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大陸横断編
039話 魔法国家ハイメス国
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オスロウ国の入口で周辺を警備中の聖騎士団長シグに出会う。
「おお!サクラ様にシノブちゃん、それに咲耶殿!」
彼のイメージで付けられた私の敬称は「ちゃん」で咲耶は「殿」らしい。
どう言う基準なんだろうか。
大好きなサクラは「様」って、当のサクラは露骨に嫌な奴に会ってしまった的な表情を浮かべていて少し笑える。
私をちゃん付けで呼んだ事をサクラと咲耶に「距離が近い!」と詰められて、結局「さん」付けに落ち着いたんだけどね。
シグは名残惜しそうにサクラの手を取り「また必ずお会いしましょう!!」と硬く約束を交わしていた。
咲耶はニヤニヤしながら「シグ、この戦いが終わったらサクラと結婚すると良いです。応援してますよ。」と言うと、シグの目が輝き「ありがとう!咲耶殿!私は頑張って強くなります!」と鼻息を荒くしていた。
その後咲耶とも握手を交わし、私の頭を自然に撫でる。
シグには黒猫の姿に見えている事が分かっていたので特に邪険にする事は無い。
しかし、それを見たサクラと咲耶、更に透明化していたDOSの拳がシグを襲い倒れる。
「隊長!どうされましたか!?」と言いながら近くに居た聖騎士が数人集まって来た。
面倒事にならない様に「疲れているんですよ。」と言ってシグを聖騎士に任せてその場を去った。
森林地帯を抜け更に北の山岳地帯へと道なりに歩みを進めていた。
空は快晴、雲一つない青空が広がっていた。
遥か上空を小型のドラゴンが飛んでいる。
ああいう風に自由に飛べたら楽なのになぁ・・・と考えながらのんびりと歩く。
私とサクラはDOSと咲耶に話し、これまでの経緯をお互いに共有していた。
戦闘中に咲耶とは少し話したけど、もう少し詳しくね。
咲耶達は私達より約2週間前にこの世界に転移したらしい。
アルテナの街で労働組合の依頼を全て受け、約1週間で全ての依頼を達成し英雄扱いを受けたらしい。
そして調子に乗った咲耶が、周囲のモンスターを狩りまくってほぼ全滅させたらしい。
そのままの足でアルテナの湖を目指したが、2人共マップが無い状態で道に迷い山脈越えのルートを辿りハイメス国へと到着したそうだ。
この2人って方向音痴なのか?DOSは少し意外。
しかし、よくよく考えるとマップ表示が無い状態で私みたいに【索敵】の様な特殊技能が無かった場合道に迷うのは仕方が無い事なのかも知れない。
「ドラゴン倒さなくても進めたんですね。」
「うん、なんか会話が出来て通してくれた。」
「喋ったんですか!?」
至極当然の反応だ、私達も驚いた。
第一声が『ファミチキ下さい。』「コイツ脳内に直接!?」的なやり取りだったのだから。
ゲームでは喋る事無く、速攻で襲い掛かってきたから普通では無い。
その後、ハイメス国に着いた2人は労働組合で高難易度の依頼をあっさり達成。
ハイメス国王のたっての頼みでハイメス軍へと特別徴兵されたと言う。
ハイメス軍に加担して偽国王ごとオスロウ国を壊滅させれば一石二鳥になると考え、戦争に参加した所で私達に出会ったとの事だった。
ハイメス国でも2人は英雄級の信頼を獲得しているらしくVIP待遇が受けれると自慢していた。
サクラと咲耶は女湯がどうのとかロクでもない会話をして私とDOSは溜息を付きながら苦笑していた。
この犯罪者共め!こいつらとは絶対風呂に入らない様にタイミングや場所を憂慮せねばと心に強く誓う。
山岳地帯はハイメス軍が行きと帰りでモンスター討伐をしているらしく、遭遇する事自体稀で素晴らしく平和な道中だった。
・
・
・
-ハイメスの国-
小さな洞窟や開けた場所で野宿をする事3日、私達はようやくハイメスの都に到着した。
休戦中とは言え現在進行形で戦争中と言う事も有り厳重な警備の中、DOSと咲耶の口添えで入国許可を経て街へと足を踏み入れる。
街の中は淡い紫色の光が周囲を舞い、とても神秘的な風景が広がっていた。
至る所に魔法技術が使われた街の造りは、とても厳かな雰囲気を漂わせていた。
労働組合や図書館と言った公共施設には分かり易い様に魔法石の装飾が施され、施設中空にウィンドウの様なビジョンが表示されている。
咲耶の話では街を浮遊している紫の光源が街灯の役割をしている物質らしく、対モンスター結界の役割も同時に果たしているらしい。
細かな所でこう言った魔法技術の発展が伺えた。
オスロウ国程の活気は無いが、街は平和そのものでとても戦争中の雰囲気では無かった。
街の中央を越える辺りに城へ続く道に再度関所が設けられており、そこには王族専用の豪華な馬車が用意されていた。
兵士の話ではデイア姫の計らいで準備したとの事だ。
入国した事は既に知られているらしい。
メールやチャットの様なゲームで存在した遠隔的な連絡手段が残っているのだろうか?
