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武闘大会編

018話 パッシブスキル「ネカマ」効果は抜群だ!

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-オスロウの都 コロシアム-

「これより、第3回オスロウ国大武闘大会を開催します!」

数人の赤いハイレグアーマーに身を包んだ女性がラウンドガールとしてパネル掲げ、甲高い女性ナレーターの言葉を皮切りに数万名もの観客の歓声が上がる。

武力国家を名乗るだけ有って観客も血気盛んの様だ。
大変盛り上がってまいりました!

女性ナレーターが大会ルールを説明した後、国王が開会の挨拶と宣言を行う。

その後、前回優勝者のクリス君が船首を代表して挨拶を行い、会場は割れんばかりの拍手と歓声が上がり異常な熱気に包まれる。

厳かに開会式を終え、試合開始までしばし有用が出来る。
私とサクラはコロシアム内部の散策を行う。

コロシアムの施設は約5万人の観客席と貴族御用達の有名レストランが複数出店し、コロシアム最上段の立ち見スペースには一般市民が出店する屋台が多数並んでいた。

代表選手はそれぞれ休憩部屋が与えられている。
もちろんサクラにも与えられている。

医療スペースには高位の医者と神殿からは回復系魔法を得意とする司祭や神官が複数待機していた。

国家事業なのでお金の掛け方が半端無いが、観客動員数と入場料や施設使用料を考えると黒字になりそうな気がする。

授業で簿記の資格を取ったので、つい単純な利益計算をしてしまう。
実際経費とか人件費は分からないから正確じゃないんだけどね。

開会式から約1時間後、会場に放送が流れる。

「間もなく第1回戦、労働組合ギルド代表カイゼルとオスロウ王国衛兵長セアスの対戦を開催いたします!」

1回戦は職業スカウトのカイゼル対王国衛兵長のセアス。

カイゼルは体格は小柄・細身で黒尽くめの装備を身に着けた、まさに密偵と言う風貌で数日前に労働組合ギルドで出会ってサクラに対して自分が優勝すると息巻いていた。

盗賊・スカウトは下位クラス職業となる為、基本能力は私より低いはず。
罠等の多彩な特殊技能スキルを上手に使えれば勝機は有るかも知れない。

対するセアスは国に支給される薄緑色の鎧に身を包み長身で体格が良い中年おじ様、体格や雰囲気から熟練の騎士の言った見た目だ。

この大都市の衛兵長だ、当然弱い訳が無い。
ただ冒険者と違って型に嵌った戦い方しか出来ない様なら冒険者で戦闘経験が豊富なカイゼルには及ば無いかも知れない。

「サクラはどっちが勝つと思う?」

「多分カイゼルでござるな。」

良い勝負をすると思うが、やっぱりカイゼルが勝つ可能性が高いのかな?

そういえば受付の横で各試合の勝者を当てる賭博が行われているらしい。
当然前回優勝者のクリス君は1番人気で配当も低い様だ。

「シノブ殿、カイゼルの勝利に賭けて屋台で軽く朝食を食べに行くでござる。」

「試合見なくて良いの?」

サクラは「見る必要無し。後、拙者は決勝まで濡れタオルで問題無い」と豪語し私の腕を引いて賭博屋へ向かった。

配当倍率はセアスの方が低く、カイゼルの方が不人気だったがサクラは迷わずカイゼルに5万ゴールド賭けて次の2回戦も自分に賭けようとしたら本人は駄目と言われてガッカリしていた。

その後屋台で大きな焼鳥串を発見し、フードコートの様な場所で食べる。

流石に試合中は飲食をしている客はおらず、貸し切り状態だった。しばらくすると海上の方から大きな歓声が上がり女性ナレーターの声がコロシアム全体に放送があった。

「第1回戦の勝者!カイゼル!」

戦闘時間は約20分位だろうか?
結構早めに決着が着いた様だ。

館内放送で照射を聞いたサクラが軽くガッツポーズをして軽やかに払い戻しに向かおうとしていたので、腕を掴んで引き戻した。

おいおい次の試合はあなたが参加しないとダメでしょう!
払い戻しは後回しでも宜しい。

遅れて失格にでもなったら次の大会までイベント進められないじゃないか。

「ふふん、1分で終わらせて来るでござる。」

サクラは私に笑顔を向けて軽やかに舞台へと向かった。

彼が舞台に立った瞬間、観客席の男性客から黄色い歓声が上がった。

彼の現在装備はこの大会参加者の中でも屈指の慮出度を誇っている。
「痴女」扱いしても約20パーセント以上の女性は賛同してくれる自信は有る。

女の私でさえ嫉妬するくらいスタイル良さを強調した見た目で、うなじ・へそ・脇が妖艶に見える完璧なバランスを作り出している。

あれは多分サクラの「中の人」の願望が極限までに詰まった究極体なのだろう。
まさに黄金比。

皆さーん!騙されてますが中身は男性ですからねー!
いえ、決して嫉妬では有りません。

対するは王国魔法省の所長をしているラウル、職業はソーサラー。

名前は分からないが高位の魔法防具とソコソコのレア長杖を装備した、色黒優男イケメンの見た目をした30代位の青年だ。

中距離から後方にかけての魔法攻撃を得意とする職業で対人戦には向いて無い。

いかに距離を保ちながら戦うかが勝敗を別けるがサクラなら特殊技能スキル【縮地】で懐に入って1撃で決めるだろう。

上位魔法ハイスペルや状態異常魔法とかに気を付ければ余裕で勝てる。

「2回戦は王国魔法省長ラウル対、労働組合ギルド代表サクラの試合を開催します!」

ん?なんか対戦相手が口元を抑えているが・・・
鼻血が出ているのか?

女性に対して免疫無さすぎる純情少年なのか?
あれじゃ魔法詠唱が出来ないんじゃないか?

あまり酷い戦いっぷりだとこの大会が終わったら減給とかされるんじゃないだろうか。

一応、国家公務員みたいな職業な訳だし。
確かにこの世界のNPCは露出度が低い。

奇抜な格好をしたプレイヤーも見当たらない所を見ると、今サクラがしている格好は痴女と言っても良いかも知れない。

ラウルの鼻血は実況アナウンサーにも弄られ、会場に笑いを生んでいた。

戦闘開始の合図と共にサクラを回り込む様に走り、上位魔法ハイスペルの詠唱を開始し始めた。

サクラは様子を見ているのか微動だにしない。
それどころか観客に手を振り、投げキッスをして男共の黄色い声援を集めている。

何やってんだあの馬鹿は!余裕扱きすぎ。

不真面目なサクラとは対照的に真剣に戦っているラウルの両手に巨大な火球が纏われ魔法詠唱が終わる。

「行きます!【マグナフレイジェム】!」

ラウルの両手から放たれた2つの巨大火球は高速で螺旋を描きながらサクラに向かって放たれる。

流石に高レベルの上位魔法ハイスペルを所持をしてらっしゃる。
放たれた巨大火球がサクラに直撃し大爆発が起き会場全体に爆音と衝撃波が伝わる、そして観客から驚きの悲鳴が上がる。

ラウルは一切油断せず渾身の一撃を放ったのだろう。
流石にアレを食らったらサクラも無傷とはいかないはず。

・・・と思ったが防具の性能か余りダメージを受けていない様子だ。
視界が悪いから観客からは見えないかも知れない。

会場を包んでいた煙が引き始めたと思った瞬間、特殊技能スキル【縮地】でサクラはラウルの目の前に現れる。

驚きの余り反応が遅れたラウルはサクラの濡れタオルを腹部に食らい悶絶し膝を付き蹲る。
サクラは素早く抜刀しラウルの首筋に刃先を添えると真っ青な顔色をして両手を上げる。

「ま、参りました。」

抜刀した瞬間に刀から桜の花弁が舞い、彼の華麗な戦いと美しさを際立たせる。

主審と副審2名がラウルの棄権を認め、実況アナウンサーがサクラの勝利宣言を行うと会場から大きな歓声と拍手が上がる。

決勝まで刀抜かない的な事を言っていたのに、もう忘れている様だ。

「第2回戦の勝者!サクラ!」

ナレーターが会場全体放送を行うとラウルに賭けてた賭博札が空へ投げ捨てられる。
その光景はさながら祝福の紙吹雪の様だった。

初出場のサクラに賭けていた人の方が少なかったらしく、賭け率はラウルの方が高かった様だ。

サクラは刀を納め手に持った濡れタオルを振り回しながら高らかに腕を上げ勝利宣言をすると同時に、会場は更に割れんばかりの歓声に包まれる。

その歓声の70パーセント以上は男性だ。

女性出場者自体珍しい上に、圧倒的な力量差で国家所属のソーサラーに勝ったのだから観客からしたら一気に大会を掻き回すダークホース的存在となった事だろう。

サクラの手甲は魔法攻撃軽減が付与して有るらしく会場を盛り上げる為にワザと受けたのだと言う、そんな気遣い要らないから。

多少呆れながらも彼を労う。

「サクラ、グッジョブ!」

私とサクラはハイタッチをして初戦を快勝で終えた。
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