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百鬼夜行編

151話 四神神社と結界

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新しく宿泊する宿屋に集まり夕食を食べながら、あーだこーだと話し合う。

「聞いてよシノ!今日は酷い目にあったんだよ!」

「どうしたんだいアルラト。」

「なんかね!でっかい神様を祭って有る所でバチバチってなって、警報が鳴って逃げたんだよ!」

アルラトの話だと要領を得ないので暗黒神ハーデスハーちゃんに詳しい話を聞く事にした。

暗黒神ハーデスハーちゃんと共に行動していたアルラトが神社の結界に阻まれて入れなかったらしい。

その時に警報的な物が有ったらしく宮司や巫女に取り囲まれそうになって逃げて来たらしい。

アルラトはアビスダンジョンのフロアボスだ。
扱い的にはあやかしと同じなのだろうか?

下手したら指名手配とかになってる可能性も有る。

ミカさんの指示で明日は【擬態】して神社。仏閣には近づかない様に行動指示を出していた。

「誰なら目立たないのかな?」

「この国でなら、サクラかシノブだろうな。」

今日街を散策して気が付いたが確かに侍っぽい風貌の人々は多い。
しかしサクラに【擬態】するのは微妙な所だと思う。

まずサクラ程の高位の装備をしている人物は居ない。
しかも桜の舞い散るオプション装備のせいでサクラは悪目立ちしていたのだ。

現在この国の気候は夏だ、桜の咲く季節は過ぎている。
当の本人は全く気にして無い様子だった。

流石にサクラに喧嘩を売ったりちょっかいを掛けて来る人間は居なかった。
どこかの将軍に使えている高位の侍とでも思われていたんだろう。

「じゃシノにする!」

「いいけど、変な行動しないでよ?私まで手配書が出回ったら困るんだから。」

「はーい!」

アルラトが元気に手を上げて返事をする。

素直で可愛いけど本当にきちんと理解しているかどうかは不明だ。
暗黒神ハーデスハーちゃんに迷惑を掛けないと良いけど。

集まった情報を総合すると、やはり百鬼夜行発動条件は神社の封印結界が解除される事だ。
これは暗黒神ザナファの復活に似ている。

機械都市ギュノス国の封印管理システムと各国に存在する3つの宝玉破壊により復活する。
しかし、ゲームではその様な物語の根底の話は無かった。

多分、この国の四神を祭る神社に百鬼夜行を防ぐ結界装置が有るのだろう。
多重結界の封印は定番っちゃ定番だと咲耶が語る。

ただ不思議な事に過去に起きた百鬼夜行を迷信だと笑う者も多かったと言う事だ。
200年前の事象で文献を目にする事無く口伝で伝わったのなら信じない人も多く居る事が頷ける。

「今の所、百鬼夜行が起こっている様子は見受けられない。従って封印が解かれた形跡は無さそうですね。」

「咲耶と共にの出向いた南側の街は色々と騒ぎが起きていました。直接の因果関係は分かりませんが百鬼夜行は必ず起こるはずです、この国全てを戦火に巻き込む災害へと変わって。」

ミカさんは最悪の状況を想像しているのだろう。

この国は大陸と言うには狭い島国で1国しか存在しない。
小さな島国だが、街として仕切られて無い分領土が広範囲に広がる。

全土を歩くにはかなり時間が掛かる。
今日みたいに東西南北4つのエリアに分かれて散策しても全体を回り切れない程広い。

この国は貴族階級等は無く、代わりに4つのエリアをそれぞれの「将軍」が統治している様だ。
そしてその上に立つ最上位の位が「天帝」と呼ばれる人物らしい。

意外と情報が多い。

皆が話している中、DOSどっちゃんが口を開いた。

「・・・・そうとも言い切れん。もう始まっている様だ。」

DOSどっちゃんが出向いて情報収集した結果を話し出す。

昨日未明、西側に有る白虎神社が武装した亜人種デミヒューマンの賊が破壊したらしい。
目的や原因は不明だが、宮司や巫女は殺され施設は半壊し祭って有る神像は全て破壊されていたとの事だ。

白虎神社の御利益は金運、商売繁盛、家庭円満がメインらしいが厄災除けの役割が有ったと言う話だった。
私達の行った玄武神社と同じだ。

ミカさんと咲耶が調べた南側で得た情報は、ここ最近長屋でボヤ騒ぎが有ったり武士や侍を狙った辻斬りに商業施設での夜間盗難とヤクザ屋が奴隷売買をしているとの噂が有ったらしい。

DOSどっちゃんが言うには西側でも似た様な事件が同時多発的に起きていたと言う話だ。
何か意図的な因果関係が有るのだろうか?

「奴隷売買でござるか。現実でも過去に昔某大手宗教を禁止したのは信者を奴隷として海外に流していたのが原因と言う話が有ったでござるな。」

どんな宗教でもありがちだが、まっとうに神を信仰している信者の心を利用して自身の富や欲望を求める人間は多い。
いつの時代でも根深い問題なので人が人として生きて行く上で解決する事は無いのだろう。

「目的は・・・想像でしか無いですが奴隷売買が原因かも知れないですね、ヤクザ屋の収入源と言う話が有りました。この大陸に到着したばかりの時に蜥蜴人間種リザードマンが袋叩きに合っていた件も気になります。」

「禁漁区で人探しをしていただけで袋叩きだもんね、亜人種デミヒューマンに対する明確な差別は存在しそうだね。」

亜人種デミヒューマンは言って見れば人と動物と言う種の中間に当たる。
人間種ヒューマンとして括るか、動物種アニマルとして括るかは国々で認識が異なる様だ。

サクラの話では最初シャルに出会った時も好意的では無かったと話していた。
私にとっては人懐っこいイメージしか無い為、少しだけ信じられない。

「水面下で亜人種デミヒューマンの賊集団が百鬼夜行を起こそうとしていると。」

「そして、それを束ねる黒幕が居る・・・か。」

ミカさんの話を聞いてアニマ国を思い出す。

他国で亜人種デミヒューマンが奴隷として冷遇された扱いを受けていると言う話を聞いた事を思い出す。

奴隷売買されている商品が亜人種デミヒューマンで仲間の解放や怨恨による破壊工作が原因なのだろうか?
最終的にこの街を百鬼夜行によって滅ぼす事が目的か。

「・・・と言う事はホウシェン城で待機していたら百鬼夜行が勝手に起きるのではないですか?」

「でも、下手したら国が亡びる可能性が有るんじゃない?」

200年前に起きた宗教弾圧で百鬼夜行が発生。

そして高名な陰陽師おんみょうじにより封印された・・・
今はその封印を強化する為に東西南北に有る神社により四重の結界に守られている。

そして現在その1つが破壊されたと。
封印されている場所は不明だが、ゲームと同じ場所にレイドイベントが起こるとしたら・・・ホウシェン城周辺だ。

ゲームではホウシェン城の防衛が、このレイドイベントの目的となる。
ゲームでは特に設定は語られずホウシェン城に複数のあやかしが出現する為、城を防衛すると言うミッションだった。

このまま行くと百鬼夜行イベントが勝手に進行しレイドイベントは起きるのは時間の問題だろう。
しかし過去の文献から察するに街は壊滅状態になる。
出来ればそれは避けたい所だ。

結局話し合いで決まった事は亜人種デミヒューマン暴徒による四神神社破壊が全て完了する前に、明確な封印場所の特定をして被害を最小限に抑える事が我々の目的となった。

まだまだ聞き込みで得た情報が少なすぎる。

明日からもしばらくは情報収取をする事になりそうだ。
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