それとも魔法なのかな?
馬車を引く馬は生物では無く岩で出来たゴーレムの馬に甲冑を着せた様な無機質な感じで、皆が乗り込むと自動で馬車を引き始めた。
なんて便利な技術なんだと感心する。
更に魔力で制御されているのか馬車に反応して城へと繋がる可動式の跳ね橋が降り、城内へ入って行く。
何これ凄い!
ゲームでは気にした事無かったけど実物を見ると凄い。
リアルでは自動ドアとかエレベーターにエスカレーターとか普通に使っていたけどファンタジー世界でそういった技術を見ると少し感動を覚える。
その先には巨大なアメジストの原石に覆われた城が見えた。
あれがハイメス城だ。
黒いミスリル銀の鎧に身を包んだ魔法騎士に城内の応接室の様な場所に通される。
そしてアールグレイの様な風味の紅茶で持て成される。
給仕をしてくれた執事が言うにはこのお茶はSP回復効果の有るらしい。
私は隣の部屋で【黒猫スーツ】を脱ぎ、【忍者装束】に着替え座り直す。
不意に扉がノックされ2人の魔法騎士が入室し扉の両端に待機する。
奥から正装を身に着けたデイアがゆっくりと入室し、私達の座っているテーブルの上座の位置に座る。
洗練された仕草と佇まい、美しい銀色の髪に色白の肌。
何度見ても、この世の物とは思えない程の美形だ。
ゲームをリアル化するとこの様な感じになるのか。
「随分のんびりでしたね、咲耶、DOS。」
「いやぁオスロウ国は肉系の食事が美味しくて、お酒の種類も豊富でした。」
悪びれもせずニコニコと冗談めいた事を話す咲耶に、デイアは目を閉じながら眉間に皺を寄せ眉毛をピクピクと痙攣させていた。
少し怒ってらっしゃる様ですけど、大丈夫かな。
まぁ確かにオスロウ国の食事は美味しい。
闘技場でサクラと食べた最高級のお肉を思い出すと口の中に涎が溜まり、お腹が空いてくる。
「まぁ良いでしょう、改めて自己紹介と行きましょうか。私の名はデイア・フィル・ハイメス。この国の国王ゼイル・フィル・ハイメスの娘で魔法科軍団長を務めております。」
姫にして軍団長って、設定盛過ぎ。
余り気にして無かったけど、お姫様って設定だったのか初めて知った。
これはデイア姫と呼ぶべきか、それともデイア様か。
私達も改めて自己紹介をして現在の状況を説明した。この世界が実はゲームの中の出来事と言う説明はしなかった。
流石に理解出来ないだろうし、それを事実として認識しているのは観測者兼プレイヤーだった私達しか居ないのだから。
私が予言者の家系で今後起こる事が予知夢として分かると、サクラが説明し咲耶がフォローする。
そしてこれから起こる機械都市ギュノス国での事、暗黒神ザナファの復活。
世界の崩壊の事を具体的に話す。
デイア姫も脇に控えた御付きの魔法騎士達も半信半疑と言った表情で話を聞いていた。
デイア姫はDOSの方に顔を向けると、彼女は力強く頷く。
その頷きには説得力が有るのかデイア姫も悩む様な姿勢になり懸命に理解しようとしている様子だった。
重い沈黙が続きデイア姫は一度退席をすると言い残し席を立った。
さてさて・・・これからどうなるのだろうか?
