5 / 252
旅立ち編
005話 その黒猫は海賊王の夢をみるか?
しおりを挟む
-アルテナの街入口-
「おーい!シノブ殿!何処でござるか?」
遠くの方でサクラの声が聞こえる様な気がする。
何かどーでもいいやー、Bクラスのお尋ね者だしー・・・
私を殺したら賞金が出るらしいし。
うーん、そういえば所持金が無い・・
所持金はこの世界に移動されなかったのは何でだろう?
元々ゲームではある程度強くなると復活薬と回復薬以外は買う事が無くなるので、高レベルになる程お金が余る傾向にある。
確か23億ゴールド位所持していたはずなんだけどなぁ・・・
今分かっていることは、体はゲームキャラクターのままでリアル男性でもキャラクターが女性なら女性のまま。
キャラクターボイスは選択声優では無く地声。
ステータスや特殊技能・魔法はゲームそのままっぽい。
インターフェイス系統やステータスウィンドウやミニマップ・コンパスは非表示状態。
アイテム・装備そのままは持ち越しているが所持金は持っていない。
視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚の五感は超リアルに感じる。
草をかじったら青臭く苦かった。
ペナルティに関してはゲーム内よりも厳しく、私は完全に殺人犯扱い・・・
これでは情報収集も難しくなりそうだ。
ついさっき脳内でシステム的な音声が流れた。
『懸賞金付き殺人者の称号を得た』と・・・ないわー!
溜息しか出ない。
この不条理な状況を考えながら街の入口の茂みの中で膝を抱えてへこんでいた。
数時間前までサービス終了前のお祭り騒ぎに参加していたごく普通の女子高生だったのに賞金首になってしまった。
これはもうアレだ、グランドライン制覇して海賊王になるしかない!
ゲームで海ステージとかは無かったけどね!
「お、いたいた!シノブ殿!探しましたぞ!」
「サクラ、私はもう忍者を辞めて海賊王目指すしかないんかな?」
「気を確かにするでござるよ。良く考えてみるでござる!そもそも忍者とは諜報活動や破壊工作、暗殺が仕事でござろう?」
「うん、まぁそうだね。室町時代から江戸時代ではそんな感じみたいね。」
漫画等で得た浅知恵でしか知らないけど。
歴史の表舞台には出てこないが、忍者とは現代で言う所のスパイに当たるのかな?
上忍クラスになると姿すら見せる事なく目標となるミッションを完遂すると言う。
現実では意外と地味な仕事なんだろうなと。
サクラは職業柄問題ないので気にするなとの事だが、そんな慰め方あるか??
こいつはリアルでモテないタイプの男なんじゃないか?
「本来の忍者らしくて良いではござらんか。」
極上の笑顔で慰めてくれるが・・・なんか釈然としない。
「シノブ殿は拙者が命に代えても守って見せるでござる!」
さっきは無神経でモテない発言をするタイプかと思いきや、そうきたか!
キュンとは来ないが。
まぁイケメン発言は有難く頂くことにして、サクラの調べた街の様子と情報やゲームと現実との相互差異などを話した。
サクラは手持ちのいらないアイテムを雑貨を販売している店に提示値で売却し12万ゴールドを得たらしい。
ゲームシステムでは自分でマイショップを購入し経営したり、公営競売場に出品した方が高値になるのは常識だがストーリーモードではそういったものは出来なかった。
この世界ではどうなのだろう?
「取り敢えず、暫くはサクラに養ってもらうね!」
「ふむ、まかせるでござる。まずは宿に行くでござるが・・・・シノブ殿はお尋ね者ゆえ、これを着るでござる」
サクラは自分の胸元に手を入れサラシの部分から一つの衣装を取り出した。
どうやらサクラのアイテムストレージは胸元のサラシの中に在る様だ。
サクラは胸元から黒いモノを取り出して、私に手渡す。
何この寝袋みたいな全身タイツみたいな黒い服は?こんなの見た事無い。
サクラが言うにはゲームサービス1番最初にあった「ガチャ」の限定衣装で、実装当初は微レア程度だったが以降のガチャで1度もリバイバルしなかった為サービス後半では激レア装備で超高値で取引されていたアイテムらしい。
アイテム名は【黒猫スーツ】。
身長に変化は無いがプレイヤーは全身のグラフィックが密着タイプの猫スーツっぽいグラフィックになり、NPCの台詞が変化するらしい。
ちなみにこのゲームのガチャは1回500円、10連+ボーナス2回5000円、40連+ボーナス10回18000円となっている。
装備品のみに絞った限定ガチャは1回1000円、10連+ボーナス2回10000円と言う金額だった。
毎週更新されていたがリバイバルする事は無かった為、景品プレミア感と希少性を維持したまま毎週高額収益を上げていたらしい。
「拙者よりシノブ殿が着た方がこの衣装喜ぶでござるよ。」
「はぁ、これ黒い全身タイツ的な何かに見えるんだけど着ないと駄目?」
昔テレビ番組で見た全身タイツ的な物にか見える。私はさぞ訝しげな顔をしているだろう。
「着たら体格に合わせて形状が変化するので着てみたら分かるでござる!ささ!早う!」
「わ、わかったから押すなし。ちょっと木陰で着替えてくるから!覗くなよ!」
ごそごそごそ・・・割と着心地が良い。
おお、なんか服の周りにモフモフの毛が生えてきた!
