上 下
104 / 252
伝説の武器編

104話 落札!

しおりを挟む
挨拶もそこそこに熱気冷めやらぬ会場を後にした私は、【索敵】の特殊技能スキルを使用する。

あの老婆の反応は無い、私は国営賭博場カジノ周辺を見て回る。
周辺の路地はシルビアさんとの勝負の噂を聞きつけた市民でごった返していた。

居ない・・・目的の老婆の姿は無い。

以前と同じく存在も気配も無い。
居た事すら幻覚なんじゃないかと自分自身を疑ってしまう。

あの時、5分・・・
いや2分位かも知れない。

確かに私以外の時間が止まっていた。
マザーブレインも言っていたが、突然現れて霧の様に消える・・・と。

しかもその映像すら消去されていたと話していた。

今回の国営賭博場カジノの監視カメラの映像を後でマザーブレインに見せて貰おう。
もしかしたら姿が映っているかも知れない。

先程の対決の賞金として勝利金額の約3億7000万ゴールドをギルド共有預金場所にチャージする。

「これで良しっと・・・皆の所に戻ろう!」

混んでいる道を避け、看板伝いに公営競売場オークションへ向かう。

急いで向かうが入札終了時間までに着くのは難しいかも知れない。
着いた頃には落札出来ていれば良いけど。




-機械都市ギュノス国 公営競売場オークション-

落札時間10分前。
ここから5分間が最終入札時間となる。

希少鉱石レアメタル森羅万象しんらばんしょう】の現在入札件数29件、最高入札価格62億2000万ゴールド。

手持ちが64億ゴールドにミカエル達が入金した金額が9300万ゴールドで64億9300万ゴールド。

入札状況を観察していると約2名が入札し合っている。
競っている2人の手持ち限界がいくらか想像出来ない。

「まずいでござるな。」

「ああ、今の価格が限界なら良いがな。」

「余裕が有ると思いましたが、やはりギリギリの時間で攻めてきましたね。」

「・・・・・」

残り4分・・・3分・・・2分・・・言葉にならない。
皆で集めて貰った金額でも届かないかも知れない。

全ての装備を売れば、もっと余裕を持てただろう・・・
しかし、もう時間が無い。

いちかばちか、64億9300万ゴールドに全てを掛けるしか無い。

「・・・・これで勝負するしかない。」

皆で顔を向き合わせ頷く。

いつの間にか更新されていた特別市民IDを入札機に挿入すると合計貯金額が更新され68億6360万ゴールドと表示される。

約3億7000万ゴールド。
・・・・残高が増えた!?

まさかシノブが?4時間でこんなに!?
・・・改めて彼女の事を凄いと思った。

あの子と一緒なら、どんな困難も超えれそうな気がする。

「これは・・・!流石!黒蝶と言った所ですね。」

「シノブ殿なら当然でござるよ。」

「凄いな、私達の4倍近くを1人で稼ぐとは・・・」

「ふん、当然だ。」

「何でパパが偉そうにしてるの?」

「ああ、凄いよ。まったく・・・本当に。」

私は全額の68億6360万ゴールドを入金し決定キーを押す。

公営競売場オークションの巨大モニターに入札終了時間を宣告する画面とアラートが会場内に鳴り響く。

通常の商品ではここまで大々的に表示されないだろう。
10億ゴールド以上の高額商品は会場内で大々的に放送される。

直接参加していない客も興味が有るのか場内に居る全員が巨大モニターに釘付けとなっている。
落札時間となり、最終入札金額が画面に表示される。

落札 68億6360万ゴールド DOSドス
次点 68億6000万ゴールド クリダル
   65億8000万ゴールド ゼノン

「おおおおお!!」
「あれって英雄様の名前じゃないか?」
「あんな金額見た事ねぇ!!」

超高額落札に会場が湧く。
しかも次点との差が360万ゴールド、まさに僅差だ。

ギリギリで落札。
シノブのチャージが無ければ勝てなかった。

商品受け取りカウンターに市民IDカードを提出し金額を差し引かれたカードと商品の受け取りを行う。

アイテムBOXを受け取り皆で中身を確認すると、エメラルドグリーンに光り輝く鉱石が納められていた。

この輝きは紛れも無く本物の希少鉱石レアメタル森羅万象しんらばんしょう】だ。
皆で落札の勝利を喜びながら談笑している所にシノブが息を切らせながら会場内に入って来た。

