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砂漠の国編
137話 新たなる火種
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-コダ国 王宮別室-
お姫様は約1日ぶりにお風呂に入ってサッパリした様子だった。
ついでとは言え私も大浴場を使用させて貰い大変気持ちが良かった。
やはりお風呂は良いね、まさに命の洗濯だ。
着替えを終え別室へと戻り話し合いが始まる。
セーニア姫が腰に両手を当てながら王様と王妃様に詰め寄る。
「お父様!お母様!勝手に城を出たのは謝ります。・・・がっ!何なのですか!この茶番は!」
「いやこれは、その、あれだ!なぁラニア!なっ!」
あれれ、王様ってこんな感じだっけ?
もっと貫禄の有る印象だったのに娘に押され気味だ。
もしかして、娘に対しては激甘な人かも知れない。
国王はセーニアの気迫に押され、宥めようと焦っている様子だった。
「お黙りなさい!セーニア!家出娘に発言権は有りません!貴女の身勝手でどれだけの人間が迷惑したと思っているのですか!アレクス王子に失礼でしょう!国際問題に発展するのですよ!」
「はぁ!?何それ!?あんなひょろひょろ王子はどうでも良いんですよ!それに私は国が発展する為の道具ではありません!結婚相手は自分で決めます!」
母と子の親子喧嘩が始まったぞ。
しかもどちらとも大声で本気切れモード全開だ。
「それなら逃げる必要は無いでしょう!ウダツの上がらない王子が嫌いだと面と向かって断れば良い話ではないですか!逃げた挙句、過激派に拉致されて・・・どれだけ私達が心配したと思っているのですか!!どれだけの人が貴女の事を心配し探したと思っているのですか!」
「・・・・・そ、それは。」
王妃様は目に涙を浮かべながら激しくセーニアを叱責する。
確かに正論だ。
彼女の行動は軽率で身勝手だ。
私は腕を組み思わずうんうんと頷いてしまう。
そしてこの国は女性上位で真の支配者が誰なのか分かった気がする。
少なくとも目の前でオロオロしている王様は最上位では無い。
「まずいぞ、シノブ。」
突然耳元で声が響く。
「おおう!DOS!ビックリした!何どうしたの?」
【不可視化】状態のDOSが急に耳元で話しかけて来た。
お風呂に入ると同時に【索敵】を切っていた。
微妙に気配は感じていたけど真横に居たと思わなかった。
珍しく少し焦っている様な口調だ。
「先程隣の部屋のアレクス王子の様子を確認しに行ってたんだが・・・・」
「・・・う、うん。」
神妙な口調で話すDOSの言葉が1度止まる。
そして衝撃の事実を告げる。
「ここの会話・・・隣室に丸聞こえだ。」
ドーーーーーン!
「ひょろひょろ王子」とか「ウダツの上がらない王子」とか言うワードを親子揃って叫んでいたけど、全部隣の部屋に筒抜けになっていたと言う事か。
・・・・王妃様の話していた国際問題だなこれは。
「アレクス王子を欺いていた事は私とグラント王で誠意を持って謝罪します。貴女は貴女自身の言葉を持って王子と向き合いなさい。」
「・・・・分かりました。お父様、お母さま、それに皆さん私の身勝手でご迷惑をおかけしました。」
セーニアは単純だが馬鹿ではないと思う。
先程まで威勢良く吠えていたとは思えない程素直に頭を下げていた。
真直ぐな性格だからこそ自分の行動を顧みた時、筋が通って無い事に気付いたんだろう。
彼女は王様や王妃様だけでは無く殴り倒した部屋番の近衛兵も含め謝罪をしていた。
まぁ近衛兵の彼等は職務まっとう中に暴行を受けた完全な被害者だ。
その後、この騒ぎの謝罪をする為に隣室の王子の元へ全員で移動する事になった。
でも、大丈夫かな・・・?
王子様には先程の罵倒にも似た騒ぎが聞こえていたはずだ。
それこそ本当に国際問題に発展するんじゃないだろうか。
隣の部屋に入ると黒い鎧の兵士が険しい顔をしているのが見えた。
ああ、聞こえていたんだなと一目で分かる。
肝心の王子様は未だにうっとりとした恍惚の表情を浮かべている。
大丈夫か?
