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砂漠の国編
126話 守護神「メジード」
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-蜃気楼の街-
この街を散策すること3時間。
DOSがマッピングをしながら街の全体像を把握し、ボスが出現するおおよそのエリアが特定出来たらしい。
流石は「深紅の薔薇」サブマスター。
彼のスマートな戦闘スタイルは勉強になる。
無駄の無い美しい動きは俺の目標でも有る。
元々戦士職だった俺はパーティーを癒しながら派手で華麗に戦えるプレイヤーになりたい。
ゴゴゴゴゴゴォ・・・
突然町全体が大きく揺れる。
多分ボスエリアに足を踏み入れた証拠だ。
瞬間的に周囲の街がブロック状に分解され眼前に広がる空間に集約されて行く。
先程まで建物が有った空間は3D空間を形成する前のジャングルジムの様な黒い格子状の線で造られた骨組みだけ残し白いブロックとして目の前の空間に吸収されボスの形へと形状を変化させる。
「気を付けてください!来ますよ!」
ミカエルが隊列を指示し全員が配置に着く。
このレイドクエストのボスは「メジード」がその姿を現す。
状態異常を引き起こす精神系攻撃が得意で魅惑・幻惑・混乱・毒・睡眠・麻痺・恐慌と全てに通じている。
魔法防御力が高く、物理攻撃主体の攻撃にも状態異常が付加されている。
ゲームでは毒は継続的ダメージ、睡眠・恐慌・麻痺は「行動不能」。
魅惑・混乱に掛かったプレイヤーは「視覚に映る全てのプレイヤーがモンスターに見えて、PVPやPKをする気が無くても攻撃が当たる様になる」、つまりパーティーアタックが可能になり同士討ちとなる可能性が有る。
幻惑の状態は似ているが「視覚に映るキャラクター位置がズレ攻撃が当たり辛くなる」と言う効果だが、この現実世界の様な感覚で状態異常を喰らったらと考えると恐ろしい。
ミカエルは冒険者も含め状態異常の対処法を教え、決して焦らない様にと釘を刺していた。
基本混乱以外の視覚的異常掛かった場合無理に動いたり攻撃をしない事が重要だ。
俺の役割は体力と状態異常の回復を中心とする完全補助だ。
俺の他にもアークビショップやプリースト等の回復を主体にした職業の冒険者も居るので彼らに指揮を出すのは俺の役目だ。
メジードは約6メートル位の大きさを誇る将棋の駒の角を取った様な石板の様な形状で、巨大な2つの赤い目が中央に存在している。
巨大な目が光周囲の空間を包むような威圧感が広がる、戦闘開始だ。
DOSが先手を取り長銃で射撃をする。
巨大な爆発音の様な銃声が響き二つの目の中央に着弾し貫通。
白いブロック状の瓦礫が飛散し眉間に巨大な風穴が空く。
「やったか!」「すげぇ!」「勝ったな!」
「おっしゃぁ!俺帰ったら彼女と結婚するんだ!」
冒険者達が口々に死亡フラグを口にする。
・・・最後の結婚を叫んだ奴は絶対ワザとだろ!
確かにDOSは伝説の武器を手に入れて異常な攻撃力を手に入れたのは間違い無い。
だがどんなに強力な攻撃だとしても30人以上参加しているレイドボスが簡単に死ぬ訳が無い。
もしゲームの情報が反映されているとしたらレイドボスの能力値は参加人数分強化される。
そう考えると周囲の冒険者が邪魔でしか無い。
しかし、俺は以前の様に彼らをNPCとして割り切れないでいる。
はっきり言って見知らぬ他人だが、少なくとも目の前で死んで欲しくはない。
彼らを守るのは俺の役目だ。
「・・・しゃあないですね。」
俺は全体に物理防御障壁張り、能力向上魔法を使用し敵の攻撃に備える。
物理攻撃力特化カスタマイズの補助ヒーラーの俺は非常に中途半端なキャラクターなのは自覚している。
