き寄せの法則」に近い物で、私の無意識化で事象に干渉する能力が本当に有るとすれば「必ず成功する」と強く願う事で強化成功率が上がる可能性が有ると言うのだ。
「それって神頼み的なヤツ?」
「言い得て妙だな、まぁそのような物だ。」
「いえ、悪く無いかも知れません。刀ならシノブも装備出来ますからね、事象干渉能力が有るとするシノブの武器として強化すれば或いは成功するかも知れません。」
元々ゲーム設定として考えても課金しない場合の激レア武器の強化成功率は30パーセント程度のはずだ。
しかも今回の強化素材は本来使う事の出来ない希少鉱石なのだから、成功率10パーセント以下と言われても納得してしまう。
失敗しても誰も責めたりしないから試してみようと言う話だ。
その後先程の話をミカさんが3人に伝えると、それで良いと咲耶と暗黒神ハーデスも自身の意見を飲み込んだ。
ジルナークは深い眠りに付いている様なので私達はお弟子さんに明日再度訪れる事を話し近くで宿を取る事になった。
火・氷・風・雷・光・闇の各種「属性石」を使用する事により限りなくオリジナル性能の装備品を作る事が出来るシステムだ。
宝石による強化は失敗する事は無いが武器によって付加個数がランダム限定される。
鉱石や属性石による基本性能を向上する強化は強化回数や高性能になるほど強化成功率が低下し失敗すると武器は消滅する。
課金をする事で確実に成功する事が出来るのだが、この世界に課金と言う概念が存在しないので失敗する可能性が有る。
皆の装備はリアル世界でゲームをしていた頃に限界近くまで課金強化された装備なので成功率は低いと思う。
希少鉱石はゲーム内で伝説系の武器を造る以外には使えない設定のはず。
そして当然だがゲームの様に強化前に成功率が表示される事も無い。
正直壊れる事が確定している様な物だ。
進んで自分の武器を強化する事を躊躇うのは当たり前だと思う。
武器名を決める話とは一転し皆が沈黙する。
各々何かを考えている様だった。
沈黙を破ったのは暗黒神ハーデスだった。
彼は立ち上がり自身の持つ長杖【カドゥケウス】を突き出し皆に宣言する。
「我が半身を委ねるが異論の有る者はおるか?」
その言葉に呼応する様に腕を組み考え込んでいた咲耶とサクラも立ち上がり反論する。
「ここに居ます!」
「居るでござる!」
ミカさんとDOSが驚いた表情で3人を眺める。
私も突然の発言に意表を着かれてキョトンとしてしまう。
言い出した暗黒神ハーデスも異論が出ると思って無かった様で少したじろいでいた。
「我の火力が上がる事で戦闘が優位に運べるのは明白だ。」
「私は・・・今のままでは攻撃も補助も中途半端で足手まといです。攻撃でも補助でも皆を守れる程の武器が欲しい!」
「拙者は前衛としてもっと火力が欲しいでござる。」
3人がそれぞれの主張を掲げ話し睨み合う中、ミカさんが冷静に3人を諫める。
そもそも成功率が全く想像が出来ない程の「賭け」だ。
成功した事を想定して3人は話しているがそれで良いのか?・・・と。
整理すると暗黒神ハーデスは単純に魔法攻撃力を上げたいと言う事。
でもそれは強化成功した場合で失敗すれば火力は大幅に減少するはず。
魔法職は物理職に比べ、プレイヤースキルによるテクニカルな動きよりも武器によるダメージ倍率依存が高いのだ。
ただこの世界では至近距離で発動する事によりダメージが倍増する魔法も有る様だけれど・・・
魔法攻撃力を上げて近接戦闘をしない立ち回りでパーティーを含めた生存率を上げたいと言う話だ。
「火力こそ正義だ!このギルド唯一の魔法職である我に託すのだ!」
咲耶は元戦士職でステータスカスタマイズの「力」を限界まで上げていた。
しかし、途中で転職し補助職になった経緯が有る。
腕力極振りの補助職と言うステータス的には中途半端な立ち位置で、一般的な魔力振り補助職に比べ補助魔法の効果・性能が低い。
かと言って【雷槌ミョルニル】を使った物理攻撃に関しても、職業補正の関係上回避重視にカスタマイズした私よりもダメージ総数値が低い。
