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未実装大陸編
107話 海賊団襲来
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機械都市ギュノス国を南下する事、丸1日で大陸南部の船着き場へと到着した。
この場所からは「オスロウ国の波止場行き」と「アニマ国行き」と「バンボゥ国波止場行き」の船が1日朝昼の2回往復航行している様だ。
船員も合わせて200人乗りの木造の大型船となっておりアニマ国には片道1日掛かるので宿泊施設も付いているらしい。
マザーブレインの計らいで有料乗船券を人数分発行して貰っていたので船にはすんなりと乗り込む事が出来た。
上質な木材で出来た船内は素朴さの中に落ち着きが有り、海風が運ぶ磯の香りと海鳥の声が豊かな自然を感じさせてくれた。
機械都市ギュノス国はとても発展していて便利な生活が出来るが都市を出ないとこう言った自然と触れ合う機会は少ない。
船の汽笛が鳴り、船の上部に留まっていた海鳥が一斉に飛び立ちアニマ国に向けて船がゆっくり発進し始める。
・
・
・
海釣りが出来ると言う事でミカさんとサクラと私は船首の方へ行き大海原を眺めながら、レンタルした釣り竿を垂らしのんびりと釣りをする。
海のモンスターは存在しないが空を飛ぶ事の出来るモンスターが稀に襲って来る事が有ると聞いたので【索敵】を使用しておく。
咲耶とアルラトは20分程度の船旅で既に船酔いを起こしたらしく、宿泊部屋でDOSが看病していた。
暗黒神ハーデスは船を散策すると言って出かけて行った。
船首で半日近く釣り糸を垂らしているが一向に魚が釣れる気配が無い。
そう私達3人共1匹も釣れていない。
やはり停泊していない船での釣りは難しいのだろうか。
「釣れないね。」
「そうですね、サクラなんて寝てしまいましたよ。」
半日程、海を真直ぐ進むと前方から同系統の船が此方に向かって進んで来るのが分かる。
アニマ国方面から大陸南の船着き場へ戻って来た船だ、しかし様子が少しおかしい。
こちらの船の真正面に真直ぐ向かって来ているのだ。
航路が重なるにしても、余りに真正面過ぎる。
私は船首から船橋の方を見る。
光を瞬かせて相手の船に合図を送っている様だが前方の船からは何の返信信号も無く、まっすぐ此方に向かって来ている様子だ。
お互いの進路を変更しなければ正面衝突して座礁してしまう恐れが有る。
「シノブ、気が付いたか。」
「うん、何かトラブルかな?サクラ起きて!起きてってば!」
うたた寝しているサクラを揺さぶり起こす。
「え?え?何でござるか?シノブ殿何かあったのでござるか?」
異変に気付いた操舵士が舵を切り、私達が乗っている船が右方向へ旋回し始める。
何故か前方の船も同じ方向に舵を切り始める。
明らかに異常な動きだ。
「このままだとぶつかるでござるよ!」
船と船が近付き正面衝突は回避出来たものの、船の側面が大きくぶつかり合い衝撃で船首に居た大勢の客がバランスを崩し数名が海に投げ出される。
側面がガリガリと擦れ船が大きく傾いた所で相手の船から大勢の人が甲板に出てきて巨大な銛が付いた銃の様な武器を発射し、アンカーでお互いの船を固定する。
野党?この場合海賊?
