上 下
57 / 252
機械都市編

057話 暗黒神降臨

しおりを挟む
-機械都市ギュノス国 西大門前-

晴れていた天候は徐々に曇り始め、朝方にも関わらず多少薄暗い風景へと変わっていった。
馬を走らせ西大門前に到着と同時に戦闘を開始する。

守護機械兵ガーディアンの名前は「ヴィルーパークシャ」右手に三鈷戟こんごうしょと呼ばれる両端が三又に分かれた鋭利な爪の様な物が付いた小さな銛の様な武器を片手に上位魔法ハイスペルによる攻撃を行ってくる。

ドゥリタラーシュトラと似た赤色のフォルムで全長2メートル程度と小型だが高機動能力により攻撃命中率・回避性能共に高く上位魔法ハイスペルでの連続攻撃を得意とする。

「あいつ、どんなセンサー搭載しているんですか!?攻撃が当たらない!ゲームより面倒そうですね!」

「元より回避能力が高いからね。【神ノ雷ディトニトル】を当てるには完全密着しないと!」

先手必勝で放った【神ノ雷ディトニトル】を回避出来る程の高機動回避能力を誇るヴィルーパークシャは私達と一定の距離を保ちながら、右手で氷魔法と左手で火炎魔法を交互に放ってくる。

私は攻撃を回避しながら多少ダメージを与える事が出来るが、咲耶は何度か被弾しダメージを負っている。

咲耶は補助職に転職した段階で【縮地】等の攻撃移動系の特殊技能スキルを残す事をしなかったので主事していない。

その為か、移動速度の速い守護機械兵ガーディアンに対して、まだ1度も攻撃を当てれていない。

隙を付いて【影縫い】を仕掛けてみたが二度不発に終わる。
流石に成功率35パーセントは確率的に低い。

前の戦いで一発成功したのが稀な例だろう。

「私が粘着罠でヤツの機動性を下げるから咲耶は迂回して後方に回り込んで!」

「了解です!頼りにしてます!」

私は【粘着罠】を地面に仕掛けて【縮地】で距離を詰める。
【影分身】と【【不知火しらぬい】で斬撃を与えつつ、【クナイ】を投げて移動誘導を行い罠を設置した地点へ追い込む。

