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機械都市編
072話 宝石と強化
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-機械都市ギュノス国 東大門-
翌日の早朝、機械都市ギュノス国で唯一解放されている東の正面入口に私達は居る。
無事保護されたリオとリナは現在緊急避難所となっているホテルに滞在しているらしい。
言伝の手紙を預かって東大門の守衛に挨拶を済ませる。
再生された守護機械兵と、それと同系統の量産型とも言える機械兵が城門を守っている。
ドーム内では分からなかったが、やはり青かった空は赤く変色し最終局面へとフィールドが移行していた。
「夕焼けが赤いのはレイリー散乱と言うでござるよ。」
でた、サクラのウンチク雑学講座。
話が長くなりそうなので少し距離を取る。
この場所から目視出来るモンスターは数体居るが一回り大きくなり強化されている事が一目で分かる。
世界崩壊イベントが始まったんだ。
「シノブ、少し付き合ってもらえませんか?」
「うん、何処へ?」
「おお、忘れていたでござる。シノブの防具を作るでござるよ。」
「防具?私の?いや別に大丈夫だよ。」
私の防具は【忍び装束】、忍者の初期装備だ。
忍者装備の中では防御力は最弱だが、その分回避能力に長けている。
私自身もスピード重視にカスタマイズしているお気に入り品なのだけど・・・
このゲームの装備アイテムは「パワー」「スタミナ」「スピード」「インテリジェンス」「マジック」「スキル」の各種の宝石を埋め込む事により強化が可能だ。
宝石はとても高価で装備により埋め込み制限が存在する。
基本「個」として装備アイテムがカウントされるシステムで、どんな武器防具でも1点物として扱われる。
例えば【ロングソード】を武器屋で2本購入したとして、パワー宝石を埋め込んだとする。
そうした場合【ロングソードA】には10個埋め込む事が出来た。
しかし【ロングソードB】には2個しか埋め込む事が出来なかった等、全く同じ装備でも全く性能の違う商品が出来上がる。
装備は購入した時点でランダムに設定される為、こればかりは実際に育てるまで限界値は未知数だ。
当然ドロップ品も同様だ。
その為、レア装備の「厳選」と呼ばれる行動が上位プレイヤー魂を擽る様だ。
当然ランク上位プレイヤーは厳選された激レア装備に身に着けている。
仮に初期装備と言えど宝石強化の限界値が高い物なら最強クラスの武器や防具すら凌駕する能力が獲得出来るし、そう言った装備は公営競売場で高値で売買出来る。
【忍び装束】は忍者の初期装備なので店売りされている。
しかし私の装備している物はスピード宝石を51個埋め込み敏捷性を超強化、スキル宝石を41個でSP数値を向上させている。
この埋め込み数ははっきり言って奇跡的な数字だ。
「シノブ殿が心配なのは宝石強化の事でござるね。」
表情に出ていたのかサクラが考えている事を見透かした様に質問してくる。
スピード宝石を51個埋め込める装備の希少性は高い。
仮に上位の装備に変えたとしても宝石埋め込み数が少なければ性能が下がる可能性が有る。
それに1番ネックとなるのが「愛着」だ。
自分で時間を掛けて育てて来た装備を手放す事が惜しい。
「ああ、【ネオウルツァイド】を使ってシノブ用の伝説の防具を作るのですね。でも素材が足りるのですか?武器よりは必要素材数は少なっかったと思いますが、それでも入手の難しいレア度の素材が複数必要ですよね。」
「問題無い。私とハーデスが公営競売場で入手しておいた。手持ちの在庫分と合わせれば作れるはずだ。伝説の鍛冶屋も、話は付けて有る。」
「えっと、ありがたいんだけど・・・」
私は少し口籠る。
私と咲耶が近隣の村でアルバイトをしている時にイベント進行と素材集めをしてくれていたと聞いていたけど、伝説の防具の素材はそう簡単に揃う程優しくないはず。
DOSはサラっと説明しているけど、かなり苦労したはずだ。
「作る防具は素体の能力だけでも、今の強化済のシノブの防具よりも全ての能力が向上するはずだ。我らがギルドを守護する暗黒神が宝石を大量に提供してくれるらしい。」
「我はもう使う事は無いからな。好きなだけやるぞ。」
「本当に良いの?私が防具として使っても。火力特化したサクラやDOSや暗黒神ハーデスの防具とか、パーティーの要となる回復・補助魔法を使える咲耶を守る防具を作った方が暗黒神ザナファとの戦闘が楽になるんじゃない?」
「拙者らの総意でシノブ殿に使って欲しいでござるよ。」