多少の不安を抱えながら、柔らかいソファーに身を埋める。
「おお!サクラ様にシノブちゃん、それに咲耶殿!」
彼のイメージで付けられた私の敬称は「ちゃん」で咲耶は「殿」らしい。
どう言う基準なんだろうか。
大好きなサクラは「様」って、当のサクラは露骨に嫌な奴に会ってしまった的な表情を浮かべていて少し笑える。
私をちゃん付けで呼んだ事をサクラと咲耶に「距離が近い!」と詰められて、結局「さん」付けに落ち着いたんだけどね。
シグは名残惜しそうにサクラの手を取り「また必ずお会いしましょう!!」と硬く約束を交わしていた。
咲耶はニヤニヤしながら「シグ、この戦いが終わったらサクラと結婚すると良いです。応援してますよ。」と言うと、シグの目が輝き「ありがとう!咲耶殿!私は頑張って強くなります!」と鼻息を荒くしていた。
その後咲耶とも握手を交わし、私の頭を自然に撫でる。
シグには黒猫の姿に見えている事が分かっていたので特に邪険にする事は無い。
しかし、それを見たサクラと咲耶、更に透明化していたDOSの拳がシグを襲い倒れる。
「隊長!どうされましたか!?」と言いながら近くに居た聖騎士が数人集まって来た。
面倒事にならない様に「疲れているんですよ。」と言ってシグを聖騎士に任せてその場を去った。
森林地帯を抜け更に北の山岳地帯へと道なりに歩みを進めていた。
空は快晴、雲一つない青空が広がっていた。
遥か上空を小型のドラゴンが飛んでいる。
ああいう風に自由に飛べたら楽なのになぁ・・・と考えながらのんびりと歩く。
私とサクラはDOSと咲耶に話し、これまでの経緯をお互いに共有していた。
戦闘中に咲耶とは少し話したけど、もう少し詳しくね。
咲耶達は私達より約2週間前にこの世界に転移したらしい。
アルテナの街で労働組合の依頼を全て受け、約1週間で全ての依頼を達成し英雄扱いを受けたらしい。
そして調子に乗った咲耶が、周囲のモンスターを狩りまくってほぼ全滅させたらしい。
そのままの足でアルテナの湖を目指したが、2人共マップが無い状態で道に迷い山脈越えのルートを辿りハイメス国へと到着したそうだ。
この2人って方向音痴なのか?DOSは少し意外。
しかし、よくよく考えるとマップ表示が無い状態で私みたいに【索敵】の様な特殊技能が無かった場合道に迷うのは仕方が無い事なのかも知れない。
「ドラゴン倒さなくても進めたんですね。」
「うん、なんか会話が出来て通してくれた。」
「喋ったんですか!?」
至極当然の反応だ、私達も驚いた。
第一声が『ファミチキ下さい。』「コイツ脳内に直接!?」的なやり取りだったのだから。
ゲームでは喋る事無く、速攻で襲い掛かってきたから普通では無い。
その後、ハイメス国に着いた2人は労働組合で高難易度の依頼をあっさり達成。
ハイメス国王のたっての頼みでハイメス軍へと特別徴兵されたと言う。
ハイメス軍に加担して偽国王ごとオスロウ国を壊滅させれば一石二鳥になると考え、戦争に参加した所で私達に出会ったとの事だった。
ハイメス国でも2人は英雄級の信頼を獲得しているらしくVIP待遇が受けれると自慢していた。
サクラと咲耶は女湯がどうのとかロクでもない会話をして私とDOSは溜息を付きながら苦笑していた。
この犯罪者共め!こいつらとは絶対風呂に入らない様にタイミングや場所を憂慮せねばと心に強く誓う。
山岳地帯はハイメス軍が行きと帰りでモンスター討伐をしているらしく、遭遇する事自体稀で素晴らしく平和な道中だった。
・
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-ハイメスの国-
小さな洞窟や開けた場所で野宿をする事3日、私達はようやくハイメスの都に到着した。
休戦中とは言え現在進行形で戦争中と言う事も有り厳重な警備の中、DOSと咲耶の口添えで入国許可を経て街へと足を踏み入れる。
街の中は淡い紫色の光が周囲を舞い、とても神秘的な風景が広がっていた。
至る所に魔法技術が使われた街の造りは、とても厳かな雰囲気を漂わせていた。
労働組合や図書館と言った公共施設には分かり易い様に魔法石の装飾が施され、施設中空にウィンドウの様なビジョンが表示されている。
咲耶の話では街を浮遊している紫の光源が街灯の役割をしている物質らしく、対モンスター結界の役割も同時に果たしているらしい。
細かな所でこう言った魔法技術の発展が伺えた。
オスロウ国程の活気は無いが、街は平和そのものでとても戦争中の雰囲気では無かった。
街の中央を越える辺りに城へ続く道に再度関所が設けられており、そこには王族専用の豪華な馬車が用意されていた。
兵士の話ではデイア姫の計らいで準備したとの事だ。
入国した事は既に知られているらしい。
メールやチャットの様なゲームで存在した遠隔的な連絡手段が残っているのだろうか?