補助用の杖【パナシア】を強化する事で補助魔法の性能強化、あるいはステータスを活かす為【雷槌ミョルニル】を強化し完全攻撃特化型になりたいと言う話だ。
選択は皆の意見に合わせると話す。
「攻撃だろうと回復だろうと完璧にこなして見せます!」
そして戦士職のサクラは先の戦いでメイン武器を破壊され、攻撃力だけは高い未強化の刀を使用している。
戦士職の戦いは総合力なので一概に武器攻撃力だけ上がれば良い物では無い。
武器の重さで敏捷性が下がり回避率が変化したり、攻撃回数が減れば総合ダメージも減る。
なにより未強化の刀を素材として使用するので、咲耶や暗黒神ハーデスよりは格段に強化成功率は高いと主張している。
後は武器カテゴリー「刀」は私と貸し借りが可能と言う。
仮に強化失敗して武器を失っても上手にやり取り出来れば戦力ダウンにはならないと語る。
「拙者は死亡率が1番高い。これ以上足手纏いにはなりたく無いでござる!」
結局3人共1歩も引かず、話し合いは平行線の様相を迎えていた。
普段なら言い争う事など無いのに状況が普段と違う為、なんともギスギスした雰囲気だ。
こう言う時どうしたら良いか分からず唯々傍観してしまう自分が居る。
「3人の言い分は分かった。このまま3人で意見を出し合っても決まらないだろう。・・・そこで私とミカエルとシノブに決定権を委ねてくれないか?そして決定事項に文句無しと言わない、後腐れや遺恨を残さないと言う条件でな。」
DOSが3人の仲裁に入り3人は渋々ながら意見に同意する。
このまま誰一人譲らなければ話は進まない。
その後、私達3人は別室で話し合う事になった。
ミカさんとDOSは成功した時の話より失敗した時のリスクが低い事を考えてかつ、成功率の高い事を加味してサクラの持つ未強化の激レア装備【童子切安綱】を使用する事を押した。
暗黒神ハーデスのメイン武器【カドゥケウス】、咲耶の主力武器【雷槌ミョルニル】補助用の短杖【パナシア】は強化失敗した時に戦力に大きく影響を与える。
しかし、サクラの持っていた【童子切安綱】は今まで使っていなかった上に未強化だ。
仮に失敗しても、ある程度強化されたサブウェポン【鐵斫】で代用が効く。
その為戦力ダウンするリスクは少ないと言う話だ。
「後、秘策を考えた。」
そして更に成功率を上げる為の作戦が有るとDOSが語る。
その方法は1度サクラの【童子切安綱】を私に譲渡して、私の装備武器として強化を依頼すると言う方法を取ると語った。
破壊神アザドゥの話の中に出て来た私の中に有る「超能力」と呼ばれるモノを意識的に利用してみると言う作戦だ。
「引き寄せの法則」に近い物で、私の無意識化で事象に干渉する能力が本当に有るとすれば「必ず成功する」と強く願う事で強化成功率が上がる可能性が有ると言うのだ。
「それって神頼み的なヤツ?」
「言い得て妙だな、まぁそのような物だ。」
「いえ、悪く無いかも知れません。刀ならシノブも装備出来ますからね、事象干渉能力が有るとするシノブの武器として強化すれば或いは成功するかも知れません。」
元々ゲーム設定として考えても課金しない場合の激レア武器の強化成功率は30パーセント程度のはずだ。
しかも今回の強化素材は本来使う事の出来ない希少鉱石なのだから、成功率10パーセント以下と言われても納得してしまう。
失敗しても誰も責めたりしないから試してみようと言う話だ。
その後先程の話をミカさんが3人に伝えると、それで良いと咲耶と暗黒神ハーデスも自身の意見を飲み込んだ。
ジルナークは深い眠りに付いている様なので私達はお弟子さんに明日再度訪れる事を話し近くで宿を取る事になった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
77
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる