140 / 252
雪原の国編
140話 フラグ回収の夜
しおりを挟む
-ピトゥリア国 王宮-
応接室に移動した私達は先程国王の横に控えていた大臣らしき人物が現在の状況を説明する。
約7日前の正午、突如現れた複数の黒い人型モンスターが街へ強襲し街の入口から西側にかけて国土の約10パーセント程度を破壊。
国内に滞在していた冒険者と騎士団合わせ約3000名を臨時動員。
そして、何とか都市防衛は成功し敵勢力を撤退に追いやる。
戦闘に参加した者は半数以上の死傷者を出し、街は損壊し住民も死者や被災者が多数出た。
「ハーデスこのイベントって難しいヤツでしたよね?」
「そうだな。レイドイベントボス自体はメジードより弱い印象だが、複数個所在る防衛地点の何処に出現するか分からないからな。作戦を間違えると街の被害が広がり、しかも討伐数が少ないとボス出現前に眷属が逃亡するからな。」
ゲームでは制限時間内に規定数の眷属を倒さないとボスのゼロクロムは出現しない。
眷属が撤退してクエスト未達成となる。
眷属を倒した分だけの報酬やアイテムは貰えるがレア装備がドロップする事は無かった。
能力が高くバランスの良い固定メンバー40人で作戦を立てて戦うのが理想のクエストだった。
寄せ集めのパーティーではクエスト攻略率が低く一般プレイヤーには評判は悪かった。
大臣の話では前回の襲撃が7日前。
そしていつ次の襲撃が来るか分からない為兵士達も心身共に疲弊しているとの話だった。
「まぁ今夜は大丈夫でござろう。」
「サクラ・・・それフラグじゃないか?」
サクラの楽観的な発言に珍しくミカさんがツッコミを入れる。
前回の襲撃が約7日前、襲撃してくる可能性は高そうでは有る。
サクラの発言によりフラグスイッチがONに入ったのを皆も感じた様だ。
「フラグだな。」
「間違い無いですね。」
DOSと咲耶がミカさんに同意する。
「シノ、フラグって何?」
「イベントが起きる前振り的な感じかな。サクラが発言した事により今夜モンスターが襲来する事が確定しましたって感じ。」
「あんまりでござる。」
その後、私達はアレクス王子の計らいでピトゥリア城に宿泊する事になった。
夕食後に全員と兵士を束ねる貴族・騎士団長数人とで改めて作戦会議に入る。
このレイドイベントは東西南北とその間、8方向の何処かのエリアに敵勢力が出現する。
そして前回の出現エリアは都市の南西部らしい。
「前の襲撃は南西部ですか・・・DOSどう予測しますか?」
「同じ場所を襲撃される確率は少ないと思うが・・・無いとは言い切れないな。そもそもゲームの知識とは多少ズレが有るからな。」
このレイドクエストはランダム性が強く、連続して同じエリアに出現する事も有る。
その為。決して油断は出来ない。
ゲームではそれぞれのエリアに熟練プレイヤー40人が長時間張り込み待機をして、新規参加しようとするプレイヤーを罵倒して追い出す行為が問題となっていた。
これも引退者を増やす要因やゲームの悪評を広める原因となっていた。
実際この世界では熟練プレイヤー私達以外存在してない。
むしろこのクエストを勝ち抜く事が出来るのだろうか。
「まずは、討伐優先か防衛優先かを決めるべきでしょうね。防衛優先すると戦力を消費し続け、何時終わるか分からない長期計画になり、住民の不安とストレスが増える。討伐優先すると、アタリを引けばボス討伐が出来る可能性が高いが、ハズレを引けば都市を一部破壊され眷属逃亡の可能性が上がる。話を聞く限り、前回の戦闘は後者のケースに該当しますね。」
「・・・かなり厳しいかも知れないな。」
都市防衛を優先させるなら、それぞれ4エリアにグループ別けして対応する。
各エリアの高台に魔法職が1人待機して、出現と同時に上空に信号弾的な魔法を放ち他エリアから戦力を移動させる。
戦力は序盤1/4に下がるが、防衛率は各段に上がる。
ただしボスを引っ張り出せるかどうかは戦力が測定出来無いので完全に運となる。
一方攻撃を優先する戦法を取るのであれば、まず各エリアの高台に信号弾役の魔法職を配置。
防衛力は多少下がるが都市エリアを東西に2分割してグループ分けする。
東西どちらかに出現すれば当たり、出現場所を知らせて待機人員で攻勢に出る事が出来る。
南北に出現した場合ハズレだ、無人防衛場所が強襲される。
南北で信号弾が上がった場合、東西から防衛に向かう。
その場合は完全に防衛主体の作戦に移行しなければならない。
当たりを引けば戦力の半分を初期投入出来る為、眷属討伐成功率が上昇しボス出現率が高くなる。
ミカさんが中心となり作戦会議が始まる。
参加者はピトゥリア国騎士団長3名、魔法師団長2名、歩兵大隊長4名。
そして労働組合より指揮官経験の有る上位ランク冒険者4名。
後は「深紅の薔薇」全員、セーニア、アレクス王子、王子の近衛兵4名。
そして貴族を代表して宰相と数人の大臣が1つのテーブルに集う。
私達はレイドクエストの戦闘経験が有る為作戦立案がし易い。
しかし今回は私の予知能力ネタは使えない。
・・・何故なら出現場所を予言する必要が出て来るからだ。
マザーブレインなら高確率で予測出来るかも知れないが、私の脳では高確率で当たる予測演算なんて出来ない。
従って、以前別の場所に出現して戦った経験が有ると言う設定で話を進める様だ。
「では僭越ながら「深紅の薔薇」の代表をしておりますミカエル=アルファが会議の進行と作戦立案を説明させていただきます。補佐にサブマスターのDOSが付かせて貰います。よろしくお願いします。」
「・・・よろしく頼む。」
ミカさんとDOSが頭を下げる。
そこに居た大臣以外の全員も続いて頭を下げる。
大臣連中は少しだけ納得がいかない表情をしている。
他国から来た冒険者風情が国の存亡を賭けた戦いの作戦を指揮する事に抵抗が有るのだろう。
英雄と言う肩書で発言を許してやっていると言った表情をしている。
「まずは攻勢に出る方法か、防衛を中心とする方法かの決を取ろうと思います。」
ミカさんが2種類の作戦を図を使い全員に説明する。
次の討伐で倒す事を目的とするならば多少リスキーでは有るが2グループに別ける案が採用される。
騎士団長達は防衛優先策を押す人が多いが、大臣等の国の財政を担う高齢の貴族代表連中は長期的戦闘は国を傾ける事になると語る。
予想は出来ていたがお互いの意見は拮抗状態となっていた。
冒険者代表の人々は当然討伐寄りの意見なので多数決をすれば攻勢作戦に決まるだろう。
両者が言い合いに近い話し合いをしている間にDOSを中心として、私達は人員配置の話し合いをしていた。
一撃必殺を含むDPS順ではDOS>ミカさん>アルラト>暗黒神ハーデス>サクラ>私>咲耶の順番になる。
DOSは討伐案と防衛案の両方を加味した折衷案を考えていた。
まず、東西南北の4ヶ所に「深紅の薔薇」で高攻撃力の人物をリーダーに配置。
そして信号弾役の魔法を使用出来る兵士を各方角1名ずつ計8名配置する。
そして総戦力を2分割して2グループに別ける。
リーダーしか配置していない場所に「深紅の薔薇」メンバーの残り3人を能力が拮抗する様に分配すると言う計画だ。
案として・・・
東:サクラ&シノブ&咲耶。
西:ハーデス&アルラト。
南:DOS&騎士・冒険者部隊。
北:ミカエル&騎士・冒険者部隊。
・・・と言う配置だ。
大勢の部隊は指揮経験豊富なミカさんとDOSが指揮をする計画だ。
後は戦闘に動員出来る人数がどの程度確保出来るかが問題だし、急拵えの部隊が指揮通りに動けるのかと言う問題も有る。
しかし、話し合いの最中に事件は起きた。
フラグ回収と言わんばかりに敵襲を知らせる警鐘が夜のピトゥリア国全体へ鳴り響いた。
そう、無情にも作戦会議中にレイドクエストが始まったのだ。
応接室に移動した私達は先程国王の横に控えていた大臣らしき人物が現在の状況を説明する。
