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14.お祭り
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今日はクロスロードの町の様子がいつもよりにぎやかである。
どうやらお祭りが開催されているらしい。
「何か珍しい物でもあるのかな?せっかくお金が入った事だし、少し見に行ってみるか?」
先日、グリフォンを討伐した俺達は、報奨金として20万デルタを手にしていた。
あの時、キュウがグリフォンを跡形も残らないように消してしまったので、最初ギルドに依頼達成の報告をしに行った時は一悶着あり、「本当にグリフォンを討伐したのか?」と、ものすごい疑いの目を向けられてしまったのだが、俺が箒(ほうき)にでもしようとグリフォンのちぎった片翼を持って帰ってきていたので、それを証拠として差し出してみたところ、無事に討伐が認められたのである。
で、報奨金を貰い、懐がほくほくとなったので、お祭りに行ってみるかと提案してみたのだが、
「そうねー。でも、あたしはあんまりお祭りとかに興味はないわね。けど、トオルがどうしてもって言うならついて行ってあげなくはないけど・・・」
とリリスがこっちを向いて答えてきた。
「へぇ、そっか。じゃあ俺だけでも見てこようかな」
「えっ、ちょっと!?ラナは?ラナはどうなの?もちろんお祭りに行きたいわよね?」
「粉もん・・・食べ、たい」
「ラナにそこまでお願いされると仕方ないわね!あたしも付き合ってあげるわ!」
まるでコントのように、言葉とは裏腹にすでに外出の準備をうきうきで済ませていたリリスが先頭に立って、俺達は宿舎を出ていった。
町の通りには、すでに出店が並んでいた。食べ物や飲み物が売られていたり、簡単なゲームができる所があったり、このお祭りの雰囲気がどことなく懐かしいなんて思って歩いていると、ひときわ賑わっている所があったので、俺達はそこに寄ってみることにした。
「お集まりいただきありがとうございます!さぁさぁ、これから試し切りの時間だよ!」
そう言って店主は、大きめの丸い石を地面に置いた。そして、腰に下げた刀を抜きその刀の刃を置いた石の頂点にあてがうと、そのまま下に、すとんとおろした。丸い石はパカッと半分になった。
「「「おぉぉ!すごい切れ味だ!」」」
「まだまだ驚くのは早い!すごいのはここからだよ!」
その半分に割れた石を左右の手に持って、断面をくっつける。
ぴたっと元の丸い形にすると、最前列の見物人にそれを渡して確かめてもらっている。渡された者は、さっき斬れたように石を半分に離そうとするがどうやら離れないようだ。
「えっなんだこれ!?まるで最初から切られていなかったみたいじゃないか・・・」
「「「おぉぉ!!すげぇーーー!!」」」
まわりから歓声がわきおこった。
「今日の目玉はこの刀!!この現品限りの販売だよ!今を逃すと買えないよ!」
「おい、リリス、ラナ。あれ、すごくないか?」
「すごいわ!」
「すっ・・・ごい」
刀の値段は10万デルタ。
貰った報奨金が20万デルタ。
今月の生活費を差し引いても手の届く範囲ではある。
「おっ、兄ちゃん達。よく来てくれたね!あれっ?兄ちゃんよくみると男前だねぇ!それに美少女を2人も連れ歩いて、このこの、にくいお方だねぇ。だけど兄ちゃんなら他の女性も絶対ほっとかないね!どうだい?今買わないと後悔しちゃうよ?」
俺はあまり褒められ慣れていなかった。
「よし、買・・・」
「トオル!何乗せられてるのよ!本当にあんたってちょろい男ね!それに、もし買うにしても値段交渉とかしなさいよ!」
耳元でリリスが怒った小声で注意してきた。
「おぉっと、お姉ちゃん達はその知的な顔立ち、上品な立ち振る舞い。もしかして王宮貴族のお嬢様姉妹かい?お忍びでやってくるなんて、おじさんまいったなこりゃ!」
「あら、やっぱりそう見えるのかしら?・・・買ったわ!!」
「・・・買う・・・しか・・・!」
「よし!これも運命だ!この刀を売るのは兄ちゃん達に決めた!」
俺達は10万デルタを支払ってその刀を受け取った。
「な!やっぱり見に来て良かっただろ!?」
「えぇ!良い買い物をしたわ!」
「良き・・・良き!」
買い物した後は、いつでも満足感が高いものである。だが、しばらくすると冷静になってきた。あれ?ちょっと待て。切れ味は確かにすごいかもしれないが、切って元に戻る刀に一体何の意味があるんだ?
観衆の熱気に思考回路を焼かれていた俺達は有り金の半分を使って、この刀をゲットしていた。モンスターを斬って戻して斬って戻して、レアモンスターの無限討伐でも可能なら使い途はあるのだろうが。
「そういやラナって刀は使えるのか?」
「クナイ・・・だけ」
「そうか。前にクナイの奥義を出してたもんな・・・あれ自分で練習したの?」
「師匠に・・・習った!」
「へぇ」
さすがに、「あれで師匠に習ったのかよ!ww」と言える程、まだラナとの心の距離は近づいてはいなかった。
そして通行人とすれ違い様に会話が聞こえてきた。
「あっちでまた、金持ちのノワールが悪趣味で無理難題を出してるみたいだぜ?成功したやつに褒美をやるとか言ってるみたいだけど。もう毎度の事だが、一応見に行ってみるか?」
「あぁ。でも今回は一体何だろうな?あいつ無茶ばかり言いやがるからな。どうせ俺達庶民を見下して楽しんでんだろうよ」
ノワールという者は、噂で聞いたことがある。この町にも裏で悪い事をやって私腹を肥やした金持ちがいると。その裏金で買った屋敷は手足の指の数以上だとか。
その者が向こうで何かやっているのだろうか。
どうやらお祭りが開催されているらしい。
「何か珍しい物でもあるのかな?せっかくお金が入った事だし、少し見に行ってみるか?」
先日、グリフォンを討伐した俺達は、報奨金として20万デルタを手にしていた。
あの時、キュウがグリフォンを跡形も残らないように消してしまったので、最初ギルドに依頼達成の報告をしに行った時は一悶着あり、「本当にグリフォンを討伐したのか?」と、ものすごい疑いの目を向けられてしまったのだが、俺が箒(ほうき)にでもしようとグリフォンのちぎった片翼を持って帰ってきていたので、それを証拠として差し出してみたところ、無事に討伐が認められたのである。
で、報奨金を貰い、懐がほくほくとなったので、お祭りに行ってみるかと提案してみたのだが、
「そうねー。でも、あたしはあんまりお祭りとかに興味はないわね。けど、トオルがどうしてもって言うならついて行ってあげなくはないけど・・・」
とリリスがこっちを向いて答えてきた。
「へぇ、そっか。じゃあ俺だけでも見てこようかな」
「えっ、ちょっと!?ラナは?ラナはどうなの?もちろんお祭りに行きたいわよね?」
「粉もん・・・食べ、たい」
「ラナにそこまでお願いされると仕方ないわね!あたしも付き合ってあげるわ!」
まるでコントのように、言葉とは裏腹にすでに外出の準備をうきうきで済ませていたリリスが先頭に立って、俺達は宿舎を出ていった。
町の通りには、すでに出店が並んでいた。食べ物や飲み物が売られていたり、簡単なゲームができる所があったり、このお祭りの雰囲気がどことなく懐かしいなんて思って歩いていると、ひときわ賑わっている所があったので、俺達はそこに寄ってみることにした。
「お集まりいただきありがとうございます!さぁさぁ、これから試し切りの時間だよ!」
そう言って店主は、大きめの丸い石を地面に置いた。そして、腰に下げた刀を抜きその刀の刃を置いた石の頂点にあてがうと、そのまま下に、すとんとおろした。丸い石はパカッと半分になった。
「「「おぉぉ!すごい切れ味だ!」」」
「まだまだ驚くのは早い!すごいのはここからだよ!」
その半分に割れた石を左右の手に持って、断面をくっつける。
ぴたっと元の丸い形にすると、最前列の見物人にそれを渡して確かめてもらっている。渡された者は、さっき斬れたように石を半分に離そうとするがどうやら離れないようだ。
「えっなんだこれ!?まるで最初から切られていなかったみたいじゃないか・・・」
「「「おぉぉ!!すげぇーーー!!」」」
まわりから歓声がわきおこった。
「今日の目玉はこの刀!!この現品限りの販売だよ!今を逃すと買えないよ!」
「おい、リリス、ラナ。あれ、すごくないか?」
「すごいわ!」
「すっ・・・ごい」
刀の値段は10万デルタ。
貰った報奨金が20万デルタ。
今月の生活費を差し引いても手の届く範囲ではある。
「おっ、兄ちゃん達。よく来てくれたね!あれっ?兄ちゃんよくみると男前だねぇ!それに美少女を2人も連れ歩いて、このこの、にくいお方だねぇ。だけど兄ちゃんなら他の女性も絶対ほっとかないね!どうだい?今買わないと後悔しちゃうよ?」
俺はあまり褒められ慣れていなかった。
「よし、買・・・」
「トオル!何乗せられてるのよ!本当にあんたってちょろい男ね!それに、もし買うにしても値段交渉とかしなさいよ!」
耳元でリリスが怒った小声で注意してきた。
「おぉっと、お姉ちゃん達はその知的な顔立ち、上品な立ち振る舞い。もしかして王宮貴族のお嬢様姉妹かい?お忍びでやってくるなんて、おじさんまいったなこりゃ!」
「あら、やっぱりそう見えるのかしら?・・・買ったわ!!」
「・・・買う・・・しか・・・!」
「よし!これも運命だ!この刀を売るのは兄ちゃん達に決めた!」
俺達は10万デルタを支払ってその刀を受け取った。
「な!やっぱり見に来て良かっただろ!?」
「えぇ!良い買い物をしたわ!」
「良き・・・良き!」
買い物した後は、いつでも満足感が高いものである。だが、しばらくすると冷静になってきた。あれ?ちょっと待て。切れ味は確かにすごいかもしれないが、切って元に戻る刀に一体何の意味があるんだ?
観衆の熱気に思考回路を焼かれていた俺達は有り金の半分を使って、この刀をゲットしていた。モンスターを斬って戻して斬って戻して、レアモンスターの無限討伐でも可能なら使い途はあるのだろうが。
「そういやラナって刀は使えるのか?」
「クナイ・・・だけ」
「そうか。前にクナイの奥義を出してたもんな・・・あれ自分で練習したの?」
「師匠に・・・習った!」
「へぇ」
さすがに、「あれで師匠に習ったのかよ!ww」と言える程、まだラナとの心の距離は近づいてはいなかった。
そして通行人とすれ違い様に会話が聞こえてきた。
「あっちでまた、金持ちのノワールが悪趣味で無理難題を出してるみたいだぜ?成功したやつに褒美をやるとか言ってるみたいだけど。もう毎度の事だが、一応見に行ってみるか?」
「あぁ。でも今回は一体何だろうな?あいつ無茶ばかり言いやがるからな。どうせ俺達庶民を見下して楽しんでんだろうよ」
ノワールという者は、噂で聞いたことがある。この町にも裏で悪い事をやって私腹を肥やした金持ちがいると。その裏金で買った屋敷は手足の指の数以上だとか。
その者が向こうで何かやっているのだろうか。
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