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隣国戦争編

037話 闘争の終わり

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最先頭で走り出した咲耶に私とサクラも続いて走り出す。
咲耶の狙いは恐らくノックバック。

雷撃で隙を作り其処へ私達で斬り込む。
私とサクラはタイミングを合わせる為に敢えて【縮地】を使わない様に随行する。

もう少し距離を取らないと雷撃の巻き沿いを喰らうかも知れない。

咲耶の着ている【OLスーツ】と、その下に付けている【ヤールングレイプル】と言う手袋は電撃威力と電撃耐性を向上させる能力が付加されている上に咲耶によって強化カスタマイズされている。

「援護攻撃行きます!喰らえ!【神ノ雷ディトニトル!】」

咲耶は天を仰ぐ様に【雷槌ミョルニル】を高らかに掲げ、巨大な槌から一筋の光が上空に登る。

その瞬間、周囲を巻き込んだ巨大な雷の柱がヴァッサゴの全身を飲み込む。
雷の放電現象が起こす独特の轟音が時間差無く雷柱が落ちると同時に周囲に響き渡る。

第2形態は魔法攻撃を無効化する為、ダメージは一切無い。

しかしヴァッサゴは上空から強い力で叩きつけられた様に下方向へのノックバックが発生して一瞬怯む。

私達は即座に【縮地】を使い間合いを詰め斬りかかる。

「サクラ!」

「おう!拙者は左脚を狙う!」

サクラは左前足、私は【影分身】を使い両足を狙う。

特殊技能スキルで3体の分身体を作り二刀流に持ち替え2人組で片足ずつ強襲する。
別に狙った訳では無いが分身体全員が一斉に叫ぶ。

「剣技!【地獄ノ業火八連インフィヌスヤツラネ】!」

高温の蒼い炎を纏った刀がヴァッサゴの両腕を斬り刻む。

【影分身】は本体と合わせて最大4体で攻撃をする特殊技能スキルだ。
ゲームシステム的には4体出した時の最大能力値は「攻撃命中率1.5倍」「攻撃回数4倍」の付加が付き、ダメージ計算式で言うと物理攻撃ダメージ値が2~3倍になる。