元々最終職業は戦士系の前衛職にしていた。
ギルド「深紅の薔薇」は最大人数52人の中堅ギルドで補助系職業が少なかった。
サービス2年目を過ぎると引退者が増え最終的に残ったのは6人。
迷う事は無かった。
皆を支える為に俺は転職を選んだ。
後方に待機するハーデスが魔法職の冒険者を3部隊に別け、再充填時間を調整し戦国時代で使用されたと噂される「三段撃ち」の要領で絶やす事の無い連続攻撃魔法を開始。
そしてハーデスは極大攻撃魔法を中心に攻撃をしている。
メジードの魔法防御力を高く冒険者が使う上位魔法ではほとんどダメージが無い。
眉間の貫通した銃弾跡も徐々に修復が進んでいる。
前衛のサクラとアルラトは特殊技能による物理攻撃、ミカエルと前衛職冒険者は防御陣形を取りつつ攻撃に参加する安全対策を重視した作戦だ。
DOSは状態異常を起こす両目を狙い集中狙撃を行う。
しかしメジードは目の位置を自在に移動出来る様で部位破壊出来ないでいる。
「まずい!」
俺達は攻勢だったがメジードの右目が閃光を放ち、近くに居たアルラト以外の複数人の冒険者が何らかの状態異常に掛かり戦況が一変する。
その後連続して左目が輝きミカエルとDOSとアルラト以外の全員が複数の状態異常を追う。
ミカエルは装備している鎧の恩恵、DOSは種族特性のお陰で助かっている。
アルラトはフロアボスの為、状態異常無効化能力が備わっているらしく周囲の状況が理解出来て無い様子だ。
俺は急いで範囲状態異常回復魔法を掛けるが複数の状態回復は同時には出来ない。
優先順位は行動不能と感覚異常を治す事だ、毒の効果は実際に喰らうとゲーム内の見た目とは裏腹に苦痛で悶えたくなる感覚だった。
中には動けない程の強烈な腹痛を患ったり全身が針に刺されたりする様な激痛を感じる等、思ったよりもバリエーションが豊富で驚いた。
メジードの物理攻撃は自身の体を自在に変形しアルラトの様に複数の腕を使い打撃・刺突・斬撃と物理攻撃1つ1つにランダムで状態異常が付与して有るので回復が追い付かない。
防御陣形で少しずつ体力を削るが、瞬間的にメジードの額に第3の目が出現し高確率全体状態異常魔法【アルクヴィルステイト】が発動し俺は瞬間的に意識を失う。
「しまっ・・・・」
・
・
・
此処は何処だ。
俺は複数のマルチディスプレイの前で目を覚ます。
そうか、株価チャートを見ながら寝てしまっていた様だ。
何か長い夢を見ていた様な気がする。
机の上にはセブンイレ●ンの食べかけのコーン●ヨネーズパンと飲みかけのオ●ナミンCが有る。
炭酸の抜けきった温い●ロナミンCを一気飲みし、パソコンのモニターに目をやる。
「温!やはり温いとまずいな・・・。」
俺は眼を疑った。
自分が所有している株の株価が全て急降下で下がっていた。
何だコレは・・・冗談だろ?
唖然とし頭の中が真っ白になる。
損切りしようにも出来ない上に更にチャートは下がり続ける、こんな事有り得ない!
1つの銘柄ならまだしも・・・!
世の中で何が起きているのか検索エンジンをフル活用して調べる。
その時、頭部に激痛が走り目の前が白く輝く。
「何時まで寝てるでござるか!この戦いはお主が勝利の鍵だ!とっとと起きるでござる!」
ふと気が付くと目の前に血だらけのサクラが苦痛に歪んだ険しい顔で睨んでいる。
夢?
懸命に思考を巡らす。
そうか、メジードの精神攻撃で睡眠と恐慌状態だったんだ。
サクラに物理的に叩き起こされたのだろう。
妙にリアルで嫌な夢だ。
今でも心臓がバクバクと大きく脈動する。
夢で良かった・・・
いや、良く無かった・・・のか?
株で得た金を転がしながら資産を増やすだけの生活を続けて何年になるだろう?
