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砂漠の国編

131話 プリンス到着!

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-コダ国 宿屋-

急な尿意を覚え近くの公園に有る公衆トイレに入る。

ズボンのジッパーを下ろし分身体を曝け出し尿意の基となるアンモニア水を出そうとするが出ない。

あれ?
あれれ!?

う~ん。
クソッ!何故だ!

出したいのに出ないと言う不快感。

これは病気か?
分身体に何か詰まっているのかと思う位出ない。

思いっきり気張ると少し出そうになる・・・

「おわっぁっ!?」

瞬間に急速に意識が覚醒し目が覚める。

俺はアルコールをたらふく飲んで酔って寝ていたんだ。

そして今超漏れそうなギリギリのラインだ!

気を抜いたら溢れ出る。
まさに表面張力的な物を無理矢理抑えているのを感じながらトイレに駆け込む。

秒差だ。
危なかった・・・

成人してから漏らすとか恥ずかし過ぎるからな。
夢の中ではリアルの男の姿で、久々に自身の分身体に触れた感覚が有った。

「夢か・・・危なかった。懐かしき愚息の感触、いとあはれなりけり。」

女性の体は男性の体に比べ、下腹部の堤防が浅いせいか我慢出来る時間が少ない。

今回はマジで危なかった。

異世界とは言え、この歳で漏らしたら一生咲耶殿を中心に笑い者にされそうだ。

窓の外を見ると夜の帳が降りて、街は完全に静まりかえっていた。

妙な懐かしさと尿意を解消した清々しい気分で1階に降りる。
昼間飲み過ぎたせいか喉が渇く。

砂漠の夜は随分と冷える。
水を温めながら、それとは別に冷水を1杯飲む。

上の階でドタバタと走る様な音が鳴る。
咲耶殿だろうか?アイツも同じ位アルコールを飲んでいたからな。

沸騰しない程良い温度の白湯を少しずつ飲んでいると咲耶が2階から降りて来た。
ヤツと行動パターンが同じなのは少しだけ嫌な気分だと思い苦笑する。

「お主も水でござるか?」

「サクラか・・・」

俺は咲耶殿に水を手渡す。
彼は水を受け取ると一気に飲み干す。

彼は着崩れたワイシャツと下着という姿で目のやり場に困る。

普通の女性にならガン見する所だが、どんなにスタイルが良い女性の姿をしていても中身が男だと分かっている相手に欲情をしたら人間として負けの様な気がして気分が悪い。

本能的に目を背ける。

咲耶殿は水を2杯飲みアクビをしながら「2度寝する・・・」と言って2階の部屋に戻って行った。

拙者は取り敢えず3階のシノブ殿の部屋を目指す。
シノブ殿の様に気配を消したり、相手の気配を探る盗賊系の特殊技能スキルは持っていない。

拙者は息を潜め、なるべく足音を立てない様に廊下をゆっくりと歩いて行く。

大抵シノブ殿の部屋の前にDOSドス殿が居て引き返すのだが・・・今日は居ない様だ。

OK行こう!

DOSドス殿が居ない時を狙ってシノブ殿の寝顔を見る為に部屋に侵入する。
毎回巧妙な罠が仕掛けて有り、拙者の回避能力では防ぐ事が出来ない。

そっと扉を開けて様子を伺う。
・・・ベッドは空だ。

うん?
罠も仕掛けられて無い。

妙だな?

彼女の部屋は人の気配が全く無く静寂に包まれていた。
もしかしてシノブ殿に何か有ったんじゃないか?

扉の前にDOSドス殿が居ないのも変だ。

これは何か有ったのでは!?

拙者は急いでミカエル殿の部屋に向かう。

ドン!ドン!ドン!

「ミカエル殿!ミカエル殿!」

2階のミカエル殿の部屋に行きドアを叩く。
しばらく叩いていると眠そうな顔のミカエル殿が部屋から出てきた。

彼も布地のシャツと下着1枚という姿で目を擦りながら出て来る。

シャツの隙間から胸の谷間が見え心臓が高鳴る。
西洋風美女のあられもない姿から目を離せない。

駄目だ駄目だ!
コイツも男だ!

落ち着け俺!
見た目は金髪モデル美女だが中身は男だ!