こ、これは!「ぴょこん」という音と共に頭頂部の髪の部分に猫耳が生える。
なんと黒猫のような形状に変化した。
着ぐるみって感じではないな。
コレはコスプレだ。
「おお!シノブ殿めっちゃ似合っているでござる!ハァハァ。モフモフしても良いかな?」
「良かないだろ!もう1回死んでみる?」
食い気味にツッコミを入れたら、シュンとなっていた。
男と分かったからには過剰なスキンシップをされるのは正直勘弁して頂きたい。
「いや、カワイイけど猫の仮装をした犯罪者が出来上がっただけでは?」
「フレイバーテキスト的にはNPCには本物の猫に見える様になるでござるよ。」
ゲーム内ではこのアイテムを装備するとキャラクターの見た目が変わりNPCがまるで本物の猫を可愛がる様なセリフに変化すると言っていた。
ホントかよ、俄かに信じられない。
これで他の人に猫として認識され無かったら、ただの変態じゃないか。
そもそも宿屋は動物OKなのか?
私だけ外とか馬小屋的な所に泊まれと言われるんじゃ・・・少し不安が残る。
・
・
・
-アルテナの街 宿屋-
宿屋の受付で女将さんらしき人が受付をしていた。
宿泊は出来るようだが、しっかり2名分の料金を徴収されたらしい。
そこはゲームシステムが反映してるのか?
女将さんには完全な猫に見える様で頭を撫でられる。
喉をサワサワされたので一応「にゃー」と適当に言っておいたら「ひぃ!」とか驚かれた。
ひどい。
そもそも本当にただの猫に見えているのか疑問だ。
担がれているのでは?まぁ兎に角、喋らない方が良さそうだ。
所詮、見た目の影響だけらしい。
「使い魔の猫には専用の餌が有るので餌はいらないです。拙者はたくさん食べる故、2人前とオマケも付けてもらえると嬉しいでござる」
上手い理由を考えて宿屋に女将さんに伝えていた。
なるほど、使い魔という設定にしたんだ。
まぁ猫用の食事とか来たら困るし許す。
2階建ての宿屋は簡素な造りでベッドが2台とテーブルが1つとシンプルな部屋だった。
家族経営をしている宿屋で夕食もパン、シチュー、肉料理、サラダと手造りの物だった。
空腹、ゲームではそういったモノは無かったがこの世界では普通と同じ感覚でお腹がすく様だ。
味覚の確認を行う様に食事を楽しむ、歯応えや舌触り口から食道を通る感覚。
何もかもがリアルだ。
ああ、美味しかった。
お風呂やシャワーが無いのが不満だけれども、トイレに隠れ軽く体を拭いて少しさっぱりする。
今日は疲れたからもう寝ることにしよう・・・
ベッドの周囲に特殊技能【粘着罠】を仕掛ける。
そして麻痺効果を付加。
これで良し!
体は女でも中身は男だ、用心するにに越した事は無い。
「妙な気を起こしたら殺すからね!」と一応念押し!
奴はの中身は北海道出身のネカマ自称21歳会社員だからな!
モフモフしてくる危険性が有るから危険だ、やっぱ爆発系付与するか?
明日はサクラに私の在庫アイテム売って来てもらおう。
この黒猫姿で売りに行くと新種のUMA扱いされそうでヤバそうだし。
私は街を散策しながらゲームとこの世界の違いを探しつつギルドメンバーを探そう。
情報収集は・・サクラにまか・・せ・・・・スヤー
・
・
・
その日、私は夢を見た。
とある世界で自由に大海原を冒険する、そんな夢を見た様な気がする。
起きたら大抵忘れるんだけど。
「おーい!シノブ殿!何処でござるか?」
遠くの方でサクラの声が聞こえる様な気がする。
何かどーでもいいやー、Bクラスのお尋ね者だしー・・・
私を殺したら賞金が出るらしいし。
うーん、そういえば所持金が無い・・
所持金はこの世界に移動されなかったのは何でだろう?