最初に感じた印象だった。
統一性の無い衣服を身に纏い、薄笑いを浮かべた粗野な見た目をしている。
多分あれは海賊だ。
しかし海上戦闘のミニイベントはゲームには存在しない。
「・・・海賊ですね。」
「みたいだね。」
「サブイベント盛り沢山でござるな。」
海賊を撃退するのは容易だけど、恐らく海賊の乗って来た船の船員とお客さんが人質になっているだろうとミカさんが推測し皆に待機を指示する。
装備武器を回収されては困る。
まずは武器をアイテムストレージに戻し丸腰を装う。
どのみち人間相手には素手でも殺害してしまう可能性が有る為気を付けないと・・・
ミカさんにも改めて一般人の弱さを伝え、手加減自体も気を付ける様に伝える。
甲板には安物のサーベルの様な武器や銃器を装備した下っ端が20名程度。
海賊のほぼ全員が頭上に色とりどりの犯罪者印が付いている。
そして奥から海賊のボスっぽい人物が現れた。
薄い頭頂部で髭を蓄えた中年だが身長が高く190センチは有りそうだ。
見えている範囲では腕の筋肉量も有りそうだレベル40以上かな?頭上には黒色の犯罪者印が付いている。
この位置からは聞こえないが部下に何か指示を出し数人が此方の船に乗り込み作業を行い始めている。
どうやら碇を下ろさせ船の位置を固定させた様だ。
しばらくすると此方の船の船長と護衛らしき数人の冒険者達が甲板に現れ、海賊のボスらしき人物と何やら話をしている様子だ。
船と船が接触している面と逆側の側面から小型の救命ボートが出て、数名の船員が先程落下した乗客を救出していた。
落下した客は全員無事の様だ。
むしろそのまま逃げた方が良いんじゃないかな。
船長の後ろに控えていた護衛の冒険者が船長を後方から剣で心臓の位置を刺し、船長が血を吐き倒れ込む。
護衛が裏切った?
それとも最初から海賊とグルだったのか?
見せしめの為か、船長の死体は船の甲板に放置される。
「・・・用心棒が実は敵のスパイだったと言うヤツでござるか?」
「そのようですね。」
「酷い・・・」
下っ端海賊が続々と私達の乗っている船に雪崩れ込んで来て、私達は縄で拘束される。
この程度の拘束なら簡単に外す事が出来る。
しばらく様子を見ようとミカさんが指示を出す。
小1時間程で、ほぼ全部の乗客と船員が縛り上げられ甲板に集められる。
暗黒神ハーデスとDOSの姿が見当たらない。
DOSは【不可視化】で隠れているとして、暗黒神ハーデスは行方不明のままだ。
咲耶とアルラトも空気を読んだのかDOSの指示なのか分からないが、船酔いで青い顔色しながら大人しく縛り上げられていた。
海賊のボスらしき薄毛の髭もじゃ親父が大声で喋り始めた。
「この船は我々海賊団〖ポセイドン〗が占拠した!全ての積荷は頂いていく!抵抗せずに大人しくしていれば危害は加えない!抵抗するのであれば・・・ああなる!」
血だらけで倒れた船長を親指で指し乗客に見せる。
無残な船長の姿が視界に入った乗客が悲鳴を上げたり気を失う女性や嘔吐する者も居た。
それにしても「ポセイドン」とは大層な名前だ事で・・・
名前負けしてるんじゃないか?