深呼吸をして少し落ち着いてからミカエル殿に事情を説明すると昼間起きた事の経緯を説明してくれた。

シノブ殿達は今夜から明日に掛けて王宮に宿泊する事。
そして明日の依頼された仕事の話だ。

俺と咲耶が酒を飲んでいる間に、この国のお姫様が行方不明とは・・・なんともキナ臭い。

「取り敢えず今は寝て下さい。」とミカエル殿に言われ部屋に戻る。
深夜に起こして悪い事をしてしまった。

寝ようと思ったが色々有ったせいか目が覚めてしまった。
1階でもう1度お湯を沸かし部屋で湯浴みをする。

この国は残念ながら温泉や大衆浴場の様な施設は無い。

サラシを巻き着物を羽織る。
拙者は気晴らしに夜の街を散歩する事にした。

日中と違い夜は普段装備している着物でも少し肌寒い位だ。

昨夜の蜃気楼の街を思い出し街の入口まで足を運ぶ。
今日は雨が降って無いせいか蜃気楼の街は出現してない様だ。

空には満天の星と大きな満月が見える。
正確には月では無い衛星なんだろうけど、我々の世界の月と似ているので月で良い。

街の入口から砂漠の方を見るとティオネムに乗りながら複数のディワームと交戦中の一団が見える。

通常の個体よりも大きめのディワームが8体。
冒険者10人程度と黒い軽装備の兵士が4人、それに守られている白いマントの人物が1人。

「暇潰しには丁度良さそうでござるな。」

苦戦をしている様に見えるので助太刀をする事にして走り出す。

うーん、この草鞋だと砂漠の砂に足を取られて走り難い。
拙者もシノブ殿とお揃いの靴を買おうかな。

乱れ桜吹雪みだれさくらふぶき】を両手に構え戦火に向かって走る。
目標に近付き【縮地】を使い一気に斬り込む。

一連、二連、三連、四連撃。

特殊個体のディワーム4匹を一撃で両断する。
そして跳躍し、逆側で冒険者と交戦中の4匹のディワームを一刀のもとに斬り裂く。

唖然とする冒険者を他所に、派手にアクロバティックな戦い方を披露する。
ディワームの紫色の血飛沫と桜の花弁が月明かりに照らされた砂漠を舞い散る様に彩る。

我ながら美しい!
これこそが我が戦闘スタイルそのものだ!

星々の輝き中で幻想的な風景を作り出す。

決まった!
刀を納め着物に着いた砂埃を払う。

「大丈夫でござるか?拙者はコダの街に滞在している冒険者の者でござる。苦戦している様だったので、つい手がでてしまったでござる。」

「いいえ、助かりました。素晴らしい剣捌きですね。」

冒険者達と話をしていると、後方に居た黒い鎧の戦士と白いマントの人が近付いて来た。

白いマントの人間はフードを目深に被った金髪碧眼の美形。
黒い鎧の従者は貫禄の有る初老の戦士と言った風貌だ。

「助かりました。本当はモンスターの少ない日中に到着予定だったのですが・・・ありがとうございました。」

シノブ殿が話していたがディワームは夜行性らしい。
後方から白いマントの人物が初老の戦士を遮りお礼を言う。

「申し遅れました、私はピトゥリア国第二王子。アレクス=ティス=ピトゥリアと申します。」

「ちょっ!殿下!」「殿下!」

黒い鎧の4人が焦った様な様子で王子と名乗った人物の前に出て壁を作る。

名も知らぬ冒険者に無警戒にも軽々しく身分を明かした事を護衛の家臣が驚いている構図だな。
拙者が家臣なら間違い無く頭を叩く、無礼でも叩くだろう。

「これは、御叮嚀に。拙者は「深紅の薔薇」に所属するサクラと申すでござる。」

騎士風に胸に拳を当てて敬礼をする。

着物だと微妙だなと思った。

自己紹介をすると冒険者がザワザワ何やら小声で話を始める。

「あ、あの、もしかして復活した暗黒神ザナファを倒したと言う有名な?」

おずおずと冒険者達が拙者に尋ねて来る。

隣の大陸にも噂が轟いているとはな。
拙者も有名になった物でござる。

「ふむ、如何にも。」

「おおおお!」「あの剣捌き、納得です。」
「確かに人間技とは思えない程華麗だった!」

個人的に褒められるのはオスロウ国以来だった俺は少しだけ上機嫌になった。

冒険者達が大袈裟に驚き、王子と戦士4人も何やら話している。
個人的に褒美でもくれるのだろうか。

うん?そう言えば先程ミカエル殿が今日の午後お見合いが有るとか言っていた。

・・・もしかして隣国の王子って、このアレクスの事では!?

タイミングが良いのか悪いのか・・・
どうしたものか。

今は時間的に深夜1時頃だろうか?
微妙な時間帯に街に着いたものだ。

このお時間に王宮に案内する訳にもいかない。

結局、護衛の戦士の嘆願で俺達が止まっている宿屋に案内する事となった。
どうやら今回のお見合いの件は内密らしく王子達一行からは、お見合いの話は一切無かった。

いいのかなぁ、王族を庶民が経営する宿屋に泊めても・・・
お忍だから、庶民の泊まる宿屋の方が都合が良いのか?

「深紅の薔薇」のメンバーが泊っていると言う事で同じ宿に泊まる事に決めたらしい。
お姫様の行方不明の事は言えない・・・

申し訳ないが店主とミカエルを叩き起こして事情を説明するしか無いな。
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