シノブに向けて【森羅万象しんらばんしょう】を掲げると、【縮地】を使って駆け寄り皆と抱き合いながら一緒になって喜んでくれた。

私は今日ほど仲間との絆を感じた日は無かった。

「・・・皆ありがとう。」





私達はアイテムストレージから伝説の長銃武器【アグネイヤ】を作成する為に必要な素材を取り出す。

DOSどっちゃんが指定したレア素材をそれぞれテーブルに並べて行く。

伝説の武器の素材と伝説の防具の素材は被る物が無い為、以前私の防具を造った時に消費して無いのが良かった。

「よし、材料は十分だ。皆協力してくれてありがとう。」

DOSどっちゃんは皆に深々と頭を下げる。

皆で協力して一つの目標に向かって頑張り、そして目標を達成する。

それは何とも言えない嬉しさと喜びの感情を刺激する、私は自分の事に様に嬉しくて思わず頬が緩む。

ゲームでもギルド対抗イベント等は有った。
しかしソレとは違った高揚感を感じる。

これがリアルとゲームの差なんだろう。

改めて感じる。
これはリアルなんだと。




-機械都市ギュノス国 ジルナーク工房-

素材を揃えジルナーク工房に制作を依頼した。

ジルナークは魔力を帯びたルーペで【森羅万象しんらばんしょう】を確認する。

そして嬉しそうな表情で「3日間だ。」と言いながら店外の看板をオープンからクローズに裏返し店の奥へと材料を持って去って行った。

奥の工房から「フフフフフフフフッ」と言うよ様な低い笑い声が聞こえて来ていた。
最高の仕事が出来る喜びを隠せない生粋の職人なのだろう。

以来をして店を出た瞬間にDOSどっちゃんは皆に改めて頭を下げる。

「ありがとう、皆のお陰で最強の長銃が出来る。すまない、我侭を聞いて貰って。」

「最強の武器は羨ましいが、私はこの剣を気に入っているからな。」

ミカさんが腰に付けている自身の剣の鞘をポンポンと叩く。

ミカさんの剣は伝説の剣に匹敵する程の能力を強化によって得ている。
ゲームとは言え長い時間を共に過ごして来た相棒だ、愛着は人一倍強いのだろう。

「拙者もその気持ちは理解出来るでござる。強さを求める気持ちも無い訳じゃないでござるがな。」

「そうですね、各々拘りと愛着が有るから最強で無くても最終装備になっている訳ですからね。」

「ふん、DPSはDOSドスに任せて良くなりそうだな。」

「元々DOSどっちゃんはDPS高かったでしょ。」

私達が伝説の武器の話題で盛り上がっていると不意にアルラトが私の袖をクイクイと引っ張る。

何だろう?と思いアルラトの方に目を向けると、アルラトは衝撃の事実を口にする。

「ねね。所でさ、僕達って所持金ゼロになったんだよね?」

「「「「「「あ・・・」」」」」」

アルラトの核心を付いた発言を聞いて一瞬全員の動きが止まる。

今日の朝、滞在日数を終えホテルのVIPルームはチェックアウトした所だ。

労働組合ギルドの依頼はAチームであらかた達成し掲示板には「初級者向けの素材集め」や「猫探し」等の少額依頼しか残っていない。

「改めて生活費を稼がねばなりませんね。」

「すまない。私の我侭で・・・」

「それはもう良いでござろう。」

今日の宿や食事の当てが無い。

私だけなら「栄誉市民」特権で様々な施設が無料で利用出来ると思おうけど、皆は最低でも半額は払う必要が有る。

「我はグラズヘイムに行くぞ、稼ぐなぞ余裕だからな。」

「その手が有りますね。賄いも有りますし。私達なら逆に歓迎されるでしょう。」

暗黒神ハーデスハーちゃんの提案に咲耶が同意する。
確かにグラズヘイムなら支配人やキャストの皆も快く迎えてくれると思う。

「賛成!私も行く!」

「僕も!」

私も賛成の意を表明し、アルラトも元気に手を上げる。

「風俗営業ですか、少し抵抗が有りますね。」

「拙者達もでござるよね。」

「・・・すまない。私にも出来る仕事が有るだろうか。」

結局ジルナークが武器を完成させるまでの間、「深紅の薔薇」全員で稼ぎの良い国営賭博場カジノ内で住み込みのアルバイトをする事になった。

ここ数日の売上で興行収入の潤っている国営賭博場カジノオーナーAIは私達を大歓迎で迎え入れてくれた。