元々ゲームではある程度強くなると復活薬と回復薬以外は買う事が無くなるので、高レベルになる程お金が余る傾向にある。
確か23億ゴールド位所持していたはずなんだけどなぁ・・・
今分かっていることは、体はゲームキャラクターのままでリアル男性でもキャラクターが女性なら女性のまま。
キャラクターボイスは選択声優では無く地声。
ステータスや特殊技能・魔法はゲームそのままっぽい。
インターフェイス系統やステータスウィンドウやミニマップ・コンパスは非表示状態。
アイテム・装備そのままは持ち越しているが所持金は持っていない。
視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚の五感は超リアルに感じる。
草をかじったら青臭く苦かった。
ペナルティに関してはゲーム内よりも厳しく、私は完全に殺人犯扱い・・・
これでは情報収集も難しくなりそうだ。
ついさっき脳内でシステム的な音声が流れた。
『懸賞金付き殺人者の称号を得た』と・・・ないわー!
溜息しか出ない。
この不条理な状況を考えながら街の入口の茂みの中で膝を抱えてへこんでいた。
数時間前までサービス終了前のお祭り騒ぎに参加していたごく普通の女子高生だったのに賞金首になってしまった。
これはもうアレだ、グランドライン制覇して海賊王になるしかない!
ゲームで海ステージとかは無かったけどね!
「お、いたいた!シノブ殿!探しましたぞ!」
「サクラ、私はもう忍者を辞めて海賊王目指すしかないんかな?」
「気を確かにするでござるよ。良く考えてみるでござる!そもそも忍者とは諜報活動や破壊工作、暗殺が仕事でござろう?」
「うん、まぁそうだね。室町時代から江戸時代ではそんな感じみたいね。」
漫画等で得た浅知恵でしか知らないけど。
歴史の表舞台には出てこないが、忍者とは現代で言う所のスパイに当たるのかな?
上忍クラスになると姿すら見せる事なく目標となるミッションを完遂すると言う。
現実では意外と地味な仕事なんだろうなと。
サクラは職業柄問題ないので気にするなとの事だが、そんな慰め方あるか??
こいつはリアルでモテないタイプの男なんじゃないか?
「本来の忍者らしくて良いではござらんか。」
極上の笑顔で慰めてくれるが・・・なんか釈然としない。
「シノブ殿は拙者が命に代えても守って見せるでござる!」
さっきは無神経でモテない発言をするタイプかと思いきや、そうきたか!
キュンとは来ないが。
まぁイケメン発言は有難く頂くことにして、サクラの調べた街の様子と情報やゲームと現実との相互差異などを話した。
サクラは手持ちのいらないアイテムを雑貨を販売している店に提示値で売却し12万ゴールドを得たらしい。
ゲームシステムでは自分でマイショップを購入し経営したり、公営競売場に出品した方が高値になるのは常識だがストーリーモードではそういったものは出来なかった。
この世界ではどうなのだろう?
「取り敢えず、暫くはサクラに養ってもらうね!」
「ふむ、まかせるでござる。まずは宿に行くでござるが・・・・シノブ殿はお尋ね者ゆえ、これを着るでござる」
サクラは自分の胸元に手を入れサラシの部分から一つの衣装を取り出した。
どうやらサクラのアイテムストレージは胸元のサラシの中に在る様だ。
サクラは胸元から黒いモノを取り出して、私に手渡す。
何この寝袋みたいな全身タイツみたいな黒い服は?こんなの見た事無い。
サクラが言うにはゲームサービス1番最初にあった「ガチャ」の限定衣装で、実装当初は微レア程度だったが以降のガチャで1度もリバイバルしなかった為サービス後半では激レア装備で超高値で取引されていたアイテムらしい。
アイテム名は【黒猫スーツ】。
身長に変化は無いがプレイヤーは全身のグラフィックが密着タイプの猫スーツっぽいグラフィックになり、NPCの台詞が変化するらしい。
ちなみにこのゲームのガチャは1回500円、10連+ボーナス2回5000円、40連+ボーナス10回18000円となっている。
装備品のみに絞った限定ガチャは1回1000円、10連+ボーナス2回10000円と言う金額だった。
毎週更新されていたがリバイバルする事は無かった為、景品プレミア感と希少性を維持したまま毎週高額収益を上げていたらしい。
「拙者よりシノブ殿が着た方がこの衣装喜ぶでござるよ。」
「はぁ、これ黒い全身タイツ的な何かに見えるんだけど着ないと駄目?」
昔テレビ番組で見た全身タイツ的な物にか見える。私はさぞ訝しげな顔をしているだろう。
「着たら体格に合わせて形状が変化するので着てみたら分かるでござる!ささ!早う!」
「わ、わかったから押すなし。ちょっと木陰で着替えてくるから!覗くなよ!」
ごそごそごそ・・・割と着心地が良い。
おお、なんか服の周りにモフモフの毛が生えてきた!