人間関係を絶ちパソコンを眺める虚無な毎日。
10代の時に比べて肌は荒れ体重が増え額の面積が広くなった気がする。
たまに一人でジムのサウナに行き、気が向いたら近くの山へ登る。
後はコンビニ飯の生活、この繰り返しだ。
お金が世の中の全てだと思っていた・・・SMOで皆に出会うまでは。
・・・そう、楽しかった。
暇潰しに始めたゲームで今までに感じた事の無い絆の様な物を感じるとは思いも寄らなかった。
格好良い美女ミカエルとDOS、馬鹿なサクラ、厨二なハーデス、明るく可愛いシノブ・・・途中参加のアルラトも。
皆と過ごした時間が俺の人生で1番楽しい時間だ、俺はこの世界で皆と生きたい。
「もう少し優しく起こして欲しいものですね。」
「悪かったでござるな、これでもお主を守るのに必死だったでござるよ。」
そうか、サクラは俺を守って傷を負ったのか。
血だらけのサクラを見て何故だか少し頬が緩む。
面白いからじゃない、嬉しいからだ。
俺は立ち上がりサクラに完全回復魔法を掛け、そして前線で戦う皆の元へ走り出した。
この街を散策すること3時間。
DOSがマッピングをしながら街の全体像を把握し、ボスが出現するおおよそのエリアが特定出来たらしい。
流石は「深紅の薔薇」サブマスター。
彼のスマートな戦闘スタイルは勉強になる。
無駄の無い美しい動きは俺の目標でも有る。
元々戦士職だった俺はパーティーを癒しながら派手で華麗に戦えるプレイヤーになりたい。
ゴゴゴゴゴゴォ・・・
突然町全体が大きく揺れる。
多分ボスエリアに足を踏み入れた証拠だ。
瞬間的に周囲の街がブロック状に分解され眼前に広がる空間に集約されて行く。
先程まで建物が有った空間は3D空間を形成する前のジャングルジムの様な黒い格子状の線で造られた骨組みだけ残し白いブロックとして目の前の空間に吸収されボスの形へと形状を変化させる。
「気を付けてください!来ますよ!」
ミカエルが隊列を指示し全員が配置に着く。
このレイドクエストのボスは「メジード」がその姿を現す。
状態異常を引き起こす精神系攻撃が得意で魅惑・幻惑・混乱・毒・睡眠・麻痺・恐慌と全てに通じている。
魔法防御力が高く、物理攻撃主体の攻撃にも状態異常が付加されている。
ゲームでは毒は継続的ダメージ、睡眠・恐慌・麻痺は「行動不能」。
魅惑・混乱に掛かったプレイヤーは「視覚に映る全てのプレイヤーがモンスターに見えて、PVPやPKをする気が無くても攻撃が当たる様になる」、つまりパーティーアタックが可能になり同士討ちとなる可能性が有る。
幻惑の状態は似ているが「視覚に映るキャラクター位置がズレ攻撃が当たり辛くなる」と言う効果だが、この現実世界の様な感覚で状態異常を喰らったらと考えると恐ろしい。
ミカエルは冒険者も含め状態異常の対処法を教え、決して焦らない様にと釘を刺していた。
基本混乱以外の視覚的異常掛かった場合無理に動いたり攻撃をしない事が重要だ。
俺の役割は体力と状態異常の回復を中心とする完全補助だ。
俺の他にもアークビショップやプリースト等の回復を主体にした職業の冒険者も居るので彼らに指揮を出すのは俺の役目だ。
メジードは約6メートル位の大きさを誇る将棋の駒の角を取った様な石板の様な形状で、巨大な2つの赤い目が中央に存在している。
巨大な目が光周囲の空間を包むような威圧感が広がる、戦闘開始だ。
DOSが先手を取り長銃で射撃をする。
巨大な爆発音の様な銃声が響き二つの目の中央に着弾し貫通。
白いブロック状の瓦礫が飛散し眉間に巨大な風穴が空く。
「やったか!」「すげぇ!」「勝ったな!」
「おっしゃぁ!俺帰ったら彼女と結婚するんだ!」
冒険者達が口々に死亡フラグを口にする。
・・・最後の結婚を叫んだ奴は絶対ワザとだろ!
確かにDOSは伝説の武器を手に入れて異常な攻撃力を手に入れたのは間違い無い。
だがどんなに強力な攻撃だとしても30人以上参加しているレイドボスが簡単に死ぬ訳が無い。
もしゲームの情報が反映されているとしたらレイドボスの能力値は参加人数分強化される。
そう考えると周囲の冒険者が邪魔でしか無い。
しかし、俺は以前の様に彼らをNPCとして割り切れないでいる。
はっきり言って見知らぬ他人だが、少なくとも目の前で死んで欲しくはない。
彼らを守るのは俺の役目だ。
「・・・しゃあないですね。」
俺は全体に物理防御障壁張り、能力向上魔法を使用し敵の攻撃に備える。
物理攻撃力特化カスタマイズの補助ヒーラーの俺は非常に中途半端なキャラクターなのは自覚している。
元々最終職業は戦士系の前衛職にしていた。
ギルド「深紅の薔薇」は最大人数52人の中堅ギルドで補助系職業が少なかった。
サービス2年目を過ぎると引退者が増え最終的に残ったのは6人。
迷う事は無かった。