労働で得た金額もさる事ながら、私達Bチームの凄さにミカさん達は改めて驚いていた。

そして、私達は再度アルバイト生活を始める事となった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

私、異世界で監禁されました!?

星宮歌
恋愛
ただただ、苦しかった。 暴力をふるわれ、いじめられる毎日。それでも過ぎていく日常。けれど、ある日、いじめっ子グループに突き飛ばされ、トラックに轢かれたことで全てが変わる。 『ここ、どこ?』 声にならない声、見たこともない豪奢な部屋。混乱する私にもたらされるのは、幸せか、不幸せか。 今、全ての歯車が動き出す。 片翼シリーズ第一弾の作品です。 続編は『わたくし、異世界で婚約破棄されました!?』ですので、そちらもどうぞ! 溺愛は結構後半です。 なろうでも公開してます。

恩人召喚国の救世主に

製作する黒猫
ファンタジー
屋上から落ちたはずの月神完利(つきがみかんり)は、命を失う前に異世界に召喚される。召喚されたことで手に入れた力を使って、召喚主がいる国を守るため魔物と戦うことになったカンリだが、実は魔物が元人間だったことが判明。動揺したカンリを魔物たちの軍勢が倒す・・・というシナリオを破り捨て、カンリは元人間を殺し進む。 カンリには、目的があった。目的があるカンリを止められるものは、誰もいない。 小説家になろうにて、完結済。

異世界でお金を使わないといけません。

りんご飴
ファンタジー
石川 舞華、22歳。  事故で人生を終えたマイカは、地球リスペクトな神様にスカウトされて、異世界で生きるように言われる。  異世界でのマイカの役割は、50年前の転生者が溜め込んだ埋蔵金を、ジャンジャン使うことだった。  高級品に一切興味はないのに、突然、有り余るお金を手にいれちゃったよ。  ありがた迷惑な『強運』で、何度も命の危険を乗り越えます。  右も左も分からない異世界で、家やら、訳あり奴隷やらをどんどん購入。  旅行に行ったり、貴族に接触しちゃったり、チートなアイテムを手に入れたりしながら、異世界の経済や流通に足を突っ込みます。  のんびりほのぼの、時々危険な異世界事情を、ブルジョア満載な生活で、何とか楽しく生きていきます。 お金は稼ぐより使いたい。人の金ならなおさらジャンジャン使いたい。そんな作者の願望が込められたお話です。 しばらくは 月、木 更新でいこうと思います。 小説家になろうさんにもお邪魔しています。

家族全員異世界へ転移したが、その世界で父(魔王)母(勇者)だった…らしい~妹は聖女クラスの魔力持ち!?俺はどうなんですかね?遠い目~

厘/りん
ファンタジー
ある休日、家族でお昼ご飯を食べていたらいきなり異世界へ転移した。俺(長男)カケルは日本と全く違う異世界に動揺していたが、父と母の様子がおかしかった。なぜか、やけに落ち着いている。問い詰めると、もともと父は異世界人だった(らしい)。信じられない! ☆第4回次世代ファンタジーカップ  142位でした。ありがとう御座いました。 ★Nolaノベルさん•なろうさんに編集して掲載中。

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】

小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。 他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。 それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。 友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。 レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。 そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。 レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……

処理中です...