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百鬼夜行編
156話 未実装アイテム
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-ホウシェン城 大広間-
ホウシェン国防衛作戦の決定から約6時間が経過し太陽が傾き始めた頃、玄武神社からホウシェン城を通過し白虎神社までの直線上に住む住民の避難を完了したと使いの忍衆からシロウの元に報告が入る。
百鬼夜行が起こり街が破壊されても住民自体への被害を減らす為の対策だ。
ジョクシュウ将軍以外の3将軍達と近衛侍部隊が玄武神社に集結し防衛に回る。
3将軍は玄武神社を完全防衛して百鬼夜行自体を起こさないと豪語していた。
ジョクシュウ将軍は自軍を率いて南西の白虎神社跡に待機している。
百鬼夜行の到達地点が裏鬼門と仮定するなら妖の集団が出現する可能性が有るからだ。
各軍の精鋭部隊を街の随所に配置し、百鬼夜行から逸れた妖を討伐する。
街全体には総勢3万名の武士、陰陽師、忍者、労働組合で依頼を受けた冒険者等が点在し配置されている。
大陸全土と街の人口を合わせると約2億名、大陸の隅の集落などは被害に遭わないかも知れないが街全体でもかなりの広さだ。
私達は今まで幾多のイベントフラグを肌で感じて来た。
このレイドクエストは必ず起こると確信めいた感覚が有った。
私もいい加減に【黒猫スーツ】を脱ぎ、【神衣カヴァーチャ】に着替える。
その姿を見た天帝と近衛侍達が大層驚いていた。
極少数は妖の妖術的な感じで勘違いしている人が居た様だ。
・・・・もう好きにしてくれ。
天帝は少数の近衛侍とアルラトが警備する形で天守閣本丸にて待機。
待機・・・と言えるかどうかは微妙だ。
天帝本人は戦いたいと暴れていたので鎖で拘束され厳重に警備される事となった。
シロウを隊長にした近衛侍、忍衆は城の周囲に配置。
暗黒神ハーデスが険しい顔で夕闇が広がり始めている空を眺めている。
この彼の表情は大抵何かを考えている時の表情だ。
厨二病ロールをして無い時の彼はたまにプログラマー的な側面からこの世界の考察をしている。
そんな時に良く見る表情だ。
「暗黒神ハーデス、どうしたの、何か心配事でも有るの?」
「このレイドクエストの目的はこの城防衛だ。」
「うん、そうだね。」
「おかしいとは思わんか?百鬼夜行のモンスターの最終目的はこの城の破壊だ。何の為に?ゲームでは詳しい内容やストーリーは語られていなかった。妖の封印が解けてホウシェン城を破壊するので防衛せよとだけだ。しかしこの世界はどうだ?宗教やら亜人種やら複雑化した理由付けがなされているでは無いか。」
「うん、私も少し感じてた。この城を破壊しないといけない理由が在るって事?」
「ああ、サクラ経由で天帝に問うと・・妖気を発する鉱石がこの城の天守閣に祭って有るそうだ。我はそのアイテムに覚えが有る。しかしソレは未実装だったはずだがな。」
200年前の大火の跡焼け跡から街を再建している途中に発見された妖気を放つ鉱石で、その美しさから人々を魅了し争いを生むと言う話で時の陰陽師により封印され現在は城の頂上「天守閣」に祭られているらしい。
「我はそのアイテムの初期プログラムをした覚えが有る。」
「え?そうなの?どんなアイテム?」
暗黒神ハーデス言うには初期洞窟のレッドドラゴン「ヴルトゥ」、アビスダンジョンの階層ボスのトゥグ、アルラト、ニグラス、ヨグトスと100階層のレイドボス破壊神アザドゥの設定と共に「ハスタ」と言う【イエローダイアモンド】に封印された魔人が存在したらしい。
初期プロットでイベントアイテムとしてプログラムし存在したが、その後ゲームに出て来る事は無く没になったんじゃないかと思っていたらしい。
レッドドラゴンって「ヴルドゥ」って名前だったのか初めて知った。
暗黒神ハーデスが言うに当時のプロデューサーの趣味でクトゥルフ神話の神々がモチーフになっているらしいと話していた。
詳しくは知らないが北欧神話とかごちゃまぜだと失笑していた。
その後イロイロ話をしているとシロウの元に新しい情報が入る。
現在玄武神社にて所属不明の魔法士軍団と亜人種の集団が現れ、将軍率いる侍部隊と大規模交戦中の様だ。
問題は、その亜人種集団の様子が普通では無いらしい。
何者かに操られている様な感じで眼や表情が狂気に満ちリミッターが外れた様な強さらしい。
どの程度の規模の戦闘が起きているか分からないが陥落するのは時間の問題なんじゃないかとの見解らしい。
「あれは!皆!街が!?」
咲耶が叫ぶと同時に街を指す。
ホウシェン城は街よりも高い山の頂上に建てられているので街は360度一望出来る。
広い中庭から街の方を見ると、街の至る所から火の手と煙が上がっているのが見える。