先のお見合いの時に拳を受け止めたいとか言ってたし。
この王子様は・・・
もしかして暴力とか罵倒とかで感じる変わった性癖の人なのだろうか。
先程の悪口にも捉えられる罵声も、実はご褒美的な感じで受け取っている可能性が有るな。
「アレクス王子、先程の騒ぎの件を謝罪させて貰いたいのだ。」
国王様と王妃様が改めて経緯を説明し全員で謝罪を行った。
話を聞いている間に王子の表情も元に戻り、特に賠償請求も無く簡単に謝罪を受け入れていた。
根っこは変態だけど政治的外交との線引きはきちんと出来る優秀な人なんだ。
「アレクス王子、折角足を運んでいただいたのに無礼でした。どうか謝罪を受け入れて欲しい。」
セーニアが頭を下げると王子は快く受ける。
結局先程の隣室の会話も聞こえていた様で、王妃共々重ねて謝っていた。
「それと・・・婚姻の件ですが私にはまだ誰かの伴侶に成程、大人では無い様です。申し訳ないがこの話はお断りいたします。」
セーニア姫は再度面と向かってキチンとお断りを入れていた。
彼女の表情は嘘偽りない真剣そのものだった。
その表情と想いを察したのかアレクス王子は優しい表情で言葉を受け止めていた。
「分かりました。ですが私の想いは変わりません。僕もいつの日か貴女に相応しい人間になれる様に努力します。」
しかしアレクス王子は諦める気は無いですと言い、必ず貴女に相応しい人間になりますと宣言していた。
彼の台詞に既視感を感じると思ったら、やっぱりオスロウ国の聖騎士団長のシグに似ている。
・・・ベクトルが多少違うが同種に違いない。
その後、ミカさんとサクラ達が合流し城へ帰還して来た。
暗黒神ハーデス普段の装備に戻し、髪型をポニーテールに変えて仮面を着けた状態でこっそり同行していた。
一応、アレクス王子とセーニアにはバレていない様だ。
どう言う経緯かは分からないけど、マフィア組織の拠点を全員で壊滅させた的な話を兵士達が話していた。
しかし、それが原因で組織の犯罪者が牢屋に入りきらないとかボヤいていた。
セーニアを拉致したのは計画的では無く偶然だった様で、身代金を要求する書状を作成している途中だったそうだ。
結局コダ国とピトゥリア国のお見合い騒動は破局とは言え解決。
今晩は王様の計らいでお城に部屋を用意して貰い泊まらせて貰う事となった。
その後皆で話し合った結果、次レイドボス出現エリアのピトゥリア国を目指す事となった。
王子様御一行に同行させて貰える様に明日の朝お願いしようと言う話で纏まった。
しかし状況は急速に大きく動く。
その日の深夜、コダ城にピトゥリア国からの使者が現れて自国の緊急事態を告げたのだった。
お姫様は約1日ぶりにお風呂に入ってサッパリした様子だった。
ついでとは言え私も大浴場を使用させて貰い大変気持ちが良かった。
やはりお風呂は良いね、まさに命の洗濯だ。
着替えを終え別室へと戻り話し合いが始まる。
セーニア姫が腰に両手を当てながら王様と王妃様に詰め寄る。
「お父様!お母様!勝手に城を出たのは謝ります。・・・がっ!何なのですか!この茶番は!」
「いやこれは、その、あれだ!なぁラニア!なっ!」
あれれ、王様ってこんな感じだっけ?
もっと貫禄の有る印象だったのに娘に押され気味だ。
もしかして、娘に対しては激甘な人かも知れない。
国王はセーニアの気迫に押され、宥めようと焦っている様子だった。
「お黙りなさい!セーニア!家出娘に発言権は有りません!貴女の身勝手でどれだけの人間が迷惑したと思っているのですか!アレクス王子に失礼でしょう!国際問題に発展するのですよ!」
「はぁ!?何それ!?あんなひょろひょろ王子はどうでも良いんですよ!それに私は国が発展する為の道具ではありません!結婚相手は自分で決めます!」
母と子の親子喧嘩が始まったぞ。
しかもどちらとも大声で本気切れモード全開だ。
「それなら逃げる必要は無いでしょう!ウダツの上がらない王子が嫌いだと面と向かって断れば良い話ではないですか!逃げた挙句、過激派に拉致されて・・・どれだけ私達が心配したと思っているのですか!!どれだけの人が貴女の事を心配し探したと思っているのですか!」
「・・・・・そ、それは。」
王妃様は目に涙を浮かべながら激しくセーニアを叱責する。
確かに正論だ。
彼女の行動は軽率で身勝手だ。
私は腕を組み思わずうんうんと頷いてしまう。
そしてこの国は女性上位で真の支配者が誰なのか分かった気がする。
少なくとも目の前でオロオロしている王様は最上位では無い。
「まずいぞ、シノブ。」
突然耳元で声が響く。
「おおう!DOS!ビックリした!何どうしたの?」
【不可視化】状態のDOSが急に耳元で話しかけて来た。
お風呂に入ると同時に【索敵】を切っていた。
微妙に気配は感じていたけど真横に居たと思わなかった。
珍しく少し焦っている様な口調だ。
「先程隣の部屋のアレクス王子の様子を確認しに行ってたんだが・・・・」
「・・・う、うん。」
神妙な口調で話すDOSの言葉が1度止まる。
そして衝撃の事実を告げる。
「ここの会話・・・隣室に丸聞こえだ。」
ドーーーーーン!
