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異世界崩壊編 前編

177話 男性がギルドに加わった

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-アルテナ草原中央-

翌日の朝、転送装置を利用してアルテナ草原の端に移動し、ゲーム最序盤の街アルテナに到着した。
遠目から見る街の防壁は完全に破壊されている様子だった。

アルテナの中央都市はこの世界に来たばかりの面影は無く、施設や建物は半壊滅状態で人々の姿は見当たらず建物内がモンスターの住処の様な状態になっていた。

襲い掛かって来る強化モンスターを倒しながら街を1周したが、襲撃の犠牲となった死者の躯が多数建物の瓦礫に埋もれていた。

【ヒルドルの盾】が有れば蘇生出来たかも知れない、でも腐敗が始まっている所を見ると24時間以上が経過している可能性も有る。
24時間経過すると【ヒルドルの盾】や【アナスタシン】を使用しても蘇生する事は出来ない。

・・・助けられないのは時間経過したから、そう言う風に考えてしまうのは自分のせいで【ヒルドルの盾】を壊してしまったと言う罪の意識から来るのだろうか。

世界放送ワールドチャットから約2日間でこの有様とは。」

「見た所死者数が少ないので、どこかの街へ避難した可能性が有りますね。」

私自身この街で知り合いになった人間は少ない。
犯罪者と言うレッテルを張られ【黒猫スーツ】を着て過ごしていたからだ。
黒猫として過ごして来たので一方的に私が知っているだけで、私の姿を知っているのは少年探偵団の女の子ミア位だ。

当然彼女らの姿は見かけなかった。

「少年探偵団の子達が気になるでござるか?」

「うん、無事なら良いけど。」

DOSどっちゃんと咲耶も此処で知り合った人々を心配している様子だった。
彼等は私とサクラがここに来る2週間前に到着し、労働組合ギルドで数々の依頼を達成し英雄となっていた。

そのぶん知り合った人々も多かった事だろう。
私達は重い気持ちのままアルテナ草原の転送装置へ戻り、そしてオスロウ国へ移動した。




-オスロウ国 オスロウの街入口-

オスロウ国は先の戦争後に国防を強化していたので、都市内部は無事の様だった。
オスロウ国の転送装置は都市入口に設置して有り、転送終了直後にオスロウ国の衛兵に囲まれる。

今まで使用された事の無い謎の装置から突然現れた人物に対して警戒するのは当然だろう。
取り敢えず無抵抗を示す為に両手を上げて、衛兵長のセアスさんを呼んで貰う様に話してみた。

私達は衛兵の詰所に通されて休憩をする。
衛兵の中には武闘大会優勝者のサクラを知っている者が居た為拘束される事は無かった。
暫くの後、衛兵の詰所に急いで駆け着けた様子の衛兵長セアスが息を切らせて到着した。

「ハァハァ・・・サクラさん!シノブさんも来てくれたのですね!そちらはハイメス軍の・・・」

「セアス殿、久しぶりでござるな。街は無事そうでなによりでござる。」
「お久しぶりです、セアス衛兵長。」

サクラの声を聞いたセアスは一瞬驚いた表情をした。
そうか、女性の声のサクラは初めて会うからか。
呪いで男性の声になっていると言う設定のままの認識だった。

「サクラ様、呪いが解けたのですか?」

「ん?ああ、そうでござるよ。」

サクラはしれっと嘘を付く。

気のせいかも知れないがセアスが少し照れている様な気がする。
以前お世話になった衛兵長セアスに説明をお願いし、現在の街周辺の状況を確認する。

約2日前の世界放送ワールドチャット直後、近くの小さな村がレッドドラゴン「ヴルドゥ」の眷属の襲撃に合い壊滅。

昨日この都市にも姿を現したヴルドゥの眷属はシグ率いる聖騎士とラウル率いる王国魔法長とクリス君率いる元近衛兵団と冒険者連合で迎撃し、多数の死者は出たものの撤退させたらしい。

軍事力と言う点では機械都市ギュノス国に次ぐ防衛力を持つオスロウ国はモンスター襲撃の被害は少ない。

ヴルドゥの眷属の襲撃を抑え込むとは流石だと思った。
主にクリス君が凄いのだろう、元気にしていただろうか。

新しい城はまだ建設中で、王族の中から国王の選出する事で揉めている様で未だ国王不在らしい。
行方不明となっていたダンネル大臣は貴族の大戦時に他派閥貴族の差し金でテロ組織に拉致されていたらしく、ギュノス国の温泉施設で起きたテロ組織のイザコザで捕まった連中の中に居た大手化粧品メーカー「KAORU」のCEOが所有する地下監禁施設で発見されたらしい。