船長は死んで間も無いからミカさんの持つ【ヒルドルの盾】で復活させる事が出来るはずだけど、これ以上被害者が出ないと良いけど・・・と考えていた時に状況に動きがあった。
ドサッ、ドサッ・・・・次々と下っ端海賊が目の前で倒れていく。
白目を向いて気絶している様だ。
事態が把握出来ない海賊達は見えない何者かを警戒し焦りの表情を浮かべる。
やがて此方の船で人質を見張っていた20人余りの海賊全てが気絶して倒れる。
「な、何だ!?何が起こっている!」
海賊のボスが事態を把握出来ず焦り始める。
船員や乗客も何が起きているか理解できず怯えている様子だった。
海賊の乗って来た船の船橋から黒衣を纏った男・・・・
いや女性・・・いや、ネカマが甲板に現れる。
あれは暗黒神ハーデスだ。
「おい、DOS!こっちは片付いたぞ!」
正直な感想を言うと、海賊よりも暗黒のオーラを放っている彼の方が悪役に見える。
船内から魔王が現れた様に見えたのか海賊のボスと人質の乗客全てが恐れ慄く。
「な、何者だてめぇは!どこから来た!」
「・・・・そこまでだ。」
【不可視化】を解いたDOSが海賊のボスの後方から現れ、その場に居た乗客が驚く。
DOSが【不可視化】状態で下っ端海賊を制圧したんだ。
向こうの船は暗黒神ハーデスが状態異常魔法とかを使って制圧したんだろう。
海賊のボスだけになった事を確認した私達は思いっきり力を入れ自身を縛る縄を無理矢解く。
「な、何なんだお前らは!ちぃ!糞が!」
先程までの威勢を無くし挙動不審な様子で焦る海賊ボスは懐から小型の縦笛の様な物を取り出し吹き鳴らす。
「ピィィィィィィィィィ!」と言う甲高い音が海上に鳴り響き、付近の海が大きく揺らいだ。
「な、なんだ!?」
船が大きく揺れたせいかミカさんが珍しく驚いていた。
その時、私の【索敵】に大きな赤いマークが現れる。
「・・・・何か来る!」
敵勢反応!後方海中にモンスターの反応が現れた。
「後方よりモンスターの反応!大型のモンスターが来る!」
船後方の海中から巨大な海蛇の様なモンスターが顔を見せた。
なんじゃこりゃ!こんなモンスター見た事無い。
全長は分からないが、海から出ている頭部だけでも直径10メートル以上の大きさだ。
頭を出しただけで海が波打ち両方の船が大きく揺れる、あんなのが暴れたら確実に船ごと沈んでしまう。
「おい、お前ら!俺が嗾けたらコイツが暴れるぜ!」
海賊のボスが冷や汗をかきながら不敵に笑う、形勢逆転だと思っている顔だ。
海上戦闘なんてした事無いし、どうしよう。
そう考えているとDOSが素早く【アグネイヤ】を構え、間髪入れずに弾丸を発射する。
周囲が一瞬輝き、巨大海蛇に着弾した瞬間に甲高い金属音が鳴り海蛇の頭部が弾け光の粒子と共に対消滅する。
海上に見えていた残り半身も大きな波を造り、海中に沈む。
その光景を目にした乗客全員と海賊のボスが口をあんぐりと開けて唖然とする中、【縮地】で接近したサクラが自身の縛られていた縄で強襲し一撃の元に気絶させる。
その僅かな一瞬の光景に乗客が驚きの声を上げ、それはいつしか歓声に変わっていた。
船上で起きた海賊騒ぎはDOSと暗黒神ハーデスのお陰であっさりと解決したのだった。
その後ミカさん達は両方の船の乗客の安否を確認し、拘束されていた乗客の縄を解き怪我をした乗客の回復やこの船の船長を蘇生をして順次救っていく。
私は【粘着罠】を使い全ての海賊達を拘束する。
海賊のボス以外は自分で抜け出すのは不可能だろう。
海賊ボスは【粘着罠】と一応【影縫い】で拘束する。
後で聞いた話だが咲耶とアルラトは単純に船酔いで動けずに無抵抗で縛られていたらしい。
指示されて大人しくしていた訳じゃないのか・・・。
暗黒神ハーデスが魔法でアンカーを破壊し船に空いた穴は船員達が手分けして修理を行った。
