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閑話・天使がふたりとロボの俺
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達樹が検査に行くために欠席したその日、諒介は朝から災厄に見舞われていた。
「ビカちゃんと成瀬、どっちがおまえの本命だ?」
(しまった)
始業前に同じクラスの渡辺に校舎裏に連れ出され、校舎裏で詰め寄られて、諒介は後悔していた。
(アルファの名前も聞いときゃよかった)
あの、自分たちがオメガであることを晒されたときのことだ。
達樹があまりにも動揺していてかわいそうで、すぐにあの汚い言葉を話す連中から引き離したかった。
その気持ちだけであの時は動いてしまったが、それとこれとは話が別だった……と思う。
おそらく、この男はアルファだ。
だけど、こんな思い込みの激しいアルファにつきまとわれては、達樹と光がかわいそうだろうと思う。
「……はあ……」
ろくに表情も変えずため息をつく諒介に、相手が激昂する。
「なんだそれ⁉ わかってんだぞ、おまえからはアルファの臭いしかしねー」
「…………」
噂は回るだろうと思っていたが、そんな誤解が発生するとは夢にも思わなかった。諒介は呆れて渡辺の顔をまじまじと見た。
「なんだよ⁉」
通常、アルファはアルファの匂いを感じない。感じるとしたら、威嚇・威圧・警告・攻撃などのときだけだ。
つまり、諒介についているアルファの匂いとは、行哉のマーキングによるものだろう。
こっそり制服の下に着ている行哉のTシャツではないはずだ。たぶん。いや、洗濯もしているのだ。大丈夫だ。きっと。
オメガは、アルファのマーキングを感じない。
諒介は、自分に行哉のマーキングが引くほどべったりとついていることに気付いていなかった。
(……バカなのかな)
この男は諒介が四六時中まわりを威嚇しているか、自分で自分にマーキングしているとでも思っているのだろうか。
他のアルファやオメガと接触したことがないとそうなるのだろうか。
アルファにも能力に個体差があるとはわかっていたが、そのピンキリは諒介の想定の範疇外だったようだ。
「時間の無駄だった」
諒介は渡辺に背を向けた。こんな相手に自分のプライバシーを晒してまで説明する気はない。
そもそも、光を『ピカちゃん』と呼ぶ時点でいろいろと論外である。
「おい⁉」
威嚇するような怒鳴り声が追ってきたが、諒介は構わなかった。誤解させておけばいいとさっさとその場を離れた。
そして、さすがにカレーもシチューも飽きてきただろうから、今日は、朝こっそり洗濯機に入れずに取っておいた兄のパジャマで料理しようと心に決めた。
正直、今にも兄の衣類を集め出したいくらいうずうずするが、仕方がない。
こんなときだけは顔に出ない性質で良かったと安堵しながら、諒介は教室に戻った。
その夜、彼パジャマ+エプロンのコンボを決めた諒介が「いちばんのご馳走はっけーん‼」と行哉に腰に抱きつかれることを本人はまだ知らない。
「ビカちゃんと成瀬、どっちがおまえの本命だ?」
(しまった)
始業前に同じクラスの渡辺に校舎裏に連れ出され、校舎裏で詰め寄られて、諒介は後悔していた。
(アルファの名前も聞いときゃよかった)
あの、自分たちがオメガであることを晒されたときのことだ。
達樹があまりにも動揺していてかわいそうで、すぐにあの汚い言葉を話す連中から引き離したかった。
その気持ちだけであの時は動いてしまったが、それとこれとは話が別だった……と思う。
おそらく、この男はアルファだ。
だけど、こんな思い込みの激しいアルファにつきまとわれては、達樹と光がかわいそうだろうと思う。
「……はあ……」
ろくに表情も変えずため息をつく諒介に、相手が激昂する。
「なんだそれ⁉ わかってんだぞ、おまえからはアルファの臭いしかしねー」
「…………」
噂は回るだろうと思っていたが、そんな誤解が発生するとは夢にも思わなかった。諒介は呆れて渡辺の顔をまじまじと見た。
「なんだよ⁉」
通常、アルファはアルファの匂いを感じない。感じるとしたら、威嚇・威圧・警告・攻撃などのときだけだ。
つまり、諒介についているアルファの匂いとは、行哉のマーキングによるものだろう。
こっそり制服の下に着ている行哉のTシャツではないはずだ。たぶん。いや、洗濯もしているのだ。大丈夫だ。きっと。
オメガは、アルファのマーキングを感じない。
諒介は、自分に行哉のマーキングが引くほどべったりとついていることに気付いていなかった。
(……バカなのかな)
この男は諒介が四六時中まわりを威嚇しているか、自分で自分にマーキングしているとでも思っているのだろうか。
他のアルファやオメガと接触したことがないとそうなるのだろうか。
アルファにも能力に個体差があるとはわかっていたが、そのピンキリは諒介の想定の範疇外だったようだ。
「時間の無駄だった」
諒介は渡辺に背を向けた。こんな相手に自分のプライバシーを晒してまで説明する気はない。
そもそも、光を『ピカちゃん』と呼ぶ時点でいろいろと論外である。
「おい⁉」
威嚇するような怒鳴り声が追ってきたが、諒介は構わなかった。誤解させておけばいいとさっさとその場を離れた。
そして、さすがにカレーもシチューも飽きてきただろうから、今日は、朝こっそり洗濯機に入れずに取っておいた兄のパジャマで料理しようと心に決めた。
正直、今にも兄の衣類を集め出したいくらいうずうずするが、仕方がない。
こんなときだけは顔に出ない性質で良かったと安堵しながら、諒介は教室に戻った。
その夜、彼パジャマ+エプロンのコンボを決めた諒介が「いちばんのご馳走はっけーん‼」と行哉に腰に抱きつかれることを本人はまだ知らない。
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