それとも魔法なのかな?
馬車を引く馬は生物では無く岩で出来たゴーレムの馬に甲冑を着せた様な無機質な感じで、皆が乗り込むと自動で馬車を引き始めた。
なんて便利な技術なんだと感心する。
更に魔力で制御されているのか馬車に反応して城へと繋がる可動式の跳ね橋が降り、城内へ入って行く。
何これ凄い!
ゲームでは気にした事無かったけど実物を見ると凄い。
リアルでは自動ドアとかエレベーターにエスカレーターとか普通に使っていたけどファンタジー世界でそういった技術を見ると少し感動を覚える。
その先には巨大なアメジストの原石に覆われた城が見えた。
あれがハイメス城だ。
黒いミスリル銀の鎧に身を包んだ魔法騎士に城内の応接室の様な場所に通される。
そしてアールグレイの様な風味の紅茶で持て成される。
給仕をしてくれた執事が言うにはこのお茶はSP回復効果の有るらしい。
私は隣の部屋で【黒猫スーツ】を脱ぎ、【忍者装束】に着替え座り直す。
不意に扉がノックされ2人の魔法騎士が入室し扉の両端に待機する。
奥から正装を身に着けたデイアがゆっくりと入室し、私達の座っているテーブルの上座の位置に座る。
洗練された仕草と佇まい、美しい銀色の髪に色白の肌。
何度見ても、この世の物とは思えない程の美形だ。
ゲームをリアル化するとこの様な感じになるのか。
「随分のんびりでしたね、咲耶、DOS。」
「いやぁオスロウ国は肉系の食事が美味しくて、お酒の種類も豊富でした。」
悪びれもせずニコニコと冗談めいた事を話す咲耶に、デイアは目を閉じながら眉間に皺を寄せ眉毛をピクピクと痙攣させていた。
少し怒ってらっしゃる様ですけど、大丈夫かな。
まぁ確かにオスロウ国の食事は美味しい。
闘技場でサクラと食べた最高級のお肉を思い出すと口の中に涎が溜まり、お腹が空いてくる。
「まぁ良いでしょう、改めて自己紹介と行きましょうか。私の名はデイア・フィル・ハイメス。この国の国王ゼイル・フィル・ハイメスの娘で魔法科軍団長を務めております。」
姫にして軍団長って、設定盛過ぎ。
余り気にして無かったけど、お姫様って設定だったのか初めて知った。
これはデイア姫と呼ぶべきか、それともデイア様か。
私達も改めて自己紹介をして現在の状況を説明した。この世界が実はゲームの中の出来事と言う説明はしなかった。
流石に理解出来ないだろうし、それを事実として認識しているのは観測者兼プレイヤーだった私達しか居ないのだから。
私が予言者の家系で今後起こる事が予知夢として分かると、サクラが説明し咲耶がフォローする。
そしてこれから起こる機械都市ギュノス国での事、暗黒神ザナファの復活。
世界の崩壊の事を具体的に話す。
デイア姫も脇に控えた御付きの魔法騎士達も半信半疑と言った表情で話を聞いていた。
デイア姫はDOSの方に顔を向けると、彼女は力強く頷く。
その頷きには説得力が有るのかデイア姫も悩む様な姿勢になり懸命に理解しようとしている様子だった。
重い沈黙が続きデイア姫は一度退席をすると言い残し席を立った。
さてさて・・・これからどうなるのだろうか?
多少の不安を抱えながら、柔らかいソファーに身を埋める。
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