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暗黒神ザナファ討伐編
085話 暗黒神ザナファ
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-アビスダンジョン 48階層-
アビスダンジョン47階層のモンスターを全滅させた私達は少し疲弊していた。
48階層からはモンスターは出現しない設定となっていてエジプトの壁画の様な神話を象ったオブジェクトが並ぶ荘厳な直線通路が続いている。
その雰囲気は古代遺跡や古墳といった様相でゲームでは気にしなかったけど、この壁画やオブジェクトは暗黒神との戦いの歴史を象ったオブジェクトの様だ。
皆でこのゲームの考察や持論を語りながら進む。
アルラトも不思議そうにキョロキョロとして暗黒神ハーデスにいろいろ質問をしていた。
つい先程、DOSの計算通り24時間の再充填時間が終了したらしい、ラスボス戦は万全の状態で挑めそうだ。
・
・
・
-アビスダンジョン 50階層-
いよいよ最下層、地表から数百メートルに位置する場所に到着した。
約1ヶ月半前に戦闘をして倒した暗黒神ザナファの封印されているエリア。
大穴の内部とは思えない風景。
通常の草原フィールドをモノクロ写真みたいに白と黒とグレーで表現した様な見た目のフロアとなっている。
フィールドの中央十メートル以上の高さを誇る巨大なオベリスク形状のオブジェクトが聳え立っている。
プレイヤーがあのオベリスクに触れた瞬間に暗黒神が完全復活して戦闘が開始される。
「ねーねー!これなーにー?」
「あ!こら!勝手に触るな!」
少し目を離した隙に魔人アルラトがオベリスクをペシペシと叩きながら叫んでいた。
辺りに様子に変化は無い。
あれ?
もしかして暗黒神ザナファも魔人ヨグトスの様に不在なのか?
皆が周囲の様子を見て顔を見合わせる。
私達は改めてオベリスク付近に足を運んだ。
私はアルラトを捕まえると、アルラトは私の腰にしがみ付いて無邪気に笑う。
私はその腕を掴んでジャイアントスイングの様にグルグルと振り回すと滅茶苦茶喜んでいた。
DOSや咲耶やサクラがオベリスクに触れるが、周囲に何ら変化は無い。
暗黒神ハーデスもオベリスクに触れながら慎重に観察している様子だ。
フィールドの禍々しい雰囲気は、そこに暗黒神ザナファが眠っている事を物語っているのは間違いないのだが何故かイベントが進まない。
「シノブ殿!シノブ殿も触ってみてもらえぬでござるか?」
魔人アルラトと遊んでいると、不意にサクラに呼ばれる。
暗黒神ザナファ復活イベントが起きないらしく、皆オベリスク前で途方に暮れている。
そう言えば私は魔人アルラトと遊んでいたので、まだオベリスクには触れてない。
アルラトを肩車しながらオベリスクに触れた瞬間、オブジェクトに刻まれた絵文字の部分が輝き始めオベリスクが機動した。
私達は思わずオベリスクから後退し距離を取った。
「えっ!ええっ!?起動したよ!!」
「ええ、起動しましたね。何か特別な条件が有ったのでしょうか?それともラグの様な何かが?」
「分からん。しかし、復活するぞ。」
轟音と共にオベリスクが崩れ落ち、地響きと共に地面が盛り上がり巨大な黒い怨念の塊が具現化した様な形状姿を現す。