皆を支える為に俺は転職を選んだ。
後方に待機するハーデスが魔法職の冒険者を3部隊に別け、再充填時間を調整し戦国時代で使用されたと噂される「三段撃ち」の要領で絶やす事の無い連続攻撃魔法を開始。
そしてハーデスは極大攻撃魔法を中心に攻撃をしている。
メジードの魔法防御力を高く冒険者が使う上位魔法ではほとんどダメージが無い。
眉間の貫通した銃弾跡も徐々に修復が進んでいる。
前衛のサクラとアルラトは特殊技能による物理攻撃、ミカエルと前衛職冒険者は防御陣形を取りつつ攻撃に参加する安全対策を重視した作戦だ。
DOSは状態異常を起こす両目を狙い集中狙撃を行う。
しかしメジードは目の位置を自在に移動出来る様で部位破壊出来ないでいる。
「まずい!」
俺達は攻勢だったがメジードの右目が閃光を放ち、近くに居たアルラト以外の複数人の冒険者が何らかの状態異常に掛かり戦況が一変する。
その後連続して左目が輝きミカエルとDOSとアルラト以外の全員が複数の状態異常を追う。
ミカエルは装備している鎧の恩恵、DOSは種族特性のお陰で助かっている。
アルラトはフロアボスの為、状態異常無効化能力が備わっているらしく周囲の状況が理解出来て無い様子だ。
俺は急いで範囲状態異常回復魔法を掛けるが複数の状態回復は同時には出来ない。
優先順位は行動不能と感覚異常を治す事だ、毒の効果は実際に喰らうとゲーム内の見た目とは裏腹に苦痛で悶えたくなる感覚だった。
中には動けない程の強烈な腹痛を患ったり全身が針に刺されたりする様な激痛を感じる等、思ったよりもバリエーションが豊富で驚いた。
メジードの物理攻撃は自身の体を自在に変形しアルラトの様に複数の腕を使い打撃・刺突・斬撃と物理攻撃1つ1つにランダムで状態異常が付与して有るので回復が追い付かない。
防御陣形で少しずつ体力を削るが、瞬間的にメジードの額に第3の目が出現し高確率全体状態異常魔法【アルクヴィルステイト】が発動し俺は瞬間的に意識を失う。
「しまっ・・・・」
・
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此処は何処だ。
俺は複数のマルチディスプレイの前で目を覚ます。
そうか、株価チャートを見ながら寝てしまっていた様だ。
何か長い夢を見ていた様な気がする。
机の上にはセブンイレ●ンの食べかけのコーン●ヨネーズパンと飲みかけのオ●ナミンCが有る。
炭酸の抜けきった温い●ロナミンCを一気飲みし、パソコンのモニターに目をやる。
「温!やはり温いとまずいな・・・。」
俺は眼を疑った。
自分が所有している株の株価が全て急降下で下がっていた。
何だコレは・・・冗談だろ?
唖然とし頭の中が真っ白になる。
損切りしようにも出来ない上に更にチャートは下がり続ける、こんな事有り得ない!
1つの銘柄ならまだしも・・・!
世の中で何が起きているのか検索エンジンをフル活用して調べる。
その時、頭部に激痛が走り目の前が白く輝く。
「何時まで寝てるでござるか!この戦いはお主が勝利の鍵だ!とっとと起きるでござる!」
ふと気が付くと目の前に血だらけのサクラが苦痛に歪んだ険しい顔で睨んでいる。
夢?
懸命に思考を巡らす。
そうか、メジードの精神攻撃で睡眠と恐慌状態だったんだ。
サクラに物理的に叩き起こされたのだろう。
妙にリアルで嫌な夢だ。
今でも心臓がバクバクと大きく脈動する。
夢で良かった・・・
いや、良く無かった・・・のか?
株で得た金を転がしながら資産を増やすだけの生活を続けて何年になるだろう?
人間関係を絶ちパソコンを眺める虚無な毎日。
10代の時に比べて肌は荒れ体重が増え額の面積が広くなった気がする。
たまに一人でジムのサウナに行き、気が向いたら近くの山へ登る。
後はコンビニ飯の生活、この繰り返しだ。
お金が世の中の全てだと思っていた・・・SMOで皆に出会うまでは。
・・・そう、楽しかった。
暇潰しに始めたゲームで今までに感じた事の無い絆の様な物を感じるとは思いも寄らなかった。
格好良い美女ミカエルとDOS、馬鹿なサクラ、厨二なハーデス、明るく可愛いシノブ・・・途中参加のアルラトも。
皆と過ごした時間が俺の人生で1番楽しい時間だ、俺はこの世界で皆と生きたい。
「もう少し優しく起こして欲しいものですね。」
「悪かったでござるな、これでもお主を守るのに必死だったでござるよ。」
そうか、サクラは俺を守って傷を負ったのか。
血だらけのサクラを見て何故だか少し頬が緩む。
面白いからじゃない、嬉しいからだ。
俺は立ち上がりサクラに完全回復魔法を掛け、そして前線で戦う皆の元へ走り出した。
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