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隣国戦争編

029話 走れシノブ!

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-オスロウ国 森林平野-

「ま、まぁ私は気にしないから・・・いつ通りにね、お互い生きてて折角会えた訳だし。」

真っ白になった思考を振り払い、居た堪れない状況を打開すべく一石を投じる。
膝を付き項垂れていた咲耶は顔を上げて涙目で飛び付き抱き着いてきた。

そして再度私の思考は真っ白になった。

「シノブ!大好きです!」

「だぁ!シノブ殿に抱き着くな!止めろ!は・な・れ・ろー!」

サクラが咲耶を引きはがし、何とか正常な思考に戻る。

そうだここは戦場の真っ最中だった。
てか今私達と咲耶は敵同士になるんですが・・・如何した物かと。

良く見ると咲耶の頭上にも真っ黒な犯罪者印どくろマークが付いていた。
そりゃあれだけ派手に強力な大技を放てば死者が出るだろう。

中心地に近い兵士は黒焦げの消し炭になっているかも知れない。

「だいたいお主は敵軍であろうが!拙者達の敵ではないか!」

「あー、じゃぁ私もオスロウ軍に入りますね。シノブは私が守ります。」

「はぁぁあ!?シノブ殿は拙者が命に代えても守って見せるでござる!お主などお呼びで無いでござる!簡単に寝返る裏切者なぞ信じれないでござるよね!ねっ!シノブ殿!」

「えーと、良く分かんない。私馬鹿だから。」

もう好きにして・・・

あ、そうだDOSどっちゃんはどうしたのだろうか?
アルテアの街では2人で行動していたみたいだけど。

もしかして【姿無き魔槍】ってDOSどっちゃんなんじゃないか?

超絶レア装備の長銃【シャランガーナ】を課金して可能な限り強化し、1発1発の弾丸すら課金アイテムと言う恐ろしい武器を所持している。

彼女なら姿を見せる事無く長距離射撃で殲滅出来る。
そして1発の銃弾の威力が槍の様に貫通する程高いって事で付いた二つ名だろうか?

「咲耶、DOSどっちゃんはどうしたの?2人は一緒じゃなかったの?」

「そうでござる!アルテナの街では一緒だったと聞いたが?」

「ええ、一緒でしたよ。今はオスロウの国王を暗殺しに動いているはずです。」

えええっ!?
単独でオスロウ城に侵入したって事?

でも、良く考えたら偽国王が死ぬのは正規ルートだから問題無いのだろうか?

いやでも、今城には最強の近衛兵長クリス君と近衛兵40名が待機しているはずだ。
強さ的にはクリス君や兵士ではDOSどっちゃんを倒す事は不可能だろう。

問題は偽国王だ、洞窟のレッドドラゴンと対峙した時に感じた感覚。

この世界のレイドボスはゲームとは比較にならない位強い・・・と思う。

多分DOSどっちゃん単身では倒すのは難しいと思う。
それよりもクリス君の命の方が危ない!止めないと!

「逆サイドからのイベント攻略でござるな。この場合、まず止めた方が良いのでござるか?」

「そうそう、スペルマスターのデイアも同行しています。」

「スペルマスターが?何故!?」

「私が戦場の中心で戦い、雑魚兵を殲滅後にオスロウ城で合流し国王を討伐する作戦です。私が作戦を進言したら、ハイメス軍事顧問にOK貰って採用されちゃったんです。」

あんたの作戦かよ!

DOSどっちゃんと最高難易度以上のデイアが組んだら、簡単にオスロウ国は陥落しるんじゃないか?

いや、もはやこのイベントはどう転んでも良いし偽国王が倒されても問題は無いんだけど・・・この世界の偽国王の強さが未知数なのが問題だ。

偽国王同様にハイメス国のデイアもレイドボスだが、偽王は第二形態で魔法無効化する形態に変化する。

無論魔法攻撃しか出来ないデイアは無力化する。

強さだけならむしろ2人では不利だ。
長距離職のスナイパーと後方戦闘特化のスペルマスター、

「サクラ!咲耶!私はDOSどっちゃんを止めてくる!取り敢えず休戦協定で話しを付けといてね!よろしく!」

「ええ!?いや、拙者もい行くでござる!」

「ちょっ!私も一緒にいきます!」

「ダメだって!両軍を止めないと!サクラはオスロウ軍を!咲耶はハイメス軍を休戦する様に説得して!ある程度指揮権を持った2人なら出来るでしょ!お願い!!」

「いや、しかしでござるな!?」

「シノブ、待ってください!」

私は踵を返しオスロウ城に向かう為に走り出す。
この距離なら【縮地】を使って全力で走れば30分程度着くはずだ。

この世界は普通じゃない。
何が起こるか予測がない。

強いとは言えDOSどっちゃんを1人にするのはヤバイ気がする。
下手したらレイドボス2体と同時戦闘になったりとかしたら勝ち目がない。

城に向かって街の方向へ走っている道中でセアス隊とラウル魔法士隊を見かけたが、私が誰か分からず襲い掛かって来た。

私は攻撃を完全回避し兵士を数人気絶させて、部隊中央を突破しオスロウ城に向かって走る。

そうだった私は【黒猫スーツ】を着ていたので人間とは認識されて無い。
彼らを私が一方的に知っている状態なのだ。

これはまずい!
平野を抜け森林の深い所で一旦【黒猫スーツ】に着替え直す。

オスロウの街に向けて再度走り出す。

後方で都市防衛に当たっている聖騎士隊のシグならこの黒猫姿で話をした事が有るので話を聞いてくれるはずだ!

オスロウの街の入口付近に白銀の鎧に身を包んだシグが率いる聖騎士隊の面々が王都の入口を守っているのが見えた。

走り込んで来る私を見つけたシグが何事かと駆け寄って来て両手を掴んで来た。

へっ!?あっ!
盛大に戸惑ったが良く考えたら、彼にしてみたら猫を両手で抱き上げた感覚なのだろう。

私は反射的に彼の手を跳ねのけて後ずさる。
一瞬痴漢でもされるのかと思ったよ。

「サクラ様の使い魔よ、彼女に何かあったのか!?」

「シグ!ああっと・・・簡単に説明するから信じて!」

彼は真剣にサクラの事を心配している様子だった。
私は簡潔に事情を説明しオスロウ城へ戻る事を伝える。

戦争の状況を聞いた上でシグは副団長に入口の警備権限を任せ、私に同行すると言った。

私は再度【縮地】を使い最高速度で走り始める。

「な!?速い!?待ってくださいシノブさん!」

「ごめん待てない!頑張って追って来て!!」

シグも【縮地】は使える様だが、基本身体能力の差により私の方が早く走れる。

今はシグに合わせて走っている場合じゃない。
目的地は同じだからそのうち追い付くでしょ。

もう少しだ、急がないと!
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