私達はオベリスクから後退し暗黒神ザナファの完全復活を待つ。
悍ましい魔物の腕が一本、また一本と地表に出現し始めた。
地面を掴み地中の影の部分から這い出る様にゆっくりと伸し上がって来る。
途轍もなく深く禍々しい瘴気が周囲を包んで行く。
今まで戦って来たモンスターのソレとは異質な感覚を受ける。
見た目や導入部分は同じだが周囲を包む禍々しくも邪悪な気配はゲームで感じる事の無い感覚だ。
そう、これはゲームとは違う。
これは全くの別物だ。
「これは・・・ヤバいでござる。」
サクラが無意識に発した独り言が聞こえる。
そう、レッドドラゴンやヴァッサゴの比では無い。
2本の腕が地表に見えただけで鳥肌が立ち、本能が体の内側から恐怖の感情を逆撫でて来る。
プレイヤーキャラクターの8倍以上の巨大サイズで蜘蛛と人間が融合した様な姿をしている。
人間の上半身、腹部に蜘蛛の頭部の様に無数の目が存在する。
8本腕に6本脚の蜘蛛の腹部をした怪物がその全身を顕現する。
そして何の合図も無く戦闘は始まった。
収縮自在の2本の腕でサクラを掴み頭上へ持ち上げ、6本の腕でサクラの胸部を貫き溢れた生血を啜り甲高い女性の声で笑い声を上げる。
『ギャハァハハハッ!』
暗黒神ザナファの六連撃でサクラは一瞬で絶命する。
全身が灰色に染まった彼の体は暗黒神ザナファによって打ち捨てられる。
「サクラ!サクラ!!」
私は咄嗟にサクラへ駆け寄りサクラを抱え、【縮地】を使いその場を後退する。
サクラは防御力が高い方では無いが最高レベルの戦士職の体力は数値で表示すると最低6000ポイント以上は有るはず。
私が得意とする暗殺特殊技能以外で一撃で死ぬ程体力数値的には低くない。
暗黒神ザナファの腕1本の攻撃で最低1000ポイント以上のダメージをサクラに与えた計算になる。
戦闘前に咲耶が能力向上魔法を掛けている。
そのキャラクターを一撃で殺す攻撃力なんてゲームバランスブレイカーなんて物じゃない。
暗黒神ザナファの前足がサクラを抱えた私ごと足払いで弾き飛ばす。
早い!追い付かれると思わなかった。
弾き飛ばされながら空中で即時復活薬【アナスタシン】を使用する。
残り1個・・・持つのか!?
「あ、ありがとうでござる。・・・一撃が重過ぎる。」
「ああ、部位破壊で攻撃力を落さないとマズイですね。」
1番ヤバイのは即時復活薬【アナスタシン】の残数だ、完全に背水の陣に陥った。
暗黒神ハーデスが極大攻撃魔法【コーラルヘイレス】を放ち蜘蛛の顔の様な腹部に直撃させる。
魔力圧縮の大爆発が起きて暗黒神ザナファが一瞬怯む。
無属性で最強の攻撃力を誇る【コーラルヘイレス】は暗黒神ハーデス最大の切り札だ。
初撃から本気度が伺える。
腹部の蜘蛛の顔面が抉れ、紫色の鮮血を吹き出し生々しい程に赤黒い筋肉繊維が爛れた様に溢れる。
腹部は高い攻撃力を誇る【溶解液】と【猛毒ブレス】や行動不能を誘発する【石化の魔眼】を使用してくる。
真っ先に潰した判断は正しい。
しかし、常時発動型特殊技能【自己再生(小)】を持っている為、早期決着が望ましい。
咲耶は距離を取り三重の魔法障壁を張る。
しかし次の瞬間、暗黒神ザナファの全身が黒い光を放ち極大攻撃魔法の【マジクアングラスレイ】が三連続発動する。
咲耶の魔法障壁はいとも簡単に砕け散り全員が無数の黒いレーザーに貫かれ大ダメージを負う。
「ぐっ・・・ハーデス、ザナファに負けイベントとか有りますか?」
「・・・有る訳なかろうが!」
ゲームで稀に「負けイベント」と言うストーリー進行上必ず負ける戦闘が有る。
しかしこのゲームでは、そんな物存在しない。
負けた先に待っている物は「死」だ。
皆は各々手持ちの回復薬を使用して傷を癒す中、アルラトは傷だらけになりながらも果敢接近戦を挑む。
暗黒神ザナファの脚部に向かって連続攻撃を加え右中央の脚を破壊する。
彼女は階層ボスの強さの強さを有しているので攻撃力、体力共に桁違いの威力と耐久力だ。
しかし彼女の表情からは、今までの余裕の色は一切伺えない。
DOSは課金弾丸の連続射撃で8本の腕の内の1本を破壊する。
私は【影分身】を使いサクラと暗黒神ザナファの後方に回り込み、2人掛かりで後ろ足を1本破壊。
大きい雄叫びを上げた暗黒神ザナファは複数の手脚で暴れ回るかの様に私達を目掛けて振り下ろす。
地面に無数の穴を作る程の強力な踏み付け攻撃が私達を襲う。
強力な地鳴りと飛び散った岩片が飛び散り全員がバラバラに弾き飛ばされ倒れ込む。
咲耶がアルラトに回復魔法を使用し傷を癒し、DOSは態勢を立て直し【イグナイトストライク】を放つ。
輝く軌跡を残した弾丸が暗黒神ザナファの頭部の人型部分を目掛けて直進する。
しかし暗黒神ザナファは大きく体を翻し回避する。
しかし、不十分な態勢を取った為、右肩に直撃し右腕2本の腕を消滅させる。
「ちぃっ!!」
今の一撃で優先攻撃順位が完全にDOSに向き、暗黒神ザナファは蜘蛛の様な巨体で跳躍し空からDOSにのしかかる。
辛うじて回避に成功するが腹部の残り2つの複眼が輝き、極大攻撃魔法【マジクアンダイン】がDOSに直撃し吹き飛ばされる。
弱点属性の大ダメージを受けたDOSは動けない状態となり、その場に倒れ動けない。
暗黒神ザナファは尚も追撃を狙う、倒れたDOSに向かい歩き始める。
咲耶はDOSの回復に向かい、
私とサクラと魔人アルラトは背中と後部の蜘蛛の腹部に攻撃を加えるが動きが止まらない。
暗黒神ハーデスも各属性の極大攻撃魔法を暗黒神ザナファの頭部に放つが怯まない。
そして複数の手でDOSの体を貫き彼の体は灰色に染まる。
優先攻撃順位自体を明らかに無視しての攻撃だ、行動が読めない。
目の前でDOSの死亡を目撃した咲耶は自身の回復が間に合わなかった事が許せなかった様で武器を【雷槌ミョルニル】に持ち替えて【神ノ雷】を放つ。
暗黒神ザナファも同時に複眼から、極大攻撃魔法【マジクアンダイン】を発動し、プレイヤーが使う物よりも巨大な8対の電撃巨龍が【神ノ雷】の雷撃を飲み込む。
更に威力を増して誘導された電撃は咲耶に直撃しその場に倒れる。
強い電撃耐性装備を持つ咲耶が意識を失う程の雷撃を喰らったのだ。
私の脳が危機感を察知し、何らかのスイッチが入る。
意識が急速に加速し周囲がスローモーションの様にゆっくりと動く感覚を覚える。
咲耶はまだ息が有る。
今咲耶を回復しないと復活薬が足りなく無くなる。
私は【縮地】を使い咲耶に距離を詰める。
もう少し、もう少しで手が届く!