裏鬼門に当たる白虎神社からの報告が入り街の各所で暴動が起きているらしい。
「シロウさん、この場所は私達が死守します。各所に暴動鎮圧部隊を送って下さい、百鬼夜行が始まる前に街の被害が各大します。」
「しかし・・・いえ、分かりました。各方面に1000人部隊を派遣する様にします。結果としてこの城の守りがかなり手薄になってしまうのですが。」
シロウは不安そうな表情を浮かべる。
現在ホウシェン城には約4500人の侍、陰陽師、忍衆が待機してるらしい。
その内4000名を街の暴動鎮圧に回して貰う。
「シロウ殿、この場所は我々に任せるでござる。拙者の仲間には大天使、姿無き魔槍、爆雷の女神、暗黒神、救世主、黒の女神。そして拙者が居るでござるからな!」
「わ、分かりました。サクラ殿がそう言うのであれば信じましょう。すぐに手配をします。」
シロウは部下に指示を出し自らも忍衆頭目の元に走って行った。
「鮮血の桜舞う呪い姫ってのは言わないんだねぇ・・・」
「・・・・・長くて気に食わんでござる。」
「ミカエル、空が!」
DOSの声が聞こえ皆が空を見上げる。
夏季で日が落ち切っていない赤と薄い黒のグラデーション掛かった夜空に暗雲が立ち込め始める。
そして遠くの空から雷鳴が聞こえ始める。
ゲームで見たレイドイベントのフィールド状況に変わって行く、城の周囲から紫色の霧の様な物が周囲を包み始める。
・・・北東の玄武神社が陥落したのだろう。
「来るぞ!皆は配置に付き待機。咲耶は能力向上魔法をお願いします!」
このイベントは4フェイズに分かれており、第1フェイズ「物理系の妖」、第2フェイズ「魔法系妖」、第3フェイズ「大型の妖」。
そして最終フェイズがレイドボス「空亡」が出現する。
空亡以外はそこまで難しくは無い、特に苦戦する様な事は無いはず。
空の状態が変化してから約1時間が経過した頃、城の周囲に地鳴りの様な音が響き始める。
この城を目指して大山を掛け上げる無数の集団とそれが巻き上げる砂煙が見える。
そして遠くの空から雲に紛れて薄っすらとした球体が見える。
あの球体はレイドボス空亡だ。
「・・・・来たでござるな。」
「皆!必ずホウシェン城を守り百鬼夜行をこの場所で食い止めるぞ!」
「了解だ!」「分かりました!」
「承知でござる!」「りょ!」
「久々の集団戦だ、暴れさせて貰うぞ!」
私達は武器を構え戦闘態勢をとる。
レイドクエスト「百鬼夜行」の開幕だ。
ホウシェン国防衛作戦の決定から約6時間が経過し太陽が傾き始めた頃、玄武神社からホウシェン城を通過し白虎神社までの直線上に住む住民の避難を完了したと使いの忍衆からシロウの元に報告が入る。
百鬼夜行が起こり街が破壊されても住民自体への被害を減らす為の対策だ。
ジョクシュウ将軍以外の3将軍達と近衛侍部隊が玄武神社に集結し防衛に回る。
3将軍は玄武神社を完全防衛して百鬼夜行自体を起こさないと豪語していた。
ジョクシュウ将軍は自軍を率いて南西の白虎神社跡に待機している。
百鬼夜行の到達地点が裏鬼門と仮定するなら妖の集団が出現する可能性が有るからだ。
各軍の精鋭部隊を街の随所に配置し、百鬼夜行から逸れた妖を討伐する。
街全体には総勢3万名の武士、陰陽師、忍者、労働組合で依頼を受けた冒険者等が点在し配置されている。
大陸全土と街の人口を合わせると約2億名、大陸の隅の集落などは被害に遭わないかも知れないが街全体でもかなりの広さだ。
私達は今まで幾多のイベントフラグを肌で感じて来た。
このレイドクエストは必ず起こると確信めいた感覚が有った。
私もいい加減に【黒猫スーツ】を脱ぎ、【神衣カヴァーチャ】に着替える。
その姿を見た天帝と近衛侍達が大層驚いていた。
極少数は妖の妖術的な感じで勘違いしている人が居た様だ。
・・・・もう好きにしてくれ。
天帝は少数の近衛侍とアルラトが警備する形で天守閣本丸にて待機。
待機・・・と言えるかどうかは微妙だ。
天帝本人は戦いたいと暴れていたので鎖で拘束され厳重に警備される事となった。
シロウを隊長にした近衛侍、忍衆は城の周囲に配置。
暗黒神ハーデスが険しい顔で夕闇が広がり始めている空を眺めている。
この彼の表情は大抵何かを考えている時の表情だ。
厨二病ロールをして無い時の彼はたまにプログラマー的な側面からこの世界の考察をしている。
そんな時に良く見る表情だ。
「暗黒神ハーデス、どうしたの、何か心配事でも有るの?」
「このレイドクエストの目的はこの城防衛だ。」
「うん、そうだね。」
「おかしいとは思わんか?百鬼夜行のモンスターの最終目的はこの城の破壊だ。何の為に?ゲームでは詳しい内容やストーリーは語られていなかった。妖の封印が解けてホウシェン城を破壊するので防衛せよとだけだ。しかしこの世界はどうだ?宗教やら亜人種やら複雑化した理由付けがなされているでは無いか。」