「悪意は無いとは言え、私達はシノブにリアル性別を明かさずにゲームを続けて来た。性別が男と分かった後でも、私達を今までと変わる事無く接してくれている。」
「男が女性を守るのは当然ですからね。」
「我が妃となり玉座の隣に座する運命のお前を守護するのに相応しい防具を作るのなら、何の問題も無い。」
暗黒神ハーデスの発言後、速攻でサクラと咲耶が殴りつけじゃれていた。
本当に皆は仲が良い。
ギルドメンバーも皆の心遣いと言うか・・・
「仲間の絆」みたいな物を感じて胸が熱くなる。
私は無意識の内に少し涙ぐみながら心から笑顔で言う。
「ありがとう。防具を頂きます。」
多分、生きてきた中で一番丁寧なお辞儀をしたと思う。
皆に促され、北の工業地区に有る伝説の鍛冶屋「ジルナーク工房」へ向かう。
ストーリーモードでは無関係だが通常モードで存在する伝説の鍛冶屋。
各街や村に有る鍛冶屋は武器・防具への宝石の埋め込み強化と、アイテム耐久値を修復する事が主だった仕事だ。
耐久値は課金アイテムと多額のゴールドを支払う事で無制限に出来るのが、通常の場合だと修復毎に最大耐久値が減少していくので大抵のプレイヤーはお気に入りの装備には耐久値を無制限へ加工する。
無課金ユーザーにも救済としてアビスダンジョン内で超低確率ドロップするアイテムの中に課金アイテムの同様の効果の有るアイテムもドロップする。
伝説の鍛冶屋は、この世界で唯一「ドワーフ族」の生き残りで、何故か不老不死の存在と言う設定らしい。
過去に暗黒神ザナファの眷属に一族を滅ぼされ、村を追われ世界を放浪してきた。
幾多の年月を生き、モンスターがドロップする高性能のレア装備は彼が造った物とされている伝説の鍛冶師だ。
彼のみが希少鉱石の加工が行える唯一の人物だ。
詳しい背景は知らないが、考察ガチ勢の大好物なネタとして扱われる人物だ。
プレイヤー間でも伝説の武器を造った人は少ない、しかし伝説の防具は何人か作成しているプレイヤーが居る為性能が分かっている物が多い。
DOSは忍者用の伝説の防具の性能を知っているんだろう。
北の工業地区の隅、個人で経営する店舗には似使わない程大きな店舗が見えて来る。
古ぼけた看板には「ジルナーク工房」と書かれており、開店している事を示す「OPEN」の看板が扉に掲げられていた。
忍者用の最強の防具を造って貰える。
私が皆の役に立てるかは分からないけど、少しでも強くなって皆の力になりたい。
そして暗黒神ザナファを倒し、現実世界に戻るんだ。
翌日の早朝、機械都市ギュノス国で唯一解放されている東の正面入口に私達は居る。
無事保護されたリオとリナは現在緊急避難所となっているホテルに滞在しているらしい。
言伝の手紙を預かって東大門の守衛に挨拶を済ませる。
再生された守護機械兵と、それと同系統の量産型とも言える機械兵が城門を守っている。
ドーム内では分からなかったが、やはり青かった空は赤く変色し最終局面へとフィールドが移行していた。
「夕焼けが赤いのはレイリー散乱と言うでござるよ。」
でた、サクラのウンチク雑学講座。
話が長くなりそうなので少し距離を取る。
この場所から目視出来るモンスターは数体居るが一回り大きくなり強化されている事が一目で分かる。
世界崩壊イベントが始まったんだ。
「シノブ、少し付き合ってもらえませんか?」
「うん、何処へ?」
「おお、忘れていたでござる。シノブの防具を作るでござるよ。」
「防具?私の?いや別に大丈夫だよ。」
私の防具は【忍び装束】、忍者の初期装備だ。
忍者装備の中では防御力は最弱だが、その分回避能力に長けている。
私自身もスピード重視にカスタマイズしているお気に入り品なのだけど・・・
このゲームの装備アイテムは「パワー」「スタミナ」「スピード」「インテリジェンス」「マジック」「スキル」の各種の宝石を埋め込む事により強化が可能だ。
宝石はとても高価で装備により埋め込み制限が存在する。
基本「個」として装備アイテムがカウントされるシステムで、どんな武器防具でも1点物として扱われる。
例えば【ロングソード】を武器屋で2本購入したとして、パワー宝石を埋め込んだとする。
そうした場合【ロングソードA】には10個埋め込む事が出来た。
しかし【ロングソードB】には2個しか埋め込む事が出来なかった等、全く同じ装備でも全く性能の違う商品が出来上がる。
装備は購入した時点でランダムに設定される為、こればかりは実際に育てるまで限界値は未知数だ。
当然ドロップ品も同様だ。
その為、レア装備の「厳選」と呼ばれる行動が上位プレイヤー魂を擽る様だ。
当然ランク上位プレイヤーは厳選された激レア装備に身に着けている。
仮に初期装備と言えど宝石強化の限界値が高い物なら最強クラスの武器や防具すら凌駕する能力が獲得出来るし、そう言った装備は公営競売場で高値で売買出来る。
【忍び装束】は忍者の初期装備なので店売りされている。
しかし私の装備している物はスピード宝石を51個埋め込み敏捷性を超強化、スキル宝石を41個でSP数値を向上させている。
この埋め込み数ははっきり言って奇跡的な数字だ。
「シノブ殿が心配なのは宝石強化の事でござるね。」
表情に出ていたのかサクラが考えている事を見透かした様に質問してくる。
スピード宝石を51個埋め込める装備の希少性は高い。
仮に上位の装備に変えたとしても宝石埋め込み数が少なければ性能が下がる可能性が有る。
それに1番ネックとなるのが「愛着」だ。
自分で時間を掛けて育てて来た装備を手放す事が惜しい。
「ああ、【ネオウルツァイド】を使ってシノブ用の伝説の防具を作るのですね。でも素材が足りるのですか?武器よりは必要素材数は少なっかったと思いますが、それでも入手の難しいレア度の素材が複数必要ですよね。」
「問題無い。私とハーデスが公営競売場で入手しておいた。手持ちの在庫分と合わせれば作れるはずだ。伝説の鍛冶屋も、話は付けて有る。」
「えっと、ありがたいんだけど・・・」
私は少し口籠る。
私と咲耶が近隣の村でアルバイトをしている時にイベント進行と素材集めをしてくれていたと聞いていたけど、伝説の防具の素材はそう簡単に揃う程優しくないはず。
DOSはサラっと説明しているけど、かなり苦労したはずだ。
「作る防具は素体の能力だけでも、今の強化済のシノブの防具よりも全ての能力が向上するはずだ。我らがギルドを守護する暗黒神が宝石を大量に提供してくれるらしい。」
「我はもう使う事は無いからな。好きなだけやるぞ。」
「本当に良いの?私が防具として使っても。火力特化したサクラやDOSや暗黒神ハーデスの防具とか、パーティーの要となる回復・補助魔法を使える咲耶を守る防具を作った方が暗黒神ザナファとの戦闘が楽になるんじゃない?」
「拙者らの総意でシノブ殿に使って欲しいでござるよ。」
「悪意は無いとは言え、私達はシノブにリアル性別を明かさずにゲームを続けて来た。性別が男と分かった後でも、私達を今までと変わる事無く接してくれている。」
「男が女性を守るのは当然ですからね。」
「我が妃となり玉座の隣に座する運命のお前を守護するのに相応しい防具を作るのなら、何の問題も無い。」
暗黒神ハーデスの発言後、速攻でサクラと咲耶が殴りつけじゃれていた。
本当に皆は仲が良い。
ギルドメンバーも皆の心遣いと言うか・・・
「仲間の絆」みたいな物を感じて胸が熱くなる。
私は無意識の内に少し涙ぐみながら心から笑顔で言う。
「ありがとう。防具を頂きます。」
多分、生きてきた中で一番丁寧なお辞儀をしたと思う。
皆に促され、北の工業地区に有る伝説の鍛冶屋「ジルナーク工房」へ向かう。
ストーリーモードでは無関係だが通常モードで存在する伝説の鍛冶屋。
各街や村に有る鍛冶屋は武器・防具への宝石の埋め込み強化と、アイテム耐久値を修復する事が主だった仕事だ。
耐久値は課金アイテムと多額のゴールドを支払う事で無制限に出来るのが、通常の場合だと修復毎に最大耐久値が減少していくので大抵のプレイヤーはお気に入りの装備には耐久値を無制限へ加工する。
無課金ユーザーにも救済としてアビスダンジョン内で超低確率ドロップするアイテムの中に課金アイテムの同様の効果の有るアイテムもドロップする。
伝説の鍛冶屋は、この世界で唯一「ドワーフ族」の生き残りで、何故か不老不死の存在と言う設定らしい。
過去に暗黒神ザナファの眷属に一族を滅ぼされ、村を追われ世界を放浪してきた。
幾多の年月を生き、モンスターがドロップする高性能のレア装備は彼が造った物とされている伝説の鍛冶師だ。
彼のみが希少鉱石の加工が行える唯一の人物だ。
詳しい背景は知らないが、考察ガチ勢の大好物なネタとして扱われる人物だ。
プレイヤー間でも伝説の武器を造った人は少ない、しかし伝説の防具は何人か作成しているプレイヤーが居る為性能が分かっている物が多い。
DOSは忍者用の伝説の防具の性能を知っているんだろう。
北の工業地区の隅、個人で経営する店舗には似使わない程大きな店舗が見えて来る。
古ぼけた看板には「ジルナーク工房」と書かれており、開店している事を示す「OPEN」の看板が扉に掲げられていた。
忍者用の最強の防具を造って貰える。
私が皆の役に立てるかは分からないけど、少しでも強くなって皆の力になりたい。
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