咲耶に触れようと飛び込んだ瞬間に背中に強烈な衝撃を受けて吹き飛ばされる。
暗黒神ザナファの腕が私に刺突攻撃をして来た様だ。
【神衣(カムイ)カヴァーチャ】のお陰でダメージは少ない、意識ははっきりしている。
しかし攻撃によるノックバックが発生し、倒れている咲耶の手に障れる距離から遠く放される。
私は思わず右手を伸ばし、咲耶を掴もうと叫ぶ。
「さ、咲耶ぁ!!」
私の呼びかけに意識を取り戻した咲耶が顔を上げて私と目が合う、咲耶は私に向けて左手を伸ばす。
その瞬間に暗黒神ザナファの2本の腕が振り下ろされ、私の目の前で咲耶の体が貫かれる。
大量の鮮血が飛び散り一目で分かる程の大ダメージを受ける。
あれでは完全に絶命する。
私は絶望的な状況下を目撃して思考が真っ白に染まった。
アビスダンジョン47階層のモンスターを全滅させた私達は少し疲弊していた。
48階層からはモンスターは出現しない設定となっていてエジプトの壁画の様な神話を象ったオブジェクトが並ぶ荘厳な直線通路が続いている。
その雰囲気は古代遺跡や古墳といった様相でゲームでは気にしなかったけど、この壁画やオブジェクトは暗黒神との戦いの歴史を象ったオブジェクトの様だ。
皆でこのゲームの考察や持論を語りながら進む。
アルラトも不思議そうにキョロキョロとして暗黒神ハーデスにいろいろ質問をしていた。
つい先程、DOSの計算通り24時間の再充填時間が終了したらしい、ラスボス戦は万全の状態で挑めそうだ。
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-アビスダンジョン 50階層-
いよいよ最下層、地表から数百メートルに位置する場所に到着した。
約1ヶ月半前に戦闘をして倒した暗黒神ザナファの封印されているエリア。
大穴の内部とは思えない風景。
通常の草原フィールドをモノクロ写真みたいに白と黒とグレーで表現した様な見た目のフロアとなっている。
フィールドの中央十メートル以上の高さを誇る巨大なオベリスク形状のオブジェクトが聳え立っている。
プレイヤーがあのオベリスクに触れた瞬間に暗黒神が完全復活して戦闘が開始される。
「ねーねー!これなーにー?」
「あ!こら!勝手に触るな!」
少し目を離した隙に魔人アルラトがオベリスクをペシペシと叩きながら叫んでいた。
辺りに様子に変化は無い。
あれ?
もしかして暗黒神ザナファも魔人ヨグトスの様に不在なのか?
皆が周囲の様子を見て顔を見合わせる。
私達は改めてオベリスク付近に足を運んだ。
私はアルラトを捕まえると、アルラトは私の腰にしがみ付いて無邪気に笑う。
私はその腕を掴んでジャイアントスイングの様にグルグルと振り回すと滅茶苦茶喜んでいた。
DOSや咲耶やサクラがオベリスクに触れるが、周囲に何ら変化は無い。
暗黒神ハーデスもオベリスクに触れながら慎重に観察している様子だ。
フィールドの禍々しい雰囲気は、そこに暗黒神ザナファが眠っている事を物語っているのは間違いないのだが何故かイベントが進まない。
「シノブ殿!シノブ殿も触ってみてもらえぬでござるか?」
魔人アルラトと遊んでいると、不意にサクラに呼ばれる。
暗黒神ザナファ復活イベントが起きないらしく、皆オベリスク前で途方に暮れている。
そう言えば私は魔人アルラトと遊んでいたので、まだオベリスクには触れてない。
アルラトを肩車しながらオベリスクに触れた瞬間、オブジェクトに刻まれた絵文字の部分が輝き始めオベリスクが機動した。
私達は思わずオベリスクから後退し距離を取った。
「えっ!ええっ!?起動したよ!!」
「ええ、起動しましたね。何か特別な条件が有ったのでしょうか?それともラグの様な何かが?」
「分からん。しかし、復活するぞ。」