現在は大臣ダンネルを中心とした貴族達が国家運営の舵を取っているらしい。
その為、近衛兵団は現在解体され上位兵士長として働いて居るとの話だ。

ヴルドゥはオスロウ国とハイメス国を別けている山岳地帯を根城にしているらしく、周辺地域に眷属の中型ドラゴンを放っていると報告が有ったらしい。
ハイメス国は強力な魔法結界の開発に成功したらしく眷属のドラゴンやフィールドの強化モンスター等の侵入は完全に防いでいる様だ。

衛兵長セアスと話をしていると、私達の話を聞き付けたクリス君とシグが詰所に現れた。

「お久しぶりですね。サクラさん、シノブさん。」

「サクラ様!お会いしたかった!ああ・・・いつもながら美しく可憐だ!んんっ!?シノブ様にハイメス国のDOSドスさんと咲耶さんも!」

「・・・相変わらず騒がしいヤツでござるな。」

「!?サクラ様!声が戻られたのですか!?呪いが解けたのですね!ああ!なんて事だ・・・声までも美しいなんて!どれだけ貴女は罪を重ねるのですか!!」

嬉しさの余り飛び跳ねんばかりのテンションで騒いでいる。
サクラを餌にしてシグを別室に移し、クリス君を交えて会議の様な形で話をする事となった。
クリス君は国王不在の現在近衛兵の任を解かれていると話す。

昨日山岳地帯より襲来したヴルドゥの眷属は中型のレッドドラゴンが複数体だった様で、16体討伐した所で撤退して行ったとの話だ。
ゲームで言う所の制限時間が経過したのだろうか?

襲来と撤退した方角と斥候に出たスカウトの情報を集積し、ドラゴンの塒のおおよその位置は把握していると話していた。
私達は地図を広げ、その場所を確認する。

特定された場所が正しければここから徒歩で2日、馬なら1日位だろうか?
近くまで着けば私の【索敵】で性格な位置が分かるはずだ。

「すぐに向かいましょう!」

ミカさんの決断は素早い。

蘇生手段が無くなった事により、これ以上死傷者を増やさないと言う強い意思も伺える。
当然皆も同意する、ここで待機していてもヴルドゥが襲来するとは限らない。
防衛自体は強固そうなので仮に眷属が再度襲来しても大丈夫だろう。

「私も皆さんのパーティーに加えて頂けませんか?」

クリス君が突然仲間に加えてくれと頼んで来る。
彼は現在王国にて役職が有る訳では無いので私達のパーティーに入れて欲しいと自ら志願して来たのだ。

「皆さんは神を自称する不届き者を討伐に向かうのですよね?私もその大義の手伝いをしたいです。私は皆様の様に卓越した能力は持ち合わせて無いかも知れません。しかし、ある程度の戦士職を収め、私の体力と特殊技能スキルを使用すれば囮位にはなれます。」

クリス君の表情から強い意思を感じる。

しかしNPC設定の彼は転送装置を使用出来無いのでは無いだろうか?ゲーム同様にパーティーに入ったらいける設定なのだろうか?

私達は特に断る理由は無い。
しかしこの世界の真実を話しても外の世界から来た我々の話を理解できるだろうか?皆が少し困った様に互いに顔を見合う。

その時ミカさんが口を開いた。

「良いでしょう。我々と一緒に戦って頂けますか?良いですね皆さん。」

ミカさんは立ち上がり、クリス君に向かって手を差し伸べる。
彼はミカさんの手を取り硬く握手を結ぶ。

その時皆の脳内にシステムコール的な音声が聞こえ、クリス君はギルド「深紅の薔薇」のメンバーとして向かい入れられた。
ギルド規約から「女性限定」と言う縛りが無くなったので問題無いか。

その後シグも頻りに「私も是非に!」と志願してきたが部屋で待機していた衛兵と聖騎士隊に止められて、泣く泣く断念していた。

そりゃ都市防衛の要の聖騎士団の長が国防を放棄する事は誰も許さないだろう。
結局オスロウ国の防衛は今のまま聖騎士団を中心に継続して貰い、私達が今より山岳地帯の目標地点を目指しレッドドラゴン討伐に向かう事となった。

セアスとその他の兵士の方々に席を外して貰い、新しく「深紅の薔薇」のメンバーに加わったクリス君に私が得た現在の状態と世界の真実とその行く末を包み隠さず全て伝えた。
当然半信半疑と言った表情で数々の質問をする。

私や皆が知る限りの情報から質問の答えを返した。
当然信じる事なんて出来ないだろう、私だって信じれないんだから。

最終的に魔人ヨグトスを倒した時に、私の知らない超能力と切り離されたこの世界は消滅すると思う。
魔人ヨグトスを倒さなくても、この世界はエネルギーに変換されて消えてしまう。
その事も説明したが、彼はどのみち自分が消える事を知って尚戦う決意を表明した。

現在ハイメス国に連絡を取り、ハイメス国からもレッドドラゴン討伐隊を派遣する準備を行っているらしい。

数時間に及ぶ話し合いの中で、私達は今この時より中央の山脈地帯を目指す事にした。
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