「うん、私も少し感じてた。この城を破壊しないといけない理由が在るって事?」
「ああ、サクラ経由で天帝に問うと・・妖気を発する鉱石がこの城の天守閣に祭って有るそうだ。我はそのアイテムに覚えが有る。しかしソレは未実装だったはずだがな。」
200年前の大火の跡焼け跡から街を再建している途中に発見された妖気を放つ鉱石で、その美しさから人々を魅了し争いを生むと言う話で時の陰陽師により封印され現在は城の頂上「天守閣」に祭られているらしい。
「我はそのアイテムの初期プログラムをした覚えが有る。」
「え?そうなの?どんなアイテム?」
暗黒神ハーデス言うには初期洞窟のレッドドラゴン「ヴルトゥ」、アビスダンジョンの階層ボスのトゥグ、アルラト、ニグラス、ヨグトスと100階層のレイドボス破壊神アザドゥの設定と共に「ハスタ」と言う【イエローダイアモンド】に封印された魔人が存在したらしい。
初期プロットでイベントアイテムとしてプログラムし存在したが、その後ゲームに出て来る事は無く没になったんじゃないかと思っていたらしい。
レッドドラゴンって「ヴルドゥ」って名前だったのか初めて知った。
暗黒神ハーデスが言うに当時のプロデューサーの趣味でクトゥルフ神話の神々がモチーフになっているらしいと話していた。
詳しくは知らないが北欧神話とかごちゃまぜだと失笑していた。
その後イロイロ話をしているとシロウの元に新しい情報が入る。
現在玄武神社にて所属不明の魔法士軍団と亜人種の集団が現れ、将軍率いる侍部隊と大規模交戦中の様だ。
問題は、その亜人種集団の様子が普通では無いらしい。
何者かに操られている様な感じで眼や表情が狂気に満ちリミッターが外れた様な強さらしい。
どの程度の規模の戦闘が起きているか分からないが陥落するのは時間の問題なんじゃないかとの見解らしい。
「あれは!皆!街が!?」
咲耶が叫ぶと同時に街を指す。
ホウシェン城は街よりも高い山の頂上に建てられているので街は360度一望出来る。
広い中庭から街の方を見ると、街の至る所から火の手と煙が上がっているのが見える。
裏鬼門に当たる白虎神社からの報告が入り街の各所で暴動が起きているらしい。
「シロウさん、この場所は私達が死守します。各所に暴動鎮圧部隊を送って下さい、百鬼夜行が始まる前に街の被害が各大します。」
「しかし・・・いえ、分かりました。各方面に1000人部隊を派遣する様にします。結果としてこの城の守りがかなり手薄になってしまうのですが。」
シロウは不安そうな表情を浮かべる。
現在ホウシェン城には約4500人の侍、陰陽師、忍衆が待機してるらしい。
その内4000名を街の暴動鎮圧に回して貰う。
「シロウ殿、この場所は我々に任せるでござる。拙者の仲間には大天使、姿無き魔槍、爆雷の女神、暗黒神、救世主、黒の女神。そして拙者が居るでござるからな!」
「わ、分かりました。サクラ殿がそう言うのであれば信じましょう。すぐに手配をします。」
シロウは部下に指示を出し自らも忍衆頭目の元に走って行った。
「鮮血の桜舞う呪い姫ってのは言わないんだねぇ・・・」
「・・・・・長くて気に食わんでござる。」
「ミカエル、空が!」
DOSの声が聞こえ皆が空を見上げる。
夏季で日が落ち切っていない赤と薄い黒のグラデーション掛かった夜空に暗雲が立ち込め始める。
そして遠くの空から雷鳴が聞こえ始める。
ゲームで見たレイドイベントのフィールド状況に変わって行く、城の周囲から紫色の霧の様な物が周囲を包み始める。
・・・北東の玄武神社が陥落したのだろう。
「来るぞ!皆は配置に付き待機。咲耶は能力向上魔法をお願いします!」
このイベントは4フェイズに分かれており、第1フェイズ「物理系の妖」、第2フェイズ「魔法系妖」、第3フェイズ「大型の妖」。
そして最終フェイズがレイドボス「空亡」が出現する。
空亡以外はそこまで難しくは無い、特に苦戦する様な事は無いはず。
空の状態が変化してから約1時間が経過した頃、城の周囲に地鳴りの様な音が響き始める。
この城を目指して大山を掛け上げる無数の集団とそれが巻き上げる砂煙が見える。
そして遠くの空から雲に紛れて薄っすらとした球体が見える。
あの球体はレイドボス空亡だ。
「・・・・来たでござるな。」
「皆!必ずホウシェン城を守り百鬼夜行をこの場所で食い止めるぞ!」
「了解だ!」「分かりました!」
「承知でござる!」「りょ!」
「久々の集団戦だ、暴れさせて貰うぞ!」
私達は武器を構え戦闘態勢をとる。
レイドクエスト「百鬼夜行」の開幕だ。
応援ありがとうございます!
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