刀や小太刀では生物には有効だけど、実際に機械装甲に特大ダメージを与えるにはサクラ位の腕力が必要なのだろう。

ゲームでは単独ソロでも時間を掛ければ倒せる。
しかしこの世界はどんだけ難易度が高いんだ。

補助魔法を使う兵士が魔法防御障壁を展開しながら、数人が命中率・回避能力向上の魔法スペルで支援をする。

冒険者の攻撃魔法部隊は火炎魔法と氷魔法攻撃を相殺することに専念して貰っている。

下手に雷魔法を打っても回避されてしまうし、誘導の邪魔になる可能性が有る。
ヴィルーパークシャが罠地帯に侵入し、【粘着罠】で脚を取られ動きが鈍くなり隙が出来る。

「少しキツイけど、4人分の【影縫い】を喰らえ!!」

【粘着罠】ごと分身体3人の小太刀を一斉に地面に突き刺し、特殊技能スキル【影縫い】を四発同時発動させる。

確率自体は35パーセント。
成功判定は4回。

SP消費は激しいがどうやら成功した様だ。

ギギギと言う機械音と共に瞬間的にヴィルーパークシャの動きが止まる。
どうやら1回分の【影縫い】が成功した。

「咲耶成功した!両脚を破壊して!」

「合点・・・・っ承知のぉぉぉぉ助!」

【粘着罠】を飛び越える様に守護機械兵ガーディアンに接近した咲耶が、大きく振りかぶった大槌を振り下ろす。

ヴィルーパークシャの脚部を粉砕し咲耶を中心に直径5メートルのクレーターが出来上がる。
まさに会心の一撃と言うのに相応しい攻撃が入る。

冒険者魔法隊が待ってましたとばかりに雷魔法の詠唱を始める。
咲耶がヴィルーパークシャの右腕に大槌を振り下ろし叫ぶ。

「私ごとコイツに電撃魔法を撃ってください!」

今ヤツから離れると両脚を再生されて距離を取られてしまう可能性が有る為、自分ごとダメージを与えて畳み込む気なのだろう。

多少戸惑いつつも冒険者達は複数の電撃魔法を放ち咲耶を巻き込んだ爆発が起きる。
電撃耐性装備の咲耶なら耐えれるはず、痛いだろうけどね。

爆発の粉塵の中に【神ノ雷ディトニトル】の巨大な雷柱が落ち、衝撃波と共に爆発が周囲を包む。

その衝撃で舞っていた粉塵が吹き飛び視界が開ける。

中央のクレーターには全身がバラバラになって機能停止しているヴィルーパークシャの残骸に紛れ大の字で仰向けに倒れた咲耶が居た。

大丈夫なのか?
気絶しているんじゃ無いだろうか。

咲耶は倒れたまま、おもむろに右手を空に掲げ握った手の親指を立てて勝利宣言をする。

「うおおおおおおぉぉぉぉおおぉ!!!」

周囲の冒険者から勝利の歓声が上がる。

さすがに連戦で疲労した私達戦闘部隊は西大門前で回復魔法で傷の手当をしながら小休憩を行っていた。

私はSP回復薬を飲み過ぎて少しお腹が膨れる。
水腹の割に回復量が少ない。

この世界で販売しているSP回復薬はゲームで言う所の効果の小さいアイテムしか見かけない。

様々な店舗の店主に聞いて見たが、そもそも効果の高いSP回復薬は存在しないらしい。

完全回復薬【ハイエリクサー】は存在するらしいが、市場に出る事自体稀で希少性が高いアイテムだと話していた。

この世界に転移した時に1番最初に金持ちを探して完全回復薬【ハイエリクサー】を売れば良かったなと思った。

無理にSP回復薬を服用していると、そこに数人の騎馬隊が東の正面大門から焦った様子で伝令を伝えにやって来た。

「咲耶様、シノブ様!部隊長より伝令を伝えに来ました!・・・に、俄かに信じられないのですが北大門に暗黒神を自称する魔人が降臨し守護機械兵ガーディアンと待機兵を巻き込んで交戦中との事です!」

はぁ!?暗黒神ザナファが復活したのか!?
いやいやいや・・・・、無い無い無い早すぎる。

イベントをガン無視で出現とか有り得ん。
いや・・・イベントをスキップして進めれている以上、有り得ない事でも無いのか?

私と咲耶はお互いに驚いた顔で見つめ合う。
その瞬間私達が背にして休憩していた西大門が大きな音を立てて上昇し始める。

馬鹿な!?
まだ1体残っている守護機械兵ガーディアンが居るはずだ・・・

まさか報告に有った暗黒神ザナファが守護機械兵ガーディアンを倒したから大門が解放されたのか?

えーと、落ち着け私。
どうしたら良いんだ。

落ち着く為には素数を数えれば良いんだっけ?
てか素数って何だろう割れないヤツだっけ?
神の暗号とか何とか聞いた事有るけど良く分からんな。

・・・アホな事を考えたら少し落ち着いてきた。

私達は同時に空を眺める。
空は曇り、広い空を雨雲が覆っているが周囲の環境に変化は無い。

暗黒神ザナファ復活後はフィールドの情景が変化する。
空は赤くなり周囲の草木が秋が来た様に枯れた色に染まり、そしてモンスターの能力が強化され凶暴化する。

不完全な復活だから環境が変化して無いのだろうか?
その時、ガシャンと大きな音が響き大門のロックが解放される。

「咲耶、取り敢えず突入してサクラ達を探そう!この難易度の暗黒神ザナファは不完全でも2人じゃ勝てないかも知れない。」

「そうですね。他の門のレジスタンス軍も開門した瞬間に突入を開始して市民の誘導を始めているはずですし。でも本当に暗黒神が復活したのでしょうか?」

「分からない、でも守護機械兵ガーディアンを倒せる程強大な何者かが居る事は間違い無いよ!」

ゲームではこんな展開は存在しなかった。
またイレギュラーが起きたとしか思えない。

「伝令兵!各大門の突入は予定通り慣行する。北大門は被害状況を確認し、残存勢力で避難誘導を開始。負傷兵は避難地に誘導して下さい。あと暗黒神には手出しは一切しないで下さい!その事は各部隊にも通達をお願いします!」

伝令兵に作戦変更は無く避難誘導に当たってもらう様に伝え、暗黒神は私達と都市内に居る友人と協力して食い止めると話す。

西大門の部隊突入を見届け、咲耶に私の持っていた【黒猫スーツ】を貸して着て貰う。

まずは都市内部に潜伏し、DOSどっちゃんとサクラを探して合流しないといけない。

不安を抱えながらも暗雲が立ち込める中、私達は都市へと潜入して行った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

家族全員異世界へ転移したが、その世界で父(魔王)母(勇者)だった…らしい~妹は聖女クラスの魔力持ち!?俺はどうなんですかね?遠い目~

厘/りん
ファンタジー
ある休日、家族でお昼ご飯を食べていたらいきなり異世界へ転移した。俺(長男)カケルは日本と全く違う異世界に動揺していたが、父と母の様子がおかしかった。なぜか、やけに落ち着いている。問い詰めると、もともと父は異世界人だった(らしい)。信じられない! ☆第4回次世代ファンタジーカップ  142位でした。ありがとう御座いました。 ★Nolaノベルさん•なろうさんに編集して掲載中。