全ての攻撃がクリーンヒットすれば約3倍のダメージが当てる事が可能だ。
二刀流と併合する事で更に威力が増す、その攻撃を受けたヴァッサゴの腕に無数の刀傷が出来る。

そしてその傷を蒼い炎が包み物理判定の追加ダメージを加える。

ほぼ同時にサクラが左腕に狙いを付け、デイアの能力向上魔法バフで攻撃力が向上したサクラの二振りの刀は刀身に赤みが掛かる。

「剣技!【十文字刹那じゅうもんじせつなきわみ】!」

きわみ」は侍専用の特殊技能スキルで、SPを2倍消費する事で斬撃の特殊技能スキルの攻撃力を1.5倍にする。

主に一撃で高いダメージを与える必要が有る場合の短期決戦特化の技だ。

サクラのヴァッサゴの左腕を斬り飛ばし、追加ダメージが継続している私の【地獄ノ業火インフィヌス】が燃やす。

私の攻撃力では4人掛かりでも両足を斬り落とす事は出来なかった。

しかし累計で4本の腕を失い、更に両足に致命的なダメージを負ったヴァッサゴはバランスを崩し前のめりに崩れ倒れる。

DOSどっちゃん!」

やばい、SP使い過ぎで意識が・・・とぶ・・・・

【影分身】はSPを常時消費するタイプで特殊技能スキル地獄ノ業火インフィヌス】と同時に併用して二刀流で発動すると約武器8本分のSP消費量が一瞬で圧し掛かる。

ゲームでは「SP尽きちゃった!テヘペロ」程度で特にデメリットが有る訳じゃ無いが、この世界でのSP切れは脳の機能を著しく低下させて意識不明へと陥る危険が有る様だ。

SP回復を使わずに二刀流で【地獄ノ業火インフィヌス】を4人分は流石に無理が有ったな・・・

HPやSPのゲージが見えていれば・・・調整のしようが有ったのに・・・

私は薄れゆく意識の中で、少々反省をする。

しかし、私は勝利の確信が有った。
この後放たれるDOSどっちゃん特殊技能スキルは24時間の再充填時間リキャストタイムが必要とする最強の技だ。

最強の攻撃力を誇ると名高い弾丸による一撃だ。

私とサクラが態勢を崩した事で前のめりに倒れたヴァッサゴを脳天から下腹部に掛けて貫いて倒すはずだ・・・




数分の後に私は目を覚ます。
何か中に浮いている様な感覚がする。

あれどうなったんだ・・・?
SP自然回復により意識がハッキリとする。

私はサクラに抱きかかえられていた。
俗に言う「お姫様抱っこ」と言う恰好だ。

いつもなら恥ずかしいと感じるだろうが、今は体が動かないので為すがままだ。

「大丈夫でござるか?シノブ殿、頑張ったでござるな。我が軍の勝利でござる。」

サクラが私を抱き抱えながら優しい笑顔で微笑む。

イケメンムーブなんだけど今は何も感じない、
そしてさっきから揺れると思ったら咲耶がサクラのお尻を蹴っていた。

何か文句を言っている様だが良く聞こえない。
何を話しているかと聞き耳を立てようとした時に、突然私達を巨大な雷撃が直撃する。

私は脳内で「シノブは800ポイントのダメージを受けた」とシステムコールを真似た。
そして運の悪い事に「麻痺」の状態異常を受けた。

それも有って私は自ら眠る事を選択する事にした。
・・・案外サクラの腕の中も居心地は悪く無い。




-オスロウ国 宿屋-

気が付くと、宿泊していた宿屋の天井が見えた。
ベッド脇に腕を組んで待機していたDOSどっちゃんが、起き上がった私を不意に抱きしめた。

相変わらずメタルボディのDOSどっちゃんの胸は硬かった。
Fカップ・・・いやGかな凶器だ。

頭部に勢い良く胸の頂点部分が直撃したら死者が出る可能性が有るかも知れない。

昔サクラが話していたが、あの胸部には昔のロボットアニメみたいにミサイルを搭載していると冗談で言っていた。

機械種アンドロイドに限っては武器として有りなんじゃないかなと思う。
しかしそこまで柔軟でハチャメチャなオンラインゲーム存在しないんだろうな。

周囲を見渡すと部屋の間取りが広くなっている事に気付く。
普段泊まっている部屋では無く4人用の広い部屋だ。

偽王には勝ったとサクラが言っていたけど、戦争の行方はどうなったんだろう?

少し離れたベッドでサクラと咲耶がイビキをかいて寝ていた。
私はDOSどっちゃんに抱きしめられたまま問いかける。

「戦争はどうなったの?終わったの?」

私が問いかけるとDOSどっちゃんはコクリと頷きで返答する。

「そうか良かった。」

私の予想通り最後はDOSどっちゃんが決めてくれた様だ。

彼女の雄姿を見れなかったのが悔やまれる、彼女はSMOにおける私の師匠だ。

武器に合わせた上手な使い方に立ち回り、そして効率の良い戦闘回しやその動き方。
基本から応用まで彼女から様々な事を教わった。

しかし彼女の最強の一撃は数度数える程度しか見た事が無い。
ちょっと残念だ。

DOSどっちゃんもうちょっと寝ていい?」

DOSどっちゃんが横で守ってくれている安心感。
それが無意識の内に私の中に有った緊張感の様な物を取り払う。

サクラと同じ部屋だと寝ている間に変な事をされそうで、常に厳重に罠を張り警戒する必要が有るからだ。

彼女は私を優しく寝かせ、布団を掛けて頭を撫でてくれる。

その仕草は母親が幼い子供を寝かしつけるムーブに似ている。
そういえばDOSどっちゃんは既婚で自営業の花屋を営んでいるんだっけ・・・

子育て経験の有る親ってこんな感じなのかな?何だか凄く安心する。

私は目を瞑り睡魔に身を任せた。
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