轟音と共にオベリスクが崩れ落ち、地響きと共に地面が盛り上がり巨大な黒い怨念の塊が具現化した様な形状姿を現す。
私達はオベリスクから後退し暗黒神ザナファの完全復活を待つ。
悍ましい魔物の腕が一本、また一本と地表に出現し始めた。
地面を掴み地中の影の部分から這い出る様にゆっくりと伸し上がって来る。
途轍もなく深く禍々しい瘴気が周囲を包んで行く。
今まで戦って来たモンスターのソレとは異質な感覚を受ける。
見た目や導入部分は同じだが周囲を包む禍々しくも邪悪な気配はゲームで感じる事の無い感覚だ。
そう、これはゲームとは違う。
これは全くの別物だ。
「これは・・・ヤバいでござる。」
サクラが無意識に発した独り言が聞こえる。
そう、レッドドラゴンやヴァッサゴの比では無い。
2本の腕が地表に見えただけで鳥肌が立ち、本能が体の内側から恐怖の感情を逆撫でて来る。
プレイヤーキャラクターの8倍以上の巨大サイズで蜘蛛と人間が融合した様な姿をしている。
人間の上半身、腹部に蜘蛛の頭部の様に無数の目が存在する。
8本腕に6本脚の蜘蛛の腹部をした怪物がその全身を顕現する。
そして何の合図も無く戦闘は始まった。
収縮自在の2本の腕でサクラを掴み頭上へ持ち上げ、6本の腕でサクラの胸部を貫き溢れた生血を啜り甲高い女性の声で笑い声を上げる。
『ギャハァハハハッ!』
暗黒神ザナファの六連撃でサクラは一瞬で絶命する。
全身が灰色に染まった彼の体は暗黒神ザナファによって打ち捨てられる。
「サクラ!サクラ!!」
私は咄嗟にサクラへ駆け寄りサクラを抱え、【縮地】を使いその場を後退する。
サクラは防御力が高い方では無いが最高レベルの戦士職の体力は数値で表示すると最低6000ポイント以上は有るはず。
私が得意とする暗殺特殊技能以外で一撃で死ぬ程体力数値的には低くない。
暗黒神ザナファの腕1本の攻撃で最低1000ポイント以上のダメージをサクラに与えた計算になる。
戦闘前に咲耶が能力向上魔法を掛けている。
そのキャラクターを一撃で殺す攻撃力なんてゲームバランスブレイカーなんて物じゃない。
暗黒神ザナファの前足がサクラを抱えた私ごと足払いで弾き飛ばす。
早い!追い付かれると思わなかった。
弾き飛ばされながら空中で即時復活薬【アナスタシン】を使用する。
残り1個・・・持つのか!?
「あ、ありがとうでござる。・・・一撃が重過ぎる。」
「ああ、部位破壊で攻撃力を落さないとマズイですね。」
1番ヤバイのは即時復活薬【アナスタシン】の残数だ、完全に背水の陣に陥った。
暗黒神ハーデスが極大攻撃魔法【コーラルヘイレス】を放ち蜘蛛の顔の様な腹部に直撃させる。
魔力圧縮の大爆発が起きて暗黒神ザナファが一瞬怯む。
無属性で最強の攻撃力を誇る【コーラルヘイレス】は暗黒神ハーデス最大の切り札だ。
初撃から本気度が伺える。
腹部の蜘蛛の顔面が抉れ、紫色の鮮血を吹き出し生々しい程に赤黒い筋肉繊維が爛れた様に溢れる。
腹部は高い攻撃力を誇る【溶解液】と【猛毒ブレス】や行動不能を誘発する【石化の魔眼】を使用してくる。
真っ先に潰した判断は正しい。
しかし、常時発動型特殊技能【自己再生(小)】を持っている為、早期決着が望ましい。
咲耶は距離を取り三重の魔法障壁を張る。
しかし次の瞬間、暗黒神ザナファの全身が黒い光を放ち極大攻撃魔法の【マジクアングラスレイ】が三連続発動する。
咲耶の魔法障壁はいとも簡単に砕け散り全員が無数の黒いレーザーに貫かれ大ダメージを負う。
「ぐっ・・・ハーデス、ザナファに負けイベントとか有りますか?」
「・・・有る訳なかろうが!」
ゲームで稀に「負けイベント」と言うストーリー進行上必ず負ける戦闘が有る。
しかしこのゲームでは、そんな物存在しない。