オレの異世界に対する常識は、異世界の非常識らしい

広原琉璃
ファンタジー
「あの……ここって、異世界ですか?」 「え?」 「は?」 「いせかい……?」 異世界に行ったら、帰るまでが異世界転移です。 ある日、突然異世界へ転移させられてしまった、嵯峨崎 博人(さがさき ひろと)。 そこで出会ったのは、神でも王様でも魔王でもなく、一般通過な冒険者ご一行!? 異世界ファンタジーの "あるある" が通じない冒険譚。 時に笑って、時に喧嘩して、時に強敵(魔族)と戦いながら、仲間たちとの友情と成長の物語。 目的地は、すべての情報が集う場所『聖王都 エルフェル・ブルグ』 半年後までに主人公・ヒロトは、元の世界に戻る事が出来るのか。 そして、『顔の無い魔族』に狙われた彼らの運命は。 伝えたいのは、まだ出会わぬ誰かで、未来の自分。 信頼とは何か、言葉を交わすとは何か、これはそんなお話。 少しづつ積み重ねながら成長していく彼らの物語を、どうぞ最後までお楽しみください。 ==== ※お気に入り、感想がありましたら励みになります ※近況ボードに「ヒロトとミニドラゴン」編を連載中です。 ※ラスボスは最終的にざまぁ状態になります ※恋愛(馴れ初めレベル)は、外伝5となります

Alliance Possibility On-line~ロマンプレイのプレーヤーが多すぎる中で、普通にプレイしてたら最強になっていた~

百々 五十六
ファンタジー
極振りしてみたり、弱いとされている職やスキルを使ったり、あえてわき道にそれるプレイをするなど、一見、非効率的なプレイをして、ゲーム内で最強になるような作品が流行りすぎてしまったため、ゲームでみんな変なプレイ、ロマンプレイをするようになってしまった。 この世界初のフルダイブVRMMORPGである『Alliance Possibility On-line』でも皆ロマンを追いたがる。 憧れの、個性あふれるプレイ、一見非効率なプレイ、変なプレイを皆がしだした。 そんな中、実直に地道に普通なプレイをする少年のプレイヤーがいた。 名前は、早乙女 久。 プレイヤー名は オクツ。 運営が想定しているような、正しい順路で少しずつ強くなる彼は、非効率的なプレイをしていくプレイヤーたちを置き去っていく。 何か特別な力も、特別な出会いもないまま進む彼は、回り道なんかよりもよっぽど効率良く先頭をひた走る。 初討伐特典や、先行特典という、優位性を崩さず実直にプレイする彼は、ちゃんと強くなるし、ちゃんと話題になっていく。 ロマンばかり追い求めたプレイヤーの中で”普通”な彼が、目立っていく、新感覚VRMMO物語。

【R18】騎士たちの監視対象になりました

ぴぃ
恋愛
異世界トリップしたヒロインが騎士や執事や貴族に愛されるお話。 *R18は告知無しです。 *複数プレイ有り。 *逆ハー *倫理感緩めです。 *作者の都合の良いように作っています。

元四天王は貧乏令嬢の使用人 ~冤罪で国から追放された魔王軍四天王。貧乏貴族の令嬢に拾われ、使用人として働きます~

大豆茶
ファンタジー
『魔族』と『人間族』の国で二分された世界。 魔族を統べる王である魔王直属の配下である『魔王軍四天王』の一人である主人公アースは、ある事情から配下を持たずに活動しいていた。 しかし、そんなアースを疎ましく思った他の四天王から、魔王の死を切っ掛けに罪を被せられ殺されかけてしまう。 満身創痍のアースを救ったのは、人間族である辺境の地の貧乏貴族令嬢エレミア・リーフェルニアだった。 魔族領に戻っても命を狙われるだけ。 そう判断したアースは、身分を隠しリーフェルニア家で使用人として働くことに。 日々を過ごす中、アースの活躍と共にリーフェルニア領は目まぐるしい発展を遂げていくこととなる。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

25歳のオタク女子は、異世界でスローライフを送りたい

こばやん2号
ファンタジー
とある会社に勤める25歳のOL重御寺姫(じゅうおんじひめ)は、漫画やアニメが大好きなオタク女子である。 社員旅行の最中謎の光を発見した姫は、気付けば異世界に来てしまっていた。 頭の中で妄想していたことが現実に起こってしまったことに最初は戸惑う姫だったが、自身の知識と持ち前の性格でなんとか異世界を生きていこうと奮闘する。 オタク女子による異世界生活が今ここに始まる。 ※この小説は【アルファポリス】及び【小説家になろう】の同時配信で投稿しています。

処理中です...