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砂漠の国編
130話 お見合い前夜
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-コダ国王宮 謁見の間-
豪華な装飾が施された王宮の謁見の間に案内された私達は王様と王妃様の前で膝ま付く。
王様は50歳代の人間種で細身だが健康的に浅黒い肌に鍛えられた肉体だ。
過去に戦士職の経験が有る事は露出している腕や首筋を見れば分かる。
王妃は闇妖精種で、暗黒神ハーデスと同じ種族だ。
赤い瞳と黒色の長い髪、見た目は美しい20代に見えるが設定上人間種よりも長寿な人種と言う設定だから実年齢は分からない。
娘の事が気掛りなのか2人共表情は暗い。
「2度も足を運ばせてすまないな、ミカエル殿。折り入って頼みたい事があるのだ。」
「いえ、ある程度の話はギースさんから聞いております。」
国王と王妃は同時に大きな溜息を付く。
その雰囲気は王様の威厳と言うよりも問題児の対応に疲れた親のソレだ。
・・・要は第三者から見ても疲れている感じが伺える。
その後、国王は直々に私達に2つのお願いをして来た。
1つは「娘を探して欲しい」と言う事。
自分の娘が行方不明となって居るのだ。
これは依頼と言う形で引き受けている。
城の兵士の大半を費やして探しているにも関わらず未だ手掛かりすら掴めていない。
しかし西の船着き場や南方の国境を越えた様子は無いと言う話だ。
見落としが有るかも知れないが、まだこの国の何処かに身を隠していると考える方が可能性が高いらしい。
もう1つは「娘の代わりに明日のお見合いに参加して欲しい」との事。
これは当然、お姫様にそっくりの外見をしている暗黒神ハーデスへの依頼だ。
これはお姫様個人の問題では無く、今後隣国との国交に関わる国際問題に発展する可能性も有るので無下には出来ない。
嘘がバレた時の方が国際問題になりそうな気がするんだけど大丈夫だろうか。
その事でミカさんも快く引き受ける事が出来ないでいる様だ。
・
・
・
長い長い話し合いの結果暗黒神ハーデスが折れ、私とDOSがサポートすると言う事で話が纏まった。
主催の王様、王妃と暗黒神ハーデスがお見合いに参加し【不可視化】状態でDOSがフォローする運びとなった。
私は護衛役として近衛兵の恰好をして部屋の隅で気配を消して待機する。
他のメンバーは街の四方に分かれ、お姫様の捜索をする。
何か事件に巻き込まれている可能性も十分に有るとギースが話していた。
個人的には忍者と言う職業柄、潜伏や捜索と言った事の方が得意なのだけれど・・・
暗黒神ハーデスが私とDOSがフォローするなら引き受けると言ったのでこの布陣となった。
「ではDOS、シノブ。私とアルラトは捜索組の方へ向かいます。ハーデスの事はくれぐれもお願いします。」
「シノ!任せて!」
「任せた!アルラト!」
「ええ、明日の夜までに見つかる事を願います。」
ミカさん達はそう言い残すと宿泊している宿屋へと帰還して行った。
取り敢えず私とDOSと暗黒神ハーデスは今晩から王宮に宿泊する事となった。
お姫様の資料に目を通し彼女の情報を覚える。
細かな言葉遣いや仕草は専用の使用人やメイドに細かく聞き頭に入れる。
相手国の王子様の情報はDOSが暗記するらしい。
彼が暗黒神ハーデスの真後ろで会話のフォローを耳打ちする様だ。
「えーと、何々・・・」
私は書類に目を通す。
隣国・・・「ピトゥリア国」。
砂漠と森林地帯を抜けて南部の巨大山脈を越えた先の遥か南方に有る雪国。
私達が次に向かおうとしていた国だ。
両国の国交は良好で昨年開かれたコダ国の国際式典にピトゥリア国の王子がお忍びで参加した際に一目惚れしたのが事の発端らしい。
王子の名前は「アレクス」、金髪の碧眼で色白のイケメンだ。
身長183センチ、体重63キロ。
剣術・魔術に長け学校の成績は良好・・・超優良物件な気がする。
お姫様は何が気に喰わなかったんだろう?
もしかしてオスロウ国聖騎士団長シグみたいな感じの性格なのだろうか?
見た目も少し似ているし。
私はシグがサクラに迫ってる姿を思い出して思わず笑ってしまう。
「こっちはお姫様に関する書類か。」
当事者のお姫様の名前は「セーニア」。
外見は母親の血を色濃く引き、闇妖精種特有の褐色の肌に尖った耳をした美しい容姿。
国王が人間種なので半闇妖精種って事か。
元々種族的に魔力が高い傾向に有るはずが、彼女は魔力は少なく腕力が高い武闘派で魔法の才能は皆無らしい。
そして気が強く「おてんば」と言う言葉が相応しいと書いて有る。
子供の頃から城の装飾品は壊すは隙を付いて脱走するは、オスロウ国の武闘大会に出場するといって旅に出ようとして部屋の壁を破壊。
積荷の樽に入って密航するはとやりたい放題で苦労したと書いて有る。
その他にも色々と恨み節の様に報告書に記述してあった。
・・・ってかこの書類は後半に行くにつれて事実報告より愚痴や個人の感想になってきている様な気がする。
この書類を王様に見せたら書いた人は減給されるんじゃないだろうか。
暗黒神ハーデスは王妃と複数のメイドに拉致されて、衣装合わせをする為に部屋を連れ出されて行った。
本日は衣装合わせをして、その後は夜通し口調や立ち振る舞いのスパルタ指導をされる様だ。
少し気の毒だが時間が無いので仕方が無い、本番は明日の夜なのだから。
彼が女性用のドレスを着るのを見たかったんだけどな。
バンボゥ国のパーティーやギュノス国でも既存の装備しか着用して無かったので、明日は少し楽しみだ。
私とDOSは資料に目を通しながら話をする。
「お姫様は大丈夫かな?もしかして好きな人が居て、その人と駆け落ちとか無いよね。」
「それは無いな。従者の話では恋愛や結婚自体に否定的な話をしていたと証言が有る。それと気になる話を耳にした。」
DOSの聞いた話では、以前より国家転覆を狙う組織が有り小さなテロ行為は幾度も無く有ったらしい。
それ系の話は労働組合で幾つか聞いたのを覚えている。
そういえば機械都市ギュノス国でも似た様な事が有ったな・・・
サクラと咲耶が温泉街で屋根を吹き飛ばしていた。
組織名は忘れたけど。
王族の命を狙うのはポピュラーな事なんだろう。
そちらはミカさん達に任せておけば大丈夫だと思うけど。
私達は明日の暗黒神ハーデスのお見合い大作戦を成功させなければならない。
「DOS、上手く行くかな?」
「・・・依頼された仕事だ、やるしかあるまい。ハーデス次第では有るけどな。」
私達の成功目標は「いい感じで結婚の話を先延ばしにする」事だ。
それにしても目標がふわっとしているのが難点だ。
ぶち壊すのは簡単だけど、なるべく穏便に先延ばししなければ国際問題になり兼ねない。
見た目だけなら王様と王妃のお墨付きを頂いたので問題は無い。
後は下手な発言をしなければ乗り切れるかも知れない。
果たして、うまく行くだろうか・・・
とても不安だ。
豪華な装飾が施された王宮の謁見の間に案内された私達は王様と王妃様の前で膝ま付く。
王様は50歳代の人間種で細身だが健康的に浅黒い肌に鍛えられた肉体だ。
過去に戦士職の経験が有る事は露出している腕や首筋を見れば分かる。
王妃は闇妖精種で、暗黒神ハーデスと同じ種族だ。
赤い瞳と黒色の長い髪、見た目は美しい20代に見えるが設定上人間種よりも長寿な人種と言う設定だから実年齢は分からない。
娘の事が気掛りなのか2人共表情は暗い。
「2度も足を運ばせてすまないな、ミカエル殿。折り入って頼みたい事があるのだ。」
「いえ、ある程度の話はギースさんから聞いております。」
国王と王妃は同時に大きな溜息を付く。
その雰囲気は王様の威厳と言うよりも問題児の対応に疲れた親のソレだ。
・・・要は第三者から見ても疲れている感じが伺える。
その後、国王は直々に私達に2つのお願いをして来た。
1つは「娘を探して欲しい」と言う事。
自分の娘が行方不明となって居るのだ。
これは依頼と言う形で引き受けている。
城の兵士の大半を費やして探しているにも関わらず未だ手掛かりすら掴めていない。
しかし西の船着き場や南方の国境を越えた様子は無いと言う話だ。
見落としが有るかも知れないが、まだこの国の何処かに身を隠していると考える方が可能性が高いらしい。
もう1つは「娘の代わりに明日のお見合いに参加して欲しい」との事。
これは当然、お姫様にそっくりの外見をしている暗黒神ハーデスへの依頼だ。
これはお姫様個人の問題では無く、今後隣国との国交に関わる国際問題に発展する可能性も有るので無下には出来ない。
嘘がバレた時の方が国際問題になりそうな気がするんだけど大丈夫だろうか。
その事でミカさんも快く引き受ける事が出来ないでいる様だ。
・
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・
長い長い話し合いの結果暗黒神ハーデスが折れ、私とDOSがサポートすると言う事で話が纏まった。
主催の王様、王妃と暗黒神ハーデスがお見合いに参加し【不可視化】状態でDOSがフォローする運びとなった。
私は護衛役として近衛兵の恰好をして部屋の隅で気配を消して待機する。
他のメンバーは街の四方に分かれ、お姫様の捜索をする。
何か事件に巻き込まれている可能性も十分に有るとギースが話していた。
個人的には忍者と言う職業柄、潜伏や捜索と言った事の方が得意なのだけれど・・・
暗黒神ハーデスが私とDOSがフォローするなら引き受けると言ったのでこの布陣となった。
「ではDOS、シノブ。私とアルラトは捜索組の方へ向かいます。ハーデスの事はくれぐれもお願いします。」
「シノ!任せて!」
「任せた!アルラト!」
「ええ、明日の夜までに見つかる事を願います。」
ミカさん達はそう言い残すと宿泊している宿屋へと帰還して行った。
取り敢えず私とDOSと暗黒神ハーデスは今晩から王宮に宿泊する事となった。
お姫様の資料に目を通し彼女の情報を覚える。
細かな言葉遣いや仕草は専用の使用人やメイドに細かく聞き頭に入れる。
相手国の王子様の情報はDOSが暗記するらしい。
彼が暗黒神ハーデスの真後ろで会話のフォローを耳打ちする様だ。
「えーと、何々・・・」
私は書類に目を通す。
隣国・・・「ピトゥリア国」。
砂漠と森林地帯を抜けて南部の巨大山脈を越えた先の遥か南方に有る雪国。
私達が次に向かおうとしていた国だ。
両国の国交は良好で昨年開かれたコダ国の国際式典にピトゥリア国の王子がお忍びで参加した際に一目惚れしたのが事の発端らしい。
王子の名前は「アレクス」、金髪の碧眼で色白のイケメンだ。
身長183センチ、体重63キロ。
剣術・魔術に長け学校の成績は良好・・・超優良物件な気がする。
お姫様は何が気に喰わなかったんだろう?
もしかしてオスロウ国聖騎士団長シグみたいな感じの性格なのだろうか?
見た目も少し似ているし。
私はシグがサクラに迫ってる姿を思い出して思わず笑ってしまう。
「こっちはお姫様に関する書類か。」
当事者のお姫様の名前は「セーニア」。
外見は母親の血を色濃く引き、闇妖精種特有の褐色の肌に尖った耳をした美しい容姿。
国王が人間種なので半闇妖精種って事か。
元々種族的に魔力が高い傾向に有るはずが、彼女は魔力は少なく腕力が高い武闘派で魔法の才能は皆無らしい。
そして気が強く「おてんば」と言う言葉が相応しいと書いて有る。
子供の頃から城の装飾品は壊すは隙を付いて脱走するは、オスロウ国の武闘大会に出場するといって旅に出ようとして部屋の壁を破壊。
積荷の樽に入って密航するはとやりたい放題で苦労したと書いて有る。
その他にも色々と恨み節の様に報告書に記述してあった。
・・・ってかこの書類は後半に行くにつれて事実報告より愚痴や個人の感想になってきている様な気がする。
この書類を王様に見せたら書いた人は減給されるんじゃないだろうか。
暗黒神ハーデスは王妃と複数のメイドに拉致されて、衣装合わせをする為に部屋を連れ出されて行った。
本日は衣装合わせをして、その後は夜通し口調や立ち振る舞いのスパルタ指導をされる様だ。
少し気の毒だが時間が無いので仕方が無い、本番は明日の夜なのだから。
彼が女性用のドレスを着るのを見たかったんだけどな。
バンボゥ国のパーティーやギュノス国でも既存の装備しか着用して無かったので、明日は少し楽しみだ。
私とDOSは資料に目を通しながら話をする。
「お姫様は大丈夫かな?もしかして好きな人が居て、その人と駆け落ちとか無いよね。」
「それは無いな。従者の話では恋愛や結婚自体に否定的な話をしていたと証言が有る。それと気になる話を耳にした。」
DOSの聞いた話では、以前より国家転覆を狙う組織が有り小さなテロ行為は幾度も無く有ったらしい。
それ系の話は労働組合で幾つか聞いたのを覚えている。
そういえば機械都市ギュノス国でも似た様な事が有ったな・・・
サクラと咲耶が温泉街で屋根を吹き飛ばしていた。
組織名は忘れたけど。
王族の命を狙うのはポピュラーな事なんだろう。
そちらはミカさん達に任せておけば大丈夫だと思うけど。
私達は明日の暗黒神ハーデスのお見合い大作戦を成功させなければならない。
「DOS、上手く行くかな?」
「・・・依頼された仕事だ、やるしかあるまい。ハーデス次第では有るけどな。」
私達の成功目標は「いい感じで結婚の話を先延ばしにする」事だ。
それにしても目標がふわっとしているのが難点だ。
ぶち壊すのは簡単だけど、なるべく穏便に先延ばししなければ国際問題になり兼ねない。
見た目だけなら王様と王妃のお墨付きを頂いたので問題は無い。
後は下手な発言をしなければ乗り切れるかも知れない。
果たして、うまく行くだろうか・・・
とても不安だ。
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