結局約5時間海上で遅延をしたが、船は航行可能な状態となり拘束した下っ端海賊と共犯の冒険者はギュノス領南の船着き場方面に戻る船に乗せギュノス国へ搬送。
海賊のボスは一応ミカさんの監視下の元アニマ国行きの船に乗せてアニマ国の警備兵に受け渡す事にした。
「ギュノス国から英雄が誕生した報告が有ったが、君達はもしかして「深紅の薔薇」の方々とは。命を救って頂いた上、乗客や乗員も全て無事だった。本当にありがとう!ありがとう!」
私達は両方の船の船長と船員にお礼を言われ、少し恐縮する。
今回はDOSと暗黒神ハーデスの活躍により事態を終息出来た、私は海賊の拘束の手伝いをしただけだ。
改めて出発の準備を終えた2隻の船は元の航路を辿り、それぞれの目的地に向けて再出発をした。
この場所からは「オスロウ国の波止場行き」と「アニマ国行き」と「バンボゥ国波止場行き」の船が1日朝昼の2回往復航行している様だ。
船員も合わせて200人乗りの木造の大型船となっておりアニマ国には片道1日掛かるので宿泊施設も付いているらしい。
マザーブレインの計らいで有料乗船券を人数分発行して貰っていたので船にはすんなりと乗り込む事が出来た。
上質な木材で出来た船内は素朴さの中に落ち着きが有り、海風が運ぶ磯の香りと海鳥の声が豊かな自然を感じさせてくれた。
機械都市ギュノス国はとても発展していて便利な生活が出来るが都市を出ないとこう言った自然と触れ合う機会は少ない。
船の汽笛が鳴り、船の上部に留まっていた海鳥が一斉に飛び立ちアニマ国に向けて船がゆっくり発進し始める。
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海釣りが出来ると言う事でミカさんとサクラと私は船首の方へ行き大海原を眺めながら、レンタルした釣り竿を垂らしのんびりと釣りをする。
海のモンスターは存在しないが空を飛ぶ事の出来るモンスターが稀に襲って来る事が有ると聞いたので【索敵】を使用しておく。
咲耶とアルラトは20分程度の船旅で既に船酔いを起こしたらしく、宿泊部屋でDOSが看病していた。
暗黒神ハーデスは船を散策すると言って出かけて行った。
船首で半日近く釣り糸を垂らしているが一向に魚が釣れる気配が無い。
そう私達3人共1匹も釣れていない。
やはり停泊していない船での釣りは難しいのだろうか。
「釣れないね。」
「そうですね、サクラなんて寝てしまいましたよ。」
半日程、海を真直ぐ進むと前方から同系統の船が此方に向かって進んで来るのが分かる。
アニマ国方面から大陸南の船着き場へ戻って来た船だ、しかし様子が少しおかしい。
こちらの船の真正面に真直ぐ向かって来ているのだ。
航路が重なるにしても、余りに真正面過ぎる。
私は船首から船橋の方を見る。
光を瞬かせて相手の船に合図を送っている様だが前方の船からは何の返信信号も無く、まっすぐ此方に向かって来ている様子だ。
お互いの進路を変更しなければ正面衝突して座礁してしまう恐れが有る。
「シノブ、気が付いたか。」
「うん、何かトラブルかな?サクラ起きて!起きてってば!」
うたた寝しているサクラを揺さぶり起こす。
「え?え?何でござるか?シノブ殿何かあったのでござるか?」
異変に気付いた操舵士が舵を切り、私達が乗っている船が右方向へ旋回し始める。
何故か前方の船も同じ方向に舵を切り始める。
明らかに異常な動きだ。
「このままだとぶつかるでござるよ!」
船と船が近付き正面衝突は回避出来たものの、船の側面が大きくぶつかり合い衝撃で船首に居た大勢の客がバランスを崩し数名が海に投げ出される。
側面がガリガリと擦れ船が大きく傾いた所で相手の船から大勢の人が甲板に出てきて巨大な銛が付いた銃の様な武器を発射し、アンカーでお互いの船を固定する。
野党?この場合海賊?
最初に感じた印象だった。
統一性の無い衣服を身に纏い、薄笑いを浮かべた粗野な見た目をしている。
多分あれは海賊だ。
しかし海上戦闘のミニイベントはゲームには存在しない。
「・・・海賊ですね。」
「みたいだね。」
「サブイベント盛り沢山でござるな。」
海賊を撃退するのは容易だけど、恐らく海賊の乗って来た船の船員とお客さんが人質になっているだろうとミカさんが推測し皆に待機を指示する。
装備武器を回収されては困る。
まずは武器をアイテムストレージに戻し丸腰を装う。
どのみち人間相手には素手でも殺害してしまう可能性が有る為気を付けないと・・・
ミカさんにも改めて一般人の弱さを伝え、手加減自体も気を付ける様に伝える。
甲板には安物のサーベルの様な武器や銃器を装備した下っ端が20名程度。
海賊のほぼ全員が頭上に色とりどりの犯罪者印が付いている。
そして奥から海賊のボスっぽい人物が現れた。
薄い頭頂部で髭を蓄えた中年だが身長が高く190センチは有りそうだ。
見えている範囲では腕の筋肉量も有りそうだレベル40以上かな?頭上には黒色の犯罪者印が付いている。
この位置からは聞こえないが部下に何か指示を出し数人が此方の船に乗り込み作業を行い始めている。
どうやら碇を下ろさせ船の位置を固定させた様だ。
しばらくすると此方の船の船長と護衛らしき数人の冒険者達が甲板に現れ、海賊のボスらしき人物と何やら話をしている様子だ。
船と船が接触している面と逆側の側面から小型の救命ボートが出て、数名の船員が先程落下した乗客を救出していた。
落下した客は全員無事の様だ。
むしろそのまま逃げた方が良いんじゃないかな。
船長の後ろに控えていた護衛の冒険者が船長を後方から剣で心臓の位置を刺し、船長が血を吐き倒れ込む。
護衛が裏切った?
それとも最初から海賊とグルだったのか?
見せしめの為か、船長の死体は船の甲板に放置される。
「・・・用心棒が実は敵のスパイだったと言うヤツでござるか?」
「そのようですね。」
「酷い・・・」
下っ端海賊が続々と私達の乗っている船に雪崩れ込んで来て、私達は縄で拘束される。
この程度の拘束なら簡単に外す事が出来る。
しばらく様子を見ようとミカさんが指示を出す。
小1時間程で、ほぼ全部の乗客と船員が縛り上げられ甲板に集められる。
暗黒神ハーデスとDOSの姿が見当たらない。
DOSは【不可視化】で隠れているとして、暗黒神ハーデスは行方不明のままだ。
咲耶とアルラトも空気を読んだのかDOSの指示なのか分からないが、船酔いで青い顔色しながら大人しく縛り上げられていた。
海賊のボスらしき薄毛の髭もじゃ親父が大声で喋り始めた。
「この船は我々海賊団〖ポセイドン〗が占拠した!全ての積荷は頂いていく!抵抗せずに大人しくしていれば危害は加えない!抵抗するのであれば・・・ああなる!」
血だらけで倒れた船長を親指で指し乗客に見せる。
無残な船長の姿が視界に入った乗客が悲鳴を上げたり気を失う女性や嘔吐する者も居た。
それにしても「ポセイドン」とは大層な名前だ事で・・・
名前負けしてるんじゃないか?
船長は死んで間も無いからミカさんの持つ【ヒルドルの盾】で復活させる事が出来るはずだけど、これ以上被害者が出ないと良いけど・・・と考えていた時に状況に動きがあった。
ドサッ、ドサッ・・・・次々と下っ端海賊が目の前で倒れていく。
白目を向いて気絶している様だ。
事態が把握出来ない海賊達は見えない何者かを警戒し焦りの表情を浮かべる。
やがて此方の船で人質を見張っていた20人余りの海賊全てが気絶して倒れる。
「な、何だ!?何が起こっている!」
海賊のボスが事態を把握出来ず焦り始める。
船員や乗客も何が起きているか理解できず怯えている様子だった。
海賊の乗って来た船の船橋から黒衣を纏った男・・・・
いや女性・・・いや、ネカマが甲板に現れる。
あれは暗黒神ハーデスだ。
「おい、DOS!こっちは片付いたぞ!」
正直な感想を言うと、海賊よりも暗黒のオーラを放っている彼の方が悪役に見える。
船内から魔王が現れた様に見えたのか海賊のボスと人質の乗客全てが恐れ慄く。
「な、何者だてめぇは!どこから来た!」
「・・・・そこまでだ。」
【不可視化】を解いたDOSが海賊のボスの後方から現れ、その場に居た乗客が驚く。
DOSが【不可視化】状態で下っ端海賊を制圧したんだ。
向こうの船は暗黒神ハーデスが状態異常魔法とかを使って制圧したんだろう。
海賊のボスだけになった事を確認した私達は思いっきり力を入れ自身を縛る縄を無理矢解く。
「な、何なんだお前らは!ちぃ!糞が!」
先程までの威勢を無くし挙動不審な様子で焦る海賊ボスは懐から小型の縦笛の様な物を取り出し吹き鳴らす。
「ピィィィィィィィィィ!」と言う甲高い音が海上に鳴り響き、付近の海が大きく揺らいだ。
「な、なんだ!?」
船が大きく揺れたせいかミカさんが珍しく驚いていた。
その時、私の【索敵】に大きな赤いマークが現れる。
「・・・・何か来る!」
敵勢反応!後方海中にモンスターの反応が現れた。
「後方よりモンスターの反応!大型のモンスターが来る!」
船後方の海中から巨大な海蛇の様なモンスターが顔を見せた。
なんじゃこりゃ!こんなモンスター見た事無い。
全長は分からないが、海から出ている頭部だけでも直径10メートル以上の大きさだ。
頭を出しただけで海が波打ち両方の船が大きく揺れる、あんなのが暴れたら確実に船ごと沈んでしまう。
「おい、お前ら!俺が嗾けたらコイツが暴れるぜ!」
海賊のボスが冷や汗をかきながら不敵に笑う、形勢逆転だと思っている顔だ。
海上戦闘なんてした事無いし、どうしよう。
そう考えているとDOSが素早く【アグネイヤ】を構え、間髪入れずに弾丸を発射する。
周囲が一瞬輝き、巨大海蛇に着弾した瞬間に甲高い金属音が鳴り海蛇の頭部が弾け光の粒子と共に対消滅する。
海上に見えていた残り半身も大きな波を造り、海中に沈む。
その光景を目にした乗客全員と海賊のボスが口をあんぐりと開けて唖然とする中、【縮地】で接近したサクラが自身の縛られていた縄で強襲し一撃の元に気絶させる。
その僅かな一瞬の光景に乗客が驚きの声を上げ、それはいつしか歓声に変わっていた。
船上で起きた海賊騒ぎはDOSと暗黒神ハーデスのお陰であっさりと解決したのだった。
その後ミカさん達は両方の船の乗客の安否を確認し、拘束されていた乗客の縄を解き怪我をした乗客の回復やこの船の船長を蘇生をして順次救っていく。
私は【粘着罠】を使い全ての海賊達を拘束する。
海賊のボス以外は自分で抜け出すのは不可能だろう。
海賊ボスは【粘着罠】と一応【影縫い】で拘束する。
後で聞いた話だが咲耶とアルラトは単純に船酔いで動けずに無抵抗で縛られていたらしい。
指示されて大人しくしていた訳じゃないのか・・・。
暗黒神ハーデスが魔法でアンカーを破壊し船に空いた穴は船員達が手分けして修理を行った。
結局約5時間海上で遅延をしたが、船は航行可能な状態となり拘束した下っ端海賊と共犯の冒険者はギュノス領南の船着き場方面に戻る船に乗せギュノス国へ搬送。
海賊のボスは一応ミカさんの監視下の元アニマ国行きの船に乗せてアニマ国の警備兵に受け渡す事にした。
「ギュノス国から英雄が誕生した報告が有ったが、君達はもしかして「深紅の薔薇」の方々とは。命を救って頂いた上、乗客や乗員も全て無事だった。本当にありがとう!ありがとう!」
私達は両方の船の船長と船員にお礼を言われ、少し恐縮する。
今回はDOSと暗黒神ハーデスの活躍により事態を終息出来た、私は海賊の拘束の手伝いをしただけだ。
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