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武闘大会編

016話 武闘大会への招待状

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-オスロウ国 宿屋-

ドラゴンに再度会いに行ってから約4日、この世界に来て約1週間が経とうとしていた。

サクラと私は労働組合ギルドで数々の依頼を受け難無く仕事を片付けて行き街での信用を獲得していた、主にサクラがだ。

この世界に来た時に「深紅の薔薇」の情報が労働組合ギルド登録に無く、サクラは単独ソロプレイヤーとしての扱いとなっていた。

私は労働組合ギルドで冒険者登録前に犯罪者として指名手配されてしまったので公に姿を出す事が出来ず結局サクラの使い魔として過ごす事になる。

当然ながら私の冒険者登録は未だに出来ていない。

しかも街の人の話によると、犯罪者印どくろマークが付いた人間は機械都市ギュノスのシステム管理官権限を持っているマザーブレインの許可が無い限り入国制限に引っ掛かるらしい。

つい先日試した事が有る。

私がサクラと戦って死んだらの懸賞金をサクラが貰えて、ゲーム同様に犯罪者印どくろマークがリセットされて消えるのでは?と超痛いのを我慢して試してみたが、何故だか私は死ぬ事が出来なかった。

重症を負うのだが死ぬ事無く、復活薬を消費する事が出来なかった。

私は死ぬ気で殺されようと努力をしたが、むしろサクラが躊躇して上手く行かなかった。
理由は判明しなかったが、はっきり言って痛い目を見ただけ損で有る。

この街でSランク冒険者の称号を早々に獲得したサクラは、喋る黒猫を従えた美人女侍として有名となった。

巷では彼の事を【桜舞う呪い姫】と二つ名と言うか異名と言うか・・・呼ばれているらしい。

まぁ装備アイテムのエフェクトで常に周りを桜が舞っているし、声が男性なのは呪術のによる物と言う設定にしている。

外見は超絶スタイルの良い美女だから、大抵の男は都合良く騙されている。

以前、情報収集中にナンパして来た男に片っ端から奢らせていると自慢していた。
リアル女としてムカつく・・・

この街の住民全員にネカマだとネタバレしてやりたい気分だ。

4日目の朝、宿泊している宿屋にサクラ宛に1通の手紙が届いた。

一目で高価と分かる封蝋付きの手紙で表面には何も書かれていない。

冒険者ランクがSランクに昇格した翌日に届いた一通の手紙。
このタイミングは次のイベント「武闘大会」の招待状だ。

「これはイベントが進んだのでござるな。」

「うん、ゲーム通りだね。」

粘着罠に包まった状態のサクラが真剣な表情で手紙を見つめ話す。
この状況は、もはや日常風景になりつつ有る。

手紙の内容は見なくても分かる。
これはゲームと同じイベント導入だからだ。

この国の貴族を取り纏める【ダンネル大臣】からの密書と武闘大会の招待状だ。

内容はこうだ。
約3年前より国王が別人の様になり悪政が始まったと。

現在城の中で兵士や関連貴族の数人が反逆罪を着せられ何人も死刑となっていると言う。

国民に直接的な被害は無い様に内々に処理しているが悪法が可決し、やがて国が傾く事態になる事を懸念していると言う内容だ。

強い冒険者を高額の報奨金で傭兵として集め、更に高ランクの冒険者は武闘大会への参加権を与え近衛兵にすると言う話だ。

具体的な依頼内容は剣豪と名高いサクラへ5日後「コロシアム」で行われる「武闘大会」に特別枠で出場して優勝して欲しいと言う依頼になる。

優勝賞品は「賞金3000万ゴールド」と何でも1つ「現実的な願いを叶える」と言うものだ。

国王の性格が変わってから、強い冒険者を集め城の兵士として雇い隣国との戦争の準備をしている。
大会優勝者は国王直属の近衛兵長に抜粋される、国王側近となり監視と制御をするという依頼だ。

あわよくば偽物の証拠を掴んで欲しいと・・・
ゲーム通りなら完全に偽者なんだけどね。

内密とは言え、こんな手紙をプレイヤーに送る所は非現実的と言うかゲームだなと感じる。

ルール変更が行われてから第3回目の武闘大会が開かれる。
特別枠とは労働組合ギルドの依頼達成率の高い冒険者から数名選ばれるらしい。

他の参加者は王族や貴族の騎士が大半なので、平民からしたらプラチナチケット的な扱いなのだろう。

賞金3000万ゴールドと言ったら、この世界の宿代や食材から物価換算して日本円で6000万円程度の感覚。
更に何でも1つ現実的な願いを叶えるって言うのが魅力的だ。

サクラが変身可能な豚の名言「ギャルのパンティおくれーっ!」とか国王の前で叫んでくれないかな。

・・・・まじうける!是非させよう!

早速、労働組合ギルドを通して大会参加を受理して貰いラクラは晴れて代表者の1人となった。
労働組合ギルドでは、当然その話で持ち切りでサクラは常駐の冒険者達から頻りに激励を貰っていた。

まるで冒険者である自分達の代表と言わんばかりの待遇で、ますますサクラを調子付けていた。

・・・・私も黒猫で飛び入り参加と出来ないかな?




