なんだこのギルドネカマしかいない！ Ψギルドごと異世界に行ったら実は全員ネカマだったΨ

機械都市編

061話 もう1人の男

DOSどっちゃんは周囲に張り巡らせた罠の位置を把握し、華麗な脚捌きで咲耶に近接攻撃を仕掛ける。

彼は射撃力極振りの生粋のスナイパー/ガンナーだ。
しかしその洗練された攻撃回数と回避力は圧倒的に咲耶を上回っている。

咲耶の殴打攻撃を全て回避し、斬撃と打撃を交えた近接戦闘を繰り広げる。

「強い！コイツ、本物のDOSドスです！」

回復薬のお陰で肩の傷は治り、痛みや肩の駆動に問題は無い。

リアル世界で大怪我とは無縁の生活を送って来た私は先程感じた痛みを思い出し、精神的恐怖を感じて臆病になる。

怖い・・・俗に言うSAN値が下がるってヤツだ。

ゲームで言う状態異常と内から来る精神的な物の判別方法は不明だけれども痛みから来る恐怖は確実に存在する様だ。

これは私の精神と言うか魂と言うか、そう言った物が感じさせていると認識するべきなのだろうか。

はっきり言って今後の戦闘に支障が出そうだ。

今まで出会ったモンスターは姿形が不気味とは感じたりはしたが、生死への恐怖は全く無かった。オスロウ国の偽国王との戦いですら大勢の仲間の協力と

ゲームでの戦闘経験も有り恐怖は殆ど感じなかった。

目の前に居るDOSどっちゃんはこのゲームのノウハウや戦闘の立ち回り、効率的な動きを細かく教えてくれた師匠的存在だ。

操られているとは言え、私にとっては最強で有り目標とするプレイヤーなのだ。
先程成功した咲耶との連携も恐らく通用しないだろう。

正直勝てる自信が無い。

私も分身体と共に咲耶の援護へと入る。

回避と手数だけなら私の方が上だ。
しかしDOSどっちゃんのプレイヤースキルの前には分身体の攻撃力では威力が少ない。

あっと言う間に3体の分身体が銃剣の剣撃で消滅させられる。
私の小太刀とDOSどっちゃんの銃剣の刃が重なり鍔迫り合いの様な形になる。

基本能力は機械種アンドロイドのDOSどっちゃんの方が高い。
この態勢での力比べでは不利だ。

「DOSどっちゃん！私達が分からないの？！正気に戻ってよ！」

「・・・・・・」

思った通り戦闘姿勢を解く気は無いらしい。

彼は私の小太刀を下方へ受け流し、その姿勢から体を回転して私の腹部に強烈な蹴りを浴びせる。

痛いと感じた瞬間に後方へ吹き飛ぶ。
素早く受け身を取りすぐに横に回避行動を取る。

「ジジッ」と言う音と共に先程受け身取った場所の地面に2発の銃痕が刻まれる。

危ない、不可視化が解けたとは言え一瞬も油断出来無い。

DOSどっちゃんは私を警戒しつつ、優先攻撃順位ヘイトの向いている咲耶へ少しずつ摺足で歩み寄る。

銃剣を片手に持ち、もう片手には銃の名前は分からないがマグナムの様な経口が大きめの拳銃を構えている。

なんとか攻撃を当てて優先攻撃順位ヘイトを私に向けないと、咲耶では回避すら出来ないだろう。

私でも半分回避出来るかどうか微妙だ。

消耗は激しいが【影分身】を使用して隙を作り、弱点属性の電撃能力を誇る咲耶の【雷槌ミョルニル】により大ダメージを与えるのが理想だ。

咲耶が正面から攻撃しても命中率的に回避される可能性が高い。

瀕死になる位のダメージ当てれば意識が元に戻るだろうか？
私は再度【影分身】を使い【縮地】で距離を詰めて二刀流で斬り込む。

DOSどっちゃんは銃剣を巧みに使い分身体の連撃を全て回避・受け流し、もう片手のマグナムで確実に分身体にダメージを与えていく。

隙を付いて咲耶も大槌で攻撃をするが回避され銃剣によるカウンターを受け刺傷を受ける。

本体の私自身は彼に近付く事に抵抗が有り遠距離攻撃をしていた。
分身体は1人、また1人と倒され消滅する。

