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異世界崩壊編 前編

166話 同時多発レイドクエスト開始

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-ホウシェン国-

真っ赤に染まった空の下、先程のワールドチャットによる全世界破壊告知に対して世界各地で動揺が広がっていた。
そして全てのモンスターが凶暴化と身体強化され、都市防衛戦が始まっていた。

暗黒神ザナファが復活した時よりも絶望的な状況だ。
暗黒神ハーデスハーちゃんが言うには各地でレイドクエストが起きているんじゃないかと話していた。

「世界中巻き込んでレイドクエストが同時発生してるって事!?」

「ドラゴン、マザーブレイン、未実装魔人、アルラトが暴れ出し。ラスボス的存在がアビスダンジョン40階層のヨグトスと言う感じか。」

「その様だな・・・全部我が創造した者達だな。フフフ・・・」

「フフフじゃねーよ!何を勝ち誇っているでござるか!もはやゲームプログラムの枠を超えて完全に混沌カオスな世界になり始めているでござるよ!」

「アルラトは転送装置が使えると言っていましたね。要するに全部倒せばOKとアルラトなりに遠回しに教えてくれているって事で合っていますか?ミカエル。」

「そうですね、何らかの事情でアルラトは逆らう事が出来無い。しかし深紅の薔薇を脱退したと言うシステムメッセージを受け取って無い以上、裏切ったと断定は出来ませんね。」

そうか!
私は単純にアルラトがスパイをしていたと思ってしまったけれど、何か事情が合って逆らえない状況になっているとミカさんと咲耶は考えているのか。

思い返して見ればアルラトらしく無い位に説明的で長い台詞を喋っていた。
わざわざ転送装置が使えるなんて言う必要無いし、今なら「足掻いて欲しい」と言っていた様にも聞こえる。

「そうか、そうだよね。アルラトはそんなじゃ無いよね・・・助けられるのかな。」

「助けられるか・・・じゃないですよね?仲間を助けましょう!」

ミカさんが優しく微笑む。
後ろから「私達もです。」とDOSどっちゃん達が名乗りを挙げる。

友達や仲間って凄く暖かいものだなと改めて実感する。
そうだアルラトだって仲間だ。

私は彼女を信じる。




その後私達はこの国に存在する2ヶ所の転送装置を調べる。
私達元プレイヤーが触れると、装置の装飾が輝き起動出来る様になっている様だった。

「本当に起動が出来ましたね。」

「今回は誰でも使えそうでござるな。」

以前暗黒神ザナファの発生を促すオベリスクに触れる行為は、私だけにしか反応しなかった。
しかし2回目以降は咲耶やサクラが触れても問題無く起動出来た。

咲耶が試しにホウシェン国の中に在る別の転送装置へ転移し、直ぐに戻って来た。
ゲームの様にウィンドウが出たりする事は無く、宝玉の様な部分に触れて移動したいエリアを思い浮かべるだけで良いらしい。

ただしゲームと同じく1度訪れた場所で、転送装置の設置して有る場所限定の様だ。

ちなみに天帝やシロウと言ったこの世界で暮らす人々には起動出来無かった。

プレイヤーとNPCの見えない垣根と言う事だろうか?

しかしアルラトが使用出来た所を考えると、ずいぶんと都合の良い設定に思える。
そこには何者かの意思を感じるとミカさんが言っていた。

天帝の指示でホウシェン国は街の防衛準備と近隣の小さな村々への侍部隊の派遣体制を強化始めた。
私達は城の中の部屋を借り作戦会議を始めていた。

「創世教」の一件は未解決なままだが、それ以上の状況が世界中で起きていると予想される現状ではこの場所に留まってはいられない。

「そう言えば、南極のレイドボスはどうするんだ?」

最後に実装されたレイドクエストは移動手段が無く頓挫したままだ。

「発生しているかどうかも分からんし移動手段が無いからな。倒して無いレイドボスを優先すべきだろうな。」

「ハーデス・・・やはり嬉しそうな表情でござるな。」

暗黒神ハーデスハーちゃんは現状のイレギュラーな状況に対して好奇心を隠しきれてないと言った感じがまざまざと態度と言葉に現れていた。

「創造主に逆らい世界を破壊すると言う事柄が厨二病心を萌え・・いや、燃え上がらせたんでしょうね。」

「歪んだ性癖みたいなモノですか。」

「アルラトの薄い本好きのミカエルには言われたくないな。」

少し揉め始めそうだったが、結論として本来ストーリーモードで倒すべき順番でボス討伐を行う事になった。

具体的にはアルテナ湖の地下洞窟に住むレッドドラゴン「ヴルドゥ」。

そして友好的だったマザーブレイン「クトゥル」、【イエローダイヤモンド】に封印されていた未実装の魔人「ハスタ」とアビスダンジョン40階層のフロアボス魔人「ヨグトス」。

「アルラトは創世教徒の様に操られている可能性が有る。しかしそれは、多分完全な洗脳では無い可能性が高い。」

「まだ救えるかも知れないんだよね!」

憶測でしかない。しかし、可能性がゼロでないのであれば彼女を救いたい。

その後ミカさんが天帝と話を付け、この国に有る2ヶ所の転送装置の守護を頼む。
転送装置が破壊される事は無いと思うが一応お願いしたらしい。

アルラトはこう言った「転送装置は使える様になってる」と、今まで使う事の出来なかった転送装置が何者かの意思によって使用可能になったんだ。

モンスターのアルラトにも使えて街の住民には使えない。

そして選別したかの様に私達だけが使用出来る様になった。

この世界のシステムに介入している何かが存在している。
私達の新しいしるべも、その者のてのひらの上と言う訳だ。

「任せておけい!強化された我が軍が必ずや死守して見せよう!」

天帝はこの自体を楽しんでいるかと思ったが、割と深刻に受け止めている様だ。
国のトップらしい立ち振る舞いで事態の収拾に対して指示を行っていた。

短期間ではあったけど侍部隊と忍衆は能力が向上し戦力的には高くなった事でホウシェン国の軍事的に余裕は出来たのは良かった。

「お頭!頑張ってください!」「「シノブ師匠!御恩は一生忘れません!」
「シノブちゃん!また来いよ!」「頭領!ご武運を!」
姉者あねじゃ~!」「ボス!この国は我々にお任せを!」
「先生!いってらっしゃい!!」

「拙者の弟子達は見送り無しでござる。」

「侍部隊は街の防衛忙しいから仕方が無いよ。」

「忍衆も同じだと思いますけど、防衛ガン無視して来てるみたいですよ。」

「それだけシノブが慕われていたのだろう。」

DOSドス、何だか自分の事の様に嬉しそうですね。」

「貴様等、無駄話している暇は無いぞ。世界終末時計ドゥームズデイ・クロックは常に動いているのだからな!」

私達は是非ホウシェン国に居て欲しいとお願いをされたが、申し出を丁寧にお断りした。
また必ず訪れますと言うと納得してくれた。

そして私達は天帝と将軍達に改めて挨拶を終わらせ、転送装置を使用しこのゲームの始まりの場所「アルテナ草原」に向かった。
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