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ブラックドラゴン討伐編

119話 ブラックドラゴン襲来

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その日の真夜中、危機を知らせる警鐘が町中に響き渡る。

それはドラゴンの襲来を知らせる物だ。

「・・・ん。」

目覚まし時計の音や携帯電話のアラーム機能もそうだが熟睡している最中に耳元で大きな音が鳴ると心臓に悪い。

脳は一瞬で覚醒するが、視界がぼやけて良く見えない・・・深夜なのは間違いない。
全く毎回夜間に襲撃してくるとは迷惑な話だ。

体を起こし罠を解除する。
未だ寝ているシャルが引っ掛かったら面倒だ。

シャルを起こしすぐに装備を整える。
宿屋の窓から外を見ると前回のドラゴン襲来の時とは慌ただしさが違う。

住民は叫び声を上げ貴族街の方へ走って逃げている。
冒険者と思われる人達は城門の方へ向かっているのが見える。

急いで1階に降りると、ちょうど夜間警備に参加していた蜥蜴人間種リザードマンの兵士の1人が焦った様子で宿屋に駆け込んで来て叫んだ。

「中型のドラゴン約30体と巨大な・・・!巨大なドラゴンが!体長8メートル以上有る巨大なドラゴンが此方に向かって来ています!今、魔法師団部隊が配置完了し小型ドラゴン数体の迎撃準備を整えています!」

昨日小型のドラゴンが襲来したばかりなのに早すぎる。

眷属が50匹全部倒されたのが分かるのだろうか?
設定上では魔力で召喚された眷属としか書かれて無かった様な記憶が有る。

ズウゥゥゥゥン

その時、巨大な地響きが鳴り衝撃で窓ガラスが一斉に割れ、宿全体が軋む。
宿屋の入口から外に出ると、城壁を破壊し聳え立つ巨大なモンスターのシルエットが視界に入る。

そして宿屋の外から「うわぁぁぁ!」と言う人々の叫び声が響きわたる。

ついに来た、レイドボスのブラックドラゴンだ。
恐らく空から舞い降りたブラックドラゴンが城門を破壊して街に侵入して来たのだ。

近距離で見るとかなりでかい、黒い鱗が少ない光に反射して輝く。
体長は小型のドラゴンの約3倍は有る。

筋力の発達した4本の腕と巨体を支える2本の脚。

暗闇でも光る黄金色の瞳に鋭い爪と牙、攻撃方法は巨体による突進と4本の腕と棘の付いた尻尾による強力な物理攻撃。
大きく開口した口から放たれる青く光り輝く高熱ブレス、更に幾つかの無詠唱魔法を使って来るはず。

ゲームでの討伐制限時間は30分。

もしイベント内容を継承しているのであればブラックドラゴンも逃げる可能性が有る。
倒すのであれば一気に高ダメージを与える必要が有る。

ブラックドラゴンの破壊された城門の瓦礫が見える。
城門の上に居たDOSどっちゃんは無事だろうか?

「入口で食い止めるしかない!私が優先攻撃順位ヘイトを稼いで街の外へ誘導する!援護してください!」

「ミ、ミカさん!了解!シャルは近隣住民の避難をお願い。」

「わかりました!シノブさん気を付けてください。」

「お、シノブ声が戻って良かったですね。」

「・・・・ったく、深夜に現れるとか勘弁して欲しいでござる。」

宿屋からサクラと咲耶が着替えながら出て来る、深夜帯に急に起こされて不機嫌な上に眠そうだ。

皆武器を構えブラックドラゴンの足元へ向かう。

戦闘の開始だ!

ミカさんの剣が激しく発光し【原初の光プレモディアルライト】でブラックドラゴンの胸から腹にかけて覆われた鱗ごと斬り裂く。

時間制限を考えて初手から最大の攻撃を加えたのだ。

金属が接触した様な甲高い音と衝撃が走りブラックドラゴンが一瞬怯む。

傷口から紫色の血液が流れるが、傷口が見る見る間に塞がり始める。
【自然回復】が付いているのか、サクラと私は【縮地】を使い傷口が塞がる前に追撃を加える。

「【十文字刹那じゅうもんじせつなきわみ】!」

「影分身八刀流【地獄ノ業火インフィヌス】!」

ブラックドラゴンの傷口を抉る様に攻撃を合わせる。

「グワァァァ!!!」

ブラックドラゴンは巨大な咆哮と共に光り輝く熱風を吐き周囲を青い炎で燃やす。
サクラを庇う様にブラックドラゴンから距離を取る。

咲耶の炎耐久障壁を張り全員を包み込む。

「大丈夫か!まずは街の外へ誘導するぞ!」

ミカさんが城壁の外へ向かって走りながら叫ぶ。

「ヒットアンドアウェイでござるな。シノブ殿、行くでござる。」

「うわっ、ちょっ」

「サクラ!シノブの腕を引くな!離せ!」

破壊された外壁を越えて街の外へ走る。

外壁の前では小型ドラゴン数体と暗黒神ハーデスハーちゃんとエウルゥ率いる蜥蜴人間種リザードマンが交戦していた。

街からブラックドラゴンを誘導して来た私達の姿を見た暗黒神ハーデスハーちゃんはエウルゥと魔法騎士マジックナイト隊に指示を出し私達に合流する。

「遅かったな、だが外に誘導は成功した様だな。」

銃撃音と共に薬莢が落ちる。
そして近くまで飛翔して来た中型ドラゴンの頭部が吹き飛ぶ。

【不可視化】状態を解除したDOSどっちゃんが目の前に現れる。

街の方からシャルと狼人間種ワーウルフの戦士隊と労働組合ギルドから派遣された大勢の冒険者も走ってくる。

どうやら外壁付近の住民の避難が終わった様だ。

「冒険者の皆さんとアニマ国兵士の皆さんはシャルさんとエウルゥさんの指示で中型のドラゴンを抑えて貰えますか!「深紅の薔薇」はブラックドラゴンを倒す!陣形を組むぞ!」

「「「「はい!大天使ミカエル様!」」」」

まるでアイドルの追っかけの様になっている。

そう言えばオスロウ国でもサクラに対して似た様な感じになっていた観戦者もいたな。
アニマ国の戦士団が引く程に冒険者の方々がやる気十分だ。

「了解だ。」「心得たでござる!」「りょ!」
「ふん、闇に滅するまでだ!」
「OK!そう言えばアルラトが居ないですね。」

「私は最初から居ますよ?」

さっきから視界に入っては居たが自然に溶け込んでいて分からなかったが、ミカさんがもう1人居る事に気付く。

姿が見えないと思ったらミカさんの姿をコピーしていた様だ。

紛らわしいな。
せめて口調はいつもの僕っ子にしてくれないと見分けが付かない。

「さぁ!皆さん行きますよ!」

「いや、アルラト・・・そこはミカエルさんの台詞ですから。」

「紛らわしいでござるな。」

「お前たち・・・・遊んでいる場合か!来るぞ!」

呆れて頭を抱えていたDOSどっちゃんの叫び声が戦闘の合図となった。
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