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9.全部お酒のせいだから※

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「ちょ、ちょっ……がっつくなって」

帰宅するや否や、圭人は強引に俺を寝室へと引き込んだ。
手首がミシミシと悲鳴を上げるほどに強く掴んで、離してくれない。

「キスする時は黙るのがマナーだよ」
「汗掻いてる……っせめてシャワーしてから」
「ん~、無理」
「……っん、ぁ」

ぬるっ、と唇を割って侵入する舌は、火傷してしまいそうなほど熱い。
あっという間に自分の舌も絡め取られ、ぐちゅぐちゅと淫らな水音が脳に響く。

「ん、ん……っあ、…」
「塁、へろへろ……そんなに飲んだ?」

抵抗する気も削がれるくらい、アルコールは俺の身体の自由を奪った、というわけじゃない。
普通に動けるけれど、いつもより気持ちいいんだよ、キスが。
初めて圭人とこうした時もそうだった。途中でもう、どうでもよくなって。

「わりと、酔った……」
「そりゃ好都合です」

圭人はゆっくりと俺の身体をベットの上に倒すと、ネクタイも、ワイシャツも脱ぎ捨てる。
ギラギラと獲物を追い詰めるような目で俺を見下ろす目の前の親友もまた、あまり余裕のなさそうな様子だった。

Tシャツを胸まで捲り上げ、こりこりと指先で乳首を弄り始める。

「んン……ッ、そこ、やめ……」

初めて触れられた時は、むず痒いくらいの感覚だったのに、今では完璧にびりびりとした快感を得るようになってしまった。これも酒のせいか?そう、思いたい。

胸を愛撫し続けながらも、片方の腕はゆっくり下半身へと伸びる。
かちゃかちゃと器用にベルトを外し、慣れた手つきでズボンを脱がしていった。

昨日も一昨日も、結局自分の精液で汚してしまったが、とっさにパンツだけは脱がされまいと抑える。

「塁、お願い。手、どけてよ……」
「……ッ」

耳元で低音ボイスで囁かれ、ビクンと体が揺れた。
聞いたことのない色気を含んだ、懇願するかのような声色に飲まれ、俺はバカ正直に抵抗をやめてしまった。

「ありがと」

嬉しそうに目を細めると、圭人は下着をゆっくりと取り払った。
親友と、ベットの上でほぼ真っ裸って。今更だけどどういう状況だよ、これ。

「酔ってる塁はもっと流されやすくなるから、ありがたいなぁ」
「っ本人を前にして言うセリフじゃねーだろ……てか、ジロジロ見んなっ」

俺を裸にひん剥いた張本人は、嬉々とした表情で俺のモノに視線を注ぐ。
キスされて、身体弄られて、少しだけ勃ち上がったそれを、そんなにまじまじと見られるといくら同性でも恥ずかしい。

「や、案外ピンクでかわいいなって」
「……なに、言ってんだお前」

男のちんこにかわいいもクソもねーだろ。そう思うのに、なんで少し嬉しいんだよ。
この心情に自分自身で驚いていると、圭人はおもむろに下腹部の前にかがみこんだ。

嫌な予感を察知した次の瞬間には、ぱくり、と。

「~~ッあ!?バカ、やめ……っ」

フェラだ。男にされるなんて、人生で経験すると微塵も思っていなかった。

ちゅぷ、ちゅく、と卑猥な水音を立てながら圭人は器用に俺のモノを吸い上げ、先端を舌でグリグリと刺激していく。

「っう、あ……っやば……」
「きもちく、ない?」
「気持ち、良いに決まってんだろ……あほッ」

絶えず腰がビクビクと跳ね上がり、全神経がそこに集中するように快感にのめり込んだ。
そんな風に触られたら、オスの本能に抗える訳が無い。

「っは、可愛い、塁」
「変な、冗談やめろ……っ」
「冗談じゃないって、ほんと」
「ん……っ」

扱かれるモノに集中していると、圭人はぎゅう、と俺の胸に爪を立てるようにして乳首を摘んだ。
痛いのに、その刺激すらも快感に変わり、無意識に腰が浮く。

徐々に呼吸の間隔が短く、荒くなっていく。
全身の血液が敏感な部分に集まっていき、熱を持つ感覚に頭が蕩けそう。

「っ、あ゙……っ!?」

その時だった。
突如、腰のあたりに大きな違和感を感じ、身を大きく捩らせる。
慌てて、親友のもう片方の掌の所在を確かめるように視線を走らせた。
その時、再度、少しの痛みと異物感がじくりと身体を襲う。

「な、にして……!」
「そろそろ……ダメ?」

圭人の中指が、俺の後ろに侵入しようとゆっくり押し入ってきていた。
違和感の正体はこれだ。
親にも、医者にだって触られたことのないそこは、未知の刺激にひくひくと痙攣した。

「やめろ……っそんなとこ、汚いっ」
「塁の身体は、キレイだよ」

そんなところ、綺麗なわけがあるか。
敏感な場所を責められて思うように力が入らない。

「ん……っむり、だから!マジで……!」

両手で、必死に圭人の肩を押しのける。

「……塁に本気で拒否られると、わりとキツイな」

はぁ、と1つため息をついた後、圭人は俺の後ろから指を抜いた。
頑固な圭人にしては、やけにあっさりと諦めたように思える。
困ったように眉をひそめながら、その顔をゆっくりと近づけた。

「そんなに、嫌?」
「……!」

唇が触れそうになるまで距離を詰めると、髪を撫でじいっと俺を見つめた。
目には情欲の色が浮かんでいる。欲しい、と目で訴えているかのように。
まっすぐに視線を向けられただけで、触られてもいない部分が熱を持つようで。

「逆だ、バカ」

こんなこと恥ずかしいし、怖いし、逃げたいよ。
だけど普通に気持ち良くて、圭人を目の前にすると、どうしても流されてしまう。
このままだと、ずるずると最後までいってしまうって、自分でもわかる。
だから、こんなに、悩んでんだろうが。

「嫌じゃねーから、困ってんだよ……」

まさか自分がこんなセリフを吐くだなんて。
自分の中から生まれたくせに、輪郭もつかめないこんな特異な感情を自覚するなんて、思わないだろ。

居た堪れなくて、親友からの熱のこもった視線から目を逸らし、顔を腕で覆う。
だがすぐに、俺のとった行動はことごとく目の前の男に邪魔立てされることとなった。

「塁……!」
「っや、め……離せっ」

顔を隠した腕は簡単に取り除かれ、顔を背けても関係ないと言いたげに、圭人の唇は噛みつくように俺のそれを捕まえた。

「っん、んむ……ッ」
「そろそろ、諦めてよ……っ」

俺の咥内の隅々まで確かめるかのように、ねっとりと絡みつく舌が熱くて、全身をくすぐられているような感覚が気持ち良い。
もう何も、目の前の圭人のことしか、考えられなくなる。

「お酒のせいにしていいから、」
「ん…っ…けい、と……ッ」
「流されてよ、俺だけに」

親友の身体を拒絶しようとしていた俺の腕はいつの間にか、その感情も、救いのない欲も受け止めるように、背中に回っていた。

ほら、また。
この関係を崩したくないという不安と焦りなんて放り投げて、親友を受け入れてしまう。

こうして触れ合ってると、心臓が痛いほどうるさいのに、泣けるほど安心する。
おかしいよな、こんなの。

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