【完結】美形の親友が誕プレに欲しいのは平凡な俺らしい

ふくやまぴーす

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11.親友の本音

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「塁、ただいま」

バイトと大学を終えた後、俺はまっすぐ圭人の家へ向かった。
正直授業の内容なんて一ミリも覚えていない。

だが、俺は失意と混乱の中でもある1つの明確な目的を掲げてこの場所にやってきていた。

たった1人で、リビングで嘘つきの帰りを待ち続けた。

「塁さんどうしたの、上着も脱がないで」

右手に、鍵を握りしめて。

「これ、返す」

スーツのジャケットを脱いでいる圭人に、その手を差し出した。
手のひらにはもちろん、圭人から渡された合鍵。
思えばこれが、俺たちの関係が大きく変化してしまう発端だったのかもしれない。

「は……なんで?寮まだ直ってないっしょ」
「バイト先の友達に、泊めてもらう」
「……嫌だ」

圭人は無表情のまま、俺の腕を掴む。
冷たく、鋭い視線をびりびりと感じる。怒っているのだと、すぐに理解した。

「どーせ、その友達にも流されるんだろ」
「やめろ、離せ……っ」

そのまま身体ごと壁に押し付けられ、両手首を掴まれた。
反動で、手にしていた合鍵が虚しく床を転がっていく。

「行かせないから、絶対に」
「っいやだ、やめ……っんン……!」

俺の言葉を、圭人は乱暴なキスで塞いだ。

なんでだよ、どうしてそんなに俺に構うんだよ。
お前、俺を騙してたくせに。俺にこんなことしなくたって、本当はもうとっくに童貞なんかなじゃなかったくせに。

どうしようもなくムカついて、頭の中かき乱されてんのは、こっちなんだよ。
必死に顔を逸らして、全力で体を押し返しても、関係なく咥内をぐちゃぐちゃに犯される。

「ンん……ッん、ん~~ッ!」

痛くて、悔しくて、この行き場のない感情に、たまらなく胸が締め付けられる。
そうして、抑えていた本音が、口から溢れ出た。

「っさ、わんな……」
「……!」
「嘘、つき……っ!」

一瞬、力の緩んだ圭人の体を突き飛ばす。
その表情は少し硬く、驚いたように目を開いていた。

「やっぱ童貞なんて嘘じゃねーか」

キスしたり、触ったり、冗談にしては度が過ぎているのに。
拒めない自分にも、何を考えているかわからない圭人の心の内にも触れないように、俺は必死で見て見ぬふりをしていたのかもしれない。

「俺のこと揶揄からかって、困らせて、楽しいのかよ……」

言葉を吐き出しながら、目頭が熱くなり視界が歪んでいく自分に気がつき、ひどく困惑した。

「お前だけは、俺と純粋に友達でいてくれると思ってたのに」

なんで、こんなに苦しいんだよ。心臓がじくじく痛むんだよ。
頭ん中、ごちゃごちゃだ。
別にいいだろ、男友達に彼女がいようが、経験済みだろうが。

圭人は1つ息を吐くと、いつになく真剣な表情でまっすぐに俺を見る。

「嘘じゃないよ」
「っ良い加減にしろよ!お前の同僚が店で話してんの、はっきり聞いたんだからな」
「だって、好きな子とは、まだしてないから」
「はぁ?何わけわかんねーこと……!そんな話、今関係ないだろ」
「あるよ」

俺に拒絶されて生まれた距離を、一歩、近づいて埋める圭人。
「こっち来んな」と言葉で壁を作っても、圭人は気にも留めない。

「なんで、気づかないかな。塁はさ、昔からずーっと鈍いよね」

再び、肩を掴まれた。今度は乱暴ではなく、包むように優しく。

「ごめん、俺、塁のこと友達だと思ってない」
「っな……」

大事な存在から、その関係性を否定するような言葉を言い放たれ、まるで心臓を一突きされたような感覚に陥る。
痛くて、全身から汗がどっと溢れ出て、息が、できない。

そしてまた、困ったような、嘆くような悲痛な表情をして見せた。

「だって、好きだから」

まただ。この顔。

「ずっと前から、好きだよ。塁のこと」


ああ、思い出した。

いつも無表情か、控えめに優しく笑う圭人しか見てこなかった。
そんな親友が時折見せるこの悩ましげな表情を初めて目にしたのは、あのときだと。



『圭人、これ間違って入ってた』


「好き」と一言だけ書かれた手紙を、鈍くて、何もわかっていない俺が突き返したあのとき。
圭人の気持ち気づこうともしないで、苦しめてたのは、自分だった?

「塁、なんで泣いてるの」
「……っ」
「俺と同じ気持ちだから、じゃないの?」

圭人が指で雫を拭い、初めて自分が涙を流したのだと気がついた。
悲しい、苦しい、申し訳ない、いろんな感情が頭の中で交差して、うまく言葉にできない。

「ねぇ、なんも言わないなら俺、勘違いしちゃうけど」

だけどその中に、嬉しいと言う感情が混ざり合っていることに、俺は気がついてしまった。

圭人とは、これから先もずっと友達でいると思ってた。
そうありたいと願っていた。
だからこんな言葉、こんな感情も、聞きたくなかったはずなのに、それなのに。


「友達じゃなくて、恋人になってよ、塁」


切実な願いとともに寄せられた唇を、拒むことが出来なかった。

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