「ひょろひょろ王子」とか「ウダツの上がらない王子」とか言うワードを親子揃って叫んでいたけど、全部隣の部屋に筒抜けになっていたと言う事か。
・・・・王妃様の話していた国際問題だなこれは。
「アレクス王子を欺いていた事は私とグラント王で誠意を持って謝罪します。貴女は貴女自身の言葉を持って王子と向き合いなさい。」
「・・・・分かりました。お父様、お母さま、それに皆さん私の身勝手でご迷惑をおかけしました。」
セーニアは単純だが馬鹿ではないと思う。
先程まで威勢良く吠えていたとは思えない程素直に頭を下げていた。
真直ぐな性格だからこそ自分の行動を顧みた時、筋が通って無い事に気付いたんだろう。
彼女は王様や王妃様だけでは無く殴り倒した部屋番の近衛兵も含め謝罪をしていた。
まぁ近衛兵の彼等は職務まっとう中に暴行を受けた完全な被害者だ。
その後、この騒ぎの謝罪をする為に隣室の王子の元へ全員で移動する事になった。
でも、大丈夫かな・・・?
王子様には先程の罵倒にも似た騒ぎが聞こえていたはずだ。
それこそ本当に国際問題に発展するんじゃないだろうか。
隣の部屋に入ると黒い鎧の兵士が険しい顔をしているのが見えた。
ああ、聞こえていたんだなと一目で分かる。
肝心の王子様は未だにうっとりとした恍惚の表情を浮かべている。
大丈夫か?
先のお見合いの時に拳を受け止めたいとか言ってたし。
この王子様は・・・
もしかして暴力とか罵倒とかで感じる変わった性癖の人なのだろうか。
先程の悪口にも捉えられる罵声も、実はご褒美的な感じで受け取っている可能性が有るな。
「アレクス王子、先程の騒ぎの件を謝罪させて貰いたいのだ。」
国王様と王妃様が改めて経緯を説明し全員で謝罪を行った。
話を聞いている間に王子の表情も元に戻り、特に賠償請求も無く簡単に謝罪を受け入れていた。
根っこは変態だけど政治的外交との線引きはきちんと出来る優秀な人なんだ。
「アレクス王子、折角足を運んでいただいたのに無礼でした。どうか謝罪を受け入れて欲しい。」
セーニアが頭を下げると王子は快く受ける。
結局先程の隣室の会話も聞こえていた様で、王妃共々重ねて謝っていた。
「それと・・・婚姻の件ですが私にはまだ誰かの伴侶に成程、大人では無い様です。申し訳ないがこの話はお断りいたします。」
セーニア姫は再度面と向かってキチンとお断りを入れていた。
彼女の表情は嘘偽りない真剣そのものだった。
その表情と想いを察したのかアレクス王子は優しい表情で言葉を受け止めていた。
「分かりました。ですが私の想いは変わりません。僕もいつの日か貴女に相応しい人間になれる様に努力します。」
しかしアレクス王子は諦める気は無いですと言い、必ず貴女に相応しい人間になりますと宣言していた。
彼の台詞に既視感を感じると思ったら、やっぱりオスロウ国の聖騎士団長のシグに似ている。
・・・ベクトルが多少違うが同種に違いない。
その後、ミカさんとサクラ達が合流し城へ帰還して来た。
暗黒神ハーデス普段の装備に戻し、髪型をポニーテールに変えて仮面を着けた状態でこっそり同行していた。
一応、アレクス王子とセーニアにはバレていない様だ。
どう言う経緯かは分からないけど、マフィア組織の拠点を全員で壊滅させた的な話を兵士達が話していた。
しかし、それが原因で組織の犯罪者が牢屋に入りきらないとかボヤいていた。
セーニアを拉致したのは計画的では無く偶然だった様で、身代金を要求する書状を作成している途中だったそうだ。
結局コダ国とピトゥリア国のお見合い騒動は破局とは言え解決。
今晩は王様の計らいでお城に部屋を用意して貰い泊まらせて貰う事となった。
その後皆で話し合った結果、次レイドボス出現エリアのピトゥリア国を目指す事となった。
王子様御一行に同行させて貰える様に明日の朝お願いしようと言う話で纏まった。
しかし状況は急速に大きく動く。
その日の深夜、コダ城にピトゥリア国からの使者が現れて自国の緊急事態を告げたのだった。
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