約7日前の正午、突如現れた複数の黒い人型モンスターが街へ強襲し街の入口から西側にかけて国土の約10パーセント程度を破壊。
国内に滞在していた冒険者と騎士団合わせ約3000名を臨時動員。
そして、何とか都市防衛は成功し敵勢力を撤退に追いやる。
戦闘に参加した者は半数以上の死傷者を出し、街は損壊し住民も死者や被災者が多数出た。
「ハーデスこのイベントって難しいヤツでしたよね?」
「そうだな。レイドイベントボス自体はメジードより弱い印象だが、複数個所在る防衛地点の何処に出現するか分からないからな。作戦を間違えると街の被害が広がり、しかも討伐数が少ないとボス出現前に眷属が逃亡するからな。」
ゲームでは制限時間内に規定数の眷属を倒さないとボスのゼロクロムは出現しない。
眷属が撤退してクエスト未達成となる。
眷属を倒した分だけの報酬やアイテムは貰えるがレア装備がドロップする事は無かった。
能力が高くバランスの良い固定メンバー40人で作戦を立てて戦うのが理想のクエストだった。
寄せ集めのパーティーではクエスト攻略率が低く一般プレイヤーには評判は悪かった。
大臣の話では前回の襲撃が7日前。
そしていつ次の襲撃が来るか分からない為兵士達も心身共に疲弊しているとの話だった。
「まぁ今夜は大丈夫でござろう。」
「サクラ・・・それフラグじゃないか?」
サクラの楽観的な発言に珍しくミカさんがツッコミを入れる。
前回の襲撃が約7日前、襲撃してくる可能性は高そうでは有る。
サクラの発言によりフラグスイッチがONに入ったのを皆も感じた様だ。
「フラグだな。」
「間違い無いですね。」
DOSと咲耶がミカさんに同意する。
「シノ、フラグって何?」
「イベントが起きる前振り的な感じかな。サクラが発言した事により今夜モンスターが襲来する事が確定しましたって感じ。」
「あんまりでござる。」
その後、私達はアレクス王子の計らいでピトゥリア城に宿泊する事になった。
夕食後に全員と兵士を束ねる貴族・騎士団長数人とで改めて作戦会議に入る。
このレイドイベントは東西南北とその間、8方向の何処かのエリアに敵勢力が出現する。
そして前回の出現エリアは都市の南西部らしい。
「前の襲撃は南西部ですか・・・DOSどう予測しますか?」
「同じ場所を襲撃される確率は少ないと思うが・・・無いとは言い切れないな。そもそもゲームの知識とは多少ズレが有るからな。」
このレイドクエストはランダム性が強く、連続して同じエリアに出現する事も有る。
その為。決して油断は出来ない。
ゲームではそれぞれのエリアに熟練プレイヤー40人が長時間張り込み待機をして、新規参加しようとするプレイヤーを罵倒して追い出す行為が問題となっていた。
これも引退者を増やす要因やゲームの悪評を広める原因となっていた。
実際この世界では熟練プレイヤー私達以外存在してない。
むしろこのクエストを勝ち抜く事が出来るのだろうか。
「まずは、討伐優先か防衛優先かを決めるべきでしょうね。防衛優先すると戦力を消費し続け、何時終わるか分からない長期計画になり、住民の不安とストレスが増える。討伐優先すると、アタリを引けばボス討伐が出来る可能性が高いが、ハズレを引けば都市を一部破壊され眷属逃亡の可能性が上がる。話を聞く限り、前回の戦闘は後者のケースに該当しますね。」
「・・・かなり厳しいかも知れないな。」
都市防衛を優先させるなら、それぞれ4エリアにグループ別けして対応する。
各エリアの高台に魔法職が1人待機して、出現と同時に上空に信号弾的な魔法を放ち他エリアから戦力を移動させる。
戦力は序盤1/4に下がるが、防衛率は各段に上がる。
ただしボスを引っ張り出せるかどうかは戦力が測定出来無いので完全に運となる。
一方攻撃を優先する戦法を取るのであれば、まず各エリアの高台に信号弾役の魔法職を配置。
