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伝説の武器編

091話 ネカマ達の事件簿 湯煙編

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-機械都市ギュノス国 西リゾート区画-

「うまく抜け出せたでござるな。」

「居酒屋通りに行くと思わせる言動や発言を散りばめましたから、皆も私達が温泉街方面に行くとは思っていないはずです。」

拙者と咲耶殿はホテルのVIPルームで寛いでいた皆の目を欺き、コッソリと抜け出して街へと繰り出していた。

フッフッフ、我ながら上手くいったはずだ。

「酒が飲みたい!」、「良い居酒屋が・・・」、「あの店のツマミが・・・」等。
ごく自然な独り言や、それっぽいキーワードを会話に織り交ぜ居酒屋通りに向かう布石を打ってたのだ。

流石のシノブ殿も拙者達の行動を看破出来無かったはずだ。
我ながら策士だと自画自賛する。

当初の目的通り拙者と咲耶殿は路地に設置して有る監視カメラに注意する。
何と言っても「英雄」だからな。
あまり目立つ訳にはいかない。

拙者達は目立たない様に顔を隠し、ウキウキ気分で温泉街へと向かった。

今は警戒態勢が解かれ都市全体を覆っていたドーム状の屋根は開放されており、沈みかけた夕闇が街を包む。

逢魔ヶ刻おうまがどきを過ぎる頃に居酒屋通り、温泉街、娼館街と言ったアダルティ通りは少しずつ賑わいを見せ始めていた。

ここからは大人の時間だ。




「まずは大手から行きましょう。」

「よし!行くでござる。」

大手のホテルや温泉宿は大浴場や温泉のみを有料で利用出来る。
俗に言う日帰り温泉と言うヤツだな。

ある程度遅い時間でも利用可能な所が多い為、利用時間終了の早い大手から攻めるプランを立てていた。
2人の中では最低4件はハシゴする予定だ。

まずは大浴場が有名な三つ星ホテルへと入り受付と支払いを済ます。
今回は英雄特権で料金が半額と言う事を思い出し拙者達は更に邪悪な笑みを浮かべる。

お金が浮くと言う事は、より多くの温泉で女性の美しい裸体・・・
疲れた自身の体を癒せると考えたからだ。

1件目に選んだのは三つ星ホテル「ホテルギュノス」。
都市名を冠している老舗のホテルと言う設定だが、どう見ても新築にしか見えない。

綺麗で豪華な造りのホテルで開放されている大浴場は30名程度はゆうに入れる広さの屋内浴場で最上階20階からのパノラマビューバスとなっている。

特に若い女性客が多いと言う情報を咲耶殿が得ていたので2人は期待に胸を膨らませていた。
が、しかし2人の期待はいとも簡単に打ち砕かれた。

「・・・来ない。1時間近く入っているのに何故、今日に限って誰1人来ない。」

「日が悪いでござるな、次に行くでござる。」

1時間近く湯舟に浸かっていたせいか、少しのぼせてしまった。
拙者は気落ちしながら、そそくさと着替えホテルを後にする。

入口を出た所で擦れ違った若い女性の団体が「温泉楽しみ~!」と話していて、2人は思わず振り返る。

「お、おい!サクラ。」

「ふ、ふむ・・・戻るでござるか?」

踵を返してホテルに戻るかどうか迷った挙句、涙を流しながら2件目に向かった。
若さとは振り向かない事さ・・・。

この時、ホテルの温泉に戻っていれば妙な事件に巻き込まれる事は無かったかも知れない。




2件目に選んだのは露天風呂が有名な大型旅館「菊水旅館」。
ホウシェン国と言う場所から出店していると事前情報を得ていた。

後半のアップデートで追加された国だ。
日本に良く有る広い露天風呂が有る大型旅館だが、この機械都市ギュノス国では異質な造りで観光客の評判は上々らしい。

旅館の入口付近に着くと何やら人集りが出来ていた。
警備の機械兵が交通整理と野次馬の制御をしていて人間の兵士部隊が幾人か待機していた。

その中の1人が咲耶殿に気付き会話をしていた数人の隊員の中から、この場所の管轄をしている人物を連れて来た。

「おお!咲耶様!お久しぶりですな!丁度良い所に!」

「む、誰でござるか?」

「ああ、誰かと思えば・・・ゴウトですか。お久しぶりですね。」

以前ギュノス国が鎖国をした時に居た元レジスタンス部隊隊長でギュノス国兵士長のゴウトが現場の指揮を行っていた。

「所で、この騒ぎは何事ですか?」

「お、おい咲耶殿!」

絶対に面倒な事件に違いない、咲耶殿が無駄な好奇心で顔を突っ込む。
・・・これは悪手だ。

咲耶殿がこの旅館で何が有ったのか聞いてみると、どうやら小型の携帯型爆弾を所持した犯罪組織の工作員がこの旅館に潜伏中との話だ。

何でもテロを目的とする犯罪組織の構成員が別件で捕まり情報を吐いたらしい。

工作員と認定されマークしていた女性が現在露天風呂の内部に潜伏中との事だった。

現在旅館周囲を包囲し滞在している客の避難は完了しているが、女風呂に入っている工作員と数名の客は状況を知らないまま入浴中との事。

そして今から女性隊員を使って踏み込む作戦を立てていた所で英雄が現れたと・・・。

「そうなんですね、では頑張ってください。」

話を最後まで聞いて、嫌な予感がした咲耶殿は露天風呂を諦めて他に向かおうとした所をゴウトとその部下数名に止めらる。

ほら見ろ・・・結局拙者達は工作員確保協力を依頼された。

「・・・どうするでござるか?」

「無下に出来ない雰囲気では有りますね。」

この国で大々的に英雄として名が広まっていた2人は断ろうにも世間の眼差しが、それを許さない空気を漂わせていた。

英雄になったのはつい数時間前なのだが、どういう情報網なんだか。

そもそも犯人が男性なのではないかと指摘をしたが、情報では女性で間違いないとの話だ。
何でも「無類の風呂好き」と言う御都合主義とも思える設定だそうだ。

工作員の名前は「ミナ=モトシズ」、おしい1文字足りない。
某未来型核融合エンジン搭載の猫型ロボットに出て来る女の子が脳裏に浮かぶ。

この高度に発達した機械都市ギュノス国なら、未来の猫型ロボットが秘密裏に開発されている可能性はゼロでは無い。

某猫型ロボットが持っている空間歪曲扉どこでもドアが有れば、この場を抜け出せるのにな。

ゴウトに詳しく犯人の特徴を聞いたがこれと言って特徴も無く、監視カメラにもボンヤリとしか映っていない為参考にならないそうだ。

良くそれで捜査を進めていたな、思いっきり情報が少なすぎる。

風呂好きで特徴が無いのが特徴って・・・
もっとこう、なんか有るだろ!?

結局、よこしまな考えを抱いて女湯行脚に向かった拙者達は、ひょんな事から妙なサブイベントに巻き込まれる事となったのだった。
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