大会前日の早朝、私達の宿泊している宿屋に10名の国家所属の兵士と黒いローブに身を包んだ人物3名がサクラを訪ねて来た。

兵士の全員国から支給された薄緑色の鎧を装備しており、宿屋の周りが暫く騒然としていた。

宿屋の入口には兵士が宿屋を護衛する様に入口と裏口に3名ずつ配備され私達の宿泊している部屋の扉の前に4名の兵士が厳重に警護している様だった。

朝早くから起こされ多少不機嫌な私と粘着罠で簀巻きになっているサクラ見て、黒いローブを羽織った3名は戸惑っていた。

私は寝る時も【黒猫スーツ】を脱いでいないので、彼らには普通の黒猫に見えているはずだ。
黒いローブの2名がフードを取ると中から戦闘能力の高そうな30代位の見た目の男性が顔を見せた。

鎧を装備して無いが細身な割に筋肉量が凄い。
確実に前衛職なのは間違いない。

「早朝から申し訳ございません。貴女が労働組合ギルドで有名なサクラ様ですか?所で・・・この所業は一体?」

「もしや!武闘大会出場者を狙った賊ですか!?大丈夫ですか、今助けます!」

犯人は黒猫の私ですが・・・
今罠に掛かって簀巻きになっているのは加害者と言う謎の状況だ。

私は澄ました顔で窓際の椅子に座る。

ローブの2名は体格と服装からそこそこレベルの高い騎士だと思う、中央のローブを目深に被った人物は貴族の重鎮的な立場の人だろうか。

多分国から派遣された人物なのだろう。
悪人では無さそうなので私は暫く様子を見る事にした。

ローブを纏った男2人がバリバリと音を鳴らしながらサクラの粘着罠を取り除いていく。

「いやぁ、助かったでござるよ。所で拙者に何か用でござるか?」

サクラの声を聞き「えっ?」と言う驚いた表情をしたが、粘着罠から抜け出す為に服を脱ぎ棄てシャツと下着1枚の薄着姿のサクラを見て「エッッ!」と言う別の台詞を言いそうな表情に変わり無理に目を背ける。

どうやらこの2人はサクラと違って真面目な性格か女性慣れしていないウブな性格なのだろう。

最初男性の声で驚いて、次にあられもないサクラの放漫ボディに目のやり場に困ったと言う感じかな。

サクラは自分の姿を再確認し少し照れながらシーツを羽織る。
そしてサクラはチラっと此方を見てテヘペロと舌を出す。

中身が男のネカマだと分かっているので正直超キモい。

「すみませんな、貴女と直接お話をしたくて参りました。」

3人目のローブの人物がフードを取ると、白髪の初老の男性が顔を見せる。

話を聞いていくと、この人物はオスロウ国の大臣ダンネルだと自己紹介をした。
予想通りゲームにも出ていたNPCで、この国の重鎮の1人だ。

以前受け取った手紙を出した張本人らしい。
手紙に書かれていた事の具体的な内容と王宮の現状、国を救って欲しいと言う切なる願いを本人の口から語られた。

両脇に控える2名は古くから王宮に使える近衛戦士隊の騎士らしい。
屈強な2名の兵士も丁寧に頭を下げていた。

現在この2人の隊長に当たる前回・前々回優勝者【近衛兵長クリス】が国王直属の近衛兵として国王の監視と悪政の制御を行っているらしい。

この辺りはゲーム設定と同じだ。
ちなみに近衛兵長のクリスは私のお気に入りのキャラで勝手にクリス君と呼んでいた。

武闘大会後の偽国王がプレイヤーを主戦力に加えた戦争計画を発案し、それを止めたダンネル大臣と数人に貴族が処刑される事となり王宮は騒然とする。

丁度その時に、兼ねてより偽国王がお抱え商人達に探す事を依頼していた【イシコリドメの鏡】が見つかる。

余りにも高額な金額で購入していた事を財務大臣から知らされたクリス君は仕入れに携わった商人を問い詰める。

【イシコリドメの鏡】の鏡は、曇りの無い心と真実の姿を映し出すとする伝説の宝具と言う事を突き止める。

偽国王は自身の姿を隠し通す為に【イシコリドメの鏡】を仕入れたと予想したクリス君は偽国王の正体を暴く機会を伺っていた。

そして元より偽国王を疑っていたダンネル大臣他、戦争反対派の処刑日に城内地下の宝物庫に有る【イシコリドメの鏡】をクリス君が持ち出し国王に使用する事で偽国王の正体が明かされレイドバトルへ突入すると言う設定だったと思う。

今の段階でこの大臣にネタバレしたら、どうなるんだろうと考えている内に2人の話は終わった。

「今日はサクラ殿にお会い出来て良かったです。貴女には是非とも武闘大会で優勝して頂きたい。」

「大船に乗った積りで任せるでござるよ。」

手短に用件を済ませ、ダンネル大臣は城へと帰還して行った。




そして翌日、私とサクラは無事に武闘大会当日を迎えた。

私は今回セコンドでしか参加出来ないが、取り敢えずサクラには優勝目指して頑張っていただきましょう!
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