咲耶の攻撃はDOSどっちゃんに一切当てれていない。
【神ノ雷ディトニトル】の再充填時間リキャストタイムまではまだ時間は掛る。

覚悟を決めるしかない。
気絶ギリギリまで攻めて攻めて攻めまくる。

私は3度目の【影分身】を発動し二刀流構え【地獄ノ業火インフィヌス】を発動し特攻する。

刀で銃剣を抑えつつ小太刀で攻撃するがギリギリで回避される。

咲耶も同時に大槌で攻撃をするが当たらない上に【マグナム】の銃撃を両肩と右大腿部、鎖骨に受けて膝を付き倒れる。

「咲耶！」

咲耶が倒れ意識を失った様だ。
これでは自身の回復すら出来ない。

灰色に変化していないので間違いなく生きている。

しかし夥しい出血量だ、あれでは体力が持たない。
強すぎる、「深紅の薔薇」のサブマスターの実力は伊達では無い。

彼は容赦なく【マグナム】での銃撃が私の体を掠める。

防御力の低い私が食らえば致命傷になり兼ねない。
恐怖と緊張が断続的に続きストレスが半端ない。

油断はしてない。
不意に彼の銃剣が私の小太刀を弾き隙のできた腹部に【マグナム】から発射された弾丸が至近距離からクリーンヒットして貫通する。

同時に彼の前部ボディに私の【地獄ノ業火インフィヌス】を纏った刀が直撃し彼の体が吹き飛ぶ。

銃撃を受けた腹部に激しい痛みと焼ける様に熱い感覚が襲って来る。
急激に血圧が下がるのが自分でも分かる。

痛い痛い痛い痛い。
他に考えが浮かばない位、私の脳が救難信号を出している。

バンッ！バンッ！と何かの破裂音が鳴る。

痛む腹部を抑えながら、その方向に目を向けると咲耶の脇に銃を構えたDOSどっちゃんが咲耶にトドメを刺していた。

咲耶の体が見る見る灰色に染まり絶命した事が傍から見ても分かる。

腹部の痛みで蹲る私にDOSどっちゃんは武器を持ち替える。
あれは彼が主力武器メインウエポンとして装備している最強の長銃【シャランガーナ】だ。

まずい長距離射撃が来る。
早く回復アイテムを使って回復しないと殺される。

立て・・・立って回避をしなければ。

DOSどっちゃんがゆっくりと【シャランガーナ】を構え、その銃口が私を狙う。

その時巨大な雷撃が彼を包み周囲に激しい衝撃が走る。
その衝撃でDOSどっちゃんの体が吹き飛ぶのが見えた。

「待たせたでござるなシノブ殿。あれは・・・・DOSドス殿でござるよな？」

「ふん、本物だろうと偽者だろうと、我が暗黒の魔力の前には機械種アンドロイドなど無力だがな！」

この聞きなれた口調と声はサクラだ。
久しぶりにサクラの声を聴いた様な気がする。

もう1人は誰だろう・・・聞きなれない声が聞こえた。

声のした方に目を向けるとサクラともう1人。
黒衣を纏った闇妖精種ダークエルフの女性が隣に立っていた。

黒髪ロングのストレートに浅黒い肌に尖った耳、装備オプションの暗黒オーラを纏っている。

手には2匹の蛇が螺旋を巻いたフォルムのソーサラー上位装備、長杖【カドゥケウス】を装備した見知った人物。

あの姿は暗黒神ハーデスハーちゃんだ。
声の質が男だったので分からなかったが特徴深い厨二病っぽい口調と不敵な笑顔を見て懐かしさ感じる。

彼女に会えた喜びよりも彼女が「彼」だった事の方が私の脳を混乱させる。
痛いはずの腹部より、その事実が脳を支配し唖然とした表情で質問する。

「暗黒神ハーデスハーちゃんも男だったの？」

彼は蹲る私に、杖を持っていない手を差し出し自信満々の表情で無言で親指を立てて答える。
サクラの方に目を向けると腕を組みながらウンウンと頷いている。

あれ？「深紅の薔薇」って女性限定ギルドじゃなかったっけ？

何故か女性率超低くない？
混乱魔法を受けていないのに混乱する私がいた。

一体どうなっているんだ、この状況は誰か説明してくれ！