負けた先に待っている物は「死」だ。
皆は各々手持ちの回復薬を使用して傷を癒す中、アルラトは傷だらけになりながらも果敢接近戦を挑む。
暗黒神ザナファの脚部に向かって連続攻撃を加え右中央の脚を破壊する。
彼女は階層ボスの強さの強さを有しているので攻撃力、体力共に桁違いの威力と耐久力だ。
しかし彼女の表情からは、今までの余裕の色は一切伺えない。
DOSは課金弾丸の連続射撃で8本の腕の内の1本を破壊する。
私は【影分身】を使いサクラと暗黒神ザナファの後方に回り込み、2人掛かりで後ろ足を1本破壊。
大きい雄叫びを上げた暗黒神ザナファは複数の手脚で暴れ回るかの様に私達を目掛けて振り下ろす。
地面に無数の穴を作る程の強力な踏み付け攻撃が私達を襲う。
強力な地鳴りと飛び散った岩片が飛び散り全員がバラバラに弾き飛ばされ倒れ込む。
咲耶がアルラトに回復魔法を使用し傷を癒し、DOSは態勢を立て直し【イグナイトストライク】を放つ。
輝く軌跡を残した弾丸が暗黒神ザナファの頭部の人型部分を目掛けて直進する。
しかし暗黒神ザナファは大きく体を翻し回避する。
しかし、不十分な態勢を取った為、右肩に直撃し右腕2本の腕を消滅させる。
「ちぃっ!!」
今の一撃で優先攻撃順位が完全にDOSに向き、暗黒神ザナファは蜘蛛の様な巨体で跳躍し空からDOSにのしかかる。
辛うじて回避に成功するが腹部の残り2つの複眼が輝き、極大攻撃魔法【マジクアンダイン】がDOSに直撃し吹き飛ばされる。
弱点属性の大ダメージを受けたDOSは動けない状態となり、その場に倒れ動けない。
暗黒神ザナファは尚も追撃を狙う、倒れたDOSに向かい歩き始める。
咲耶はDOSの回復に向かい、
私とサクラと魔人アルラトは背中と後部の蜘蛛の腹部に攻撃を加えるが動きが止まらない。
暗黒神ハーデスも各属性の極大攻撃魔法を暗黒神ザナファの頭部に放つが怯まない。
そして複数の手でDOSの体を貫き彼の体は灰色に染まる。
優先攻撃順位自体を明らかに無視しての攻撃だ、行動が読めない。
目の前でDOSの死亡を目撃した咲耶は自身の回復が間に合わなかった事が許せなかった様で武器を【雷槌ミョルニル】に持ち替えて【神ノ雷】を放つ。
暗黒神ザナファも同時に複眼から、極大攻撃魔法【マジクアンダイン】を発動し、プレイヤーが使う物よりも巨大な8対の電撃巨龍が【神ノ雷】の雷撃を飲み込む。
更に威力を増して誘導された電撃は咲耶に直撃しその場に倒れる。
強い電撃耐性装備を持つ咲耶が意識を失う程の雷撃を喰らったのだ。
私の脳が危機感を察知し、何らかのスイッチが入る。
意識が急速に加速し周囲がスローモーションの様にゆっくりと動く感覚を覚える。
咲耶はまだ息が有る。
今咲耶を回復しないと復活薬が足りなく無くなる。
私は【縮地】を使い咲耶に距離を詰める。
もう少し、もう少しで手が届く!
咲耶に触れようと飛び込んだ瞬間に背中に強烈な衝撃を受けて吹き飛ばされる。
暗黒神ザナファの腕が私に刺突攻撃をして来た様だ。
【神衣(カムイ)カヴァーチャ】のお陰でダメージは少ない、意識ははっきりしている。
しかし攻撃によるノックバックが発生し、倒れている咲耶の手に障れる距離から遠く放される。
私は思わず右手を伸ばし、咲耶を掴もうと叫ぶ。
「さ、咲耶ぁ!!」
私の呼びかけに意識を取り戻した咲耶が顔を上げて私と目が合う、咲耶は私に向けて左手を伸ばす。
その瞬間に暗黒神ザナファの2本の腕が振り下ろされ、私の目の前で咲耶の体が貫かれる。
大量の鮮血が飛び散り一目で分かる程の大ダメージを受ける。
あれでは完全に絶命する。
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