防衛力は多少下がるが都市エリアを東西に2分割してグループ分けする。
東西どちらかに出現すれば当たり、出現場所を知らせて待機人員で攻勢に出る事が出来る。
南北に出現した場合ハズレだ、無人防衛場所が強襲される。
南北で信号弾が上がった場合、東西から防衛に向かう。
その場合は完全に防衛主体の作戦に移行しなければならない。
当たりを引けば戦力の半分を初期投入出来る為、眷属討伐成功率が上昇しボス出現率が高くなる。
ミカさんが中心となり作戦会議が始まる。
参加者はピトゥリア国騎士団長3名、魔法師団長2名、歩兵大隊長4名。
そして労働組合より指揮官経験の有る上位ランク冒険者4名。
後は「深紅の薔薇」全員、セーニア、アレクス王子、王子の近衛兵4名。
そして貴族を代表して宰相と数人の大臣が1つのテーブルに集う。
私達はレイドクエストの戦闘経験が有る為作戦立案がし易い。
しかし今回は私の予知能力ネタは使えない。
・・・何故なら出現場所を予言する必要が出て来るからだ。
マザーブレインなら高確率で予測出来るかも知れないが、私の脳では高確率で当たる予測演算なんて出来ない。
従って、以前別の場所に出現して戦った経験が有ると言う設定で話を進める様だ。
「では僭越ながら「深紅の薔薇」の代表をしておりますミカエル=アルファが会議の進行と作戦立案を説明させていただきます。補佐にサブマスターのDOSが付かせて貰います。よろしくお願いします。」
「・・・よろしく頼む。」
ミカさんとDOSが頭を下げる。
そこに居た大臣以外の全員も続いて頭を下げる。
大臣連中は少しだけ納得がいかない表情をしている。
他国から来た冒険者風情が国の存亡を賭けた戦いの作戦を指揮する事に抵抗が有るのだろう。
英雄と言う肩書で発言を許してやっていると言った表情をしている。
「まずは攻勢に出る方法か、防衛を中心とする方法かの決を取ろうと思います。」
ミカさんが2種類の作戦を図を使い全員に説明する。
次の討伐で倒す事を目的とするならば多少リスキーでは有るが2グループに別ける案が採用される。
騎士団長達は防衛優先策を押す人が多いが、大臣等の国の財政を担う高齢の貴族代表連中は長期的戦闘は国を傾ける事になると語る。
予想は出来ていたがお互いの意見は拮抗状態となっていた。
冒険者代表の人々は当然討伐寄りの意見なので多数決をすれば攻勢作戦に決まるだろう。
両者が言い合いに近い話し合いをしている間にDOSを中心として、私達は人員配置の話し合いをしていた。
一撃必殺を含むDPS順ではDOS>ミカさん>アルラト>暗黒神ハーデス>サクラ>私>咲耶の順番になる。
DOSは討伐案と防衛案の両方を加味した折衷案を考えていた。
まず、東西南北の4ヶ所に「深紅の薔薇」で高攻撃力の人物をリーダーに配置。
そして信号弾役の魔法を使用出来る兵士を各方角1名ずつ計8名配置する。
そして総戦力を2分割して2グループに別ける。
リーダーしか配置していない場所に「深紅の薔薇」メンバーの残り3人を能力が拮抗する様に分配すると言う計画だ。
案として・・・
東:サクラ&シノブ&咲耶。
西:ハーデス&アルラト。
南:DOS&騎士・冒険者部隊。
北:ミカエル&騎士・冒険者部隊。
・・・と言う配置だ。
大勢の部隊は指揮経験豊富なミカさんとDOSが指揮をする計画だ。
後は戦闘に動員出来る人数がどの程度確保出来るかが問題だし、急拵えの部隊が指揮通りに動けるのかと言う問題も有る。
しかし、話し合いの最中に事件は起きた。
フラグ回収と言わんばかりに敵襲を知らせる警鐘が夜のピトゥリア国全体へ鳴り響いた。
そう、無情にも作戦会議中にレイドクエストが始まったのだ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
77
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる