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異世界崩壊編 前編

178話 山岳地帯の戦い

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オスロウ国とハイメス国の国境を隔てる山岳地帯には転送装置が存在しない為、距離的に馬を使い急いだとしても約1日を掛けての捜索となる。

山脈に入りさえすれば【索敵】を使用する事で簡単に発見出来る。
レッドドラゴンの反応は大きいはずだ。

「また馬か・・・」

私はこの世界に来て初めて生物に乗ったがどうも体質に合わない。
身体能力が向上しているおかげで乗り降りは非常に楽だ。

リアルの身体能力では鐙が有っても補助して貰わないと高すぎて乗れない可能性が有る。

「よい!皆準備は良いな!出発するぞ!」

準備を終えた私達はすぐさま数人の兵士と共に馬を借りて山岳地帯へと向かった。
時間的に午後過ぎ夕方になる頃には山岳地帯の入口に到着する。

空の色が変わらない為、実際に昼夜は分からない。

目標となる地点は最短距離で向かうには馬では超える事の出来ない急勾配な斜面を通る必要が有る。

「ありがとう。ここからは徒歩で行く、皆さんは下山して下さい。」

クリス君が同行していた兵士に指示を出す。
ここで馬と馬の回収する役目を負った兵士別れる。

いつもながら腰と尻が痛い、私の乗り方が悪いのだろうか?
ティオニムの時も感じたが、もう生物には乗りたくない。




「クリス、この剣を装備出来るか?」

ミカさんがアイテムストレージから青く輝く光の粒子を纏った大剣を取り出した。

私は詳しくはないけれどクリス君の装備している【ドラグスレイヤー】の上位互換武器だったと思う。

SMOのデータを知り尽くしている暗黒神ハーデスハーちゃんに聞いたらあっさりと答えてくれる。

両手剣【神龍殺し】。

両手剣の中では上の下程度の強さだが、対ドラゴン戦に限定すれば上位武器の攻撃力を有する武器らしい。
特殊能力として火炎耐性も向上するらしい。

「これは凄い・・・貸して頂けるのですか?」

「差し上げます。是非活用してください。」

ミカさんはレア装備の両手剣を多数所持している、その中の1本なのだろう。
私とサクラの装備は刀と小太刀に限定されるし、DOSどっちゃんは銃系統と軽い小型ナイフ限定。

咲耶は聖職者限定のメイスや短杖・短剣系のみ。
【雷槌ミョルニル】は見た目は巨大なハンマーだがメイスのカテゴリー分類となる為、腕力極振りの咲耶なら装備出来る特殊な武器だ。

要は両手剣を装備出来る人間が「深紅の薔薇」に存在しない。
そこそこ強力な両手剣を持っていても貸し出す事が出来なかったのでほんの少し嬉しそうだった。

「シノブ、【索敵】をしてくれるか。」

DOSどっちゃんの指示で【索敵】を使用した私は少し驚く。

此処から10キロメートル程山頂に進んだ場所に巨大な敵勢反応が1つ。
それを取り囲む様に大型の敵勢反応が複数ヒットする。

周囲の敵勢反応が現在進行形で増え続けている。
恐らくブラックドラゴン同様に眷属召喚を行っているのだろう。

皆にその事を伝え、私とサクラが先行部隊として【縮地】を使用し目印を残しながら戦闘エリアへと向かう。

山岳地帯の森の開けた場所に中型サイズの中型のドラゴンが空中を舞い。
地上にも30体程度の大型ドラゴン待機していた。

その集団の中央に以前洞窟内で出会った巨大なレッドドラゴンが眠る様に横立っていた。

草むらに身を隠して息を潜めていた私達の方を向き、その黄金色の瞳をゆっくりと開き此方を見据える。

『いつぞやの小娘共か我を倒しに来たか?』

「コイツ脳内に直接!」

「いや、そう言うのいいから。以前私も同じ事思ったよ。」

サクラのにボケ対して即ツッコミを入れるとサクラは満足そうな顔をして親指を立てる。

幾多の強力なレイドボスを倒して経験を積んだ事により、初期レイドボスと言う位置付けのレッドドラゴンの事を余裕だと感じているのか少し油断している様に見える。

でもそれは間違いだ。
以前出会った時は5メートル程の全長だったが一回り大きくなっている。

そしてブラックドラゴンよりも敵勢反応として大きい。
正確な数値は分からないけど周囲の中型ドラゴンもブラックドラゴン召喚したの眷属より強いと思われる。

しかし、幾多のレイドボスを倒して来た私は以前の様に気押されたりはしない。
精神的な成長を少し感じる。

『眷属よ、相手をしてやれ。ただし忍者の娘は殺すな。』

気怠そうに地面に寝そべりながら、脳内に響く声で眷属に指示を出す。
4メートル位の大型・中型ドラゴンが一斉に立ち上がり、此方に敵意を向ける。

もはや隠れていても無駄なので開けた場所に姿を出す。

眷属の反応は空と地上合わせてざっと30~40体程度、私達が到着してからは召喚が止まった様子だ。

取り敢えず私達2人はレッドドラゴンと眷属をこの場所に留まらせる事が出来れば良い。
ばらけて周囲の街や村を襲い始める事が1番厄介だ。

「ミカさん達が到着するまでにどちらが多く眷属を倒せるか競争するでござるか?」

「サクラ油断しないで。あの眷属は恐らく強いよ。2人で各個撃破で行こう。」

互いに頷き各個撃破をする為に密集した陣形で戦う。
強いとはいえ倒すのに時間が掛かる程度で倒せない強さでは無い。

乱戦にならない様に間合いを調整しながら、サクラは飛行不能にする為に片翼を部位破壊する。

私は暗殺特殊技能アサシンスキルを使い弱点の首筋だけを狙い攻撃する作戦だ。
レイドボス以外なら確率は下がるが即死攻撃は有効となる。

眷属を20体程度を倒した所でミカさん達が戦闘エリア内に到着した。
それと同時に魔人ヴルドゥが起き上がり山脈全体に響く様な咆哮を上げる。

その時、魔人ヴルドゥの背中から妖精種エルフの女性を模したような姿の触手らしきも物が4本生え、此方を見てあざ笑う。

やはりゲームとは違う独自の進化をしているとしか思えない。

「なんだあの背中の物体は?」

レッドドラゴンの新しい形態を目視して暗黒神ハーデスハーちゃんが驚く。

皆も一様に似た様な反応を示す。
ゲームではあの様な背中の物体は存在しない。

・・・何をして来るか予想が付かない。

「遅れてすまない、2人共大丈夫か?咲耶、2人の回復を頼む。」

「分かりました。優先攻撃順位ヘイト管理をお願いします。」

DOSドス、ハーデス、クリス!私達はレッドドラゴンを引き付けるぞ!蘇生は出来ない上に攻撃方法が不明だ、回避を最優先にして深追いはするな!」

「了解だ。」「蜥蜴如き我一人で十分だ。」
「分かりました。」

私とサクラは咲耶の回復を受け、再度残りの眷属討伐へ参戦する。
ミカさん達は魔人ヴルドゥと対峙し互いの間合いを伺う様に睨み合って居る。

レッドドラゴンが再度巨大な咆哮を上げ全員が武器を構える。

そしてそれが開戦の合図となった。
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