こ、これは!「ぴょこん」という音と共に頭頂部の髪の部分に猫耳が生える。
なんと黒猫のような形状に変化した。
着ぐるみって感じではないな。
コレはコスプレだ。
「おお!シノブ殿めっちゃ似合っているでござる!ハァハァ。モフモフしても良いかな?」
「良かないだろ!もう1回死んでみる?」
食い気味にツッコミを入れたら、シュンとなっていた。
男と分かったからには過剰なスキンシップをされるのは正直勘弁して頂きたい。
「いや、カワイイけど猫の仮装をした犯罪者が出来上がっただけでは?」
「フレイバーテキスト的にはNPCには本物の猫に見える様になるでござるよ。」
ゲーム内ではこのアイテムを装備するとキャラクターの見た目が変わりNPCがまるで本物の猫を可愛がる様なセリフに変化すると言っていた。
ホントかよ、俄かに信じられない。
これで他の人に猫として認識され無かったら、ただの変態じゃないか。
そもそも宿屋は動物OKなのか?
私だけ外とか馬小屋的な所に泊まれと言われるんじゃ・・・少し不安が残る。
・
・
・
-アルテナの街 宿屋-
宿屋の受付で女将さんらしき人が受付をしていた。
宿泊は出来るようだが、しっかり2名分の料金を徴収されたらしい。
そこはゲームシステムが反映してるのか?
女将さんには完全な猫に見える様で頭を撫でられる。
喉をサワサワされたので一応「にゃー」と適当に言っておいたら「ひぃ!」とか驚かれた。
ひどい。
そもそも本当にただの猫に見えているのか疑問だ。
担がれているのでは?まぁ兎に角、喋らない方が良さそうだ。
所詮、見た目の影響だけらしい。
「使い魔の猫には専用の餌が有るので餌はいらないです。拙者はたくさん食べる故、2人前とオマケも付けてもらえると嬉しいでござる」
上手い理由を考えて宿屋に女将さんに伝えていた。
なるほど、使い魔という設定にしたんだ。
まぁ猫用の食事とか来たら困るし許す。
2階建ての宿屋は簡素な造りでベッドが2台とテーブルが1つとシンプルな部屋だった。
家族経営をしている宿屋で夕食もパン、シチュー、肉料理、サラダと手造りの物だった。
空腹、ゲームではそういったモノは無かったがこの世界では普通と同じ感覚でお腹がすく様だ。
味覚の確認を行う様に食事を楽しむ、歯応えや舌触り口から食道を通る感覚。
何もかもがリアルだ。
ああ、美味しかった。
お風呂やシャワーが無いのが不満だけれども、トイレに隠れ軽く体を拭いて少しさっぱりする。
今日は疲れたからもう寝ることにしよう・・・
ベッドの周囲に特殊技能【粘着罠】を仕掛ける。
そして麻痺効果を付加。
これで良し!
体は女でも中身は男だ、用心するにに越した事は無い。
「妙な気を起こしたら殺すからね!」と一応念押し!
奴はの中身は北海道出身のネカマ自称21歳会社員だからな!
モフモフしてくる危険性が有るから危険だ、やっぱ爆発系付与するか?
明日はサクラに私の在庫アイテム売って来てもらおう。
この黒猫姿で売りに行くと新種のUMA扱いされそうでヤバそうだし。
私は街を散策しながらゲームとこの世界の違いを探しつつギルドメンバーを探そう。
情報収集は・・サクラにまか・・せ・・・・スヤー
・
・
・
その日、私は夢を見た。
とある世界で自由に大海原を冒険する、そんな夢を見た様な気がする。
起きたら大抵忘れるんだけど。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
77
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる